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Interview / Travis


「親友のようなメンバーで自分たちの信じるメロディーを作り続けてきたということが、一番の鍵だと思う」ーTravis インタビュー

2016.04.28

明日、4月29日(金)に通算8作目となる待望の新作『Everything At Once』をリリースする英国を代表するロック・バンドTravis(トラヴィス)。
ニューアルバムのリリースだけでなく、4月10日に開催された”Hostess Club Presents Sunday Special”でのヘッドライナー公演、デビュー20周年、”FUJI ROCK FESTIVAL’16″への出演と今年は日本のファンを喜ばしてくれる活動が続く彼ら。

今回、”Hostess Club Presents Sunday Special”でのライブ翌日にバンドのリズム隊であるベースのDougie Payne(ダギー・ペイン)とドラムのNeil Primrose(ニール・プリムローズ)にインタビューを敢行した。
短いインタビューの中で、今回の来日についてや日本のファンのこと、さらに新作やバンド結成20周年のことから今年出演が決まっている”FUJI ROCK FESTIVAL”のことなど様々な角度から質問をぶつけてみた。
その結果、Travisというバンドの本質、キャラクターが浮き彫りになったインタビューになったのではないだろうか。
これを読めば彼らの魅力がきっと伝わるはずだ。

Interview by Kohei Nojima
Live Photo by Kazumichi Kokei
Other Photo by Takazumi Hosaka

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ーまず最初に、ヘッドライナーとしての出演となった昨日の”Hostess Club Presents Sunday Special”でのライブの感想を教えてください。

Dougie Payne(以下:D):新しいレコードからの楽曲を初めて日本でプレイできてとても楽しかったよ。新作の中から8曲演奏したけど、今回のアルバムは結構短いから昔の曲と組み合わせながらプレイしたので、自分たち的にも楽しめたよ。

ー「Magnificent Time」ではオーディエンスにダンスをレクチャーしていましたよね。彼らのダンスを見てどう思いましたか?

Neil Primrose(以下:N):みんなよく飽きないなと思うくらいおもいっきり動いて楽しんでくれていたよね。しかも笑顔で。すごいいい時間を過ごせたと思うよ(笑)。

ーちなみに、ぼくも楽しく踊らせてもらいました(笑)。

N:それはクールだね。ありがとう。簡単なダンスだっただろ?(笑)

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ーTravisのライブはいつも会場にハッピーなヴァイブスが溢れていると思うのですが、ライブの時にバンド内で決めているルールや心がけていることはありますか?

D:本当に魔法みたいだなって思うよね。音楽ってぼくたちのライブ以外でもいろいろな人をひとつにできると思っていて。ぼくはオーディエンスとしても、ステージでみんながひとつに、コミュニティーになるようなライブを観に行くのが好きなんだ。
もちろんハッピーだけじゃなくて、ぼくたちの曲にはメランコリーさとかもあるけど、ステージ上でみんなが知っているような曲を披露してひとつになるっていうのが何よりも大切だと思うんだよね。
オーディエンスを置いてきぼりにするような、”主役は自分たちだけ”みたいなライブをするバンドもいるけど、ぼくたちはそうじゃなくて、みんなが何かを吐き出す機会だったりを与えられるような場にしたいんだ。
やっぱりひとりだと歌えないシャイな人も多いけど、みんなと一緒に歌うなら楽しめる人々もきっといっぱいいるよね。だからみんな教会に行って歌ったりするんだと思うんだけど、そういう自由さだったり、みんなで何かを分かち合う瞬間をライブで作ろうと思っているんだ。

ーよく言われていることではありますが、日本のオーディエンスと海外のオーディエンスの違いを感じることはありますか?

N:日本のオーディエンスは恥ずかしがりやだとか、静かだとか聞いたりすることはあるけど、今となっては全然違いは感じないかな。どこの国のオーディエンスもみんな同じように楽しんでもらってると思うよ。

D:確かに初めて日本に来た頃は、演奏中は盛り上がるんだけど曲と曲の間では静かになってしまうことが多かったと思う。でも、ぼくたちは18年もの間ずっと日本に来続けてるからわかるけど、今では本当に海外と変わらなくなったよ。慣れてきたっていうか、ほぐれてきたみたいな感じ。まあ、その違いがわかるほどにぼくらは日本に来てるってことだよね(笑)。

ーライブの前日にはファンとの交流イベントも開催されていましたよね。その際の何か印象的なエピソードはありましたか?

N:本当にたくさんのファンが集まってくれて、彼らと直接会うことができてすごく嬉しかったよ。これまではあまりそういう機会はなかったし、ましてやファンから質問されたりってのはね。

D:そうそう。しかもその質問のなかにはぼくたちには予想できないようなモノがたくさんあったんだ。映画についての質問もあったりして面白かったよ。あと、昨日のライブ会場で行ったサイン会もとても感動したな。集まってくれた人たちがみんな優しくて、温かさみたいなのを感じてとても感動したよ。世界の真裏に位置するようなこの場所で、本当にこんなに長い列でぼくたちを待ってくれているんだってことに、ものすごく幸せを感じたよ。

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ーなるほど。では、最新アルバム『Everything At Once』についてお伺いします。今作はこれまでよりも愉快さや力強さを感じるアルバムに仕上がっている印象を受けました。今回のアルバムのテーマやコンセプトがあれば教えてください。

D:アルバムを作る時は、ぼくらの場合はとりあえず曲をたくさん作り溜めていく感じだから、最初は特に何も考えていないんだ。そしていざ曲をまとめる段階に入ってから、そこで初めてこの楽曲群にどんな共通点があるかっていうことに気づくんだよね。
今回のアルバムは「3 Miles High」と「Paralysed」、「Animal」、「Everything At Once」の4曲が特にそうなんだけど、今のこの時代、頭の中で考えていることはみんなTwitterとかInstagramとかFacebookで共有しているよね。でも、実際にはそれって雲の上のような状態で、本当は繋がっていないんじゃないかって思うんだ。それで繋がっている気になっているけど、本当のコミュニケーションっていうのは今こうやって会って話しているような感じで、本人が話しているときにぼくたちがその目の前で聞いているっていう、こういうことなんだよね。そうやってコミュニケーションは生まれているわけなんだよ。でも、そういうことが現代ではこれまでの歴史的に見ても最も欠けた時代になっていると思っていて。だから今回のアルバムは、そういった状況にみんな本当に気づいている? っていう投げかけなんだ。やっぱりSNSっていうものはリアルじゃないし、虚構の繋がりだと思う。だからこそ、今起こっている問題を今回のアルバムでみんなに問いかけている。

ーでは今回のアルバムの『Everything At Once』という題名にはそういう意味が込められているのでしょうか?

D:アルバムのタイトルにもなっている「Everything At Once」って言う曲は、NYからマンハッタンに行く地下鉄で考えていたら、急にたくさんのメロディーやコーラスが湧いてきたんだよね。ちょうどThe Whoの「Baba O’Riley」に影響を受けたようなモノで。
それがグラスゴーに帰ってからも何週間もずっと頭の中で回っていて、まるで息継ぎができないほどに頭のなかを支配された。様々な感情がちょっとイライラしてしまうくらいに頭の中で広がっていたんだ。それがもはや歌えないくらい色々なものが詰まりすぎていたから、ちょっと歌いやすいようにアイディアを少し削ったりもした。
そうやってこの楽曲のプロセスやアイディアの全てが一度に、同時に思いついたっていう、今までにあまりない経験をしたから、そういった意味を込めて「Every At Once」っていう曲名にしたんだよね。で、この曲名がアルバム・タイトルになったのは、一番聞こえがいいし、あと今回は映像も一緒に作ったし、アートワークもほぼ同時に出来上がって。そういった状況にも「Everything At Once」っていうタイトルが合ってたんだよね。それが理由かな。

ー「Everything At Once」は他の曲と比べて、最後の方に完成した曲になるのでしょうか?

D:いや、一番最初の方にできた曲だね。

ーでは、今作のリリースは前作『Where You Stand』からおよそ3年ぶりとなりますが、実際にはいつ頃からレコーディングを開始したのでしょうか?

D:まるでずっと妊娠しているような、子供が一体いつ生まれるのか待ちきれないような感じだったよ(笑)。
今回のアルバムは『Where You Stand』の後に何ヶ月か休みを取ったんだけど、その時期をメンバーがそれぞれ曲のアイディアを溜める期間にしたんだ。で、そのあと2014年の7月頃に初めて各々のアイディアを実際に交換し合った。そして10月くらいになってスタジオに入れそうだったから、ベルリンのスタジオに行ったんだよね。そこで3週間スタジオに入って、いくつかそこで曲をレコーディングした。そこでのセッションのあとに、また何ヶ月か休みを取って、さらにみんなそれぞれがアイディアを溜めて、2015年1月に再度集まってレコーディングを再開したんだ。それでまたオフをとって、3月から4月にかけてその繰り返しをして、さらにレコーディングを進めていったよ。4月にはアルバムのレコーディングが終わっていて、ミックスとかマスターで昨年の10月にアルバムが完成した感じだよ。

N:楽曲のラインナップだったり音とかが自分たちにとって一番シックリくるモノにしたかったし、けっこう時間がかかったんだけど、今こういう状態でアルバムを出すことができて素直に嬉しく思うよ。

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ーTravisは結成20周年ですよね。この20年間の間には、世界の音楽シーンや音楽ビジネスも、さらに自分たちの環境も変わったことと思いますが、この20年間を振り返ってみて何か感じているモノはありますか?

N:周りももちろん変化し続けてるけど、そういった中で自分たちがこうやって変わらずに活動できていることに本当に感謝したいし、嬉しく思うよ。
例えば、昨日ぼくたちが本当に影響を受けているBernard Butlerという憧れの存在に会うことができたし、そんな彼と共演できたっていうこともとても嬉しいよ。
やっぱり自分たちが20年間活動してる中で、当時から変わらずにまだ存在しているアーティストもいれば、もういなくなってしまったアーティストだっているわけで。そのなかで自分たちの音楽を維持し続けることができて嬉しいし、バンド・メンバーが変わらずに付いてきてくれることもにも感謝してる。

D:バンド・メンバーも全く変わっていないし、誰かが抜けたり入ったりってことは一切なかった。ぼくらと同時期にキャリアをスタートさせて、バンド・メンバーが当初のままで活動し続けているのは、思いつく限りではRadioheadくらいなんだけど、自分たちもそういう風に活動し続けることができて、すごく貴重なことだと思ってる。

ー今おっしゃったように、Travisはこの20年間でただの1回もメンバー・チェンジをしていない貴重なバンドだと思います。あなたたち自身、なぜここまで4人で来れたと思いますか?

N:ひとつはメロディーだと思う。やっぱりぼくたちはも元々同じところで育ってきた友達同士だったという部分が大きいんだけど、流行りとかシーンとかに囚われ過ぎずに、ただ純粋に”良い曲”を作るということを意識しているからかな。
“良い曲”っていうのはずっと残るモノだよね。流行とかに囚われずに、親友のようなメンバーで自分たちの信じるメロディーを作り続けてきたということが、一番の鍵だと思う。

ーでは、早くも7月に”FUJI ROCK FESTIVAL ’16″での再来日が決まっていますが、フジロックにはどのような印象を抱いていますか?

D:”Glastonbury Festival”とか、”T in the Park”と同じように特別な感じがするんだよね。いつもいいライブをさせてもらっているけど、前回のフジロックでプレイした時は、本当にみんながひとつになって、逆にぼくらが圧倒されるくらいにすごかった。やっぱり何かが特別なんだろうね、あの場所は。あと、環境がとてもいいよね。すごく美しいし、そこに揃ったバンドと一緒に会話できたりすることも魅力のひとつかな。

ー最後に日本のファンに向けてメッセージをお願いします。

D:ぼくらをいつもこんなに歓迎してくれて、すごく光栄で幸運なことだと思っているよ。毎回とてもいい時間を過ごさせてもらってるし、ライブはいつも最高だよ。それは日本のオーディエンスのおかげだし、いつも日本で演奏させてもらえることを感謝してるよ。

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Travis『Everything At Once』
Release Date:2016.04.29
Label:Red Telephone Box / Caroline / Hostess
Cat.No.:HSU-12060
Tracklist:
01. What Will Come
02. Magnificent Time
03. Radio Song
04. Paralysed
05. Animals
06. Everything At Once
07. 3 Miles High
08. All Of The Places
09. Idlewild
10. Strangers On A Train
11. Sing (live)*
12. Closer (live)*
*日本盤ボーナストラック


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