FEATURE

INTERVIEW / Sincere


新たな挑戦や心境の変化を経て、自身の殻を破ったSincere。その現在地に迫る

2023.04.10

多国籍なルーツを持つ注目のSSW、Sincereがおよそ1年ぶりとなる新作EP『Just Living』をリリースした。

R&Bを軸としながらも海外のオルタナティブな潮流とのリンクもみせるSincere。今作には前作にも参加していたThe Burning DeadwoodsやChocoholicをはじめ、DJ HASEBE、Sho Asano、A.G.O、Mori Zentaroといった気鋭のプロデューサー/ミュージシャンがクレジット。2ステップを取り入れたダンサブルな「Keeps Beating」や韓国のoceanfromtheblueをフィーチャーした「Sixteen, Fifteen」、ソウルフルな「Are You」など、より多彩なアプローチを試みた全6曲が収録されている。

また、Sincere自身のボーカルの表現力が増したのに加え、今作ではその言葉の強さも印象的だ。深い内省を試みた前作に比べて、今作では外へと投げかけるかのようなリリックが耳を引く。

今回のインタビューでは前作以降の動きと変化を辿りつつ、EPの制作背景、そしてSincereの現在地に迫ることに。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Takeshi Yao


“プライドなく生きる”という目標に少し近づけた

――前作『Time』をリリースしてからおよそ1年経ちますが、Sincereさんにとってはどのような期間でしたか?

Sincere:自分の殻を破っていく期間だったのかなって思います。新しいチャレンジもしつつ、自分が何をするべきなのかとか色々なことも考えて、発見や気づきもありましたね。

――新しいチャレンジという部分について、もう少し具体的にお聞きしてもいいですか?

Sincere:それこそ前回のインタビューのときはまだ有観客ライブもやったことがなかったので、ライブの面では全てが挑戦という感じでした。まだ不慣れな部分もあるんですけど、パフォーマンスについてだったり表現方法については模索していますね。例えば……ダンスをしたいなとか思ったり(笑)。

――ダンス、いいですね。

Sincere:自分では意識してなかったんですけど、この前のライブではめちゃくちゃ踊ってたみたいで(笑)。でも、ちゃんとやるならもっと体力つけないとなって。

――ライブ以外の面でも、新しいことにトライしていますか?

Sincere:最近、トラックメイクを勉強していて。まだ簡単なことしかできないんですけど、自分でもトラックをイジってみたりしています。あとはSNSもそうですね。私は普段からあまり写真を撮らなくて、以前は月に1回ポストするかどうかっていう感じだったんです。最近ではふとした瞬間を切り取って載せてみたり、何か自分の曲とコネクトできる部分はないかなとか、色々と考えるようになりました。

――日常の瞬間を切り取るという面では、曲作りにも似た部分があるのかもしれないですね。

Sincere:そうなんです。日常をどうやって切り取って、いかに素敵なものにするかっていうのは、曲作りの練習にもなる気がしていて。

――そういった新しいことに積極的に取り組んでみて、何か変化した部分などは感じていますか?

Sincere:これはずっと前からの私のテーマなんですけど、“プライドなく生きる”っていうことを目標にしているんです。「他人からこう見られたい」とか「こういう自分でありたい」とか、そういう感情や思考を全て捨てたい。それを完璧に達成することが私の人生のゴールと言っても過言ではない。前作をリリースしてからのこの1年間では、そこに少し近づけた感覚があって。

やっぱり変なプライドがあると伸びるところも伸びなくなると思うし、チャレンジとかもしなくなると思うんです。それを少しずつ捨てることができたからこそ、殻を破れたのかなって。

――その“プライドなく生きる”という目標、考えにはどのようにして辿り着いたのでしょうか。

Sincere:同じようなことは小さい頃から考えていて。聖書を読む機会が多かったり、育った環境が大きかったのかもしれません。もっと細かく言うと、死ぬときに自分の人生を振り返って、「これが真実だったんだ」「人生はこれでよかったんだ」って思えるようになりたいんです。そのためには、生きてるうちに色々なエレメンツ(要素)を取り込むべきだと思っていて。スポンジみたいになんでも吸収したい。そこからまずプライドは捨てるべきだなっていう考えに至りました。

――そもそも新しいことに挑戦しようとしたり、自身の殻を破るというのは、意識的に行ったことなのでしょうか。

Sincere:私は元々人前に立つことがあまり得意ではないというか、好きじゃなかったんですね。もちろん、自分の曲をシェアしたいっていう気持ちがあるからこういう活動を始めたんですけど、以前はどこかでまだ壁を作っていたというか。でも、やっぱりライブを観に来てくれたり曲を聴いてくれたりすることってすごく特別なことだし、感謝しかないなって。SNSも同じで、ひねくれた気持ちを捨てて、やるべきことをやろうというスタンスになりました。

――SNSやYouTubeでは数字が見えてしまうので、先ほどおっしゃっていた“プライドなく生きる”という部分ではネガティブな影響もあるのでは?

Sincere:そうですね……それは難しい問題ですよね。でも、例え数字が少なくても、他のアーティストさんと比べるのではなくて、ゼロではないことに感謝する。まだまだ少ないかもしれないけど、自分の曲を聴いてくれる人たちについて思いを馳せるようにしています。もちろん、自分の中での波もあるんですけど。

ただ、私は元々あまり人に興味を持たないタイプだったので、最近は逆に他のアーティストさんのことを見るように意識しています。それは数字を比べるとかではなくて、そのアーティストさんの魅力的な部分を探ろうと思って。

――すごくいい心境の変化ですね。では、今のSincereさんの音楽活動における原動力というか、エネルギー源はどんなところにあると思いますか?

Sincere:曲を作り始める前から日記をつけたりポエムを書いたりしていて、それを自分の曲にできるっていうだけで嬉しいし、原動力になりますね。色々なことを吸収して、それを音楽という形でアウトプットする。そうやって目に見えて形になっていくことが楽しくて仕方ないんです。

――今でも日々感じたことなどを書き留めたりしていますか?

Sincere:勉強ノートみたいなのがあって、そこに色々と書き溜めています。あと、さっきもお話したんですけど、最近は聖書を改めて勉強し直していて。何ていうか、自分が当たり前に思っていたことや自分が漠然と大事だと思っていたことを一度捨ててみることが大事だと思って、ちょっと前まではそういうムードだったんです。そこから最近になって、再度拾い集めるタームになったというか。聖書についても、自分の中にあるバイアスとかを1回捨てた状態でもう1回読んでみようと。

――なるほど。改めて聖書に触れてみると、やはり新鮮な印象を受けますか?

Sincere:全然違いますね。強く記憶に残っていたことも意外と「あれ、全然そんなこと書いてないじゃん!」ってなったり。色々な捉え方ができるようになっているのがすごいなって思います。

あと、これは関係あるかどうかわからないんですけど、この前実家を掃除していたら歌のコンテストのメダルを見つけて。私、小さい頃は人前に立ったり目立ったりすることが好きだったみたいで、そのメダルは家族でクルーズ旅行に行ったときに、船内で行われていたコンテストでもらったらしいんです。しかも、ステージに勝手に上がって歌ったらしくて(笑)。

――(笑)。

Sincere:やっぱり人前で歌いたいとか、自分の歌を聴いてもらいたいっていう気持ちがあったんだなって。そういう昔の気持ち、小さい頃の自分をもう一度思い出すっていうのは、最近意識してやっていることですね。


出発点は“リフレクション(反射/反映)”――多彩なサウンドを取り込んだ新作の制作背景

――小さい頃の自分を思い出す、一度捨てたものを拾い直す。そういったムードは今回のEPにも表れていると思いますか?

Sincere:今回のEPはあまり深く考えすぎないようにしたというか、無意識に近い状態でこそ発揮できるものがあるんじゃないのかなっていう感じで作った作品なんです。でも、以外と今お話したようなムードも反映できてるんじゃないかなと思いますね。

構想段階ではめちゃくちゃ練り上げて、曲と曲が複雑に繋がってたり……っていう風に考えていたんですけど、日々過ごしていたらそうはならなかったというか(笑)。結果として、ただ普通に生きていた私を切り取ったような作品になりました。

――だからこそ、『Just Living』というタイトルなんですね。制作はいつ頃からスタートしたのでしょうか。

Sincere:去年EPをリリースしてから、割とすぐに取り掛かったと思います。「Sixteen, Fifteen (feat. oceanfromtheblue)」と「I’ll be」が一番最初の頃にできた曲ですね。

――その2曲も含めた先行シングル、そしてEPのアートワークが全て水をモチーフとしている点も興味深かったです。

Sincere:前作『Time』は自分の過去と向き合った作品になったので、次はもっと外に向けた作品にしようというのは最初からなんとなく考えていました。ただ、外へ向けた内容というのも、当たり前ですけど自分の視点からしか見えないわけで。それも自分のリフレクション(反射/反映)なのかなって思いました。そこから水というモチーフに着地したという感じですね。

作っていくうちに変わっていった部分もあるんですけど、最初の頃は「井の中の蛙大海を知らず」と言う言葉もテーマのひとつとして考えていました。

――EP全体として、日本語詞の割合が増えたようにも感じました。

Sincere:増やそうという意識はあまりなかったんですけど、わかりやすくしようとは考えていました。その結果、日本語が増えたり、日本語の部分だけでも意味が通じるような歌詞が多くなったんだと思います。歌い方ももっとクリアに、日本語をあまり崩さずに発声しようと意識しました。

――第1弾先行シングルとなった「I’ll be」には、前作に参加していなかったSho Asanoさんがクレジットされています。彼とはどのようにして制作するに至ったのでしょうか。

Sincere:Shoさんには去年からライブでキーボードを弾いてもらっていて。時間を共にする機会が多かったので、自然と一緒に作ることになりました。「I’ll be」はShoさんが最初にデモ・トラックとメロディを作ってくれて、そこからメロディを変化させたりしつつ、完成させました。

――《外に写るのも/It’s all in me/Who’s that you that I can see?》というリリックは、先ほどおっしゃっていたリフレクションというテーマに沿った内容なのかなと感じました。

Sincere:最初はそういうつもりで書いたんですけど、後から読み返してみるとめっちゃ自己中な曲だなとも感じますね(笑)。自分は大きな器を持った人になりたいので、みんなの気持ちを受け止めたい。だから「あなたは好きにしていいよ」って歌ったつもりなんですけど、時間が経ってから客観的に見ると、結構自分の気持ちを押し付けてるなって。

――先ほど名前が挙がったもう1曲「Sixteen, Fifteen」は韓国のアーティスト、oceanfromtheblueをフィーチャーした1曲です。彼とのコラボの経緯というのは?

Sincere:去年の5月くらいにDJ HASEBEさんとデモを作っていたんですけど、途中でせっかくだったら海外アーティストの方ともコラボしたいなと思ったんです。韓国やアジアのR&Bシーンが今アツいので、色々なアーティストさんの曲を聴いているんですけど、そのなかでも特に好きだったのがoceanfromtheblueさんで。私からコンタクトを取ってみました。私自身もルーツに韓国があるので、そういった部分でもリンクするものがあるのかなって。

――DJ HASEBEさんとの制作が先に進んでいたんですね。

Sincere:はい。HASEBEさんがDJ出演されてるイベントに出演させていただく機会があって。それをきっかけにご一緒させていただきました。

――先ほどお話しされた内容とも繋がるのかもしれませんが、タイトル通りこの曲では過去を振り返っていますよね。

Sincere:そうですね。でも、そういったテーマは最初から考えていたわけではなくて、HASEBEさんのトラックを聴いて、そこに仮でメロディを乗せてみたときに、すごくノスタルジックな気持ちになったんですよ。あと、メロディとかサウンドは全然違うのに、『The Sound of Music』(1965年公開のミュージカル映画)の「Sixteen Going On Seventeen」という曲が思い浮かんだんです。とても懐かしい、甘酸っぱい気持ちで作りました。

Sincere:『The Sound of Music』は小さい頃に何回も観ていて。今、あの頃のピュアな気持ちを表現できたら強度のある表現になると思ったんですよね。昔のように純粋な目で世の中や人を見たいなと思って書きました。

――oceanfromtheblueさんとはどのようなやり取りを? 

Sincere:最初はInstagramのDMでやり取りして、その後オンラインでもお話させていただきました。言語の壁もあったんですけど、英語とあとはジェスチャーで私の思いを伝えて。とてもいい方でしたね。

最初に私が大まかな曲のテーマをお伝えして、私のボーカルも入った状態で音源をお送りして。そうしたらoceanfromtheblueさんが《When I was fifteen(私が15歳の頃)》っていうラインを入れてくれたので、「Sixteen, Fifteen」というタイトルにしました。

――EPからはもう1曲、「Like no one’s done」が先行カットされています。これはセルフ・ラブをテーマとした楽曲ですよね。

Sincere:私にとっては珍しい制作パターンなんですけど、「Like no one’s done」はチョコさん(Chocoholic)と一緒にスタジオに入って、セッションしながら作りました。一緒にアイディアを出し合っていくなかで、ふと《love me love me》というフレーズが浮かんできて。そこから膨らませていきました。EP全体として外に向けた内容にすることを意識していたので、やっぱり人を愛するためには自分を先に愛さないとダメだなと思って。

――自分を愛するというのは簡単なようで、実は難しいことですよね。

Sincere:はい。正直、私もできているのかと言われると自信はないですね。でも、そういう気持ちを持っていることが大事なんだと思います。友だちからもポジティブな反応をもらえました。


「ただ楽しいだけの曲は嫌だった」

――リード曲「Keeps Beating」は前作にも参加していたThe Burning Deadwoodsと共作した2ステップ・ナンバーです。この曲はどのようにして生まれたのでしょうか。

Sincere:The Burning Deadwoodsの作品が大好きなので、今回も一緒に曲を作ってもらいました。チームでミーティングしていくなかで、これまでとはちょっと違う、アップテンポな曲にチャレンジしてみようという話になったんですけど、私はひねくれ者なので、ただ楽しいだけの曲は嫌だったんです。この曲はみんなと一緒にワイワイしてるんだけど、同時に孤独感も感じる、みたいな。そういう不思議な気持ちを表現してみました。

――賑やかな場にいても、ふと孤独を感じる瞬間。これはSincereさんの実体験に基づいたものですか?

Sincere:クラブなどに行っても毎回のように感じますね。だから、最初のヴァースではクラブにいる自分を描写して、2ndヴァースでは友だちが家に来て、夜通し夢などを語り合っている状況を歌っていて。寂しさや物足りなさを感じてしまうけど、そういうことを繰り返して成長していくんだろうなって思います。クラブにいるときの高揚感や、友だちと一緒にいるときのワクワク感から、鼓動が高鳴っている状態を表す「Keeps Beating」という言葉をタイトルにしました。

――The Burning Deadwoodsのトラックに引っ張られた部分もあると思いますが、Sincereさんの歌い方も変化を感じるというか、新鮮だなと。

Sincere:日本語がナチュラルに聴こえるように意識しました。どうしたら変に崩したりせず、日本語の響きのままでカッコよく乗せられるかっていう部分を試行錯誤しましたね。The Burning Deadwoodsのおふたりにがっつりディレクションしてもらって、かなり変わったと思います。

――A.G.Oさんプロデュースの「Are you」でのソウルフルな歌い方も印象的でした。

Sincere:「Are you」は特に気に入っている1曲なんです。ギタリストのKiyomaroと私で元になるトラックを作って、A.G.Oさんにアレンジしていただきました。作り始めた当初は、Maroon5やAdeleっぽさを意識していました。誰もわかってくれないんですけど(笑)。

最初はサビもマイナーのままでいこうと思ったんですけど、めっちゃ暗い曲になってしまって。なので、サビだけメジャーな感じで開けるイメージにしました。

――リリックにはフラストレーションというか怒りというか、ネガティブな感情が表出していますよね。

Sincere:何か特定の出来事について歌っているわけではないんですけど、真実を知ろうともせずに、自分が思う正義や答えみたいなものを押し付ける人が多いなって感じることがあって。それはたぶん、自身の弱さの裏返しだったり、そういったスタンスでいることが楽だからっていう理由が大きいとは思うんですけど。

――それこそSNSやネットの海は、そういった発言や投稿で溢れていますよね。

Sincere:ただ、そこに対する怒りはもちろんあるんですけど、この曲では「あなたはそんなに弱くないでしょ?」「自分で考えて、自分の足で進めるはず」っていうことを綴っていて。最後には《Not that weak, are you…?(あなたはそんなに弱くないよね?)》って歌ってるし、ある意味ポジティブな曲なんです。みんながそれぞれの“Responsibilities(責任)”と向き合った方がいいよねっていう。

――A.G.Oさんのアレンジはいかがでしたか? ご自身のデモから大きく変わった点などを教えて下さい。

Sincere:基本的な構造やベースはあまり変えずに尊重してもらいながら、ビートやリズム・パターンがアップデートされました。

――途中で挿入されるアフロ・ビーツのような展開もカッコいいですよね。

Sincere:そうそう! 打ち合わせのときに「アフロ・ビーツを入れてみたらどうか」っておっしゃられて、「アフロ・ビーツってどんな感じだっけ……?」って思いつつ(笑)。実際にアレンジしてもらったトラックを聴いたらめちゃめちゃカッコよくて。自分では思いつかないアイディアが満載なので、「本当にありがとうございます!」っていう感じです。

――最後は佐賀県の宮島醤油によるショート・ムービーへの書き下ろし曲である「Slow Motion」。この楽曲の制作プロセスについても教えてもらえますか?

Sincere:ムービーの絵コンテを見ながら、テーマやリリックの内容を膨らませていきました。俳優を目指す2人のお話なんですけど、ひとりは途中で諦めて他の仕事に就くけど、もうひとりはずっと夢を見て頑張り続けている。でも、なかなか報われないというか、ゴールが見えない。そんなふたりが何年か後に再開するっていうストーリーで。

Sincere:特に後者、役者を続けている方の主人公はとても自分と重なる部分があって。彼はどんな気持ちで頑張っているんだろうとか、諦めてしまいそうにならないのかなとか、そういうことをイメージしながら歌詞を書きました。

私も音楽活動をやっていく上で、自分の思い通りにいかないことばかりだし、「○○歳のときにこれをやり遂げる」みたいな目標を細かく決めたこともあるんですけど、それも実現できないことが多くて。でも、ゆっくりかもしれないけど、前に進んでいるんだっていう意味を込めて、「Slow Motion」という曲ができました。ゆっくり歩いてるからこそ見える景色もあるはずだよねって。

――自分にも言い聞かせているような内容ですね。

Sincere:そうですね。私の周りにも音楽を辞めて別の道に進んだ人はいっぱいいるし、そういった人たちのことを羨ましく思ったこともあって。だから、他人事とは思えないですよね。そういう過去の感情を掘り起こすようにして書き上げました。

――サウンド面では3rd ProductionsさんとSoulflexのMori Zentaroさんがクレジットされています。制作はどのように進めたのでしょうか。

Sincere:トラックと基本的なメロディは3rd Productionsさんが作ってくれました。自分からは中々出てこないメロディだなと思ったんですけど、歌ってみたら意外としっくりきて。自分の新しい一面を引き出してもらえたような気もします。それこそ日本語にすごく合うメロディというか。新しい発見もありましたし、とても勉強になりました。

Mori Zentaroさんはトラックの最後のブラッシュアップを担当してくれました。各楽器の音色だったりを調整してくれて、その工程で印象もガラッと変わりましたね。


“Sincereらしさ”を見つめ直したい

――前回のインタビューの最後に、次は「外へ開けた作品を作りたい」とおっしゃっていて。今回の作品ではそれをしっかりと実現しているなと感じました。そんなSincereさんの今のムード、そして今後の展望についても教えて下さい。

Sincere:今作では色々なジャンル、サウンドに挑戦できたなと思っていて。新しいことにトライしていく姿勢は今後も引き続き持っていたいんですけど、それと同時に、自分のブレない核みたいなものを模索していきたいです。「“Sincereらしさ”とは何か?」という部分を改めて見つめ直したいなと。

――曲は書き留めていますか?

Sincere:今は結構書いてます。ただ、色々なジャンルに挑戦する楽しさを知ってしまったので、いわゆるR&Bと呼ばれる範疇からはみ出しそうな気がしています(笑)。だからこそ、Sincereっぽくするためのアイデンティティが必要なのかなと。

――自身の作品に取り入れる/取り入れないは関係なく、今興味の向いている音楽について少し教えてもらえますか?

Sincere:最近はインディ・ロックが好きで。HAIMやMUNAといったバンドをよく聴いています。あとはかなり昔の音楽になるんですけど、ヒカシューなど80年代っぽいサウンドにも惹かれますし、Jacob Collierも大好き。本当にバラバラで何の一貫性もなくてごめんなさい(笑)。

――ハハハ(笑)。インディ・ロックやJacob Collierというのが少し意外でした。生楽器の音に惹かれることは多いですか?

Sincere:多いです。バンドやってみたいなって思ってるくらい(笑)。

――それはライブの現場が増えたことが影響していそうですね。

Sincere:確かに。それこそSho(Asano)さんと一緒にライブをやると、スタジオ音源とは全然違う魅力が出るんですよね。フルバンドで歌ってみたいなという妄想をよくしています。もちろん、それが実現するかどうかはわからないし、心変わりしちゃうかもしれないんですけど。

あとはライブの面でも制作の面でももっと自立したいですね。自分でできることを増やしていきたい。それと同時に、自分らしさを見つけることができたらいいのかなって。

――なるほど。制限もどんどん緩和されてきましたし、今年はライブ活動もより活性化しそうですね。

Sincere:今年は去年以上に色々なところでライブをやりたいですね。フェスにも出てみたいですし、行くゆくは海外でもライブができたらなと考えています。そのためにも、前進し続けないとなって思います。


【リリース情報】


Sincere 『Just Living』
Release Date:2023.03.08 (Wed.)
Tracklist:
01. Keeps Beating
02. Sixteen, Fifteen (feat. oceanfromtheblue)
03. Are you
04. I’ll be
05. Like no one’s done
06. Slow Motion

配信リンク

■Sincere:Twitter / Instagram


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