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Best Perfromances from FUJI ROCK FESTIVAL ’17


Spincoasterのキュレーター陣が選ぶ、今年のフジロックのベスト・パフォーマンス・アクト!

2017.08.10

今夏7月28日(金)、29日(土)、30日(日)に渡って、新潟県湯沢町苗場スキー場にて開催された”FUJI ROCK FESTIVAL’17″(以下:フジロック)。

今年はヘッドライナーにGorillaz、Aphex Twin、Bjorkの豪華3組を迎えつつ、同時にコーネリアスや小沢健二、MONDO GROSSOなどの国内カムバック勢の出演も大きなトピックとなっていました。
また、GallantやRag’n’Bone Man、Maggie Rogersに代表されるような気鋭の海外若手アクトから、DATSやnever young beach、D.A.N.、yahyel、the fin.などといったメキメキと頭角を表してきた国内若手バンドのフックアップも忘れない鉄壁なラインナップで、今年も多くのオーディエンスが苗場に集結することに。7月29(土)、2日券、3日通し券がソールド・アウトするなど、昨年同様大盛況ぶりをみせました。

そんな今年のフジロックのベスト・アクトを、Spincoasterのキュレーターが独自にピックアップ! 実際に行かれた方は改めてその記憶を反芻しながら、そして残念ながら今回は行けなかったという方は苗場を頭の中に思い浮かべながらチェックしてみて下さい!

Text by Spincoaster


■Gallant

7/28 (Fri.) 16:10 RED MARQUEE

昨年リリースしたデビュー・アルバム『Ology』がグラミー賞にもノミネートされたLA発・新進気鋭のR&Bシンガー、Gallant(ガラント)。シンセ、ドラム、ギターと3人のバック・メンバーを引き連れてステージへ登場するや否や、先述のアルバムから「Open Up」でライブは幕を開けた。よりライブ仕様にアレンジされた楽曲もさることながら、彼の圧倒的な歌唱力――特に美し過ぎるファルセットを目の当たりにしたオーディエンスも、初っ端からボルテージ全開。大学時代に日本語を勉強していたとのことで、MCでは流暢な日本語で感謝の気持ちを述べるのだが、そのパフォーマンスとの姿のギャップにもやられる。RED MARQUEEからはみ出さんばかりのオーディエンスは、決して雨宿りで来ていたわけではないだろう。その証拠に、最後に披露された彼の代表曲にしてデビュー曲、「Weight In Gold」では会場中で大合唱が巻き起こっていた。彼が姿を消すまで鳴り止まなかった拍手も、彼のライブのクオリティの高さを物語っていた。(Takazumi Hosaka)


■The xx

7/28 (Fri.) 19:20 GREEN STAGE

2010年のRED MARQUEE、2013年のWHITE STAGEのトリ、そして今年はGREEN STAGEのトリ前と、着実なステップアップを遂げたThe xx。しかし、3人の演奏スキルやライブ時の演出がいくら洗練されようとも、その誠実なパフォーマンスは変わらない。
Jamieがリアルタイムでビートを構築していくスタイルや、DJセットのように曲間をスムーズに繋げたり、途中で彼のソロ作の楽曲を挟むような構成は昨年の来日公演と同様だが、そのクオリティ、息の合い方は格段に向上。RomyとOliverの掛け合い、そして妖艶な絡みもより様になっていたように思えるが、GREEN STAGEを埋め尽くさんばかりのオーディエンスを前にしたMCで、思わずRomyが少しはにかみながらも言葉を失ってしまうような姿には、思わずこちらも涙を禁じ得なかった。きっと彼らはその活動の規模を今後いくら拡大させようとも、その核の人間臭い部分。誠実でいて、愛おしい人間性は変わらないのだろうなと、そんなことを確信させてくれる一夜だった。次は是非ともGREEN STAGEのトリで!(Takazumi Hosaka)


■Gorillaz

7/28 (Fri.) 21:30〜 GREEN STAGE

今年のヘッドライナーのなかで一番楽しみで仕方なかったのがこのGorillaz。新旧の代表曲を満遍なく織り交ぜたオールタイム・ベストなセットリストに、圧巻の存在感を放つ大所帯のバンド・メンバー。目玉であるゲスト出演は、Vince Staples、Popcaan、D.R.A.M、Kilo Kish、Jehnny Beth (from Savages)などがバック・スクリーンに。そして、Jamie PrincipleとZebra Katzコンビが本人登場のサプライズ! そうそう、この祝祭感を生で観たかったのだ。初期の映像主体の配置も好きだが、バンドをメインに据えたいまのスタイルは『Humanz』という新作のタイトル通り人間がよく映える。なによりオーディエンスを煽るDamon AlbernがBlurよりも生き生きしているようにも見えた。あぁ、かっこいい……。そして、メンバーであるNoodle(大阪出身の女の子)の帰郷を分かち合うかのように、彼女メインのMVが多数流れ、全く色褪せない映像美を放つそのドラマに終始見惚れてしまった。楽曲で歌われるディストピア的世界観も、フェスではハレとして機能する気持ちよさ。まさに「Feel Good」なパフォーマンスでした(「Feel Good Inc.」、聴きたかった!)。(Takato Ishikawa)


■The Avalanches

7/29 (Sat.) 16:50〜 GREEN STAGE

昨年RED MARQUEEに出演予定だったものの、「メンバーの健康上の問題」からドタキャンしたThe Avalanches。結果的にはそれは万事オーライだったとしか言いようがない。およそ16年ぶりとなった2ndアルバム『Wildflower』をしっかりと聴き込むことができたうえ、ステージもREDからGREENに昇格。サンプリング中心のサウンドがライブではどのように演奏されるのか? という点が気になっていたが、今回は当日の楽しみのため情報をあえてシャットアウトしていたのだけど、まさかここまでGREEN STAGEという大舞台が映えるバンド編成で来るとは。まず何といっても目を引くのはバットを持ってステージを闊歩する超かっこいい女性MC、Eliza Wolfgramm。さらに男性MCの方はどこかで見た顔……って、Spank RockのNaeem Juwanじゃん!
そんなわけで今回フジではSpank Rockの「Bump」のカバーも披露していた。そして特徴的なヒップホップ・グルーヴを生み出すのは80’sヒップホップ・ファッションに身を包んだ女性ドラマー。The Avalanchesは現在Robbie ChaterとTony Di Blasiの2人組だが、今回はそこにこの個性的な3人を加えた強力な布陣でのライブだった。正規メンバーの2人も黙々とサンプラーをいじる感じではなく、ギターを弾いたりドラムの上に立ってカズーを吹いたりとたくさんの見せ場があって、本当にこれまで長きに渡りロクに活動してなかったの? とにわかには信じがたいほどに小慣れたパフォーマンス。それは観る者を自然と躍らせ、エンターテインさせてくれる、まさに「ライブ」の名に相応しいものだった。(deidaku)


■小沢健二

7/29 (Sat.) 20:10〜 WHITE STAGE

もはや説明不要でしょうか。そもそもオザケンをライブで観れることすら貴重なのに、初フジロック、そして初フェス参加というプレミアムな夜を何万人のファンと共に過ごした事実だけで胸がいっぱいになったのは、きっと私だけではないはず。入場規制を予想して早めに会場に到着し、小雨のなか今か今かと待ち続ける全国のファンたち。暗転後、カウントダウンのコール。「ゼロ!」の掛け声で湧き上がる歓声。そしてスチャダラパーの登場。聴き馴染みのある”あのリフ”が流れ、宣言通りの「今夜はブギー・バック」。まさかの一曲目に披露されるという感動、そしてステージに全員が揃っているという奇跡。日本中のそれぞれの生活のなかで、きっと十何年以上にも渡って歌い継がれてきたあのメロディーを、ここで集まり、一緒に歌い、共有できたという嬉しさ。「ダンスフロアーに華やかな光 / 僕をそっと包むよなハーモニー」から始まるあのフレーズは、このひとときの、そしてその後の一時間の全てを表していたのではないだろうか。まさにノックし続けていた扉が開いた、夢のような瞬間であった。(Takato Ishikawa)


■LCD Soundsystem

7/29 (Sat.) 22:00 WHITE STAGE

大雨がちょうど小雨になった頃、フジロック2日目のWHITE STAGEのトリを飾ったのは7年振りに苗場に帰ってきたLCD Soundsystemだ。再結成後のツアーと同じく、ステージ天井には巨大なミラーボールが掲げられている。7名のバンド・メンバーを引き連れ、James Murphyがその姿を現すと大歓声が上がり、オーディエンスの期待の高さが伺えた。彼らが紡ぐ強靭なグルーヴは、「我を忘れて踊る」という言葉がぴったりで、曲の長さ、ライブの長さを全く感じさせない。「Movement」〜「Yeah」という鉄板の流れの後、一息ついた頃に時計に目をやると早くも一時間が経過していた。9月にリリースされる新作『American Dream』からの新曲も披露し、本編ラストを「Home」のシンガロングで飾った。そして、アンコール・ラストの曲はもちろん「All My Friends」。ピアノのリフが流れた瞬間にオーディエンスからも「待ってました!」と言わんばかりに悲鳴にも似た歓声があちこちから上がる。後はもう、ひたすら繰り返されるビートに身を委ねるだけだ。次第に増してゆく高揚感はクタクタに疲れた僕らをどこまでも踊らせ、歌わせてくれる気がした。「ここで、いつまで踊り続けたい」、そんな幸せに満ちた刹那の110分間であった。(Nojima)


■Lorde

7/30 (Sun.) 18:50 GREEN STAGE

フジロック3日目のトリ前、日も沈みかけたGREEN STAGEに登場したのは自らを”魔女”と称するLorde。日本でのライブは2014年のRED MARQUEE以来3年ぶりだ。バック・バンドはドラムとキーボードが2人、照明や映像も最小限のセッティングながら、ライブが始まると各所で絶賛される20歳とは思えない成熟した歌声で苗場の空気を一瞬で自分色に染め上げてしまった。ステージを縦横無尽に動き回りながら新作『Melodrama』から前作にかけて満遍なく披露し、名曲「Royals」ではこの日一番の大きな歓声が。
また、その圧倒的なパフォーマンスもさることながら、時折観客に語りかけるMCやステージを降りてハイタッチする愛らしさに、皆どんどん彼女の世界に引き込まれていった。ラストを飾った「Green Light」の盛り上がりは演者と観客が一体となった素晴らしい光景で、その歌声と人としてのパワーに魅了され続けた一時間だった。余談だが、後日彼女のInstagramにはフジロックに関する投稿が。どうやら年頃の女の子らしく、彼女も普通にフェスを満喫していたようだ。(Toyamer)


■Thundercat

7/30 (Sun.) 21:00〜 FIELD OF HEAVEN

今年彼がリリースしたアルバム『Drunk』は、そのジャケットのインパクトを裏切らない完成度とバラエティ豊かな楽曲、そして豪華な客演で大きな話題を集めていたThundercat。もちろん今年のフジロックでも個人的に最も観たいアクトとして楽しみにしていたので、ヘッドライナーのBjorkを泣く泣く諦め、いざFIELD OF HEAVENへ。
ThundercatことStephen Brunerが登場すると、客席から「MEOW MEOW」の声が上がるというシュールさ。彼の6弦ベース・プレイは、ベースという楽器の概念を越え、もはや違う楽器を弾いてるかのようにみえた。さらに凄かったのは、ドラムのJustin Brown。3曲に1本のペースでスティックを折るという入魂のドラミングでオーディエンスを圧倒。本当に弾いてんのか! と言いたくなるくらいバカテクなのに、めちゃくちゃ踊れるしノレるしとても気持ち良いグルーヴ。まさに圧巻のライブで完全にベスト・アクト。後で知ってさらに衝撃を受けたのが、ThundercatことStephen Brunerはアメリカのスラッシュ/ハードコア・バンド、Suisidal Tendeciesの元ベーシスト。さらに日本好きらしく、収録曲「Tokyo」は日本のゲーム音楽にインスパイアされて作ったとMCでも話していて、東京で楽しそうにはしゃぐMVも後日公開された。今年のフジロック3日間を締めくくるに相応しい、拍手喝采のベスト・アクトだったので、インパクトありすぎる『Drunk』ジャケットの入水Tシャツも入手。昨年のKamashi Washigntonに続いて、フジロック3日目のFIELD OF HEAVENの大トリは間違いなし!(Eriko Sakai)


■YOUR SONG IS GOOD

7/30 (Sun.) 29:00 SUNDAY SESSION (RED MARQUEE)

フジロック最終日の朝4時のRED MARQUEEに登場したYOUR SONG IS GOOD。つまり、その場に集まった全てのフジロッカーにとって、今年のフジロックで最後に観るアクトということになる。フジロックは体力と気力との戦いでもある。ペース配分もとても重要だ。しかしこのYOUR SONG IS GOODのステージに関しては、もう体力を残す必要は一切ない。限界まで踊って、後は帰ってぐっすり眠るだけだ。ということで、誰もが全身ボロボロのハズなのに、ユアソンの陽性のグルーヴに体を委ね、踊り、飛び跳ねる。新作『Extended』の楽曲はディスコ、ハウス、レゲエ、ダブなどを下地にダンス・ミュージックが持つ「ループの快楽」をシンプルかつ徹底的に追求した作品であったが、この瞬間のために作られたのではないかと思うほど、楽曲、演奏、オーディエンス、シチュエーション、その全てが寸分の隙間もなくガッチリとハマる感覚が確かにあった。ライブが終わった頃にはもう空も明るくなっていたが、もう思い残すことは何もない。何にも後ろ髪を引かれることなく、フジロックの会場を後にすることがこんなにも清々しいことだとは知らなかった。(Nojima)


【イベント情報】

“FUJI ROCK FESTIVAL ’17”
日時:2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
場所:新潟県 湯沢町 苗場スキー場

■詳細:http://www.fujirockfestival.com/


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