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INTERVIEW / Jeff Mills(Talk about Planets The Celestial Body Installation)


“TDME”にてインスタレーション“PLANETS”を披露するJeff Mills。その狙いやイベントへの想いを語るオフィシャル・インタビューが到着

2017.11.28

Jeff Millsは“Planets The Celestial Body Installation” の最終チェックのため、東京の東部にある作業場所に到着した。

この創作は、長年活動を続けるエレクトロニック・アーティストであるMillsが今年作り上げた、太陽系をとりまく9つの惑星をテーマにダンスとクラシック音楽を融合させたアルバム『Planets』の楽曲を、物理空間に盛り込んだものだ。
これらの楽曲で使われた楽器は、それぞれ別々のスピーカーから鳴らされ、観覧者にそれぞれの装置の間を歩かせることで、個別の楽器の音により集中して聴くことができる。

Mills自身は、これから筒型のスピーカーがならぶ列の中を歩き、渋谷ヒカリエ・ホールで11月30日(木)〜12月1日(金)に開催される“Tokyo Dance Music Event(以下:TDME)”で披露するインスタレーションが、正しいサウンドであることを確認する。

このインスタレーションの立ち会いチェックの前に、Millsはこの新しいフィジカルなプロジェクトや、今年の“Planets”に関するツアー、そして彼のキャリアに日本がいかに貢献したかを語ってくれた。


――2017年のほとんどを“Planets”のツアーに費やしていました。ここまでの公演はどのような感じでしたか?

Jeff Mills:どれも良いものでした。全ての公演が満席で売り切れになったと思います。私たちはツアーの最初からかなり多くのことをこなしてきました。プロジェクトがリリースされた直後から、立て続けに7公演を行いました。そして、日本以外の国で行なっていた公演を日本にも持ってきたのです。それはとても意欲的なプロジェクトでした。

さらに付け加えると、他のアーティストとのパフォーマンスも行なってきました。作品に9つの惑星の違う解釈を加えるというコンセプトを持ち込んだのです。“Planets”と太陽系のアイデアが、できるだけ多くの人に触れられるよう、ひたすらたくさんの仕事をこなしました。

――具体的に、日本公演はいかがでしたか?

Jeff Mills:どの公演も首尾よく終えられて良かったです。これは、日本でクラシックとエレクトロニックを融合させたコンサートを行うために、とてもとても多くの年月をかけてプランニングした結果でした。これらのプランを立てる上でも幸運に恵まれました。

――“Planets”をよく知らない方のために、このプロジェクトはどこから始まったのかを教えてもらえますか? 探求したかったのはどのようなテーマなのでしょうか?

Jeff Mills:“Planets”の目標は、クラシックとエレクトロニック・ミュージックが区別つけられないくらいにまでミックスすることでした。おそらくそこから、何かが違って何かが新しいもの――この時代を描写した何かとして認知されるかもしれません。前世紀のものではなく、ここ何十年かのものでもありません。まさに全てのエレクトロニック・アーティストとクラシックの演奏家の努力が生んだ結果なのです。私が強調したいのは、基本的にはこの進化の過程であり、そこに私たちがどのようにして到達したか、です。それはいくつかの点では(グスターヴ・)ホルストの「惑星」にインスパイアされたものですが、私のアイデアは、全く違うサウンドトラックを作り上げることにありました。最初はホルストと彼によるギリシャ神話を用いて9つの惑星を説明する物語――その時代は6つの惑星でしたが――を引き合いに出すことを考えていましたが、私はどのようにトラックを構築したり、そのサウンドがどのようなものか、科学的事実に基づくことに興味が向かっていきました。

――クラシック音楽とエレクトロニック・ミュージックを繋ぐ橋を築くために多くのことを成し遂げてきました。このようなサウンド・インスタレーションは、その活動に相応しいものですか?

Jeff Mills:このインスタレーションは、まさにそういったコンセプトとアイデアを大きく広げるものでした。ただ生のオーケストラを差し替えたのではなく、“Planets”のプロジェクトが本当はどんなものなのかをとてもよく表現したものです。コンセプチュアルな視点でいうと、これらのスピーカー全体と、その間を歩けるようにしてより没入できる方法で体験するというアイデアです。そのアイデアは、ほとんどの人が実際には体験できないような全く新しいものーオーケストラの中を歩いたり、接近したりするようなことです。それは“Planets”のコンセプトをかなり広げてくれました。そして、このインスタレーションがもっと多くの場所で体験できれば、より多くの人に理解してもらえる手助けとなると考えています。

――このインスタレーションのアイデアは、どこから一緒になっていったんですか?

Jeff Mills:それは“Planets”のプロジェクトを知る日本の人々からのオファーでした。そしてこれを具現化するために広範囲にわたる制作に入りました――編集とミックスダウンの全てはアビーロード・スタジオで行われ、必要な物は揃っていたので、アルバム『Planets』の楽曲をインスタレーションに向けて翻訳・変形することができました。インディペンデントに制作されたものなので、権利処理の問題もありません。とてもやりやすかったです。

――過去に“Sonar”など他のインスタレーションにも参加しています。このインスタレーションを手がけるためのモチベーションは一体何なのでしょうか?

Jeff Mills:あなたが惑星などの題材について話す時、他の世界について自分自身がその一部であるかのように話すと思います。今回のようなインスタレーションがの効果に、このような効力があるかどうかは極めて重要です。信用できるものである必要があります。できるだけ感覚に深く作用するべきものであります。私が思うに、スピーカーの量、空間の広さ、その表現の仕方、これらによって、リスナーがどのスピーカーにも向かって歩いて行けて、音楽家が何を演奏しているかを体験することができる要素が整っています。そして聴こえるものは全て科学的事実に基づいているのです。ただ、オーケストラがベートーヴェンを演奏しているのではありません。そこにあるのは計算であり、方程式であり、音楽家が実際に演奏しているものです。おわかりのように、これはとても入念に作り込まれたインスタレーションです。きっと効力があるでしょう。

――このインスタレーションが体験できるのは、今月終わりにある“TDME”だけとなっています。日本に長い間“Amsterdam Dance Event”のようなカンファレンスがなかったのはなぜだと思いますか? そして、このイベントが東京のコミュニティーにもたらす利点は何だと思いますか?

Jeff Mills:私が思うに、異なる場所からひとつの場所に人々を集めるイベントは――たとえ国内だけであっても――どれもよいものです。人々が集う機会を作ろうというアイディアだけでも前向きです。それは簡単なことではなく、もしかしたら多くのフェスティバルがずっとは続かない理由と同じかもしれません。実現には市場の内側や外側で、多くの協力が必要だし、お金もたくさんかかるし、多くの労力やリソースも注ぎ込みます。時間もかかります。しかし、実現すると、良いことはたくさんある。私のキャリアの中で、エレクトロニック・ミュージックはまさにこのようなカンファレンス・フェスティバルからスタートしました――80年代後半にニューヨークで開かれた“New Music Seminar”です。

“TDME”は、私が覚えている限りでは東京で最初に行われたエレクトロニック・ミュージックのフェスティバルというわけではありません。私が覚えているのは――“Tokyo Music Days”みたいな名前で――90年代の話ですね。そこにはこういった博覧会を起こそうという、いくつかの新しい試みもありました。タイミングは重要です。だけど、産業が繁栄するにつれ、活動のための一連の流れができてきました。そのおかげで、何かについて話をしたり発表する場所を見つけられるようになりました。何かを説明をするということは、それを引き立てることにもなります。

――長い年月の中で、日本やその音楽シーンは、あなたにどのような影響を与えましたか?

Jeff Mills:私の知るプロデューサーやDJは、それぞれ違ったストーリーを持っていますが、私にとって、長い長い年月の間、日本は実験の場でした。私は何十年も様々なアイデアを日本に持ち込んでテストしています。日本で上手くいったら、ヨーロッパに持っていきます。本当に色々な意味で実験場であったし、今でもそうです。なぜなら、こういった試みに深い関心を持つ人が一定数いるので、私はいつも日本に来て新しい何かを仕込みたいのです。もしくはそれが音楽ではなくても、他の何かになるでしょう。
私は日本に学びにも来ています。それは私のキャリアの過程でとても大事な要素です。そして多くの音楽家も同様でしょう。ある意味、いくつかの点ではこれがエレクトロニック・ミュージック産業を形作っていると密かに思っています。ヨーロッパでは上手くいかなかった時でも、日本はいつも一貫して支えてくれました。他の数多くのアーティストにとっても、頼りにできたのは日本が献身的だからです。


【イベント情報】

“TOKYO DANCE MUSIC EVENT”
日時:2017年11月30日(木)・12月1日(金)・2日(土)
各日 11:00 – 19:00
会場:渋谷ヒカリエ ヒカリエホールA ホールB 、渋谷周辺のクラブ(後日発表)
・カンファレンス(国際会議):ヒカリエホール ホールA/11月30日(木)・12月1日(金)/11:00 – 19:00

■オフィシャル・サイト:http://tdme.com


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