昨年4月に突如Twitterアカウントを開設し、同時にMV「ai ni iko」を公開するや否や、ネット上で急速的にその名を轟かせた謎多きバンド、木(KI)が1st EP『Vi』を1月9日(水)にリリースしました。
リリース情報と同時に、バンド・メンバーのパーソナルな情報も少し明かされており、齋藤聖悟(Gt.)、オヤイヅカナル(Key. / Vo.)、テツ(Ba.)、ナイーブ(Dr.)からなる4人組だということが判明しました。突如シーンに現れたこの4人は、その後2度ほどライブを開催。最初のライブは、ZA FEEDOとLouis Coleによるツーマン・イベントにオープニング・アクトとして出演。そして2本目は、自らが主催となり、西田修大 × 君島大空、DJにceroの荒内佑、Yasei Collectiveの松下マサナオらを迎えたイベントとなっており、メンツから考えても明らかにポッと出の新人でないことが伺えます。調べてみると、メンバーのオヤイヅカナルはGOING UNDER GROUNDなどのサポートも行っているようです。
今回リリースされたEP『Vi』は、先述の「ai ni iko」や、ライブ会場で配布していた冊子記載のURLからDLできた楽曲なども含む全5曲入りの作品。中でも年末にMVが公開された、オープナー・トラックの「Kei」は、人懐っこくもセンチなメロディと、抽象的な日本語詞が聴き手の想像力を刺激するナンバー。音数は少なく、余白を活かしつつ、鮮やかなストリングスの音色とエレクトロニックなビートで作り出す荘厳な世界観で聴く者を圧倒するかのよう。ジワジワとテンションを上げていき、終盤のプログレちっくなシンセの音色でカタルシスが爆発するような展開も秀逸。気を抜くと意識が宇宙へとふっ飛ばされそうです。
また、驚くべきは本作には他にも80年代ニューウェーブ〜ブギー・ファンクを想起させるサウンドから、再び荘厳&サイケな世界感へ繋がる「2:77」、ローファイな4つ打ち――ローファイ・ハウスとの接続を指摘するのはやや強引か? な「space」に、再びヒップホップやジャズ的な素養を見せつつも、中盤以降は〈Brainfeeder〉辺りとリンクしそうなアブストラクトなエレクトロニック・サウンドへと化ける「BALANCE」を収録。どの曲もボイス・サンプルのようなものや、コーラスはあれど、基本はインスト曲となっています。
しかし、それでも歌メロを感じさせる独特のキャッチーさ、そして楽曲の中に一側面ずつ切り取って語りたくなってしまうような要素がいくつも仕込まれている、このキメラ感。これこそが中毒性を生み出す最大の要因のように思えます。
また、彼らは何とMVならぬMG(ミュージック・ゲーム)というインタラクティヴ性を伴うコンテンツ、「ViSION QUEST “UTOPIA”」を制作中とのこと。これまでに公開されてきた「ai ni iko」や「Kei」のMVにも「ViSION QUEST “UTOPIA” trailer」との表記がありましたが、レーベルからの情報によると、MVも同ゲーム中のステージとして再現できるように制作進行しているそうです。
音楽性のみならず、その活動スタイルも非常に斬新かつ刺激的な木。現状マイペースな活動となっていますが、今後の動向は常に見張っておいた方が吉です。
【リリース情報】
木 『Vi』
Release Date:2018.01.09 (Wed.)
Label:APOLLO SOUNDS
Cat.No.:KI-0001
Price:¥1500 + Tax
Tracklist:
1. Kei
2. ai ni iko
3. 2:77
4. space
5. BALANCE
Music by 木(KI)