FEATURE

INTERVIEW / SHO-SENSEI!!


ヒップホップでもロックでもなく、ただただ自分らしく。SHO-SENSEI!!に訪れた転機と、さらなる飛躍

2022.12.09

ラッパー、SSW、はたまたロック・シンガー……現在のSHO-SENSEI!!を表す肩書きはとても難しい。キャリアのスタートはラッパー。ABEMA『ラップスタア誕生』への出演でも注目を集めたのち、2019年末には「King!! Kong!! Kang!! Kong!!」といったバンガーでヒットを飛ばした。

その後、コンスタントに作品を発表していきながらも、徐々に音楽性が変化。いわゆるエモラップともリンクするロック的要素に加え、それだけに留まらない幅広いアプローチをみせてきた。しかし、今年2月にリリースされた3rdアルバム『THE BLUES』では作品全体を通してより強固な世界観を展開。明らかにそれまでとは何かが変わったような感覚を受けた。

アルバムからは「サテライト」がTikTokでバズを呼び、東京・渋谷WWWでのバンド・セットでのワンマン公演もソールドアウト。その勢いのまま、10月末には早くも4thアルバム『THE TELESCOPE』を上梓した。持ち前のメロディ・センスと感情を描写する言葉はさらに研ぎ澄まされ、ヒップホップ由来のリズムとロック的なサウンド、ダイナミズムの邂逅など、オリジナリティという面ではひとつの完成形のようにも思える。

傍から見ていてもこの1、2年で大きな変化を迎えたであろうSHO-SENSEI!!。今年2度目のワンマンをWWW Xで開催したばかりの彼の現在地に迫るべくインタビューを敢行した。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official


前作で掴んだ“アーティスト像”

――『THE TELESCOPE』は前作からおよそ8ヶ月という短いスパンでのリリースになりましたが、制作はいつ頃から進めていたのでしょうか。

SHO-SENSEI!!:『THE BLUES』が完成したのが1月くらいなんですけど、最後の曲を作り終えた次の日から制作を始めていました。アルバムを作ろうっていうつもりではなかったんですけど、単純に曲は作り続けていて。2月には「望遠鏡」ができて、これは次のアルバムの核になりそうだなと感じました。

――noteにも書かれていましたが、『THE BLUES』はこれまでにない大きな反響を呼んだ作品になったと思います。今振り返って、あのアルバムは自身のキャリアにおいてどういった立ち位置になったと思いますか?

SHO-SENSEI!!:『THE BLUES』はストリーミングで出した作品としては3作目なんですけど、どこか1stアルバムのような感覚もあります。だから、『THE TELESCOPE』は2ndみたいな気持ちで制作しました。それ以前のアルバムはスタイルを模索しながら曲を作って、それをまとめたっていう感覚なんですけど、『THE BLUES』のときに「あ、これや」っていうのを掴んだんですよね。

――その何かを掴んだ感覚というのは、これまでになかった体験ですか?

SHO-SENSEI!!:曲を作った瞬間とかに「これや!」ってなることはあったけど、翌日とかになるとその感覚も消えちゃうことが多くて。作品全体としての方向性が明確に見えたのは『THE BLUES』が初めてですね。曲だけじゃなくてアートワークやMV、SNSでの発言まで、SHO-SENSEI!!としてのアーティスト像みたいなものが定まった気がして。

――では、『THE TELESCOPE』の核になりそうだと感じた「望遠鏡」がどのようにして生まれたのか、教えてもらえますか?

SHO-SENSEI!!:4小節くらいのギターを(プロデューサーの)10pmが弾いてくれて、それを聴いただけでビビっときたんですよね。そのときは深夜で10pmも疲れてたので、彼が寝てる間にそのギターだけでループを作って構成を考えました。その時点でこれはめちゃくちゃいい曲ができるなっていう確信があって。ドラムもどういう感じで入れるかも浮かんできて、その日の明け方には大部分が完成しました。

――フックの《ねえ ねえ ねえ》も印象的で、特にヒップホップ畑出身者としては勇気が要ることだったんじゃないかなと思いました。

SHO-SENSEI!!:その通りなんですけど、当時はゾーンに入ってて気づかなかったんですよね。普通の状態だったら採用しなかったかもしれません。


盟友・10pmの進化が貢献したサウンド感

――『THE TELESCOPE』は全曲10pmさんが手がけていますよね。彼は近年のSHO-SENSEI!!の大部分の曲を手がけていますが、アルバム全体をひとりで担当したのは今回が初ですよね。

SHO-SENSEI!!:そうですね。でも、それもすごく自然な流れなんです。これまでは他の方にギターを弾いてもらったり、もしくは別のビートを買って組み替えたりしていたんですけど、10pmのギターがめっちゃ上手くなったのと、ベースまで弾けるようになったので、その必要がなくなったんですよね。よりバンド・サウンドに近づいたのは、彼のスキルの上達も大きく影響していると思います。

――なるほど。

SHO-SENSEI!!:10pmはとにかく1日中ギターとベースの練習してるんです。その合間に息抜きとしてビートを作る、みたいな。なので前作リリースして以降の半年くらいでめちゃめちゃ進化してて。とにかくずっと何かしら音楽に関係することをやってますね。

印象的だったのは、彼の家で朝から夜までぶっ通しで制作していたとき、一回ちょっと休憩しようってことで僕は別の部屋で友だちと電話してたんです。それが終わって戻ってきたら、あいつ好きなバンドの曲を聴きながらベースの練習してて。楽曲制作の休憩中に楽器を練習してるっていう(笑)。楽しくてしょうがないというか、夢中なんだと思います。

――10pmさんはSHO-SENSEI!!にとってはもはや欠かせない存在ですよね。

SHO-SENSEI!!:バンド・メンバーに近いというか、ユニットになってもいいんじゃないかってくらいの関係ですね。でも、別に音楽だけじゃなくて、普通に笑いのツボとかも近くて気が合うんですよね。だから……シンプルに“仲良し”っていう感じです(笑)。

――今作で言えば、「始発列車」「ハナレバ」辺りは特にバンド・サウンド感が強いというか、ギターの質感が印象的です。これも10pmさんのスキルアップが影響しているのでしょうか。

SHO-SENSEI!!:そうだと思います。「始発列車」は最初、ブリッジの部分に出てくるメロディだけのループで作ってたんだんですけど、「なんかブリッジっぽいな」と思って。「ジャカジャカ系のギター入れたくない?」って話してたら10pmが弾いてくれて。その結果、めっちゃバンドっぽくなったっていう感じなんです。

あと、作ってるときに気づいたんですけど、「始発列車」は僕らの曲の中で初めてコード・チェンジする曲になりました。バンド系の曲ではよくあると思うんですけど、ラップ系の曲ではあまりないと思うし、自分たちの個性にもなるのかなって。今回のアルバムでは他にもコード進行が途中で変わる曲があります。

――「電子レンジ」のピアノの音色も新鮮で。ああいったアプローチもこれまではなかったような気がします。

SHO-SENSEI!!:「電子レンジ」は途中で出てくるギターの部分を10pmが弾いてくれて、その素材を僕がピッチを変えたりしてイジってループを作ったんですけど、途中でギターの音色が曲の雰囲気に合ってないなと思って。ただ、10pmはその当時バンドにハマってて「ピアノ弾きたくない」って言ってたので、「じゃあ、奇跡的にピアノ弾く気分になったら仕上げよう」って言って、本当に半年くらい寝かせました(笑)。

――(笑)。

SHO-SENSEI!!:僕と10pmはアニメがめっちゃ好きで、サントラも聴くんです。だからある日一緒にサントラを聴いて、「このピアノめっちゃいいな」「今だったらピアノいけるんじゃない?」っていう会話の流れでピアノ弾いてくれて。それでやっと完成させました。

僕もそうなんですけど、基本的にやりたくないときに無理やり捻り出しても、70%くらいのものにしかならないと思ってて。僕が10pmに求めるのは120%のものだから、やっぱり気分が乗らないときはやりたくない。そこは妥協せずに、自分たちの気分が乗るまで待ちますね。

――「メトロポリタン20,905」はギター + トラップなまさにSHO-SENSEI!!印な1曲ですが、ワンマンで披露するときにAMBRさんについても話してましたし、AMBRさんのサンプリングとも取れる部分があります。差し支えなければ、この曲がどのようにしてできたのかを教えてもらえますか?

SHO-SENSEI!!:みんな知ってると思うけど、AMBRは今年開催予定だったツアーをキャンセルして以降、SNSや音楽から離れていて。ただ、僕は仲いいし、個人的にもちょくちょく連絡を取っていて。彼に会いたい気持ちがフッと湧いてきたときに作った曲です。これといった出来事があったわけではないんですけど。

――《もうこの地球とも/おさらばだな》というリリックが耳に残ったので、実はAMBRさんについて聞くのが少し不安だったんです。

SHO-SENSEI!!:元気にやってるはずです。僕にウソをついてなければ(笑)。

――これもワンマンでおっしゃっていましたが、SHO-SENSEI!!の曲には飛行機や空、星といったモチーフが頻出しますよね。これも『THE BLUES』以降の特徴と言えると思うのですが、ご自身ではこれをどう分析しますか?

SHO-SENSEI!!:シンプルに僕は目で見たものをリリックにすることが多くて。普段から日記を付けているんですけど、その内容は「チャリ漕いだ」「空が青かった」っていう感じで、小学生レベル(笑)。以前住んでいたエリアは空が開けていた場所で、よく考えながら空を見ることが多くて。自分も意識的に空が綺麗な時間帯を狙って外に出ることも多かったし、それが自然とリリックに出てるんだと思います。

――そこから引っ越したんですよね。環境の変化はリリックにも影響すると思いますか?

SHO-SENSEI!!:変わってくる気がしていますし、そろそろ次の段階に行くタイミングなのかなとも考えています。目で見たものだけじゃなく、もっと他の要素で曲を作れるんじゃないかなって。まだ引っ越したばかりだし、自分でもどうなるかわからないんですけど。

――リリックで言えば「Diamond」も印象的でした。これもnoteに書かれていましたが、「Hundred Thousand」でポロッと出てしまったタトゥーについて、「Diamond」では明確に主題にしていますよね。

SHO-SENSEI!!:もちろん親にバレたからっていうのもありますし、だからこそタトゥーを入れるということについてより向き合うようになりました。フックの《心が弱くて増えるタトゥー》というラインは親から似たようなことを言われて浮かんできた言葉なんですけど、自分と自分の周りのタトゥー入れてるやつらのこと考えるとしっくりきたんですよね。最初は別に曲にしようとは思ってなかったんですけど、ある日珍しくお酒飲んで酔ってるときに1曲作りたくなって。そのときにふと出てきたのが《心が弱くて増えるタトゥー》というラインなんです。

――そういう作り方でできた曲は他にもあるのでしょうか。

SHO-SENSEI!!:「Diamond」以降、成功例はないです。ただ声が潰れて無駄な時間を過ごすだけなので、やめようと思ってます(笑)。


「バンド・サウンドはあくまでも表現方法のひとつ」

――改めて、『THE TELESCOPE』について、自身の手応えや反響について、どのように感じていますか?

SHO-SENSEI!!:まだリリースしてあまり経っていないんですけど(取材は11月初旬)、これまで以上に広いところに届くんじゃないかなっていう予感がしています。ヒップホップ/ラップを好きな人たちだけじゃなくて、もっとマスなところに。

――それは先日のワンマンに行ったときにも感じました。本当に多様な人たちから支持されているんだなと。今年は2回ワンマンを開催しましたが、改めてその感想などもお聞きしたいです。

SHO-SENSEI!!:自分の反省や課題は一旦置いておいて、自分の予想を上回る熱量が感じられてすごく嬉しかったです。しかも勢いやノリっていう感じじゃなくて、シラフで言葉と音を受け止めてくれてる感じというか。それはめちゃくちゃモチベーションに繋がりました。これからはこの密度と熱量を維持したまま、どれだけ上にあがれるかっていう部分を考えています。

――今チラッとおっしゃっていましたが、近年のSHO-SENSEI!!はヒップホップやラッパーというカテゴリから大きく逸脱する作風、活動を展開しています。『THE BLUES』以前からもロック的要素の強い曲を多く発表していましたが、ご自身の意識が大きく変わったタイミングなどはありましたか?

SHO-SENSEI!!:AMBRとTHE DAYDREAM BELIEVERっていうポップパンク強めのユニットを組んで、作品を発表したときに、自分たちが尊敬している人たちからあまり評価してもらえなかったんです。単なる焼き増しというか、新しい音楽ではないと。自分としてはそれを結構重く受け止めて、しばらくは上手く曲を作れなくなったし、この時代にどういう音楽を作るべきなのかっていうことを真剣に考えました。

散々悩んだんですけど、その頃純粋に好きで聴いてたのがロックで、結局「周りにどう思われてもいいや」っていう気持ちになりました。そのときに作ったのが前作に収録されている「Legend」っていう曲です。

SHO-SENSEI!!:以前は周囲と連帯して、シーンやコミュニティとしてみせた方が伝わりやすいんじゃないかって思う部分もあったんですけど、そういう考えもスッとなくなって。それぞれが自分のやりたいことをやるべきだよねっていう風に意識が変わったのはそこら辺からですね。アルバムもフィーチャリングなしで作るし、ライブもクラブ・イベントじゃなくてワンマンでやる。今はその強度がどんどん高くなってきている感じです。

……正直、今の僕はバンド・サウンドっていう部分を重要視しているって思われてる気がするんですけど、実はそれはどうでもよくて。僕が何を言っているかの方が大事だし、そこにフィットするサウンドだったらなんでもいいなって。バンド・サウンドはあくまでも表現方法のひとつだと思っています。

――でも、引き続きリスナーとして興味を持っているのはロックが多い?

SHO-SENSEI!!:最近めっちゃヒップホップが好きで聴いてます(笑)。もちろんロックも大好きですけど、どっちの要素も上手く取り入れているアーティストが好きですね。それは自分の中ではオルタナとかエモラップとはちょっと違くて。

――『THE TELESCOPE』を聴いてもヒップホップの要素がなくなったとは全然思わなかったので、今の話はすごくしっくりきます。

SHO-SENSEI!!:アルバムをちゃんと聴いてくれたらわかると思うんですけど、『THE BLUES』も『THE TELESCOPE』もバンド・サウンドが多いしめっちゃ歌ってるけど、ノリはかなりヒップホップ的なんですよね。このノリがもっと伝わるような曲を作っていきたいです。


枠に収まらない、唯一無二のアーティストを目指して

――今後の自身の歌唱スタイルについてはどう考えていますか?

SHO-SENSEI!!:常に新しいことにも挑戦したいなとは思いつつ、ボーカルやラップのスタイルを広げるというのは簡単なことではないので、じっくりと研究していきたいです。別に今でもバンガーなヒップホップをやろうとすればできるけど、今のSHO-SENSEI!!っぽく落とし込むということが大事だと思いますし、その上で新しいことをやるっていうのはひとつ上のレベルの話になるなと。新居の制作環境が整ったら色々と試したいですね。

――他に今後やりたいこと、挑戦したいことは見えてきていますか?

SHO-SENSEI!!:ライブにおけるパフォーマンスの幅を広げたいですね。バンド・セットだけでなくアコギで弾き語りするとか、もっとトラップノリのパフォーマンスをするとか、曲によって細かく表現方法を分けてもいいのかなって。

――SHO-SENSEI!!の活動における目標や夢のようなものはありますか?

SHO-SENSEI!!:何かの枠に入るんじゃなくて、他の誰とも違うアーティストになりたいと思っています。何ていうか、今になってRADWIPMSのすごさを改めて感じるんですよね。ロックが好きでラッドの名前を挙げるっていう感じよりかは、きっとみんな「ラッドが好き」っていう感じじゃないですか。X(XXXTENTACION)が好きだったときも別に「エモラップが好きだから」っていうわけじゃなかったし。

国内で言えばguca owlさんやTohjiさんもそういった唯一無二の魅力があるアーティストだと思います。ヒップホップが好きで、その中のひとりとしてSHO-SENSEI!!の名前が挙がるんじゃなくて、「SHO-SENSEI!!が好き」って言ってもらえるようなアーティストになりたいですね。

あとはこのスタイルを保ったまま、もっとメジャーなフィールドにも行けたらなと。リリックで「東京ドーム」って歌ってる曲が2曲もあるので、やっぱりあと何年か後にはそこでライブしとかないとなって。


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※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます。


【イベント情報】


SHO-SENSEI!! 対バン・ツアー

日時:2023年1月6日(金) OPEN 19:00 / START 20:00
会場:大阪 UMEDA CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥3,500
出演:
SHO-SENSEI!!
yonige

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日時:2023年2月7日(火) OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京 SHIBUYA CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥3,500
出演:
SHO-SENSEI!!
Age Factory

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主催:SHO-SENSEI!!
企画/制作:サンライズプロモーション東京
お問合せ:サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)

・チケット
一般発売:12月10日(土)12:00〜 e+ / ぴあ / Lチケ

※整理番号付き
※未就学児入場不可


【リリース情報】


SHO-SENSEI!! 『THE TELESCOPE』
Release Date:2022.10.26 (Wed.)
Label:SHO-SENSEI!!
Tracklist:
1. 始発列車
2. 国道
3. 電子レンジ
4. メトロポリタン20,905
5. Diamond
6. サザン
7. Orion
8. 望遠鏡
9. ハナレバ
10. サテライト (bonus track)

※デジタル/CD

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