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INTERVIEW | どんぐりず


フロアの高揚と日常を接続。最新アルバムで示した2人の現在地

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2026.02.24

およそ1年半ぶりのフルアルバム『DONGURI ZOO』で、どんぐりずは改めて「アルバム」というフォーマットに意識的に向き合った。

ダンスフロア直撃のキラーチューンにとどまらず、ディープハウスやダブ、トライバルへと射程を広げながら、ミニマルに研ぎ澄まされた音像で奥行きのあるグルーヴを描き出す。そして、パーティの終わりと新たな始まりを同時に予感させる“NO DANCE NO LIFE”へと着地する本作は、フロアと日常のあいだを往還する一作だ。

各地でオーディエンスを踊らせ続けるなか、近年は大沢伸一とのDONGROSSOでも存在感を示した彼ら。ダンスフロアの尊さを表現した本作を携え、今月末からは久々のツアーへと向かう。そんなどんぐりずの最新モードを探るべく、森とチョモに話を訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi

L→R:森, チョモ


コラボプロジェクトの多かった2025年

――まずは昨年の振り返りからお聞きしたいです。2025年はおふたりにとって、どのような1年になりましたか?

:いろんなとこに行ったよね。結構ライブの多い1年だったと思います。フェスやイベントにもたくさん出させてもらったし。

チョモ:うん。三重、和歌山、青森とか、これまで行ったことなかった土地にも呼んでもらって。

:DONGROSSOでの出演だったんですけど、特に和歌山はバチクソ盛り上がったし、仙台も印象的だった。人も音も良くて。

チョモ:やっぱり初めて行った場所は全部覚えてるよね。

――昨年はいま話に上がったDONGROSSOや、NAGAN SERVERさんとのユニット・豊と良治などのリリースでも注目を集めましたね。

チョモ:(リリースした作品は)たしかにコラボが多かったですね。

――NAGAN SERVERさんとは以前から共作を重ねてきましたが、改めて「豊と良治」という名義で活動を開始したのは、どういった経緯だったのでしょうか。

チョモ:豊と良治は「B面プロジェクト」っていうコンセプトでやっていて。僕らは「どんぐりず」があるし、NAGAN SERVERさんはソロやN.S. DANCEMBLEなどの活動があって。それぞれで追求している音楽があるので、お互いのプロジェクト同士のコラボっていう形になると、少しハードルが上がってしまうというか、いろいろと考えてしまうし、本格的な制作になってしまうじゃないですか。

でも、普段の僕らはもっとリラックスしているし、豊と良治ではセッション的に肩の力を抜いて作りたかったんです。本当に、気の合う仲間とのセッションでしかないから、それをリリースするために別の名前を用意したっていう感じですね。

――2025年の1月1日に豊と良治の1stシングル“BORRACHO(Prod.起一)”が、その後5月にEP『Now』がそれぞれリリースされましたね。制作は2024年から?

チョモ:そうですね。2024年からちょくちょく作ってて。でも、ちょっと真剣に作っちゃってたんですよね(笑)。それで、「この真剣な感じはちょっと違うかも」ってなって、それを一回寝かせました。

チョモ:豊と良治でEPをリリースして、イベントも開催して。しばらくしてからその真剣に作った音源を聴き直したら、「やっぱりカッコいいね」ってことになって、それでリリースしたのが、去年12月に配信した『Do or Do / Rich』です。

――NAGAN SERVERさんはよくおふたりのスタジオに遊びに来られるんですか?

:去年は特によく来てたよね。1ヶ月毎に3日間くらい滞在したり。東京でも会いますけど、制作するのはだいたい俺らのスタジオかな。

チョモ:そうだね。豊と良治は今後もマイペースにできればなと思っています。

――では、DONGROSSOについてもお聞きしたいです。昨年4月に1stアルバム『ANTI SOCIAL SOUNDSYSTEM』がリリースされましたが、こちらも制作はおそらく2024年からですよね。

チョモ:「アルバムを作ろう」ってなったのが、おそらく2024年の秋頃だと思います。先にシングルで出していた2〜3曲はあったんですけど、アルバム全体ができたのが2025年の2月くらい。

――制作は大沢伸一さんのスタジオで?

チョモ:メインは大沢さんのスタジオですね。大沢さんのスタジオは機材にしろレコーディング環境にしろ、今まで行ったスタジオのなかでもすごくおもしろい環境で。そこで大沢さんのPCを僕が触らせてもらって、大沢さんと2人で順番に音を入れたりイジったりして作っていきました。バトンタッチ制ですね。

――メインで使用するDAWのソフトも一緒だったんですか?

チョモ:そうなんですよ。出会った頃は別のソフトを使ってたんですけど、いろんな人とセッションするようになって、「Ableton」に乗り換えました。自分たちのジャンル的にも向いてると思うし、実際かなり使いやすいですね。

――リリックも大沢さんと話し合って決めていったんですか?

:そうですね。アルバム自体が「現代に対するアンチ」みたいなテーマがあって。それに沿って作っていきました。

――昨年はコラボが多い1年だったとは言いつつも、いくつかどんぐりず単体でのリリースもありましたね。特に10月にリリースされた“バイブス県立グルーヴ高校 校歌”は近年のディスコグラフィの中でも一際異色で。

:あれは去年の甲子園シーズンに、「校歌ヤベえ」「盲点だったわ」ってなって(笑)。自分たちのスタジオに行って速攻でリリックも書き上げました。


「アルバムとして聴きたい」っていう気持ちで作った

――アルバム『DONGURI ZOO』はいつ頃から制作されていたのでしょうか?

チョモ:2025年の後半くらいからですかね。豊と良治とかDONGROSSOの制作が終わってからです。

――前作『DONGRHYTHM』のリリースに際して、「マジで太いアルバム」というコメントを出していました。今回のアルバムを同様に一言で表現するとしたら、どのような言葉になりますか?

チョモ:やっぱり……「元々特別なオンリーワン」ですかね。

:あ、それだ。それ使っておこう。あと、「マジでそうさ」も入れてください。

チョモ:それ人のだけど(笑)。

:やっと言えた。Threadsでしか言えてなかったから。

――(笑)。本作は『DONGURI ZOO』というアルバムタイトル通り、リード曲“GORILLA”を筆頭に、“天然記念物”、“JUNGAROO”といった動物や自然を想起させる曲名が印象的です。何かテーマやコンセプトなどを掲げて制作したのでしょうか。

:名前先行ですね。“GORILLA”ができたので、「ZOO」にしようと。

――なるほど。では、その“GORILLA”はどのようにして生まれた曲なのでしょうか。

:これはチョモから。

チョモ:“GORILLA”は、「すでに世の中にありそうな曲を作ろう」っていうふざけから始まったんです(笑)。ベースハウスのヒットチャートに入ってそうな曲をイメージして作り始めたんですけど、思いの外いい感じに仕上がって。

――そこになぜ「ゴリラ」というワードが乗っかったんですか?

:うーん……ただ、出てきたって感じです。

――《皆ひとりぼっちで踊ってるLonely gorilla》というラインが印象的です。

:クラブだったりパーティで、自分の中で踊ってるっていうのを意識しつつ。みんな各々楽しめばいいんじゃん? っていう感じです。

――おふたりがイメージする「ベースハウスのヒットチャートに入ってそうな曲」をいくつか教えてもらえますか?

チョモ:普段からめっちゃ聴いてるっていうわけではないんですけど、雰囲気でいうとFISHERとかですかね。

:俺はMPHかな。酔っ払ってるときに聴くとクソアガります。

――アルバム全体の方向性だったり、サウンド感などを話し合ったりはしましたか?

チョモ:11月くらいに話したよね。今話したような、ベースハウスっぽい、チャラいというかキャッチーな曲がいくつかできたんですけど、アルバムにそういった楽曲を多く入れると、ウルさくなっちゃうというか。

:胃もたれしちゃうというかね。

――おっしゃってることは非常にわかります。今回アルバムを通して聴いて、これまで以上に洗練されているというか、ダンスフロアだけでなくホームリスニングにも適した作品だなと感じました。

チョモ:ミニマルですよね。

:俺らももう大人なんで。

チョモ:そういうことを意識して、一度楽曲を削って、新たに制作した曲を入れて、今回のアルバムが完成しました。

――ただ、ライブのことを考えると、やはりハイテンションでキャッチーな曲の方が有効な気もします。そういった点はどのように考えていますか?

:制作のときはあんま考えてなかったですね。

チョモ:今回は「アルバムとして聴きたい」っていう気持ちで作ったんですよね。前作はわりとライブのことを意識して作った部分もあるし、今回のアルバムでも頭の2曲はそういうノリではあるんですけど。それが続くとアルバムとして聴きたくなくなっちゃうし。……やっぱりアルバムを作るからには、通して聴ける、聴きたくなる作品にしたいなと。

――なるほど。

チョモ:今回のアルバムは車の中で流し聴きするのも合うと思う。

:ひとりでじっくり聴いてもいいし。

チョモ:どんぐりずを聴いてくれてる人って、いろんな人がいると思うんです。それこそ日常的に爆音で音楽を聴ける環境がない人も多いだろうし、そんなに大きい音で聴かなくてもいいんじゃないかって、最近思い始めて。

:ゆるく聴いても大丈夫だよね。


自然と出てきた「ラジバンダリ」

――それぞれアルバムの中で特に好きな曲を挙げるとすると?

:3曲くらい挙げていいですか? “GORILLA”と“UFO DUB”と、“Who’s the best?”。……あと“JUNGAROO”も。やっぱり俺が歌ってる曲なんで。チョモは?

チョモ:“カラビナ”かな。俺が歌ってるんで。

――(笑)。どちらがボーカルを担当するか、いつもどうやって決めてるんですか?

:喧嘩っす。「この曲は俺によこせ」って言って(笑)。

――アルバムを締めくくる“NO DANCE NO LIFE”は、ふたりで歌ってますよね。

チョモ:あの曲はふたりで半々くらい歌ってるよね。

:ぶん取りたかったっすけどね。

チョモ:俺も“Who’s the best?”の最後のラップは奪いたかった。

――“Who’s the best?”は民族的な楽器の音色が印象的です。どこかインドっぽさも感じられます。

チョモ:あれは初めて生音でレコーディングしたんです。

:ジャンベでね。

チョモ:そう。ジャンベと家にあったライドシンバル、あとはスネアドラム単体。本当にそれだけなんです。

――《ひっくり返ってラジバンダリ》というフレーズがありますが、「ラジバンダリ」ってお笑いの……?

:え? ラジバンダリってなんすか?

チョモ:俺は森のオリジナルだと思ってた。

:なんだろう、なんか聞いたことあるなっていう感じで入れたんだと思います。「エトセトラ」みたいな意味じゃないんですか。

――気になって調べたんですけど、お笑いコンビ「ダブルダッチ」のネタとして、2008年頃に大流行したそうです。

チョモ:へー。森が最近それを見たとか?

:全然違う。なんか頭の中にあったんですよね。「マジでそうさ」と一緒です。自然に出てきた。

――森さんが挙げてくれた“JUNGAROO”はタイトル通りジャングルというかドラムン調で、森さんのラガっぽいフロウもバッチリハマってますよね。

:あざます。

――チョモさんはボーカルはさておき、トラック面で特に気に入っている曲はありますか?

チョモ:全部ですね。一音一音カッコいいな〜って思いながら作業してました。俺ってリズムを作る才能もあったんだなぁって。

:ヤバ。絶対書いてもらおう。才能に溢れてるって(笑)。

――なるほど(笑)。

:自分たちでも不思議なんですけど、俺たち何にもインスパイアされてないんですよ。完全に自分たちの中から出てくるというか。

チョモ:そう。本当にゼロから100作ってる感じ。……あ、特に好きな曲で言うと、俺も“UFO DUB”がめっちゃ好きですね。ビートがハーフになったり倍になったりする構成なんですけど、ハウスとダブをひとつの曲で成り立たせてみようっていうアイディアで。それが上手く成功した曲です。

――“UFO DUB”っていうタイトルなのに、序盤はダブじゃなくてハウスで、後からダブの要素が出てくるという。

チョモ:なんか森が車でかけていた曲で、もっと普通のハウスなんだけど、ベースラインだけダブっぽい曲があって。「これがあったわ!」っていう感じで、アイディアを拝借してみたんですけど。

――先ほども少し話に上がった“NO DANCE NO LIFE”は、まさに明け方、パーティの終わり頃にかかりそうなアンセミックな1曲です。この曲はどのようにして生まれてきたのでしょうか。

チョモ:なんていうか、「許される系」のやつですね。

:ご褒美系。チョモが最初シンプルで気持ちいいハウスを作ってて。

チョモ:動機としては“GORILLA”と似てるかもしれない。「クラシックなハウスを作ってみたい」っていう感じで。

:90年代初頭から2000年代くらいの感じかな。やってみたら結構溢れてくるものがあって。昔からどんぐりずを聴いてくれている人にとっては、一番新しい感じに響くんじゃないかな。

チョモ:そうだね。リリックも結構ふたりで考えましたね。同じメロディで、長いリリックを繰り返したくて。

:箇条書き系でね。それをパズルみたいに組み立てていった。

チョモ:あと、真ん中のパートは2人それぞれ3、4本ずつぐらいボーカルを録って、それをミックスしています。結構ドリーミーな感じが出せたかなと。

:「どっちの声?」っていう感じでね。でも、それが結構いいんだよ。早くライブでも歌ってみたいですね。


「全員踊らせます。全員満足させます」

――ライブと言えば、およそ2年半ぶりのツアーの開催も控えています。

チョモ:そもそも2024年に独立してから、まだワンマンをやってないんです。ツアーではワンマンだからこそできるような演出──たとえばじっくり時間をかけて盛り上げていったりするような──などができたらいいですね。フェスやイベントと違って、どんぐりずのためだけに来てくれるわけだから、そういうファンの方だからこそ楽しめるような内容にしたいなと。

:全員踊らせます。全員満足させます。

――頼もしいです。では、2026年はどのような1年にしたいですか?

チョモ:このアルバムをみなさんに楽しんでもらってるうちに、また違う作品を作れたらなと。今年はどんぐりずを中心にした1年にしてもいいのかなって思います。

:あと2枚くらいアルバム出したいよね。あとは夏っぽいEPとか。

チョモ:作品はいっぱい作りたい。あとは風邪を引かないようにしたいのと、ちゃんと起きたい。

:マジ大事。

――ちゃんと起きたい?

チョモ:豊と良治のプロデューサー名義にしてる「起一」っていうのが僕の本名なんですけど、朝弱すぎて名前負けしてるので(笑)。

――(笑)。おふたりは現在は無所属で、スタッフを雇うこともなく完全自主で活動されてるそうですが、今後のビジョンについてはどのように考えていますか?

:まぁ、忙しくて手が回らないってなったらスタッフを入れると思うけど。今のところはなんとかなってるよね。

チョモ:うん。個人的には、このまま歳を重ねていって、アジア人の小さいおじさん2人がダンスミュージックを作ってるっていう、深さというかヤバさが出てきたらいいなって思っています。

:50歳くらいになったらかなりヤバそう。

チョモ:例えるならChase & Statusから滲み出るおじさんとしてのカッコよさ。そういう深みが出せたらいいですね。あとは、謙虚にいきたいです。

:そうだね。謙虚にいこう。


【リリース情報】


どんぐりず 『DONGURI ZOO』
Release Date:2026.01.21 (Wed.)*
Label:DONGURIZU
Tracklist:
01. GORILLA
02. パンナコッタビンタ
03. カラビナ
04. UFO DUB
05. 湘南新宿ライン
06. Who’s the best?
07. 天然記念物
08. Skit
09. JUNGAROO
10. NO DANCE NO LIFE

※CD・LP:2026年5月6日(水)発売

配信/CD・LP予約リンク


【イベント情報】


『どんぐりず TOUR 2026 “DONGURI ZOO”』

日時:2026年2月22日(日・祝前)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:福岡 The Voodoo Lounge

日時:2026年3月6日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:大阪・梅田 BANGBOO

日時:2026年3月13日(金)OPEN 18:15 / START 19:00
会場:東京・渋谷 WWW X

主催:どんぐりず
制作:YUMEBANCHI/lit

チケット詳細(e+)

どんぐりず オフィシャルサイト


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