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INTERVIEW / iri


新しさにも強さにも囚われない。iriが自分に自然体でいることを許す新曲「24−25」

2020.01.22

iriのニュー・シングル『24−25』は、24歳から25歳へと年齢を重ねていく過程の自身の心境を、ゴスペル調のコーラスをバックに歌ったもの。

かつて聴く人を鼓舞することに注力したときがあったり、ダークな印象の楽曲が多いときがあったりと、芯はありながらも時期によって少しずつバランスが変化してきた彼女の最新のモードとは。これまでのインタビューでは語ってこなかったような本音を通して、今のiriを探る。

Interview & Text by Yugo Hiragino
Photo by 遥南碧
Stylist by 入江陽子(TRON)
Hair & makeup by クジ メグミ(LUCK HAIR)


「新しさ」に囚われるのをやめた

――今回はどのように曲作りを進めていったんでしょうか? 原型となるものはiriさんから?

iri:いえ、作業を始めたときに私の中にあったのは大まかなイメージだけですね。それをトラック・プロデュースを手がけてくれたESME MORIさんとすり合わせて、ディスカッションしながら進めていきました。MORIさんは前から一緒にやらせてもらってきてるので話しやすいし、ある程度私の好みとか、大事にしていることもわかってくださってるので、やっぱりやりやすいです。

――これまでに錚々たるビートメイカー/プロデューサーからトラック提供を受けていますが、iriさんの場合、どなたと組んでもとお互いの持ち味が衝突せずにうまく同居している印象があるんですが、そのために意識していることはありますか?

そうですね、なるべくお願いすることはトラックだけに絞ってますね。メロディもお願いしてしまうとかなりその方の作風に寄ったものになると思うんですけど、私はメロディと歌詞は自分で作りたいので。だからこそいいバランスでお互いの持ち味が同居しているんじゃないかと思います。

――今回リファレンスにした曲や、影響を受けたアーティストはありますか?

iri:明確にこれというのはないんですけど、今回はゴスペルの要素を取り入れたトラックのヒップホップをやりたいというのが軸にありました。なので、普段ゴスペルを歌っているコーラスの方々に入ってもらったりして。こういうことをやるのは初めてでしたね。

――今回の曲は24歳から25歳へと歳を重ねていく中で感じたことを歌ったものということですが、ご自身として大きな節目になった1年だったのでしょうか。

iri:そうですね、自分と向き合う年って感じでした。曲を作ってライブやフェスに出て、といったところは今まで通りなんですけど、もっとこういう曲を作りたいな、本当はこういうライブがやりたいなと試行錯誤することが多かったと思います。

例えばライブでトラックを流して歌っている曲も生バンドでやってみたいとか。セッション感のあるライブ・アレンジで。

――海外ではここ数年、ラップ/ヒップホップのアーティストがバンドを従えてライブ・パフォーマンスすることが多くなってきた印象がありますが、そういった海外のシーンを意識して?

iri:いえ、あんまり誰がやってるからっていうのは意識せず、純粋に自分に合うと思う、やりたいスタイルって感じです。そういうところも含め、とにかく自分が自然体でいられるにはどうすればいいかをよく考える年でした。

――……それは裏を返すと、あまり自然体でいられなかった時期もあったんでしょうか?

iri:そうですね……。一時期、結構無理してたなって今になって思うんです。ありがたいことですけど、リスナーの方からの期待をプレッシャーに感じてしまっているところがあったんですよ。iriは次誰と組んでどんなトラックの曲をやるんだろう、聴いたことない最新のカッコいいものを出してくるんだろう、みたいな。それに追いついていくのがしんどくなってきちゃって。

別に元々、今までにない新しいサウンドを作りたいっていう気持ちは全くなくて、たまたま自分から出てきたものが最新の海外のトレンドと近い要素を持っていたってだけなんです。それよりも純粋に自分がカッコいいと思う曲を作って、自分の言いたいことを言って、それをみんなとシェアできれば幸せ、っていうスタンスなんですよ。新しさに疲れたっていうか、意味を見出していなかったし、そういうがんばりは自分に合ってないって思って。この24歳から25歳にかけての時期に、自分はどんなものが好きなのかってもう一度じっくり考え直したっていう感じです。


「Watashi」の頃からの「強さ」の変化

――自分と向き合う、というと「Watashi」を想起するんですが、あの頃とはまた歌詞のモードが違いますよね。別のインタビューで「Watashi」の頃は聴く人を元気づけるために強くあろうとしていたけど、後になって「自分はそんなに強い人間じゃないよな」と気づいた、といったことをおっしゃっていましたが、今はどうでしょう?

iri:そうですね、そういう気づきを経て前回の『Shade』というアルバムで思いっきり自分の影の部分を前面に出して、一周した感じがあります。今はまた『Shade』のダークなムードをちょっと抜けた感じで、もう1回こう、聴いていて前向きになるようなものにしようというのは意識したところがあるかもしれないです。

まあ本当に、自分が無理せず表現し続けていくにはどういう風にしたらいいかっていうのは大事に考えるようになりました。

――そこが「Watashi」の頃との大きな違いだと思うんです。「Watashi」では“囚われない”、“もう譲らない”、“戸惑いもないまま”と揺るぎない強さを感じさせる言葉選びだったものが、今回の「24-25」では“まどろむのも無理はないよ”、“ダサいくらいでいい”と、弱さを認めて前に進む強さを感じさせるというか。

iri:そうですね、まさに。駄目なところもそれはそれでOK、全てを受け入れつつやっていこうってモードになってきました。「まあそれも自分だ」っていうスタンス。それが個性だと受け入れて、引き受けて、って感じですね。

iri:さっきのプレッシャーの話にも繋がるけど、新しいサウンドじゃなくても全然よくて、自分がいいねって思える曲を作ろうって今思えてきたところなんです。今回の新譜はある意味それを表明するというか、好きにやるぜっていう宣言みたいなところがあるかもしれないです。

――これまで話してこられていないようなお話が伺えた気がします。あとこれはちょっとした確認なんですが。いくつかの別メディアでこの「24−25」について“女性賛歌的な”曲だって書いてあったんですけど、そういうジェンダー的なことは意識されて……?

iri:いや、してないですね(笑)。

――ですよね(笑)。どこを指してこう書いてるんだろうって疑問だったので確認できてよかったです。不用意にこういった意味に結びつけることによる弊害もあるので、よろしくないなと思ってました。

iri:あるんですよね、こういうの。本当にやめてほしい(笑)。この曲には特にそういう意図はないです。

――では、そういうんじゃないってはっきり書いておきますね。


弾き語りの頃から遅れてた

――ここでちょっと、iriさんに会えたら訊きたいとずっと思っていたことを伺います。DTMが普及してから、グリッドにぴったり正確なタイム感をよしとする流れが強くなってきているように思うんですが、iriさんは絶妙に遅れて乗る印象があって。

iri:そうですね、昔から言われてます。

――いつ頃からこういうタイム感になったんでしょう? ギター弾き語りの頃はやっぱり、ギターのストロークに合ったタイム感でしたよね?

iri:私、弾き語りの頃から遅れてるって言われてましたよ(笑)。

――へえ!

iri:昔から遅れて乗るようなブラック・ミュージックを好んで聴いていたので、染みついてるんだと思います。やっぱり核というか、今でも好む曲って基本はそういう感じなので。

――最近のフェイバリットはどんな音楽ですか?

iri:今、ファンクとかブルーズとか、土臭い感じのものに惹かれてます。「24−25」の後にリリースが控えてるアルバムにも、そういう要素は入ってくると思います。

あとは最近ジャンルをかけ合わせたものをよく聴いてるんですよ。ボサノバとヒップホップとか、メタルとトラップとか。それで自分でもやってみたいと思ったって感じです。

――以前からiriさんはひとつのジャンルにこだわらないとおっしゃってますよね。

iri:そうですね。かっこいいなって思ったら聴くので、けっこう広くいろいろ好きです。なので、自分の曲でもいろいろ調合してやりたくて。

――では最後に、次のアルバムの内容がどんな雰囲気のものになるのか、ヒントをいただければ。

iri:『Shade』で一度暗いほうにいったのもあって、次は結構意識して明るいムードにしようと思ってます。割とハッピーな曲ばっかりになるんじゃないかな。さっき言ったような泥臭い雰囲気のもの、ボサノバとヒップホップをかけ合わせたようなものもありつつ、ライブで客席と一緒に楽しめるような曲も用意してます。

――楽しみです。今日はありがとうございました。


【リリース情報】

iri 『24-25』
Release Date:2020.01.22 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
[完全生産限定盤(CD+Tシャツ)] VIZL-1718 ¥4100 + Tax
[通常盤(CD)]VICL-37517 ¥1100 + Tax
[7インチ・アナログ] VIKL-30013 ¥2000 + Tax
Tracklist:
01. 24-25 
02. SUMMER END
03. Wonderland (Seiho Remix)

※完全生産限定盤、通常盤初回生産分は紙ジャケ仕様
※7インチにはA1.「24-25」、B1「SUMMER END」収録

配信URL


【イベント情報】

『iri Spring Tour 2020』

日時:2020年4月12日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:宮城・仙台 darwin  

日時:2020年4月18日(土) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:岡山・YEBISU YA PRO

日時:2020年4月19日(日) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:静岡・LIVE ROXY

日時:2020年4月26日(日) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:愛知・名古屋 DIAMOND HALL

日時:2020年5月16日(土) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:北海道・札幌 cube garden

日時:2020年5月21日(木) OPEN 18:30 / START 19:15
会場:大阪・なんばHatch

日時:2020年5月23日(土) OPEN 18:00 / START 18:30
会場:香川・高松DIME

日時:2020年5月24日(日) OPEN 16:30 / START 17:00
会場:愛媛・松山サロンキティ

日時:2020年5月30日(土) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡・DRUM LOGOS

日時:2020年5月31日(日) OPEN 16:30 / START 17:30
会場:広島・CLUB QUATTRO

日時:2020年6月7日(日) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:東京・新木場STUDIO COAST

料金:
スタンディング – 前売 ¥4,200 / 当日 ¥4,700 (各1D代別途)
2階指定 – 前売 ¥4,700 / 当日 ¥5,200 (各1D代別途)※

※4/26 名古屋 DAIAMOND HALL、5/21 なんばHatch、6/7 新木場STUDIO COASTのみ

チケット一般発売:2月1日(土)

iri オフィシャル・サイト


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