INTERVIEW

xiangyu

Gqom(ゴム)の次はSingeli(シンゲリ)。アフリカン・ビートに乗るxiangyuの日常

1st EP『はじめての◯◯図鑑』から1年、xiangyuが6月5日(金)に待望の2nd EP『きき』をリリースした。

プロデューサーを務めるケンモチヒデフミは、前作から引き続き取り入れているGqom(ゴム)のほか、新たにSingeli(シンゲリ)にも食指が動き、ますますアフリカン・クラブ・ミュージックの要素を意欲的に盛り込んだトラックを作っている。そんなトラックに乗るxiangyuのリリックは、生活感の中に着眼点の妙が光る持ち味が前作以上に冴えたもの。

Spincoaterでの前回のインタビューからほぼ丸1年が経った今、ミュージシャンとして経験値を積んだxiangyuはどのようにして音楽や制作と向き合っているのか、リモート取材で話を訊いた。

Interview & Text by ヒラギノ游ゴ
Photo by 南 阿沙美


xiangyuのパフォーマンスとオンラインの相性

――外出が制限される期間が続いていますが、いかがお過ごしですか?

xiangyu:最近は家の中でひたすら絵を描いたり、刺繍をしたりしてます。もともと服を作ったりしていたので、自分で手を動かして作業するのはやっぱり好きなんです。前作のEPでもブックレットのイラストを自分で描いたり、MVの衣装を作ったりもしていたんですが、最近はそういうことをやれてなかったので、いい機会だと思って。

――今回の作品の制作については、新型コロナウイルスに伴う影響を受けましたか?

xiangyu:これまで少しずつリリースしてきた曲をまとめた形なので、制作にはあんまり影響ないかもしれないです。

――ライブについてやはり大きな影響が?

xiangyu:そうですね。3月から4月にかけて全国色んなところを回る予定で、フェスにも呼んでいただいていたんですが、3月の頭からまったくライブができていない状況です。あと、私はオンラインのライブにもほとんど参加してなくて。唯一出演したのが5月に閉店してしまったLOUNGE NEOさんのクロージングのイベントです。

――オンラインのイベントにはあまり積極的に参加していくスタンスではないんでしょうか?

xiangyu:ライブはお客さんとの距離の近さからくる生の臨場感とか、ただ曲を聴くだけじゃない楽しさがありますよね。オンラインだとそういうところをどう補填するのかが難しいなと思います。なので今は、どうしたらオンライン上でそういうおもしろさや楽しさを組み込んでいけるのか、色々と自主練したり、配信を観たりして探っているところです。

あとは、自主企画イベントの『香魚荘』(シャンユーソウ)の2回目を8月25日(火)に開催するべく、今企画を進めているところです。香魚荘は家をテーマにしたイベントで、前回は渋谷O-nestを大きな家に見立ててやったんです。でも今年は、会場にお客さんを呼べるとしても同時に配信もするつもりで、観てくれている人それぞれの家も含めて、地下の隠れ小部屋の集合体というか、大きなアリの巣みたいなイメージ。そして、クラウドファンディングでやりたいと思ってます。

――クラウドファンディングを活用するのはどういった意図でしょう?

xiangyu:1つのイベントを作る上で、関わってくれるたくさんの人たちみんながなるべく安心して企画を進められるようにしたかったんです。今は未来の予定が立てられないような状況で、3月以降、イベントの為に予定を組んでいても直前でその日の予定がなくなったり延期になったりということが多かったですよね。アーティストもそうですが、ライブハウスやイベント会社の方々、ひとつのイベントを行うためには様々なスタッフの方が携わっていて、それぞれかなりの打撃を受けています。こういった未来のことが中々考えられないような状況の中で、新しい形態のイベントを提案したいと思いました。

自分のイベント開催にあたってサポートしてくれているスタッフや会場、出演者のみんなにはもちろん、コロナによって休業を余儀なくされたライブハウスへの支援をしたかったので、今回はクラウドファウンディングでの開催に挑戦してみようと。

xiangyu主催<香魚荘#02>開催!新たなイベントのカタチを探ります!(CAMPFIRE)


太陽の下で踊るクラブミュージック

――前回のインタビュー時点では、音楽についても業界についてもまだよくわからない、という状況でしたね。前作発表からのこの1年、率直にどうでしたか?

xiangyu:この1年はめちゃめちゃクラブに行くようになりましたね。外出が制限される前まではほぼ毎日のように。

――それこそここ1年、音楽に関わる仕事をしている友人知人から「クラブでxiangyuを見た」という目撃情報をよく聞くようになったんです。

xiangyu:(笑)。幡ヶ谷のForestlimitとか渋谷の翠月とか、小さめのところによく行きます。基本的にひとりで行くんですけど、知り合いも増えてきました。音楽をやる前はasiaやVUENOS、solfaに行っていましたが、そういった場所とはまた雰囲気が違い、よりアンダーグラウンドな音楽と出会うきっかけになっています。あとは渋谷のWWWβでやってる若手のラッパーのイベントにも頻繁に行ってます。WWWβやForestlimitではxiangyuの作品で取り入れているGqomっていう南アフリカのダンス・ミュージック・クルー・TYO GQOMがパーティを開催していて。Gqomみたいなコアなジャンルの音楽って、なかなか音源を掘るのが難しいので、実際にそういうパーティに行って、DJさんに直接教えてもらったりして研究してます。

――Gqomはノリ方もよくわからない、という人は多いかもしれません。他の多くのクラブ・ミュージックのように、夜のカルチャー、暗い部屋で踊る、大人の遊びといった雰囲気とは一線を画しますよね。

xiangyu:ハウスやエレクトロとはなんとなくグルーヴが違う感じがしますよね。夜でも暗い部屋でも大人のものでもなく、昼間に街中で子供がGqomで踊ってるアフリカの動画がYouTubeにアップされてたりして。そういう現地の人たちのノリ方は観ていて楽しくなるエネルギーを持っているので、ライブ・パフォーマンスの参考にしてもいます。

――特定のミュージシャンではなく、アフリカの一般のGqomのオーディエンスを参考にしているんですね。

xiangyu:そうですね、でもGqomのアーティストでSho Madjoziという人がいて、その人のライブは本当にカッコいいので影響を受けている部分はあるかもしれないです。特定の人を参考にするっていうのはあんまりないんですけど、よくライブを観に行くラッパーの人たちの立ち居振る舞いでカッコいいと思う部分を自分なりに取り入れてみたりはあるかな。あ、でもBillie Eilishは割と参考にしてるかも。今みたいに世界的スーパー・スターになる前から好きだったので、少なからず影響を受けていると思います。パフォーマンスはもちろん、活動に対するスタンスも好きです。

――今回のEPでは、Gqomに加えてSingeliという新たなジャンルの影響を受けた曲もあります。

xiangyu:「ひじのビリビリ」ですよね。Singeliのルーツはタンザニアのダンス・ミュージックで、これも現地だと、みんな明るい場所で狂ったように踊ったりもしています、ケンモチさんから教えてもらってから聴くようになりました。Singeliをやっている現地のアーティストでMario Swaggaって人がいて、よく聴いてます。

――Singeliは手数が多いトラックが特徴的ですよね。

xiangyu:Singeliはビートがめちゃめちゃ速いですね。英語のリリックの方が言葉をリズムに乗せやすいんだろうなとは思うんですけど、私は基本的に日本語の持つ言葉のおもしろさで作品を作りたいなっていうのがあって、どうにかこのビートに乗るように言葉を当てはめていった感じです。なので言葉の意味というよりも、その言葉が持つ音にフォーカスして、どうしたらおもしろく、速く聴こえるかを求めていきました。

――他には直近でどんな音楽を聴いていますか?

xiangyu:AhadadreamっていうGqomの人と、あとはHaiku Handsっていうグループはジャンル不明な感じが好きですね。アートワークもカワイイ。あと、ずっと聴いていてとても尊敬してるのはKID FRESINOさんとゆるふわギャングさん。曲がカッコいいのはもちろんなんですけど、自分でラップを書いたり譜割りを考えるようになってからよりすごいと思うようになりました。


ケンモチヒデフミとの制作の流れ

――ケンモチさんとの制作はどのように進めているんでしょうか? 詞先なのか曲先なのか。

xiangyu:歌詞は私が考えて、トラックはケンモチさんが作る、という体制です。気にいった言葉やリリックをケンモチさんに送って、「こういう言葉で曲を作りたい気分です」って言うこともあるし、ケンモチさんが「こんなトラックどう?」っていうところから始まり、言葉を考えることもありますよ。

例えば2曲目の「ピアノダンパー激似しめ鯖」は、その名の通りピアノのダンパー(ピアノ内部で音を止めるためのパーツ)がしめ鯖に似てるなってふと思ったのを基に作った曲です。この話を最初にケンモチさんにした時にやたらツボに入ってて、すぐに「こういうトラックはどう?」って提案してくれました。

――楽曲制作は普段からそういうふうにxiangyuさんのフレーズや発想ありきでトラックを考えていくスタイルなんでしょうか?

xiangyu:自分がフレーズなどを先に提案する場合もあるけど、トラック聴いて、私が自分の持ってる引き出しの中からピッタリなのを当てはめて、というやり方が一番多いです。その後、遠征中の車の中とかでケンモチさんとおもしろい言葉を言い合って、ラップの基になる部分を作っていくっていうパターンも前はよくありましたね。都度データを送り合って、必要があればZOOMで話し合ったりして作り込んでいきます。たまにマネージャーの福永さん(水曜日のカンパネラのメンバーとしても知られるDir.F)からもアドバイスもらったりして。

――xiangyuさんがメロディを考えることもあるのでしょうか?

xiangyu:そうですね、もらったトラックに対してラップの符割りやメロディを考えて入れるってことも結構やっています。「秒でピック白」や「home」って曲のラップ部分は割と自分が考えたやつがそのまま採用されたりしたりしていて、言葉を考える以外にもトライしていってます。

――お話を伺っていると対等な関係というか、話し合いの上で作っていく感じですね。

xiangyu:単純にプロデューサーと舞台に立つ人って明確に役割が分かれている認識は私にはないですね。もちろん私が1人で作っているわけじゃないし、だからと言ってケンモチさんがひとりで全部作ってるわけでもない。2人のものが混ざり合ってxiangyuの曲になるんです。

だから私もケンモチさんが作ったトラックに対して「これは今の気分じゃない」とか「もっとこういうラップがやりたい」みたいなことは絶対に伝えるようにしてます。そうするとケンモチさんも「今はこういうのが新しくておもしろいからやった方がいいよ」とか「それもいいけど、こっちもやってみて!」みたいな感じで踏み込んだ説明や代わりの意見をくれる。

やっぱり自分の名前で世に出すものだから、ちゃんと納得したいじゃないですか。せっかくリリースしても「あんまり告知したくないな」って気分になるのだけは絶対に嫌なんです。


売れなくてもいいなんて1ミリも思ってない

――xiangyuさんといえば、やはりインパクトのある言葉選びが特徴だと思います。こういった言葉やネタみたいなものは普段から書き溜めているのでしょうか?

xiangyu:全部 iPhoneのメモに入れていくようにしてます。曲のネタ以外にも、読みたい記事や本のリンクなんかも全部ここにリンクを貼ってるので、これが消えたら終わりです(笑)。

――本作はコンスタントに発表してきた作品をまとめたものだということでしたが、本当に日常の中でふと思いついたアイデアを基に、日常の中で自然と曲作りをしている感じなんですね。

xiangyu:そうですね。『きき』については短編集みたいな感じだなって思ってるんです。自分の過ごしてる毎日って、インスタに上げられるような映えた食事をしてるわけでもなくて、かなり地味な部類だと思っていて。でも、そういうなんでもない日々が愛おしいなって思えるような、日常の中で見つけた「小さくておもしろいこと」を自分の中で膨らましていくことが好きなんです。

「ピアノダンパー激似しめ鯖」もそうだし、「ひじのビリビリ」も肘をぶつけたときビリビリするっていう本当に小さなことをテーマにしていて。友達にだってわざわざ「元気? そういえばさっき肘ぶつけてビリビリしたんだけどさ」って言わないじゃないですか? でも、そういうどうでもいい小さいことが自分はいちいち気になっちゃうので、曲の力でそういうあれこれの存在感を大きくしたいって感じなんです。

xiangyu:例えば空が青くて綺麗っていう曲を作ってほしいとか、恋愛に関する曲を作ってほしいって言われたら今はちょっと困るかも(笑)。それと、私はSNSで政治に関することを言ったりすることがあるので、楽曲にはそういうテーマを盛り込まないの? と訊かれることもあるんですけど、そういうテーマをそのままダイレクトに扱いたくないと思っていて。

言葉のパワーってやっぱりすごく強いと思うんですよ。全部を説明してしまうと受け手がそのままズバリ受け取ってしまって、考える余白がなくなっちゃう。だから、直接的にそういうテーマを扱うことは今のところしてないですね。言葉に限らず、あらゆる物事において明確な答えを求めすぎるのは私はあまり好きではなくて、みんなが自分で考えたり想像できる、そういう考える余白のある作品作りをしていきたいです。

――では最後に、今後こうなりたい、これができるようになりたいという予定や目標があれば教えて下さい。

xiangyu:やっぱりフェスにはいっぱい出たいですね。フジロックみたいな大きなフェスに出たい。日本以外の場所でxiangyuのパフォーマンスがどう受け取ってもらえて、それがどうやって広がっていくんだろう、っていうのもすごく気になります。

あと、私はGqomやSingeliなど、まだ日本ではあまり知られていない音楽をやっていますけど、売れなくていいなんて1ミリも思っていません。私はちゃんと売れたい。自分たちがおもしろいと思うものを作ることは貫きつつも、もっと遠くまで自分達の作品が届いて欲しいと思っています。自分の作品を介して人々が集まったり広がっていく様子に興味があるので、自分自身が広がれば広がる程、その輪はどのように変化していくのかを見てみたいです。

――xiangyuが売れれば売れるほど、ピアノのバンパーがしめ鯖に似てるなって思う人が増えてくってことですもんね。

xiangyu:そうなったらおもしろいかも!


【リリース情報】

xiangyu 『きき』
Release Date:2020.06.05 (Fri.)
Label:KUJAKU CLUB
Tracklist:
1.BBIISPP
2. 秒でピック白
3. home
4. ひじのビリビリ
5. ピアノダンパー激似しめ鯖


【イベント情報】

『香魚荘#02』
日時:2020年8月25日(火) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京・渋谷TSUTAYA O-nest
料金:¥2,000 *
出演:
xiangyu

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主催:xiangyu

*オフラインでの参加者は現地で別途2,000円必要となります。

クラウドファンディング詳細

■xiangyu:Twitter / Instagram

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