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FEATURE | 第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards)


多様性に富んだ台湾インディの祭典『GIMA』、その魅力や独自性に迫る

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2023.10.25

Text by Toshiyuki Seki
Photo by Official

10月28日(土)、台湾の音楽アワード『第14回 金音創作奨』が台湾・台北市の台北流行音樂中心で開催される。

『金音創作獎』(Golden Indie Music Awards/GIMA)は“台湾のグラミー賞”とも言われている『金曲獎』(GMA)に比べて、インディ音楽に焦点を当てているのが特徴。台湾では数多くのインディ・アーティストたちが若者から絶大な支持を得ており、台湾を代表するネオソウル/ジャズ・シンガー、9m88は2020年、同賞で「新人賞」を受賞した際、「インディ・ミュージックはもはやアンダーグラウンド・ミュージックではなく、メインストリームの一部になっています」と語った(*)ほど。

他にも、『FUJI ROCK FESTIVAL ’22』に出演し、日本でも人気を集めるマスロック・バンド、Elephant Gym(大象體操)や、今年『Coachella Festival』に台湾のバンドとしてはじめて出演を果たした落日飛車(Sunset Rollercoaster)など、近年はインターナショナルに活躍しているアーティストも多い。

*引用:billboard japan「<イベントレポート>台湾インディーミュージックの祭典【第11回金音創作獎 Golden Indie Music Award】&【亞洲音樂大賞 Asia Rolling Music Festival】」


台湾インディ・シーンの多様性と創造性を後押しする音楽賞

台湾インディ・シーンの魅力といえば、なんと言ってもその多様性だろう。それは9月12日(火)に行われたノミネーション・セレモニーに、特別ゲストとして出演したアーティストたちを見ても明らかだ。モダンでマチュアなポップ・サウンドが魅力のHUSH、日本のバンド・ALIとも共演している期待の新星R&Bシンガー・Karencici、高度な演奏技術とスリリングな楽曲展開で注目を集めるインストゥルメンタル・バンドMajor in Body Bear(體熊專科)、そして今年来日ツアーを果たし、ミツメや川本真琴とも共演しているイルカポリス(海豚刑警)という個性豊かな4組によってノミネート・アーティストが発表された。

そして、今年が“第14回”であることにちなんで、イルカポリスとMajor in Body Bearがアメリカ・日本の学生服を着た14歳に扮してライブを行い、若者の反抗心と純粋さを表現。このように『GIMA』ではアーティストの多様性やオリジナリティ、革新性を後押しする狙いがあり、これまでにも数多くの実験的で大胆、かつ先見性を持った音楽家やバンドが受賞を果たしてきた。

一足早く今年の“審査員賞”に輝いたのは、台湾の伝統文化・民間伝承と電子音楽と融合させた実験的な音楽性で知られるユニット・Mong Tongの最新アルバム『Tao Fire(道火)』。台湾だけでなく、東南アジアの文化をも取り入れた、インターナショナルなサウンドメイクが評価された。

また、10月24日(火)には「最優秀ライブパフォーマンス賞」が発表され、新世代ラッパー・Gummy Bが受賞。Gummy Bは昨年リリースした1stアルバム『安泰(Antai)』が高く評価されたほか、人気ヒップホップ番組『大嘻哈時代』シーズン2で優勝を果たした注目株。堂々とした佇まい、声の力強さ、そして全身で歌い上げる熱いパフォーマンに多くの観客が魅了されていたようだった。


過去には亀田誠治氏も参加、音楽のスペシャリストたちによるフェアな審査

『GIMA』の設立は2010年。『金曲奨(GMA)』では「華語アルバム賞」や「原住民語歌手賞」など、マンダリン(華語)・台湾語・客家語・原住民言語の4言語をベースに部門が分かれているのに対して、『GIMA』はジャンルによってカテゴライズされているのが大きな違いだ。「ベスト・アルバム賞」や「ベスト・シンガー・ソングライター賞」などその年で最も優れた作品・アーティストを称えるのはもちろん、ロックやフォーク、電子音楽、オルタナティヴ・ポップ、ジャズ、R&Bなど、ジャンル別の賞も用意。加えて「審査員特別賞」や「特別貢献賞」も含めると、部門数は合計23に達する。

また、音楽に携わるスペシャリストたちが審査員を務め、時間をかけて忖度なしで選考するというフェアな仕組みも魅力だ。これまでに亀田誠治氏や、韓国のプロデューサー、朴仁烈氏など、海外の音楽業界からも識者を招き、厳正なる審査が行われてきた。今年の審査委員長を務めるのは、『金馬奨(Golden Horse Awards)』を2度受賞し、電子音楽に精通している作曲家・盧律銘(Lu Luming)氏。テレビや映画などの視覚芸術と音楽を掛け合わせたマルチメディアな仕事で知られる同氏のもと、今年はどういったアーティスト・作品が受賞を果たすのか目が離せない。

盧律銘(Lu Luming)

中でも日本のアーティストたちが注目すべきは『亞洲創作音樂獎(Best Asian Creative Artist)』だろう。アジアで最も優れた作品に贈られる同賞は、海外からの応募も可能で、過去にはインドネシアのラッパー・Rich Brianやベトナム系フランス人のDJ/プロデューサー・Nodeyが受賞しているほか、日本からはNulbarichや空音、さらにイギリス拠点のRina Sawayamaもノミネートされている。


日本からも視聴可能、コラボ・ライブも必見の授賞式

授賞式で司会を務めるのは今年の『GMA』で「華語アルバム賞」を受賞したラッパーのKumachan(熊仔)。台湾の人気ヒップホップ・リアリティ番組『大嘻哈時代(THE RAPPERS)』でもメンター役として出演するなど、名実ともに台湾トップクラスのラッパーだ。また、今年の式典には日本からプレゼンターとしてミッキー吉野が参加するほか、yamaの特別ライブ・パフォーマンスが予定されている。

Kumachan(熊仔)
yama

新進気鋭のSSW・李權哲(Jerry Li)と鶴(The Crane)によるコラボレーションや、プロデューサーの陳君豪(Howe Chen)がディレクションを務めるジャズとヒップホップによるスペシャル・ライブなど、台湾インディーシーンの多様性とクリエイティビティが感じ取れる企画も魅力。授賞式は「SPACE SHOWER」のYouTubeチャンネルにて、日本からも視聴可能だ。

李權哲(Jerry Li), 鶴(The Crane)

加えて、連動イベントの『亞洲音樂大賞(Asia Rolling Music Festival)』も見逃せない。同フェスティバルはアジアを中心に世界各国から幅広くアーティストを招待するインターナショナルな内容となっており、2021年には日本からCody・Lee(李)も出演。『GIMA』独自の視点でキュレーションされた個性豊かなアーティストたちのパフォーマンスを通して、授賞式への期待値を高める。

そんな『亞洲音樂大賞』で、今年キュレーションを務めるのは落日飛車(Sunset Rollercoaster)のフロントマン・Kuoだ。メロウかつサイケデリックな独自のポップ・サウンドで世界中にファンを抱える落日飛車は、結成以来50以上の都市でパフォーマンスを行ってきており、Kuoにはそのような経験によって培われた豊かな国際感覚と音楽性が期待されている。

Kuo(from 落日飛車)

Kuoの発表によると、今回は「エレクトロニック」、「サイケデリック」、そして“台湾で長い間親しまれている楽曲”という意味での「クラシック」の3つの音楽スタイルをフィーチャーしたパーティを開催。台湾からはLINIONやイルカポリス(海豚刑警)が出演するほか、アメリカのSSW・Michael Seyerや、イギリスのミュージシャン/プロデューサー、Kamaal Williamsなど、海外のアーティストたちも参加し、ジャンルを横断した音楽コラボレーションが行われる。

ぜひとも『GIMA』をSNSでフォローし、その結果をリアルタイムで追いかけてほしい。


【イベント情報】


『第14回金音創作獎(14th Golden Indie Music Awards)』
日時:2023年10月28日(土) 19:00〜22:00 ※現地時間
会場:台湾・台北市 台北流行音樂中心

配信:2023年10月28日(土) 19:50〜スペースシャワーTV YouTubeチャンネルにて

『金音創作獎(Golden Indie Music Awards)』 オフィシャル・サイト


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