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Interview / chelmico


「J-POPはヤバい」「お笑い番組を持ちたい」――愛され系女子ラップ・デュオ、chelmicoの女子会トーク風インタビュー!

2016.10.21

JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUBやパブリック娘。、ENJOY MUSIC CLUBなどが台頭してきたポップなヒップホップ・シーンともゆるやかに共鳴する女子ラップ・デュオ、chelmicoが待望の1stアルバムをリリースした。

本作『chelmico』にはヒップホップシーンからはJinmenusagiやFBIことパブリック娘。の斎藤辰也、CBSのメンバーでもあるryo takahashi、〈LOW HIGH WHO?〉や〈POP GROUP〉などからのリリース経験もあるトラックメイカー/シンガーソングライターのESMEなどが参加し、ライブ時のバックDJはパブリック娘。やHOOLIGANZなどのバックDJも務める%C(パーシー)が担当。また、ネットやクラブ界隈からはLolica Tonicaの片割れとしても活躍するヒイラギペイジ、三毛猫ホームレスもトラックを提供/プロデュースを手掛け、EPを〈TREKKIE TRAX〉からリリースするなど、多方面からの寵愛を受ける彼女たち。

今回のインタビューでは、ミスiDのショーケース・ステージをキッカケにスタートしたユニットながらも、インディペンデントかつDIYなシーンと密接に繋がりをもつ彼女たちのこれまでの足取りを追うもの。ライブなどで感じ取れる天真爛漫なキャラクターそのままに、時折脱線しつつも様々なことを訊いてみた。

Interview by Takazumi Hosaka
Photo by Yuma Yamada
Location:Spincoaster Music Bar

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(L→R:鈴木真海子渡賀レイチェル


――最初に結成までのことをお訊きしていきたいと思います。まず、初ライブがGOMESSさんのプロデュースの元、2014年のシブカル祭でライブを行ったステージらしいですね。そのライブはどのようにして実現したのでしょうか?

レイチェル:私とGOMESSくんが元々友達だったんです。最初どこで会ったかわからないけど、2人ともラップ好きだし、GOMESSくんもラップやってるしで、ある時一緒に映画『Tokyo Tribe』を観に行ったんですよ。それでめっちゃ盛り上がって「ウチらもラップできるでしょ! やろうよ!」みたいな感じになってしまい。そして都合よくその夜に”シブカル祭。”の実行委員長から「来月のシブカル祭。にミスiDステージがあるから、その中で何か出し物してよ」って言われたので、「じゃあ、ラップするか」ってなったんです。
それでマミちゃんを誘って、「せっかくだからオリジナル曲作ろう」ってなり、GOMESSくんが知り合いのトラックメイカーの人にお願いしてくれて。もちろん最初は私たちラップを書けなかったので、言いたいことを全部カラオケで箇条書きにしてメモって、それをGOMESSくんがリリックにまとめてくれるっていう形で。ちゃんと韻とかも踏む感じで。

――最初それで何曲くらい作られたんですか?

レイチェル:1曲だけです。当日その場しのぎの出し物的な感じだったので。

真海子:私は大学受験前だったんですよ。だけど思い出作りにと思って。レイチェルから誘いのLINEが来たのがスタバで友達と一緒に勉強してる時だったんですけど、そしたらその子に「やってみなよ」って言われて。「まぁいっか、1回なら」って感じでそこから始まり、いざ曲作って、ライブしたらいい感じになっちゃって(笑)。

レイチェル:そのあとミスiDのステージを観てくれたのか、もしくはネットとかで知ってくれたのかわからないですけど、とあるシンガーソングライターの方から「今度企画やるから出てよ」って言われて、それで初めて「あら? 次もあるの?」みたいな感じになって。

――元々お二人はどういう仲だったんですか? 少しだけ年も離れていますよね。

レイチェル:最初は知り合いの知り合いみたいな感じですね。2人ともモデルとかやってたので、撮影でちょっとだけ会ったりとかしていて。

真海子:なんか最初に会った時2人一緒に撮影だったんですよ。でもそこで特別仲良くなったわけでもなく、普通に「気が合うな」ぐらいで。そこから一緒になった3回目くらいの撮影がスタジオだったんです。それまではロケで撮影だったんですけど、スタジオだから撮影の合間にリップスライムがかかってて、それでこの2人がめちゃくちゃ盛り上がってしまい。「リップスライム好きなの?」みたいな感じになって……あの、夢小説の文化ってわかりますか?

――それ、〈TREKKIE TRAX〉がやってるblock.fmの番組でもお話していましたよね。

レイチェル:チェック力がすごい(笑)。そうなんです、自分の名前を打ち込んで、リップスライムのメンバーと恋に落ちることができるっていうやつで。私が好きだったのはPESさんとRYO-Zさんかな。まあ全員出てくるんですけど、とりあえず私はPESさんが大好きだったので、PESさんとイルマリさんが私を奪い合う、みたいな。なんか半同棲みたいなストーリーを読んでてて。

――それは元々あるストーリーに、自分の名前を当て込んでくれるっていうことですよね。

レイチェル:そうです! 素人が掲示板に投稿してるみたいな感じなんですけど、中にはちょっと人気のある作家さんとかも出てきて。私もお気に入りの作家さんがいました。この前も2人で久しぶりに読んでました(笑)。

真海子:バイト先にイルマリさんが来て、なんかちょっとしたキッカケで話すやつ(笑)。

レイチェル:「もしかして、イルマリさんですか?」、「え、バレた?」みたいな感じになって。そこから仲良くなって付き合っちゃうみたいな(笑)。

真海子:そうそう。こういう話でレイチェルとめちゃくちゃ盛り上がって、「ねーねー、今度遊ばない?」っていう感じで2人で遊び始めたんだよね。家も近かったし。

—ちなみにリップスライム以外でヒップホップというかラップは小さい頃から聴いてたのでしょうか?

真海子:私は兄が2人いて、ヒップホップが好きだったから家にCDはいっぱいあったんです。Dragon AshとかDef Tech、あとKick The Can Crewとかその辺は聴いてたけど、でも別に熱中して聴いてるわけじゃなかった。リップスライムはかなり聴いてたけど。

レイチェル:私もラップはあんまり聴いてなくて、音楽好きな家庭でもなかったので、リップスライムと宇多田ヒカルくらいしか音楽は知らないって感じでしたね。

――逆になぜリップスライムにそこまでハマったのでしょうか?

真海子:好きになったキッカケ……あ、私海の近くに家があるんですけど、小2の時にそこでなんかお父さんと一緒にブギーボードっていう子供でもサーフィンができるみたいなやつで遊んでて。その帰りにブギーボード片手に自転車で帰ってたら、”逗子フェス”っていうのがあって。目の前で野外ライブしてたんですよ。そこにリップスライムが出てたんですけど、それで帰ってる時に生音で「楽園ベイベー」が流れてきて。それまで全然何も知らなかったんですけど、「めっちゃいい曲!」って思って涙が流れてきて(笑)。

レイチェル:小2でリップスライムの生音を聴き、訳もわからず涙を流すっていう出会い。ロマンチック過ぎるでしょ(笑)。

真海子:でもそこから一気にめちゃくちゃハマったっていうわけではなく、その後ラジオでスーって流れてきた「SPEED KING」でまた感動して。そこから続々といい曲を見つけることができたっていう。

レイチェル:私も周りにお兄ちゃんとかお姉ちゃんが多くて、その中でレディースの人がいたんです。そのレディースの人がリップスライムの「FUNKASTIC」流してて、「スゲー早口でカッコいいー!」ってなって。それが小学生の時なんですけど、「これ何て言ってるの?」って言って、お姉ちゃんに歌詞を書き起こしてもらって、めっちゃラップを練習して歌えるようになるっていう。でもお姉ちゃんレディースだからさ、書いてくれた歌詞がギャル文字で(笑)。伸ばす棒とかは全部くねくねってなった矢印で(笑)。

真海子:あ〜、ギャルだ!(笑)。

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――ここでchelmicoの活動に話を戻したいと思うのですが、先程のお話に出たミスiDのショーケースで披露した曲というのが、最初にSoundCloudにUPされた「ラビリンス’97」なのでしょうか?

真海子:じゃなくて、なんだっけ……あ、「ピクニック」だ! 今振り返るとちょっと笑えるね(笑)。

レイチェル:でもすごいいい曲だったよね、あれはあれで。だけど私たち……。

真海子:なんかノリきれなかったというか(笑)。

レイチェル:全然好きじゃなくて、「もっとカッコいいやつをやりたいね」ってなって。それでたまたまGOMESSくんの知り合いだったヒイラギペイジくんがトラックをくれて。それが「ラビリンス’97」なんです。でも、実は最初はこれもあんまりピンときてなくて。それでももうライブが決まっちゃってたので、「これでいくしかない!」って。

真海子:そうなんです。先にライブが決まってる状態で曲を作り始めたんですよ。

――「ラビリンス’97」がSoundCloudにUPされたのはショーケースから少し時間が経ってからでしたよね。

真海子:私が受験生だったっていうのが大きくて。でも、結局落ちて浪人になるんですけど、結果的に時間ができたので、「よし、ラップやろう」って思って。だから逆に言えば大学受かってたらchelmicoやってなかったと思う。

レイチェル:全部のタイミングが良かったんだよね。

――昨年の”白ギャル祭り”っていうイベントで僕は個人的にchelmicoの存在を知ったのですが、それ以前にも数回ライブは行っていたということですよね。

真海子:え! うそ! 9月12日のやつだよねー。EMC(ENJOY MUSIC CLUB)とかパブリック娘。とかが出てたイベント。

レイチェル:そうそう! いいイベントだったよね。めっちゃ覚えてる〜。でも、その前は2、3回しかやってないよね。なのに突然自分たちでイベントを企画しちゃったっていうやつ。マミちゃんの知り合いが恵比寿baticaのスタッフさんで。

――あの頃は何曲ぐらい持ち曲があったんですか?

真海子:”白ギャル祭り”の時は4曲ぐらいじゃないかな……(笑)。

レイチェル:あれでしょ? 「チェルミコソング」と「ラビリンス’97」と「Oh,Baby!」と……

レイチェル真海子:「JUNEJULY」!

真海子:それと、(BUDDHA BRANDの)「人間発電所」をカバーするだけっていう(笑)。

レイチェル:その状態でイベント自主企画するの、冷静に考えて狂ってる(笑)。

――その”白ギャル祭り”から一気にいろいろ広がった感じなのでしょうか?

レイチェル:”白ギャル祭り”でほんとに広がったね。それこそパブリック娘。のメンバーともその時初対面で。

真海子:私は高校生になってからPSGとかTHC(TOKYO HEALTH CLUB)も聴き始めていて、そっからどんどんパブリック娘。とかEMCに辿り着き、それでイベントを企画したいと思って恵比寿baticaのスタッフさんに相談したら色々とアドバイスしてくれて……。一気に憧れの人たちをお呼びできたって感じです。

レイチェル:私は全員「はて? どなた?」って感じだったけど。宇多田ヒカルしか知らなかったので(笑)。

――パブリック娘。の斎藤くんは大分早い段階でchelmicoに対するめちゃくちゃ熱い文章をTumblrにUPしてましたよね。

真海子:そうなんです! パブリック娘。の斎藤くんはまじで一番感謝してるchelmicoの恩人って感じで。今私たちがお世話になっている人たちは全部彼が繋げてくれたといっても過言ではない。

レイチェル:紹介おじさんだよね。口コミでも広げてくれたりするし、色んなイベントに連れてってくれる。実は“白ギャル祭り”の前に“夏休み”っていうイベントがあって、そこに彼がFBI名義でDJとして出てたのが初対面だったんです。私、めちゃくちゃ『ツインピークス』が好きなんですけど、なんかパブリック娘。にも『ツインピークス』が大好きな人がいるみたいだなっていう感じで、元々チェックしていて。

真海子:その時に結構すぐ仲良くなれたよね。

――なるほど。では今回のアルバムに参加しているryo takahashiさんとかも、彼が繋げてくれたっていう感じなのでしょうか?

レイチェル:うん、いまバックDJやってくれてるパーシーも、ryoさんもみ〜んなたっちゃんが繋げてくれて。

――「Love Is Over」や「SUMMER HOLIDAY」などを手掛けた三毛猫ホームレスや、今作で「ママレードボーイ」などにクレジットされているESMEさんとはどのようにして知り合ったのでしょうか?

レイチェル:三毛猫は”東京”っていうマルチネのイベントがあって、私はtofubeatsさんとokadadaさんのMVに出演した縁もあって遊びに行ったんですよ。で、その時に共通の知り合いを通して紹介してもらった(三毛猫ホームレスの)mochilonさんが「この後三毛猫ホームレスの出番だから観てクレーッ!」って土下座してきて(笑)。あれ、シラフでやってたのかなぁ……。そこから「めちゃおもしろい人だな」って感じで繋がりができて。

――なるほど(笑)。では、ESMEさんとは?

真海子:ESMEさんは、ryoさん繋がりです。

レイチェル:でも、ryoさんを紹介してくれたのはたっちゃんだから、結局は大体たっちゃんに行き着く。

――ハブみたいになって、色々なところに繋げてくれたと。

レイチェル:そうですね。

――では、そもそも今回、1stアルバムをリリースしようと決まったキッカケなどがあれば教えてください。

真海子:えーなんだっけ、「アルバム出さないの?」ってめっちゃ言われるから、「じゃあ出すよ」みたいな。

レイチェル:アルバムを出そう出そうとは勝手に思ってたけど、それを具体的に移したのはやっぱりマネージメントしてくれてる山田のおかげですかね。やっぱり我々コネクションもないし無知なんで、アルバム出すって言ったって実際に「何したらいいの?」って。

真海子:どこからスタートすればいいのかわからなくて、放置してたよね、アルバム作る事は。あ、それで山田は私のお父さんのマイメンの後輩で。

レイチェル:難しいわ(笑)。お父さんのヨットチームのクルーの人の後輩なんだよね。あと山田さんもそうなんですけど、2人のライブを気に入ってくれた今回のアルバムの流通をやってくれてる〈ULTRAVIBE〉の神保さんっていう方がいて。

――EMCとかも担当されてる。

レイチェル:そうですそうです! 神保さんが「CD出さない?」って言ってくれて。

真海子:しかも”白ギャル祭り”の日だよね。その日に会って、「あ、この人いい匂いする! 最高!」って思って(笑)。

レイチェル:「いい匂いする〜! かっこい〜! ダンディ〜! 素敵〜!」みたいな。メロメロでした(笑)。

真海子:他にも色々と話を持ってきてくれたこともあるんですけど、あまりにも神保さんの「いい人オーラ」にやられてしまって。

――WONDERVERっていう〈ULTRAVIBE〉から今年アルバムを出したばかりのバンドも、レーベルを決めた理由を全く同じように語っていたので驚きました(笑)。(※関連記事:Interview / WONDERVER

レイチェル真海子:えーー!

真海子:いやー、神保さんマジ最高っす!

レイチェル:いっつも神保さんからくるLINEは「チェルミコ・レイディース」から始まる(笑)。

――では、アルバムを出すことが決まって、実際に制作にとりかかったのはいつ頃なんですか?

真海子:え〜いつだろう? たぶん今年の3月、4月くらいに動き始めて。たぶんそれも山田にお尻を叩いてもらってようやく……って感じで。

レイチェル:管理してくれる係の人にね、〆切を決めてもらわないとダメで。最初は8月中に出したかったんだけど、絶対間に合わなかったので10月にズラして。

真海子:マジでいつもギリギリなんですよ。ジャケット写真とかも一昨日ぐらいに決まって。

レイチェル:そう、横浜中華街で突然撮ったやつ

真海子:その前は高尾山の方で、森っぽい感じの写真にしようとしてたんだけどね。イオンを浴びてる感じのやつ。

レイチェル:すごいスカしたやつ撮ったんだけど、「渋すぎて違う」って言われて。

真海子:それで急遽変えて。まあでも今のも気に入ってるからいいんだけど。

レイチェル:結果オーライだよね。

真海子:そんなアルバム製作でございました。

――アルバムに収録されている楽曲は、基本的にはライブとかでやってた曲をそのままブラッシュアップして?

真海子:基本的にはそうですね。1stアルバムだし、自分たちの好きなようにやればいいやって。

レイチェル:コネクションもそんなないので、もらえる人からトラックもらって。たまにワガママなオーダーをしてみたりもしつつ(笑)。

――今回のアルバムに向けて作った曲っていうのは全くない感じですか?

レイチェル:ラブコメっぽくっていうテーマでESMEさんにお願いした「ママレードボーイ」と、「まぁいっか」は今回のアルバムに向けて作りました。それくらいかな……?

真海子:いや、あと「Give Me Love」もそうだよ。あの、ESMEさんとかryoさんってすごい器用だから、わたしたちの無理なオーダーに対して、いつもそれを超えたモノが返ってくるんです。

レイチェル:何かあれだよね、「Give Me Love」は洋画のオープニングとかでよくある天空から夜の大都市を見下ろしているみたいな。そういう画をイメージしていて。

真海子:実は最初はイントロとスキットとアウトロも考えてて、「茶番しようぜ」って話してたんですけど、結局時間がなくなってしまい、やめました(笑)。

――ラップのレコーディングは基本的にトラックを作ってる方と共に行っていったのでしょうか?

レイチェル:曲によりますね。「ラビリンス’97」とか「Oh,Baby!」、「JUNEJULY」とかはペイジくんの家で録ってるし、「Give Me Love」と「まぁいっか」はちゃんとしたスタジオで録りました。すっげーちゃんとしたスタジオで。

真海子:あそこが一番いいよね。あそこで全部やりたい(笑)。

レイチェル:あとはryoさんの家というか、ピスタチオ・スタジオで録ったり。

――個人的に三毛猫ホームレスと一緒にやった曲のボーカルが、非常にいい音だなと思ってたのですが、あれは?

レイチェル:あれいいですよね。三毛猫さんと一緒にやったのはレンタル・スタジオで録音したんですけど、やっぱりミックスとかの技術がすごいっていうのもあって。あと、アルバムVer.の「Love Is Over」は実はラップを録り直してるので、よりクオリティが高くなってると思います。

――そもそもトラックに対する、リリックの載せ方だったりテーマというのはどのようにして決めているのでしょうか?

レイチェル:適当だよね。「これは夜じゃない?」とか、「応援しちゃう系じゃない?」とか(笑)。

真海子:「とりあえず恋しちゃう? 恋しとけばいいんじゃね?」とかね(笑)。

レイチェル:そうそう(笑)。最初は別々にトラックを聴いてイメージを膨らませて、それで会った時に「どう思った?」っていうのをお互い言い合うっていう。それで2人の意見とかを混ぜたり組み合わせたりするんだよね。「じゃあ、夏の恋にする?」とか。

真海子:うんうん。でも、たいていレイチェルのテーマになることが多いかもしれない。私たちって本当に性格が正反対なんですよ。レイチェルはプロデューサー気質というかなんというか。細かいところをよく見れるし、複数の人の意見をまとめたり、自分たちがこうしたいっていう考えを固めるのも上手くて。

レイチェル:確かにそうかも。だからパブリック娘。でいうと文園太郎だよね(笑)。パ娘。もいきなり文園太郎が「初恋とはなんぞやで!」みたいな感じらしいので、ちょっと似てるかなって。「Love is Over」も最初私が「ポップな失恋ソングを書きたい」って言って。

真海子:「いいね〜失恋ソング書こうぜ〜」って明るく(笑)。なんかあれだよね、森高千里の「気分爽快」みたいな感じにしたかったんだよね。

レイチェル:そうそう! ポップな曲調なのに、歌ってることは結構暗くて重いっていう、そういう曲を作りたかったんです。ただ、「愛したい! 恋したい!」の部分だけはレコーディングの時のノリで決まったよね。コールアンドレスポンスを入れたいってことだけは決まってて。私が「愛されたい!っていうのが良いんじゃない?」って言ったら、mochilonさんが「じゃあ、Love Is Over!」みたいな感じでパッと決まって。

――レイチェルさんはプロデューサー気質とのことでしたが、では逆に真海子さんはどのような性格というか、立場がしっくりくると思いますか?

レイチェル:天才型です! もう、アーティストです。それ以上でもそれ以下でもない(笑)。

真海子:いやいやいや(笑)。

レイチェル:でもあまりにも自由過ぎるので、そういう時は「もうちょっとこうして」って言ったりもするんですけど。まぁでも基本はやっぱり天才なので、伸び伸びとやってもらってます。

真海子:すごい言ってもらってるけど(笑)。

レイチェル:でも、言えば言うほどそれを超えてくるところもすごいよね。大体の人はどんどんダメになっちゃうじゃん。言えば言うほど。でも、マミちゃんは逆で、こっちのオーダーを超えてくる。

真海子:私、他人から言われないとダメなんですよ。一回自分で作った「19」っていう曲とかもあったんですけど、それもレイチェルから20歳になる前に何か作ったほうがいいよって言われて、しかも「未成年でクラブに入れない」みたいなテーマも決めてくれて。だから作れたんですけど、「はい、今から自由に何か作ってみてください」って言われたら、どうしたらいいんだろうって途方に暮れます。

――ある程度誰かにプロデュースしてもらった方がいいと。

真海子:そうですね。何か求められないとできないというか。日々色々と考えていることはあるんですけど、結構自分の中だけで消化してしまうんですよね。

レイチェル:そう考えると、本当私たち正反対だよね。

真海子:本当に正反対。共通項リップスライムしかない(笑)。あとは笑いのツボ。

レイチェル:夫婦じゃん(笑)。

真海子:あとは嫌いなものが一緒(笑)。

――ちなみに、アルバムの中で「3rd Hotel」という曲が気になったのですが、この曲はやはりryo takahashiさんが手掛けているだけあって、パブリック娘。の「2nd Hotel」と関連した曲なのかなと。

レイチェル:あの曲は……ラブホって窓がない部屋があったりするじゃないですか。それをどうしても歌詞に盛り込みたくて。

真海子:っていうかこの曲、元々採用するつもりじゃなかったんですよ。トラックで完成しきっているというか、「ウチらのラップとかいらなくない?」みたいな。

レイチェル:ryoさんに「何かいいトラックないですか?」って聞いたらポーンと返ってきたのがこれで。「これか〜」みたいな。

真海子:難しいな〜って思いつつも一応それでもリリックを16小節ずつ書いてて。

――その時はもうテーマも決まっていたのですか?

真海子:あ、思い出した。最初は「ノスタルジック」だ。

レイチェル:そうだそうだ(笑)。よく覚えてるねー。

真海子:地元の駅のホームでレイチェルとLINEしてたんですけど、その時ちょうど夕陽が落ちる頃で、「ノスタルジック」っていうのがパッと閃いたんですよ。すごい思い出してきた!
それで一応書いたんだけど、その後ちょっと放置しちゃってて。アルバム作ろうってなった時に、とりあえずryoさんのピスタチオ・スタジオに遊びに行ってみて。

レイチェル:そしたらたまたまその時ESMEさんもいて、4人で「どうするどうする〜」ってやってたら、ryoさんとESMEさんがピアノで「サビはこうかな〜」ってメロディを作ってくれて。そこにサビを乗っけてできたのが「3rd Hotel」だよね。

真海子:改めて歌詞を見てみるとシリアスな感じにも思えるんですけど、実際はふざけあいながら「し〜た〜の名前で〜呼んで〜」とか、ゲラゲラ笑いながらふざけて作った曲で(笑)。

レイチェル:替え歌とか、空耳的な感じだよね(笑)。

真海子:「ラビリンス’97」とかもそうだよね。「まつげの先から hold me tight」とか、意味わかんないよね。「何この歌詞、ヤバくない?」とか言いながら作ってて。

レイチェル:「プロデューサーの人に怒られるかな……?」って思いながらもノリで(笑)。

――ノリで作った曲を、いざ初めて人の前でやる時はどうでしたか?

真海子:だから最初は嫌に決まってるんですよ!

レイチェル:ただの辱めですよ。大勢の人の前で(笑)。

真海子:今はすごい好きになれたけど、最初の頃は本当にライブが嫌いで……。

――ライブに対する気持ちが変わったキッカケなどはありますか?

レイチェル:何か……すごい基本的なことなんですけど、やっぱりリハーサル・スタジオに入ってちゃんと練習するようになってからですかね。ちゃんとできると、やっぱり自分たち自身も楽しくなるというか。最悪お客さんがシラケてても、自分たちが楽しければそれでいいし(笑)。

真海子:頑張った分だけちゃんと自分たちに返ってくるよね。あとはもう、慣れたっていうか。人前に立つことに慣れた。私本当にピアノの発表会とかもボイコットするくらい人前に立つのが好きじゃなかったんですよ。

レイチェル:人前で立つ機会がピアノの発表会とか、お嬢じゃねえか(笑)。

真海子:そう、お嬢なんです(笑)。で、そういうのがすごい嫌いだったので、ずっとラジオのミキサーさんになりたかったんですよ。裏方に徹したかった。絶対に「おぎやはぎのラジオの収録中に後ろにいる人になる」って思ってて。……でも、今はねぇ。慣れたら意外と人前に立つのも楽しいんだなって。

レイチェル:慣れって怖いね。いい意味で。

――それこそ「Love Is Over」のコールアンドレスポンスなんかはすごい楽しいんじゃないですか?

真海子:あれは楽しいわ。めっちゃ楽しいよね、あの曲!

レイチェル:あの曲のおかげでライブがめっちゃ楽しくなりました。

真海子:最近なんてサビだけじゃなくて、バースも一緒に歌ってくれて。「うそうそうそ〜!? じゃあ私歌わないよ?」って(笑)。

レイチェル:「じゃあ私らは休んどくよ」って(笑)。

――いやいやいや(笑)。じゃあちょっとまとめ的な話に入りたいんですけど、chelmicoとして、今後目指していたりすることはありますか? 具体的なことでも抽象的なことでもどちらでもいいんですけど。

真海子:なんだろう。レイチェルはよく『パパパパパフィー』みたいな番組やりたいって言ってるよね。私はコント番組がやりたい。

レイチェル:それも『パパパパパフィー』でできるじゃん。『チェチェチェチェチェルミコ』で(笑)。

真海子:言いづらいわ(笑)。

レイチェル:あとはやっぱり夏フェスに出たいですよね。サマソニとかフジロックみたいな憧れのフェスに。

真海子:真夏のWOWとかね。やっぱりリップスライム好きだから。

――じゃあ作品というか、音楽的に何かやりたいこととかはありますか?

レイチェル:私は今好きな人のことを歌詞にしたいな〜って(笑)。

真海子:私はNHKの『みんなのうた』でかかってほしいんですよね。「Love Is Over」とかを流してもらって、苦情入れて欲しい。「うちの子供がすぐにパジャマを脱いじゃって困るんですけど!」みたいな(笑)。

レイチェル:私、『天才てれびくん』に出たい。

真海子:『天てれ』イイね〜。私たちすごいテレビっ子でお笑い好きなので、『水曜どうでしょう』みたいなこともしたいし、絶対おぎやはぎのラジオにも出たい。矢作さんに「おれ知ってた」って紹介されたいです(笑)。

レイチェル:「知ってた芸」ね! やられたいよね〜!

真海子:とりあえずまとめると、とにかく私はchelmicoでお笑い番組を持ちたい。

レイチェル:曲作れよ(笑)! いい曲作ろうよ(笑)!

真海子:うん、いい曲も作ろう。今実はm-floみたいな、いかにもライブで盛り上がりそうな曲を作ってて。あと、何か最初の頃はもうちょっとカッコつけてヒップホップをやりたいって思ってたんですけど、今はもう思いっきりJ-POPみたいなことをやりたい。普段音楽をあんまり聴いてない人にも聴いてもらいたいって思うようになったんです。だから、私最近岡村靖幸とか平井堅とかめっちゃ聴いてるし、青山テルマ歌うめ〜とか、西野カナもいい歌詞書くな〜って思うわけ。

レイチェル:誰にでも届くっていうね。

真海子:aikoとかもすげ〜な〜って思うの。

レイチェル:aikoはやばいよね〜。「私のこと見てる? どっかにカメラある?」ってなるもん!

真海子:そうそう! 「aiko、どこかでモニタリングしてる?」ってね。それくらいJ-POPはヤバいってことに音楽をやり始めてから気づいた。そこに気づかなかったらたぶん一生5lack聴いてたと思う。

レイチェル:5lackもヤバいけどね(笑)。でも、私は逆にJ-POPしか聴いてこなかったので。勉強がてら5lackとか聴き始めたのもここ最近で。だから、やっぱり誰にでも届く音楽を作りたいです。自分たちがやりたいことも曲げずに、それが達成できることが一番理想だよね。

真海子:そうだね。あとはリップスライムのDJ FUMIYAと、m-floの☆Taku Takahashiにトラックを提供してもらう。……っていうのは冗談だけど、もらえるものはもらいたいので、トラック余ってる人はください(笑)。

レイチェル:「トラック募集中」って書いておいてください。使わないかもしれないけど。あと、トラックくれるくれる詐欺のやつ、なんとかしてほしい(笑)。

真海子:それ! トラックくれるくれる詐欺のやつ!

レイチェル:「今度なんかリンクする時あったら一緒にやりましょう!」とか言っといて一向に何もくれないやつ。おい、お前だぞ! このインタビュー読んでるか!?(笑)

真海子:あと、パーシーのことあんま喋ってないから最後になんか言っておかない?

レイチェル:そうだ! HOOLIGANZとパブリック娘。、そしてchelmicoのバックDJをやってくれてるパーシー、好きだよ〜! いつも感謝してるよ〜!

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【リリース情報】

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chelmico 『chelmico』
Release Date:2016.10.19 (Wed)
Label:cupcake ATM
Cat.No.:CCA001
Tracklist:
1. Oh! Baby
2. Give Me Love
3. ママレードボーイ
4. Night Camel feat.FBI
5. 3rd Hotel
6. ラビリンス’97
7. Honeymoon feat.Jinmenusagi
8. まぁいっか
9. Summer Holiday
10. Love Is Over


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