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Friday Night Plans、『When I Get My Playground Back』ビジュアル・アルバム発表 監督はLeo Youlagi


2022.02.18

Friday Night Plansが昨年8月にリリースしたEP『When I Get My Playground Back』のビジュアル・アルバムが発表された。

『When I Get My Playground Back』は“レコード音質”を軸にした連作EPの第2弾作品。水と閉ざされた空間”をテーマにレコード特有の揺らぎ(ワウ・フラッター)を感じる音を重ねた、奇妙さとポップネスが共存した作品となっている。

『Embers』(2021年)と『In The Rearview』のカバーアートを撮影したLeo Youlagiが監督したこの14分間のビデオは、7つの音響的に実験的な曲にまたがり、同じように実験的なビジュアルを通じてメッセージを伝えている。

昨年の秋、東京と近隣の神奈川と千葉で撮影された、つかの間のシーンの集大成であり、現在も進行中のパンデミック下に生まれたプロジェクトに相応しいテーマとなっている、孤独と憧れの気持ちを呼び起こす。「文化的な環境の違いに関係なく、私たちは皆、共通の孤独を持っていると思います」とボーカルのMasumiは過去のインタビューで語っている。

Youlagiによると、ビジュアル・アルバムのコンセプトは、Flumeのミックステープ『Hi This Is Flume』(2019)のビジュアライザーに触発されたという。Youlagiは「監督がアルバム全体を視覚化する方法に本当に刺激を受けました」とコメント。Jonathan Zawada監督がガソリンスタンドと砂漠のありふれたシーンを繋ぎ合わせるように、Youlagiはこのプロジェクトで彼の東京での個人的な風景を繋ぎ合わせていく。「東京に住んでいると、思いがけない場所で美しさを見つけ始めます」とYoulagi。首都の派手な側面を避けることで、Youlagiは視聴者を彼自身の生活の中で最も親密な領域のいくつかに招待する。例えば、寝室の窓辺や、長いタクシーで家に帰る居心地のいい場所だ。このようなシーンはMasumiの音楽の個人的な性質を強調している。

「skit: humming」は1分強に及ぶアカペラで、曲というよりは日記の漏れた冒頭のように聴こえる。ビデオのこの部分では、監督の母親が薄暗いキッチンに立っている、Masumiのボーカルと相まって、子供の頃からの遠い記憶へ変貌を遂げるシーンとなっている。EPのタイトルが示すように、懐かしさ、つまり過去への憧れは作品に広く行き渡っているテーマだ。

「Playground」が始まると東京西部郊外の遊園地のネオンに動画が移る。「私が最初に曲を聴いたとき、放棄され荒廃した遊園地のイメージが浮かびました」とYoulagiは回想する。

EPの美しいラスト・トラック「Regret / Overheated Town」は千葉県幕張の海でYoulagiのiPhoneで撮影されたという。ビデオのフィナーレでは、俳優はまるで彼の周りの空気を抱きしめているかのように波から立ち上がっている。頭を水面上に保のに苦労するのではなく、彼は安らかに浮かんで、物思いにふける顔に太陽が降り注いでいる。

Friday Night Plans


INTERVIEW:Masumi(Friday Night Plans)

――『When I Get My Playground Back』はあなたにとってどのような意味がありますか?

Masumi:できていく曲を聴きながら少しずつ遊び心みたいものを覚えるようになった。遊び心って余裕や空白(スペース)だと思う。自分の中にあるplaygroundのような場所が長いこと埃をかぶって、どこにあるのか思い出すことも忘れていたけど、このEPを作っている最中、「私はいま曲を作りながらそういう場所を取り戻しに行く、その場所をまた形成していく途中なんじゃないか」と思った。取り戻した先で自分はどんな姿になっているかなという期待と、一曲一曲が私のplaygroundの地、空、遊具になっていけばいいなという願いも込めて『When I Get My Playground Back』というタイトルをつけた。

――プロジェクトは非常に親密であり、各曲は肉付けされたストーリーではなく、感情や心の状態を伝えているように感じます。これらのサウンドスケープにどのように到達していますか?

Masumi:曲を書くことは私にとって自分の内側への探検や一種の記録という面もあるように感じてる。その記録や探検で見つけたものと共通した要素を自分の日常のちょっとした出来事とか、見た景色とか、セリフから見つけてきて合わせていく。最終的に出来上がる曲はいつも複合的なものになるね。それは自分にとってはすごく自然なことに感じる。日常で目にするものや耳にするもの、起こる出来事はいつも色んなものが複雑に絡み合って存在すると思うから。

「Embers」からトライしていることの一つで、録音したボーカルやトラックに使う素材をそれぞれ一度レコードに切って、それらを取り込むという過程がある。レコードに切ることで質感に統一感が出たり、音が鳴っていない部分にもレコードノイズが入ったりすることで色んな要素が一つの線の上に乗るというか、一つの部屋に収まる感じがする。空白でも音が絶えず鳴っているのを聴くと、曲がちゃんと息をしているようでいいなと思う。

――シンガーソングライターとプロデューサーのコラボレーションはどのようなものですか?

Masumi:プロデューサーとのコラボレーションはいつもワクワクする。その人との出会い自体にもワクワクするし、たくさんの学びもある。自分からは出てこない音やアイデアや世界と触れ合うことで様々な制限が解除されたり可能性が広がる。誰かと一緒に作ることの良さはそういうところだと思う。

今回は2021年の頭から週に2回はプロデューサーのENAやカッティングやマスタリングをしてくれているWaxAlchemyの諏訪内、ディレクターの渡会と会っている。だいたいは音楽を作る時間より話す時間の方が長い。庭にかまどを作っただとか最近ハマり始めた趣味についてなどのみんなの日々についてや、昔リリースされたあるアーティストのこのアルバムがかっこいいとか、ある場所の音の響き方が面白いだとかいろんな話をする。そういうところから音楽制作へのヒントを得たりすることもあるし、なかったりもする(笑)。あとはとりあえず思いついたままにトライしてみて、いい感じのフレーズや違和感のあるメロディの動きを見つけておもしろそうなら追いかけていく。さあこういう曲を作ろう! と気合いを入れてセッションをするというよりは、日常の延長線上にある制作スタイルが今のところ良い方向へ働いていると思う。

2021年は特に力の抜き方と真剣に遊ぶことを覚えていった一年だったと思う。悩む時間を短縮することや許容範囲を広げるヒントにもなった。ENAとの制作で得た大きな学びはそこかな。アーティストとして知っておきたいことだったから。彼はその助けになってくれた。ENAはナチュラルボーンでそれをする人だから、特に意識していたわけではないと思うけど(笑)。

――孤独はあなたの作品に浸透しているテーマのように感じます。このEPは、孤独の概念をどのように拡張し、逸らしているのでしょうか?

Masumi:いつも孤独について書こうと思って書き始めるわけじゃないし、ただ曲を並べてみたらそれが共通のテーマとして浮かんでくるという感じかな。でも私がいつも孤独にとらわれているということを意味するわけではない。それはいつもそこにあるし、なんだかんだ縁の切れない一生付き合っていく友達みたいなものだと思ってる。それならよく知りたい。長い関係を築いていくにはよく知ることや想像することが大事だよね。そうやって普段から考えているから曲にも孤独についての話がしょっちゅう出てくるんだと思う。

今回のアルバムでもたしかに孤独についての話が出てくる。少し前まで私の中にある孤独はヒリヒリとした空気を持っていたけど、最近少しやわらかく変化した。そういった変化を体験したり、孤独について知ろうとする中で、恐怖や虚しさという面ばかりじゃないんじゃないかと思うようになった。あくまで私の中の話だけど、そこはいろんな姿、いろんな匂い、いろんな温度、いろんな時間の流れを持っていて、流動的な場所だと感じる。居心地も変わってくる。感じ方が変わったのか、捉え方が変わったのかははっきりとわからないけど。とにかく変化があるということさえ知っていれば、それからはいくら長くとも同じ状態が永遠に続くことはないと思えるよね。今回は箱のような囲まれた場所でも窓やドアがあって、ちゃんと空気の抜けていくような曲がいくつもあると思う。

どんな状況からも学べることはたくさんあるから一人だと感じるのは悪いことばかりじゃないと信じたい。自分だけの場所があることを知っているっていうのはある意味特権じゃないかな。

――東京で育った様子を教えてください。この経験はあなたをアーティストとしてどのように形作ったのでしょうか?

Masumi:東京で育つということがどんな感じなのか、正直あまり考えたことがなかった。東京で生まれ育って、離れることもなく、会うのは地元の友達ばかりで。でも考えてみると、東京には何でもあるし情報も溢れているから、求めていなくとも毎日大量に情報を浴びることになる。それに圧倒されずに自分のために何を選択していくかを考える癖や、疲れないように気をつけながら生活を続けていくためのバランスは身につけていったかもしれない。騒がしい場所にいても何気ない瞬間の中に心が動かされるものをみつけられる、そういう視点を持っていたいとは思う。でも結局身近にいた人や出会ってきた人たち、私の育った家、そして自分との会話が今の私や音楽スタイルを作りあげたと思ってる。

――最後に、リスナーにこのプロジェクトから何を感じてほしいですか?

Masumi:曲を聴くときのそれぞれの楽しみ方を見つけてくれたらいいなと思う。縛られるものは少ないプロジェクトだし、さっきの話にも出てきたようにこのプロジェクトは私やチームにとってのいわゆるplaygroundで、リリースする曲たちは遊びながらも色々トライしたその結果の記録でもあるから、私たちがまた何をして遊んでいるのか、何を実験したのか見守ってもらえたら嬉しい。

Interview & Text by Camille Suika


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