YOCOとMAIYA、幼馴染からなるユニット・illiomoteが新作EP『side_effects+.』を7月27日(水)にリリースした。
昨年2月に2nd EP『Teen Trip Into The Future』をリリースして以降、ELAIZA(池田エライザ)への楽曲提供やCM音楽、TV番組のエンディング曲への起用、そして地上波への出演など、一気に活動の幅を広げた印象のあるilliomote。今作ではディープ・ハウス調の「A.O.U」や2ステップを下敷きにした「Dark_Eyes.」などダンス・ミュージックの要素が色濃い前半と、そこから一転してフォークやロック・テイストを前面に出した後半。これまでのテイストを引き継ぎつつも新たなポテンシャルを提示する、盤石な作品と言えるだろう。
今回はそんなEPの制作背景に迫るべくインタビューを敢行。傍から見れば軽快に歩みを進めているように思える彼女たちだが、昨年は停滞を感じていたという。そこからの立て直しを経て、今まさに変化の岐路に立つ2人の現在地をお届けする。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Keigo Sugiyama
停滞からの脱却
――去年から外部仕事やメディア露出も増えた印象です。なかなかに忙しい1年を過ごしたのではないでしょうか。
YOCO:私たちの実感としては逆で。自分たちの曲を出せてなかったので、一時停止しちゃってたなっていう感じなんです。
MAIYA:でも、楽曲提供とかCM楽曲を担当させてもらったりとか、ミュージシャンとして成長した部分はあるよね。
YOCO:仕事を覚えたというか。少し大人になったと言えるのかも(笑)。
MAIYA:EPリリース直後はラジオもたくさん出させてもらって、NHKにも出演させてもらったし。待ち時間の間に寿司をめっちゃ食べたよね(笑)。
YOCO:いい思い出だよね(笑)。
――これまでとは異なるフィールドでの活動を経験して、率直にいかがでしたか?
YOCO:普段はゼロからイチを作るのに対して、楽曲提供やCM楽曲はテーマやコンセプトをもらって、そこから膨らませていく。これも音楽のひとつの形だなって感じて、楽しかったですね。しんどいこともたくさんあったけど(笑)。
MAIYA:初めて体験することばっかだったもんね。でも、(マネージャーへ向けて)ちゃんとこなしてたよね?
MAIYA:去年は大変で「ウワー!」ってなってたけど、今降り返ってみるとやってよかったなって思いますね。それによって自分たちの引き出しも増えたと思いますし、精神的にもタフになれた。
――人間的にも成長できたというか。
YOCO:ちょうど私たちの同世代の子が就職とかして働き始める時期だったので、自分たちも同じような体験ができたのはよかったよね。
MAIYA:そうだね。大人になりたくねぇな〜っていう気持ちも抱えつつ、でも自分たちの将来のためにはできること増やしておいた方がいいよねっていう感じで。
――illiomoteとしての制作が止まってしまったのは、物理的に時間がなかったからなのでしょうか。
YOCO:どちらかというと自分たちの問題で。単純にilliomoteの作品を考える余裕がなくて、並走することができなかった。
MAIYA:12月に事務所を辞めたんですけど、それまでの話し合いなどもありましたし。2nd EPまではいい感じに動けてたんですけど、そのペースを崩してしまったというか。
――そこからどのようにして自分たちのペースを立て直したんですか?
MAIYA:今のチームと一緒にやることになって、徐々に……というか今も立て直せてない?(笑)
YOCO:EPのリリース・スケジュールもどんどん後ろ倒しになったもんね(笑)。「流石にそろそろやらないとヤバいぞ(笑)」って言われるまでできなかった。
MAIYA:レコーディング日程を先に決めて、その数日前にやっと曲ができたくらい。マネージャーには本当に迷惑をかけまくってしまったけど、私たちはギリギリじゃないと動けないんだよね。
YOCO:時間的に余裕があると色々考えちゃうんだよね。「この曲で本当にいいのか?」「これは私たちがやりたいことなのか?」とか、色々な疑念が浮かんでくる。
MAIYA:そうそう。だからギリギリでバーっと作って、その勢いのまま出すっていう方が向いてるんだよね。スタッフは超迷惑だと思うけど(笑)。
「“踊れる曲”を作りたかった」
――では、今作収録曲も短期間に作り上げたもの?
MAIYA:「Take a chance」と「onemoretime」だけは去年作っていて、それ以外は今年の4月か5月くらいですかね。
――記号も盛り込まれている『side_effects+.』というタイトルはどこか示唆的です。これはEPのコンセプトやテーマを表現しているのでしょうか。
YOCO:そうですね。タイトルとかは作りながら考えていって。EPタイトルもそうなんですけど、曲名もありふれた単語にしようと考えました。EPタイトルの意味は……これ、さっきもスタッフと話していたんですけど、最近みんな作品にストーリーや意味を求め過ぎているなと感じていて。私たちもメッセージ・ソングを作ってきたし、このEPにも私なりに込めた意味があるけど、作り手の想いを受け手が完璧に理解しなくてもいいと思うんです。それぞれが自由に解釈してくれればいいなって。
――なるほど。
YOCO:それを前提とした上で話すんですけど、今回のEPは人が生きる意味や天国や地獄についてなど、スピリチュアルなことを考えながら作りました。私は怪談が好きでよく聞いたり読んだりしているんですけど、最近は哲学的な内容が含まれている怪談にも興味が出てきて。人間が生きるということって、他の生物の生命を奪うことにも繋がるし、それは地獄に落ちるに値するという話を聞いて。そういう思想に影響を受けました。
MAIYA:ちょうど制作のタイミングは暗いニュースも多くて。ロシアのウクライナ侵攻も始まったし。人の生死に関することを考える機会は多かったよね。
YOCO:そうだね。具体的に戦争のことを歌った曲はないけど、本当に地獄だなって思った。だから、歌詞以外にもメロディやコード進行もドライというか、ちょっと冷たい感じが多いと思う。
――確かに序盤は上がり過ぎないテンション感が印象的です。「A.O.U」はハウス・トラックですし、1曲目の「Water」からハイハットが連続する繋がりはまるでDJミックスのようで。続く「nothin’」はアフロビーツっぽさもありますし、「Dark_Eyes.」は2ステップ調ですが、こういったダンサブルな作風は今のふたりのムードですか?
MAIYA:聴く音楽は常に変化し続けてるんですけど、単純に自分たちでも“踊れる曲”を作りたかったんですよね。私はクラブに行って踊るのも大好きなので、自分たちのライブでも踊ってもらいたいなって。
YOCO:ライブハウスでもクラブでも盛り上げたいなっていうのは常に意識していることで。あと、私たちの曲をDJで使ってほしいなって思いますね。
MAIYA:今回のEPはこれまでよりもYOCOっぽさが強く出ていると思います。過去の作品もYOCOっぽさはもちろんあるんだけど、「こういう曲を作ってみよう」って意識して作ることが多かった。それに比べて、今作はもっと自然体で作れた気がする。
――YOCOさんの歌詞の変化について、MAIYAさんはどのように感じますか?
MAIYA:歌詞は暗いけど、私は好きですね。「A.O.U」とかめっちゃおもしろいし。
YOCO:めっちゃ考えて書いた歌詞もあるんですけど、「A.O.U」みたいな言葉遊びに近い感覚で書いたものもあって。
MAIYA:《とりま会おう》ってラインとかめっちゃよくないですか? クールな曲なのにギャルで最高〜って。
YOCO:でも、数年後には古臭い言葉になってるよ。
MAIYA:今を記録できてるからいいんじゃん。そのまた何年か後にはリヴァイバルもするだろうし。「昔のギャルは“とりま”って言ってたらしいよ」って(笑)。あとは「Dark_Eyes.」もめっちゃ踊れるのに歌詞が暗くて好きですね。
――確かに明るくはないですけど、この2022年に日本で生きている感覚をナチュラルに落とし込んでいるようにも感じました。言ってしまえばこの時代に考えもなく脳天気な曲を書ける人の方が不思議に思えるというか。
MAIYA:確かに。特に私たちの世代は未来に対して希望が持ちづらい世の中ですし。
YOCO:なんでこんな世の中になっちゃったんだろうって思いますね。制作中も「今、隕石が落ちてきて人類が滅亡したらどうなるんだろう」とか、「人類が地球で繁栄してるのは地球外生命体による実験なんじゃないか」とか、そういうことを考えてました(笑)。
MAIYA:怖い怖い(笑)。
ハイパーポップの終着点
――ダンサブルな流れからタイトル通りアコースティックな「folksong’99」を挟んで、作品全体の流れが変わります。
MAIYA:シンプルに弾き語りっぽい曲がほしいってなったんだよね。
YOCO:EP全体のバランス的にも曲数が足りないなと思って。でも、これは言いたいんですけど、アコースティックな曲って決して楽ではなくて、いい曲にするのは本当に大変なんですよね。
MAIYA:わかる。
YOCO:今までは4小節区切りのコード進行が多かったんですけど、この曲は8小節区切りにして。ポップにしつつも歌謡曲っぽくはなり過ぎないように意識しました。
――終盤の2曲はどちらもロック・テイストの曲で、「Take a chance」はTVアニメ『BIRDIE WING -Golf Girls’ Story-』に書き下ろした曲ですよね。
MAIYA:挿入歌としてオファーを頂いたんですけど、作ってるときにそれが頭から抜けてて、オープニング・テーマみたいな感じをイメージして作っちゃいました(笑)。
YOCO:MAIYAは人の話をちゃんと聞いてないことが多いんですよ(笑)。
MAIYA:アニメ全般が大好きなので、アニメの曲を担当できるっていうだけ舞い上がってしまい、打ち合わせの話が頭に入ってこなかった(笑)。
――(笑)。フックはポップですけど、ブリッジ部分では少しカオティックな展開も盛り込まれていて、去年のilliomoteのムードが汲み取れるような曲ですよね。
MAIYA:2000年初頭のアニメ・ソングと、ハイパーポップを意識しながら作りました。私の中ではハイパーポップのブームはもう終わったなと思っていて、自分の中でのハイパーポップの終着点っていう感じです。
YOCO:歌詞やメロディなどもアニメというお題がある分、作りやすかったですね。逆にこういうお題がないと書けない曲だとも思いますし、こういった機会を頂けるのはありがたいです。
――EPの最後はポップなミドル・ナンバー「onemoretime」で締めくくられます。
YOCO:これも完全に「Take a chance」と同じムードで書いた曲だよね。テンポ感は違うけど。
目指すは“スーパー・ロックバンド”
――EPをリリースして以降、今年後半のilliomoteの活動についてはどうお考えですか?
YOCO:今は自分たちのペースを取り戻しつつあるので、引き続き音源を作って、コンスタントに作品を発表できればいいなって思います。
MAIYA:あとはライブもいっぱいやりたいですね。
――今作の特に序盤のダンサブルな楽曲については、どのようにライブでパフォーマンスする予定でしょう。
MAIYA:今、頭を悩ませています(笑)。昔の曲と今作の曲をどう組み合わせるべきか考えています。それこそイベントや共演者に合わせて変化させるのもアリだと思いますし。
――おふたりは以前、“ハッピー・ポップ”という言葉を掲げていましたが、今の自分たちを形容する言葉として他にしっくりくる言葉を挙げるとするならば、どのような言葉になりますか?
MAIYA:今だったら何だろうね。何かしっくりくる表現があるなら教えてほしい。
YOCO:元々前向きな言葉に相反する後ろ向きな意味も含まれていたんですよね。でも、メディアが一斉にその言葉を使うことで、私たちが意図してない方向に取られているなと感じて。このままだと、自分たちが望まない場所に流されそうだなと。
MAIYA:何か変な形で消費されそうだしね。
YOCO:みんなわかりやすいカテゴライズを求めがちですよね。今の私たちだったら何だろうね。……“一般成人女性ユニット”とか?
MAIYA:“一般”も“成人”も“女性”も要らないわ(笑)。
――(笑)。今、「望まない場所に流されそう」と話されましたが、逆にilliomoteが向かいたい場所とは?
YOCO:うーん、難しいですね……。
MAIYA:みんなそういうのを見据えて活動してるのかな?
YOCO:でも、行きたくない場所とかやりたくないことををベースに行動するのは嫌なので、自分たちで行きたい場所や、こういう存在になりたいっていうのを探したいですよね。
MAIYA:……やっぱりスーパー・ロックバンドじゃない?
YOCO:でけぇ〜(笑)。
MAIYA:目指すべき場所はスーパー・ロックバンド。これしかないでしょ。
YOCO:そうだね。私たちはスーパー・ロックバンドを目指します(笑)。
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— Spincoaster/スピンコースター (@Spincoaster_2nd) August 3, 2022
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【リリース情報】
illiomote 『side_effects+.』
Release Date:2022.07.27 (Wed.)
Label:SPILD
Tracklist:
1. Water
2. A.O.U
3. nothin’
4. Dark_Eyes.
5. folksong’99
6. Take a chance
7. onemoretime
【イベント情報】
illiomote 3rd EP「side_effect+.」Release Party『とりまA.O.U』
日時:2022年09月27日(火) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京・渋谷TOKIO TOKYO
料金:¥3,000(各1D代別途)*
出演:
illiomote
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早割チケット(illiomoteHP:7月27日(水)〜7月31日(日)23:59