日本にフェスティバル文化が輸入された当初から、”FUJI ROCK FESTIVAL”(以下:フジロック)と共に日本における2大フェスとして、夏の風物詩と化してきた”SUMMER SONIC”(以下:サマソニ)。
豊かな大自然を楽しむのでなく、利便性の高い都市型フェスティバルという形式を取っていながらも、野外フェスにも全く引けを取らない規模の大きさを見せる、世界中で見ても稀有なフェスティバルといえるのではないだろうか。もちろん、特殊なのはその形式だけの話ではない。年々邦楽アーティスト、そして欧米圏以外の、アジア圏内の気鋭のアクトの出演数を拡大し、より多様性に富んだラインナップを実現させているというのも、近年のサマソニの大きな特徴だ。
今年はCalvin HarrisとFoo Fightersという世界基準のヘッドライナーを招聘しながらも、同時にサマソニで成し得ないバラエティ豊かな出演陣が顔を揃えている。そんなサマソニは、一体どのようなヴィジョンを掲げ、どのような哲学の元に開催されているのか、主催のCreativeman Productionsのブッキング担当である平山善成氏(写真・左)と長嶋誠志氏(写真・右)に話を伺った。
Interview by Takazumi Hosaka
Photo by Kohei Nojima
―まず、おふたりとも簡単な自己紹介をして頂いてもよろしいでしょうか?
平山:僕は洋楽が中心であるのですが、一応サマソニ全体のプロモーションを担当しています。内容としては各レコード会社さんと連絡を取ったり、メディアの方々にプレス・リリースを送らせてもらったり。あとは、いくつかブッキングにも関わらせてもらってもいます。
長嶋:僕は邦楽の方のブッキングを担当しています。毎年、大体オーガナイザーの清水の方から早い段階で「今年はこういう傾向で」っていう話がくるので、それに合わせたアーティストをブッキングしていきます。早い時は前年のうちに固まってくることもありますね。今年で言うと、例えばSONIC STAGEなんですが、あそこは例年ではインディ・ロック〜UKギター・ロックな傾向が強いんですけど、今年はSUM 41、Good Charlotteといったどちらかというと”PUNKSPRING”とか”Warped Tour”のようなカラーになりそうだということで、邦楽勢もそういったカラーに合うバンドをブッキングさせてもらっています。
-今年のサマソニの傾向みたいなものが固まってきたのは、どのアクトが決まってきた辺りだったのでしょうか?
長嶋:今年は最初から明確な傾向があったというよりかは、段々とできてきたっていう感じですね。ひとつの大きなアクトに全体をグッと寄せていくのではなく、丁寧に少しずつ組み立てていく中で、徐々に全体像が固まってきたというか。途中、「まさかここにBLACK EYED PEASが本当に来るなんて!」、みたいなサプライズもありつつ。良い意味で最初の構想にはなかったようなアクトも決まったり。それによってまた流れが変わる、ということもありましたし。
平山:でも、やっぱりヘッドライナーであるCalvin Harrisの存在は大きいですよね。東京1日目は彼に寄せたメインストリームのポップ系のアーティストが多くなりましたし。もう一組のヘッドライナーであるFoo Fightersは、出演が確定したのが結構遅かったんですけど、そこからFoo Fightersに合わせたロックの流れも組み立てていって。MARINE STAGEに関しては、ポップな日、ロックな日という感じで結構今年はカラーが分かれたと思いますね。
―近年、メインとなるMARINE STAGEはポップ寄りの日とロック寄りの日で分かれることが多いですが、その中でも今年はより振り幅が広いですよね。ロックはロックでもラウド寄りというか。
長嶋:そうですね。発表するのは遅くなってしまったんですけど、Foo Fightersの話はもちろんかなり前から進めていて。それを前提に、ホルモン(マキシマム ザ ホルモン)、マンウィズ(MAN WITH A MISSION)、BABYMETALには先に声をかけていて。
―先程おっしゃっていたように、今年のラインナップの傾向を固めたことになったヘッドライナーのCalvin Harrisですが、新譜がこれまでのEDM路線から大きく異なった作風となっており、大きな話題を集めましたよね。そういった情報は事前にキャッチしていたりしたのでしょうか?
長嶋:いや、そこまでは流石に事前には把握していなかったですね。僕らもおそらく皆さんと同じくらいのタイミングで知りました。最新作からの曲が公開される頃には、既に大部分のラインナップが固まっていましたし。
平山:メインストリームの流れを大きく変えるような、「今の音」が非常に出ているアルバムだったので、そういう意味ではサマソニでどのようなステージを見せてくれるのか、我々も非常に楽しみですね。
―ちなみにFoo Fightersの出演交渉に時間がかかったというのは、条件的な面から?
長嶋:そうですね。最終的には条件も含めて、向こうからの返答待ち、という状況だったみたいですね。
平山:あとは決まっていたけど、発表のタイミングで本人たちも色々と特別な仕掛けを考えてくれていて。昨年末からオフィシャル・サイトがパスポートと航空写真をモチーフにしたようなデザインにリニューアルされていたじゃないですか。そこで、日本公演の発表の時にも何か変わったことをやりたいっていう話をバンド側からもらっていたんです。それを色々と詰めていくのにちょっと時間がかかったっていうのもあって。ストレートに出していればもうちょっと早く発表できたのかも知れませんけど。(※日本公演発表時には「#FootoBooth」というFoo Fightersのメンバーとの写真がシェアできる企画が行われた)
— Foo Fighters (@foofighters) 2016年11月6日
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— Foo Fighters (@foofighters) 2016年11月7日
Almost There… Are you ready? #FootoBooth ???⏱️?? pic.twitter.com/2wm7BGhoex
— Foo Fighters (@foofighters) 2017年3月30日
foofighters: Come on in… #FootoBooth ��� https://t.co/LmK8WWnSYX #DaveGrohl pic.twitter.com/UBMYtL28zd
— Dave Grohl Freak 4Ev (@GrohlVeryGrohl) 2017年5月22日
―では、今年のサマソニでの、おふたりの個人的なプッシュポイントというか、見どころなどがあれば教えてください。
平山:東京の初日ですと、個人的に今年はGARDEN STAGEがおもしろいんじゃないかなって思っています。SpincoasterさんでもインタビューされていたMr JukesとかNulbarichみたいな、音楽通な方たちに響くようなアクトの流れを作ることができたのかなと。Mr Jukesは御存知の通り、あのBombay Bicycle Clubのフロントマンによるソロ・プロジェクトで。ちょっと前にも来日していて、渋谷のジャズ・バーみたいなところでイベントを行っていたり、他にも度々レコードを掘りに来日したりと、かなりの日本通だそうですね。サウンド的にはBombay Bicycle Clubとは全く違うテイストなんですが、それこそ在日ファンクやNulbarichのようなソウル、ファンクといったブラック・ミュージック寄りの流れにピッタリとハマったなと。しかも、今回は7人くらいの大きな編成でライブを披露してくれるみたいで。すごくおもしろいんじゃないかなと、個人的にも期待しています。
―Mr Jukesは1stアルバム『God First』をリリースしたばかりと、タイミング的にもバッチリですよね。では、2日目はどうでしょうか?
平山:2日目は、特にMARINE STAGEの流れが良いですよね。ずっとここにいる人もいるんじゃないかなっていうくらい。
長嶋:ちょっとMARINEとSONICが悩ましいけどね。
平山:そうですね。ラウドなロック系と、パンク〜メロコア系で迷う方も多いかもしれません。(東京2日目の)SONIC STAGEだと、個人的にはSWMRS(スイマーズ)っていうアメリカのバンドに注目しています。Green DayのBillie Joe Armstrongの実の息子であるJoey Armstrongがドラマーっていうことでも注目を集めがちなんですけど、別に父親が有名云々ではなくて、純粋にサウンドがすごくカッコイイんです。レーベルが〈Fueled by Ramen〉(エモ/ポップ・パンク系のバンドが多く所属するレーベル)なので、その辺りともリンクしつつも、音的にはもっとガレージ・パンクに近いというか。
―2日目のMARINE STAGEで言うと、これまでに何度もサマソニへの出演を果たしてきたBABYMETALが、遂にMARINEに出演することになりますよね
平山:BABY METALは本当にその成長をずっと見させてもらうことができて。一番最初は2012年のSIDE-SHOW MESSEでの出演だったんですが、バンドもいない、3人だけのセットで出てくれて。
長嶋:昔はサマソニのオープニング・アクトとして出演してくれた国内のバンドが海外のヘッドライナー・アクトを観て、「いつか自分たちもあのステージに立ちたい」って思う、みたいな構図があったんですが、BABYMETALの場合は最初に出た年のももクロ(ももいろクローバーZ)を観て、「あのステージに立ちたい」って思ってくれたみたいで。国内のアーティスト同士でもそういうストーリーが出来てきたというのは、サマソニにとってもすごく価値のあることなんじゃないかなって思います。
-それだけフェスとしての歴史を積み重ねてきた証拠でもありますよね。
平山:そうですね。彼女らは海外からの評価もすごいですし、既に錚々たる実績もある。今ウェンブリー・アリーナ(イギリス・ロンドンにある大規模な会場。最大収容人数は1万2千500人ほど)を埋められる国内アーティストなんてたぶん彼女たち以外にはいないんじゃないんですかね。海外のビッグ・ネームなアーティストのサポートにも抜擢されていますし。今年1月に開催したGuns N’ Rosesの来日公演にも出演してもらいました。
長嶋:何か、ほぼやりつくしちゃったような気すらするよね。あとは……IRON MAIDENの前座とかかな(笑)。
―なるほど。では、邦楽勢ではいかがでしょうか?
長嶋:そうですね、個人的にはCalvin HarrisとかPhoenixが楽しみだったりするんですけど(笑)。でも、今年の邦楽勢では彼らのような海外アクト好きな方にも響くであろうNulbarichやSuchmosがいます。ジャンルは違うけど、ブラック・ミュージック的要素や、リゾート感みたいなものが共通しているっていう部分で、良い流れが見えてくるんじゃないかなと。
あとは、Charli XCXがきゃりーちゃん(きゃりーぱみゅぱみゅ)とコラボしていたりと、そういう洋邦の繋がりを提示できるのもサマソニならではなのかなと。もちろんステージ上でコラボしてくれるのかどうかはわかりませんけど(笑)。
長嶋:また、東京1日目のBEACH STAGEもKehlani、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)、Tuxedoという流れに合わせて、その前にBRADIOをぶつけてみたりとか。そのへんの洋邦混在した感じも最近のサマソニらしさになってると思います。MOUNTAIN STAGEで言えば、Kasabian、Phoenixの前にSuchmosみたいな若くて勢いのあるバンドがいるのと同時に、今年デビュー30周年を迎えたベテランのエレカシ(エレファントカシマシ)もいる。観るステージ、もしくはどういう回り方をするかによって全く異なるようなフェスのように楽しむことができるっていうのは、ここ数年のサマソニの特徴のひとつだと思うんですけど、今年はそれがかなり顕著になったなと思います。
あともうひとつ、今年のラインナップの特徴を挙げるとするならば、今年はとにかくステージに立つ人数が多い(笑)。欅坂46とかスカパラとかはもちろんのことながら、例えばPassCodeとかたこやきレインボーとかもメンバーの他にバックバンドがいるんですよね。さっき平山が言った通りMr Jukesも大編成だし、SuchmosやNulbarichも他のバンドより人数が多めだし。なので、そういうところの調整や準備は結構大変だなぁと(笑)。
―確かに言われてみればそうですね(笑)。では、近年のサマソニが力を入れている、アジア圏内での今年のオススメ・アクトはいかがでしょうか?
長嶋:やっぱり何と言っても初日はHYUKOHじゃないですかね。これはもう、SuchmosやNulbarichの流れともハマるでしょうし。彼らには去年も出演してもらってるんですけど、その頃からさらに評価は上がっていますし、こうやって日本の音楽シーンともリンクしたようなバンドが韓国から出てくるのは、おそらく初めてのケースだと思うので、じっくり育ってもらいたいっていう気持ちがありますね。
―ちょっと前だと、韓国のバンドというだけで色物というか少し特殊な存在としてみられていたようなきらいもありますが、今では自然と日本の音楽シーンに馴染んでいるように感じますね。
長嶋:そうですね。海外、つまりは欧米のアクトで言うとBlood Orange辺りとも緩やかにリンクしていますし。そういう国境を超えたラインナップを違和感なく提示できるのは、サマソニが得意としてきたことなので。あと、今年の重要なテーマで言うとやっぱり上海ですね。
―今年は東京・大阪での翌週に中国・上海でサマソニを初開催することも大きな話題となっています。これはどのようにしてスタートした話なのでしょうか?
平山:前々からアジア圏での開催っていう構想自体はあったんです。
長嶋:向こうのプロモーターからもサマソニをまるごとパッケージ化して持ってきたいっていう話しがありまして。なので、今回のサマソニの中からも何組かそのまま向こうにも出てもらえないか交渉しました。でも、やっぱりなかなかに国特有の難しい問題があって。歌詞とか曲のチェックが事前にあったりだとか、アレがダメになりこれもダメになり、というのを繰り返しつつ、ラインナップを固めていったという感じですね。でも、思ってたよりはそんなに温度差がないというか、日本のロック・バンドでもちゃんとプレゼンすると受け入れてもらえたりして。あとはネットで噂が流れちゃってましたけど、BABYMETALを猛烈に呼びたがっていたりして、その辺りもすごく同時代的になってきているなって思いましたね。
平山:やっぱりネットとかSNSが発達したので、向こうの音楽好きも世界中の情報をチェックしているみたいで。もちろん規制はあるみたいなんですけど、みんなそれを掻い潜ってディグってるみたいです(笑)。
長嶋:日本のアーティストが中国にツアーに行くと、曲を一緒に歌ってくれたりとか、下手したら日本よりも盛り上がっちゃう、なんてこともあるみたいですね。
平山:そういう話もよく聞きますね。中国でのリリースがなくても、ちゃんとチェックしてるみたいです。でも、日本のアーティストを向こうに呼ぶときは、国別のホームページ閲覧数とかである程度事前のリサーチはしていて。その後、現地の方とすり合わせていく感じですね。
―東京・大阪でのサマソニにも、年々アジア圏内からのお客さんが増えているそうですね。
平山:確実に増えてますね。全体の何%とか、そういう数字はまだ出せていませんが、数年前に比べるとアジア圏の方もそうですし、欧米からのお客さんも増えている。それはもうアジアで、これだけのメンツが揃うフェスってうちとフジロックくらいだからだと思います。あと、サマソニは空港についてからのアクセスの良さっていうのもあって、そういったところも含めて海外からのお客さんの来やすさに繋がっているんだと思います。それこそ買い物とか、ディズニーランドとかの観光も兼ねてサマソニにも、っていうお客さんも結構いるようで。
長嶋:そう考えると、サマソニを軸に日本観光の楽しみ方が広がったのかもしれません。客層も多様化しましたし、サマソニの前後の単独公演も含めて。なので、単独の切り方とかもこれから変わっていくかもしれないですね。今までは同じジャンルのアクトはなるべく被らせないようにしていたものが、サマソニでは逆にぶつけて、敢えて単独公演を別日に打つとか、そういう考えも今後はあると思います。
―上海でのサマソニも、今後はどんどん規模を拡大させたいといった構想が?
平山:当然現地の方ではそういう考えもあると思いますし、それこそ日本と同じヘッドライナーでそのまま回れるような環境が作れれば、それが一番の理想形だと思います。ですが、やっぱりさっき長嶋も言ったように、現地の政治的な状況とかもあるのでなかなか。
長嶋:中華圏は特にそうですね。
平山:そういう状況があったりするんですが、なるべくそれに近い形で実現できるように、僕らもちゃんとアーティストやプロモーターにも説明しながらやっていくしかないかなと。
長嶋:難しいというか、不安要素としてあるのは、やっぱりリーク問題ですね。確定しているものが早めに出されてしまうなら、まだ我々が謝罪すればいいのですが、交渉中のものが漏れてしまって、その後交渉が上手くいかなかった場合などはちょっと立場がないので。そういう向こうのセキュリティの甘さみたいなものは、今回も感じてしまいましたね。
―なるほど。日本でも今年もラインナップのリークが一部で話題になってしまいましたね。
平山:こちらがどれほど気をつけていても、アーティスト側に出されちゃうとちょっとどうしようもない部分がありまして……。
-なかなかコントロールできない部分ですよね。
平山:そうですね。「(ラインナップの)アートワークを確認させてほしい」という連絡が来れば、こちらも送らざるをえないので。それをキャプチャーとか撮られて出されちゃったりすることがあったり。とはいえ、事前に何も出さないわけにはいかないし。本当に難しいところですね。
-今年で言うと、やはりChance The Rapperの名前が載った画像が特に大きな話題となりましたが、彼も交渉中だったのでしょうか?
平山:はい。結果的には結実しなかったのですが、実際に詳細なところまで詰めていた段階だったので、こちらもその準備をしていて。
長嶋:逆に根も葉もない噂っていうのはあまり出てきませんね。あと、Chance The Rapperみたいなアーティストは、海外と日本での知名度、人気の格差問題が結構難しいんですよね。海外では既にヘッドライナー級でも、日本ではまだちょっと早い……という。
―今回のラインナップで言えば、KehlaniやG-Eazyなんかも、アメリカではビルボードのトップ10に入るようなアーティストですが、日本での知名度はまだ追いついていないという印象があります。
平山:そういう難しさは常に抱えつつも、国内での状況と海外での立ち位置を両方鑑みて、上手く組んでいくしかないんですよね。サマソニでは向こうのメインストリームのど真ん中をいくようなアクトも積極的に取り入れていこうっていうスタンスなので、ゆくゆくはChance The RapperとかDrakeみたいな、海外のフェスでヘッドライナーを飾るようなヒップホップ系アクトも普通にサマソニで呼べるような状況、土壌っていうものをちゃんと作っていかないといけないなと思っています。なかなか単独とかでは呼べないと思うので、まずはフェスで観せないと。
―また、さらにお答えしづらい質問となってしまうかと思うのですが、東京と大阪でのラインナップの違いが年々顕著になってきているとの声も見かけます。いわゆる格差が開いている、ということなのですが、こちらについてはどのようにお考えでしょうか?
長嶋:確かにこれも悩ましい問題なのですが、東京と大阪ではそもそも会場のキャパもスペックも全然違うので、致し方ない部分もあるのかなというのが正直なところです。やっぱり、なるべくユーザー目線でラインナップの差がないようにというのは考えてはいるんですけど、大阪は今では東京の半分以下のステージ数になっているので。
平山:そうですね。東京もステージ数が増えているので。メインとなるMARINE(大阪ではOCEAN)、MOUNTAIN、SONICのライナップは基本的に同じアクトが並ぶようにしつつ、あとはWHITE MASSHIVEに、東京のRAINBOWとBEACHの出演者を上手く混ぜ合わせたような形になっています。
長嶋:大阪サイドもなんとかして東京に負けないボリュームを作ろうと、枠をどんどん増やしたりとか、そういう努力もしてくれているんですけどね。でも、正直僕らも大阪のサマソニって体験したことがなくて。結局一日向こうにいようとすると、もう一日のラインナップが全く観れなくなっちゃうし、流石に東京に一日もいないわけにもいかないので。だから、やっぱり聞くのは出演アーティストからの声になるんですけど、「大阪はどうだったの?」って聞くと、基本的に悪い反応は返ってこないんですよね。東京だと広すぎて観きれないという声もあるくらいなんですけど、大阪だと結構会場全体がコンパクトなので、集中してライブを観るなら大阪の方がいいかもっていう意見も聞きます。東京だと各ステージを隅々まで楽しもうとすると、移動時間だけでもかなり時間がかかってしまうと思うので。
―なるほど。では、”SONICMANIA”(以下:ソニマニ)についてもお聞きしたいのですが、昨年が中止となってしまっただけあり、今年はラインナップからも気合が入っているように感じました。
平山:そうですね。結構早い段階でKasabianとLiam Gallagher、Justiceの出演が決まっていたので、その3組を軸に膨らませていきました。
―Kasabianはまだしも、Liam Gallagherをソニマニに組むというのはなかなかに大きい判断だったように思います。
平山:ブッキングの方はオーガナイザーの清水が決めたんですけど、そこもサマソニとのバランスを見て、今年はソニマニで観せたほうがいいだろうなということになったんだと思います。大阪サマソニではMOUTAINに出演するのですが。
―今年はソニマニもジャンルがより広がったように思います。国内からはヒップホップ・シーンで話題を集めるKANDYTOWNや、ライブ・ハウス〜フェス、クラブ・シーンでも引っ張りだこのD.A.Nもいるし、片やFormationみたいなUKの新人もいれば、フューチャー・ベース・シーンでカリスマ的な人気を誇るLidoが初来日を果たしたりと。
長嶋:ソニマニが変わったというよりかは、今、夜な夜なクラブで遊んでいるようなお客さんたちが聴いている音楽に自然に寄り添った結果という感じなんですよね。これまでのステレオ・タイプなイメージを突き通して、テクノやクラブ・ミュージック系のアーティストのみで固めるのではなく、やっぱり世代も入れ替わってきているので、そこは柔軟に変化させつつ。まぁ、Liam Gallagherを目当てに来る方は、ちょっと朝まで遊ぶのがキツい人もいるかもしれないですけど(笑)。
平山:Liam GallagherとKasabianは、これまでのサマソニを知っているお客さんに強い引きがあるアーティストだと思うんですけど、同時に彼らを目当てに来てくれたお客さんに、D.A.N.やLido、Formationみたいな若くて勢いのあるアクトを観てもらいたいっていう狙いもあります。逆もまた然りで。そういう意味でも、確かに今年はラインナップの幅が広がったと言えると思いますね。
-また、東京では1日目と2日目の間となる深夜に”HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER”も例年通り開催されます。ポップに開けていくサマソニとは対象的に、今年のHCANはよりインディ色が強まった印象がありますよね。
平山:そうですね。Hostess Entertainmentさんを中心に、我々とも上手く連携を取りつつラインナップを固めているのですが、今は少しマーケット的に難しくなってきてしまったインディ・ロックを、Hostessさんのカラーを借りてフェスに組み込むという意味では、我々にとっても非常に挑戦しがいのあることだと思います。もちろん夜だけ遊びに来るっていうのもアリですし、選択の幅が広がりますよね。
―今年は例年以上にSONIC STAGEからインディ・ロック色が薄れたので、より一層HCANのライナップが際立ちますよね。
平山:今年はJusticeとSUM 41がそれぞれSONICのヘッドライナーに決まったっていうのが大きくて。Justiceは最初はMOUNTAINも考えていたのですが、他のアクトとの兼ね合いで結果的にSONICに収まり。それを軸にAbove & Beyondなどが決まったりしていきました。これも色々な試みを試していく中での変化ですね。例年であればSONICに出演していそうなPONDやWhitney、Juana Molinaといったインディ・アクトが今回はGARDEN STAGEに出てもらったり。
長嶋:絶えず変化し続けるっていうのがサマソニの特徴のひとつでもあるので、自ずと各ステージの配分、カラーのようなものも変化していきますよね。それは意図的なものではなく、必然的な流れで。
―スタート当初は洋楽のイメージが強かったサマソニが、年々変化を重ねていった結果、今ではジャンルも国境もボーダレスな、実に多様性に富んだラインナップを実現しています。その一方で、カラーやヴィジョンのようなものが見えにくくなってしまうとも思います。サマソニとして目指す理想のフェス像のようなものって、制作チームの皆さんで共有されているのでしょうか?
平山:オーガナイザーの清水の言葉を借りると、「あらゆる音楽ジャンルのアーティストが出演していて、誰が来ても楽しめるフェス」ということになります。おっしゃった通り、最初はサマソニも洋楽中心のイメージが付いていたと思うんですけど、ここ最近ではそういったイメージもどんどん変わってきて。例えばフジロックとの役割、キャラクターの違いみたいなものもだいぶ明確に分かれてきていると思うんです。それだけフェスとしてのアイデンティティが強くなったことだと思いますし、そこは今後も伸ばしていきたい部分ですね。
―少し話は飛んでしまうのですが、サマソニやフジロック以外にも国内で大小様々なフェスが開催されるようになり、今ではすっかり市民権を獲得し、レジャーのひとつとして音楽フェスそのものへの注目度が高まっているように感じるのですが、サマソニ以外にも様々なフェス、イベントを手がけているクリエイティブマンさんとしてはこういった現状をどのように捉えていますか?
長嶋:”GREENROOM FESTIVAL”なんかを見ていると、確かに盛り上がりを感じますね。それほど大きくない規模のフェスなのに、あれだけの人が集まってくれて、ライブを観るだけじゃなく、総合的にフェスを楽しんでくれているなって。その一方で、フェス自体の数が増えたことにより、国内アクト中心のフェスではラインナップが似通ってきてしまったり、逆に少し特殊な試みをしようとすると集客に苦戦したり。ある意味飽和してきているような印象も感じているので、この先内容をしっかりと詰めていかないと、淘汰されていくような時代が来るのかなって思いますね。
※訂正・おわび:記事初出時、「O2アリーナ」と記載されていた箇所につきまして、正しくは「ウェンブリー・アリーナ」の誤りでした。ご迷惑をおかけした読者の皆様ならびに関係各位には深くお詫び申し上げます。(2017年8月14日 20:15)
【イベント情報】
“SUMMER SONIC 2017”
日程:2017年8月19日(土)・20日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ
大阪会場:舞洲SONIC PARK(舞洲スポーツアイランド)
■オフィシャル・サイト:http://www.summersonic.com/2017/