Tokyo Recordings
FEATURE

Interview / Tokyo Recordings スタジオ潜入取材!(前編)


本邦初公開!? 若きクリエイターが集う場所、Tokyo Recordingsの秘密基地へようこそ!

2015.06.21

ざっくばらん極まりない括り方ではあるが、いわゆる"東京のインディ・シーン"において、昨年最も大きな躍進ぶりをみせたアーティストのひとりと言っても過言ではないであろう人物、それがN.O.R.K.のシンガーでもあり、Tokyo Recordingsの創設者であるOBKRだ。

前述のクラシカルな要素を下敷きにしたR&B〜ソウル的なサウンドを奏でるユニット、N.O.R.K.の1stアルバム『ADSR』リリースや、海外アクト(Sun Glitters)との共演、そして単独としてはLucky TapesKai Takahashiとの共作や、同バンドとの共演。ゲスト・ボーカルとして80KIDZのツアーへの同行を経て、COUNTDOWN JAPAN 14/15へ出演。また、盟友酒本信太と共に水曜日のカンパネラの新EP『トライアスロン』への楽曲提供などなど、ジャンルもシーンも横断しながら、目まぐるしい活躍ぶりをみせてくれた。

そしてそんな多忙な彼が昨年立ち上げたのがこのTokyo Recordingsという未だ実態があまり知られていない気鋭のレーベル兼コミュニティのような存在。
全員が平成生まれという若きクリエイターたちが集う彼らがこれまでに世に送り出したアーティストは綿めぐみXanaxCapesonというジャンルも世界観もバラバラな3組。そこに通底するのは既存の価値観に囚われない鋭敏なセンスに裏付けされた、独特の美学とも言えるもの。

今回は、そんなTokyo Recordingsの首謀者、OBKR(小袋成彬)に招待される形で、彼らの活動の拠点となっている都内某所にあるスタジオ、通称Aoyama Basementに潜入取材を敢行。
レーベル・アクト以外にも、ミニ・アルバムと7inchシングルを立て続けにリリースし、勢いに乗っているSuchmosのレコーディングでも使用されたり、界隈の近しいアーティストたちもよく遊びに来るという言わば彼らの秘密基地とも呼べるこのスタジオの正体を、前編後編の2本仕立てで暴きます!

前編ではまず、スタジオに入るなりOBKR(以下:O)と同レーベルの中心メンバーのひとり、Youki Kojima(以下:K)のふたりに次々と見せつけられた機材の数々を、ふたりの丁寧な説明と共にご紹介。

中古で買い集めたモノを中心に、決して広くはないスペースに所狭しと置かれた機材の数々……。
ここにTokyo Recordingsサウンドの秘密が…!?

Interviewer: Takazumi Hosaka
Photo: Nahoko Suzuki


Mixer : Toft Audio ATB Console 32 Channel

レコーディング・スタジオならやはりこいつから、ということで、まずは知り合いを通じてアメリカから空輸してもらったというミキシング・コンソール。

届いていざ開封したらパーツが欠けていたらしく(梱包漏れ)、「『今(そのパーツを)探してるから安心してくれ!』って感じの、謎に上から目線の相手とメールでやり取りしてました(笑) (K)」とのこと。


Keyboard Instruments : YAMAHA C5 Grand Piano

「遊びに来た友人たちにサインを書いていってもらっているんですよ (O) 」と語るとおり、コンソールの後ろに位置し、ミックスルームのかなり大きなスペースを占有しているグランド・ピアノは、もはや新たに書き足すスペースがほとんど残っていないくらいにビッシリとサインで埋め尽くされている。

ジックリ見ているといくつも知った名前のアーティスト、バンドの名前が……!


Keyboard InstrumentsFender Rhodes Stage Piano Mk2

「シンセですか?」という無知な筆者の質問に対して、「これはシンセではなくてエレクトリック・ピアノで、本当にピアノみたいに中の金属板を叩いて音を出してるんですよ (O)」「構造的にはエレキ・ギターと同じ。本体の中にピックアップが仕込んであって、それをアンプに送って音を鳴らすっていう。カーペンターズとかスティーヴィー・ワンダーとかが有名な使い手ですよね (K)」と、親切に教えてくれたふたり。

なんでも楽器屋の奥の方で埃被ってたボロボロの状態のものを買ってきたらしいが、アナログ機材特有の温かみあるそのサウンドは、綿めぐみのレコーディングなどで大活躍した「相当コスパが良い(笑)」シロモノだそう。

なお、弱点は 「ラ」の音が上手く出ないことと、ノイズがでやすいこと。(笑)


Modular Synthesizer : A-100 Analog Modular System (DOEPFER)

Tokyo Recordingsの面々が目下鋭意制作中であるCapesonのレコーディングにも導入しているというモジュラー・シンセ。「これは入門セットってわけではないですけど、結構安めのモデルで、まだ下にモジュールを足せるんですよ。(モジュラー・シンセは)ハマると収集癖が出てきて大変なことになっちゃうので、ホドホドにしてます(笑) (K)」とのこと。

「確かThe Drumsが同じの使ってました (O)」

「めぐちゃんのレコーディングでも使いましたね (K)」

「え? 何に使ってたっけ? (O)」

「何か勝手にトクくん(エンジニアのTokuya Yokohata)が入れてたよ(笑) (K)」

「知らなかった(笑) (O)」


Monitor Speaker : UNITY AUDIO THE ROCK MK2 & Adam A7X

スタジオのモニター・スピーカーは2セット。ひとつはAdam AudioのAdam A7X。
もうひとつはN.O.R.K.のアルバムをマスタリングしたロンドンのレコーディング&マスタリング・スタジオ、メトロポリスの標準装備にもなっているというUnity AudioのTHE ROCK MK2。

他のスタジオではまず見たことがないという後者の特性から訊いてみた。

「とにかく解像度が高いっていうのと、バスレフ型じゃないので、低音がスッキリしてて、早い。って感じですかね (K)」

「やっぱりミックスの違いとかがハッキリと分かるんですよね。こっちはアダム(Adam Audio)のスピーカーで、所謂”お疲れさんスピーカー”。『オラァ!』ってぶん殴ってくる感じの音(笑) (O)」

「レコーディングとかミックスが終わって、最後にこっちで聴くと盛り上がるっていう(笑) (K)」

「普段ミックスでもアダムを使う人もいるみたいなんですけど、こっち(Unity Audio)は本当にシビア。Adeleとか聴くと鳥肌立ちますよ。ただ、逆にZeddみたいなEDMとかを聴くと「はー! やめてくれー!」ってなります(笑) (O)」

「あとUKガレージものとかもUnityで聴くと最高だなって思いますね。真ん中の周波数がすごい出るから、ギターのクランチとかがたまらない (K)」

 



Drum Set : TAMA Starclassic

ミックス・ルームの隣に位置する別の部屋、実際に楽器やボーカルを録音するブースを今度は見せてもらうことに。

ドラム・セットを組めばそれで大分埋まってしまうような、決して広いとは言えないスペースだが、彼らはその自由な発想力を武器に、この部屋でCapesonのMVのワンシーンも撮影したという。

「これは綿さんの(作品で)ドラム叩いてる内川っていうやつの私物です(O)」

「私物を勝手に置きっぱにされてます(笑) (K)」

「ちなみに、内川さんはエビ中(私立恵比寿中学)のバックでも叩いてます。クラスは違ったけど、彼はおれの高校の同級生なんです。で、高校時代に酒本とバンドを組んでいたこともあって、そこで繋がっていったんですよね (O)」

https://www.youtube.com/watch?v=F5zOGYqmVp8

MV撮影で使用したスモークマシンを自慢気に見せてくれたOBKR氏

_MG_1770

 


Guitar Amp : Orange OR15H
Bass Amp : Fender Ramble 410
Guitar Cabinet : Mesaboogie Black ShadowX2

ミックス・ルームと録音ブース、両部屋の出口を出てすぐの廊下に積み上げられている物々しいアンプ類。レコーディング時はこれを必要に応じて録音ブースにセッティングする。

めぐちゃんCapesonでも使ってるギター・アンプ(上、下)とベース・アンプ(真ん中)ですね。ORANGEのヘッドアンプ(上)に合うキャビネットを探して色々見てたんですけど、最終的にとある楽器屋でみつけたこいつ(下)に。あまりにもお買い得だったんで、「なんでこんな安いんですか?」って店員さんに聞いたら「今時ねぇ、こんな(音が)デカイやつ誰も鳴らせないんですよ」ってキレ気味で言われました。(笑)
爆音だけど結構クリーンな音色なんですよ。マイクが近くに立てやすいように、ネットも外しちゃいました  (K)」


その他にも山のようにある細かい機材を、一部ご紹介!

Tokyo Recordingsのサウンドの核を担う人物の一人、以前Spincoasterでも対談形式の取材をさせて頂いた酒本信太氏愛用のKORG nanoKey2

「酒本さんはこれでしか作らないんすよ。2オクターブ分のMidi鍵盤なんですけど、めぐちゃんのアルバムもこれで全部作ってました (O)」

「これとMacBookだけ持って、よくスタバとか作ってますよ (K)」

Kojima氏が脇に抱えるのはマイクに被せることで反響音などをカットできるというKAOTICA Eyeballという機材。

「届いて現物を見たらマイクを入れる穴が小さすぎて、ノイマンの小さいマイクくらいしか入らないだろって言って放置してたんですけど、公式動画を見てみたらでっかいコンデンサマイクとかを無理やりグワっと力任せにぶっ刺してて。で、実際試してみたら本当に素晴らしい効果でした(笑) (O)」

「2〜3万したから最初は「ふざけんなよ」って感じだったんですけど、後に真価を発揮してくれました。(笑)
部屋鳴りを消してくれるので、リヴァーブとかをかけてもすごく違和感なく馴染むんですよ (K)」

「しかもすごい音像が近い (O)」


※まだまだ続きますTokyo Recordings潜入取材!
後編では主要メンバーの出自や出会い、そして今後の目標などについてのインタビューをお届けします!

後編はこちらから!


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