INTERVIEW

シャムキャッツ

「この4人でやる意味を、今まで以上に出すためにはどうすればいいのか」――バンドとしての成熟ぶりを提示した最新作にかける想い

昨年、自主レーベル〈Tetra Records〉を立ち上げ、2枚のアグレッシブなEP『マイガール』、『君の町にも雨はふるのかい?』をリリースしたシャムキャッツ。
果たして、その勢いのままに届けられたかのような待望のフル・アルバム『Friends Again』を一聴した際、おそらく彼らのファンであればあるほど驚くのではないだろうか。ここにあるのは先述のような様々な要素を盛り込んだ2枚のEPとも、そしてその前作に当たる『AFTER HOURS』、『TAKE CARE』のコンセプチュアルな2枚とも趣の異なる、ただただ良質なアルバム作品。音数も削り取られ、オーバーダブもない代わりに、繊細な音の粒が綿密な計算の上で適材適所に配置されているような、そんな職人的なきめ細やかさをも感じさせる。

もちろんこれまでの彼らの持ち味であった癖の強いメロディ・ラインや奇妙な言語感覚を擁したリリックなども健在ながら、これまでの延長線上というよりは、ハッキリと一段階段を登ったかのような、そんな印象を受ける本作。果たしてこの成熟ぶりは一体どこから生まれたのか、そしてメンバー全員が幼い頃からの友人同士であることを踏まえると、様々な憶測を呼んでもおかしくないタイトルを冠した本作について、メンバー4人に率直な話を訊いた。

Interview by Takazumi Hosaka、Yui Tsuda
Photo by Kohei Nojima

[L→R:大塚智之(Ba.&Cho.)夏目知幸(Vo.&Gt.)菅原慎一(Gt.&Vo.)藤村頼正(Dr.&Cho.)]


―新作の話に入る前に、昨年2枚のEPを自主レーベルからリリースし、プロモーションなどもこれまで以上に自分たちが主体となって行われたと思うのですが、その感想などを訊かせてもらえますか?

夏目:なんだろう……やっぱり楽しかったよね。

大塚:まぁ、確かに楽しかったよね(笑)。自主レーベルからリリースしたその2作は結構気張ってやって、そこで自分たちができることとできないことを痛感したっていうのが大きいと思います。あとは、今までよりも感想がダイレクトに届いてきたのもおもしろかったですね。それこそメディアの方、流通の方、レーベルの方とか、そういった関わってくれている方たちの反応が自分たちに直接入ってくる。それはすごい勉強になるし、ありがたいなことだなって。そういうものを受け取った時に、自分たちも会社としてもっとこういう反応をした方がいいんだろうなとか、こういうやり方があったんだなとか、そういうことに気付けたた2作品だったんじゃないかなって思います。

―そうした現場の声というものは、やはり新鮮なものでしたか?

大塚:新鮮でしたね。僕らはこういう性格なので、結構最初はフラッとレーベルを立ち上げたつもりだったんです。もちろんちゃんと仕事としてやってますけど。でも、そんな僕らに対して、意外にも「おめでとう」って言ってくれる方が多くて。そこで「あ、ちゃんと前進しているんだ」って、逆に気付かされたんですよね。

藤村:ありがたいことにライブの動員とかも変わらずというか、ちょっと伸びているくらいなので、この進め方も間違ってなかったのかなって思いましたね。

夏目:まぁ、あんまり変わらないというか、もう忘れちゃったよね(笑)。正直、僕のやること自体はあまり変わってないんですよ。〈P-VINE〉にいた時から。

大塚:そうだよね。一番先頭に立って曲も作るし、何かあったらミーティングを開いたりもするし。ただ、そういう部分は自主レーベルになってからは他のメンバーにも振られるようになりましたけどね。そうじゃないと回らないし。

夏目:そうじゃないと意味ないもんね。

藤村:あの、去年初めて大塚くんが主体となって打ち合わせに向かうということがあって。

菅原:そう、大塚くんが一番変わったよね。僕もあんまり変わってない。前から打ち合わせとかにも行くときは行ってたし、行かない時は行かないって感じで、そこは今まで通り。

―〈P-VINE〉在籍時と比べた時、様々な施策やアイディアを打ち出していくにあたって何か変化を感じたりはしましたか?

夏目:う〜ん、それもそんなに変わらないんですよね。ただ、大きく異なってる点を挙げるとすると、レーベルにいた頃は自分がバンドの代表だと思っていて、レーベルのディレクターの方と打ち合わせをする時も、自分がバンドのムードを見て、みんなの声を代弁している感じがあったんです。でも、自主レーベルを立ち上げてからは、シャムキャッツとしてやりたいことをみんなで持ち寄って、みんなで話し合うっていう感じになったので、その変化は大きいかもしれないですね。
でも、レーベルに所属していたことで意見が通りにくかったとか、そういうのは全然なくて。むしろかなり自由に、そして結構無茶なことをしてもらってたんですよね。それこそ昨日、ココナッツディスク吉祥寺店に矢島くんっていう友達がいて、彼と話してたんですけど、「新作のレコード、いくらくらいにするべきかな?」って聞いたら、「値段を抑えて欲しい」と。「3500円は絶対にない、3000円はギリだと思う。さらにもし可能なら、2700円ぐらいがレコードを常に買うファンとしてはありがたいかな」って言われて。それでアナログ・リリースした『AFTER HOURS』はいくらだったのか調べてみたら、2500円くらいだったんですよね。しかもあの作品は特殊ジャケだったので通常よりもコストのかかる仕様で。まぁ、もう3年前なので色々と状況も変わってきているのかもしれないけど、〈P-Vine〉やそのスタッフもすごい頑張っていてくれてたんだなって。だからこそ、今度は自分たちがそういうところで頑張らなきゃいけないんだなっていうのも感じましたね。

大塚:そうだね、そうやって自由にやらせてもらっていた時期があったからこそ、夏目とかが自由な発想を今も持ち続けていられるのかなって思いますね。

―今回のアルバムを出すにあたって、ティーザー映像を立て続けに5本公開しましたよね。外部から見ていると、こういった施策もフットワーク軽くなったからこそ、自由にやりたいようにやれているのかなと思っていたのですが、そこは変わらずっていう感じなのですね。

夏目:今回はジャケットを誰にやってもらうかとか、MV誰にやってもらうかとか、そういう下準備を結構していて。そういう下準備が整った状態でレコーディングも終わったので、その後の動きがスムーズだったんですよね。いつもより準備がシッカリとできている分、ティーザーとかをフットワーク軽くポンポン出せたのかなって。

―いつもより準備ができていたというのは、いつもより時間があったからということですか?

夏目:去年1年を振り返ってみると、瞬発力勝負というか、色々なジャンルの音楽を作ってみて、色々な表現方法を試して、それを経た上で改めてみんなでどうするかを考えたんです。「じゃあMVはこうしよう」、「プロモーションの施策はこうしよう」とか。楽曲にしても、前までだったらガチガチに固めずにスタジオに入って、そこで生まれたフレーズを活かして〜みたいな時もあったんですけど、今回はもう録音は演奏を定着させるだけの作業。アレンジは事前にほぼほぼ固めていて、あとはレコーディングでいい演奏をするだけっていう感じで。本当に最初の部分から意識が違ってたんですよね。

菅原:だから5本ティーザー映像出したのも、フットワーク軽くというよりかは入念に考えた上でのプロモーション方法だったっていう感じなんですよね。

藤村:やっぱり準備をシッカリしようっていう意識が、これまでと比べて一番高かったよね。

夏目:ぶっちゃけた話をしてしまうと、「次のアルバムでまとまったものを出さないと、この先ないぞ」っていうプレッシャーがあった。制作に取り掛かる一番最初の気持ちを思い出すと、作品を世の中に向けて行くぞっていう意識が強かった。バンドのしっちゃかめっちゃかな感じのドキュメンタリーをそのまま見せるんじゃなくて、きちんとしたアルバム、作品を提示しないと次はないぞって思っていたんですよね。

―そのプレッシャーというのはどこからきたものだと思いますか?

夏目:それも世の中の流れとか外的要因ではなくて、単純にしばらくアルバム出してないなって言うのがあったからですかね。「流石にそろそろやらないとマズいぞ、バンドとして」っていう。
こういうことも、おれ的には藤村が強く言ってたイメージがあって。やっぱり次に大事になってくるのはアルバムとしての「完成度」っていう部分だと思うって。キャッチーさとかポップさとかが大事なんじゃなくて、とにかく作品としての強度が高いものが大事だって言うことを、藤村が言ってた記憶があるんですよね。

藤村:そうですね、確かにそう言う意識はありました。でも、それもわざわざ口に出して言わなくても、みんなで共有しているような空気感もありましたけどね。

―世界的にはSpotifyとかApple Musicといったストリーミング・サービスによる、プレイリスト文化が盛り上がっている現代において、ここまでアルバム全体としてのクオリティにこだわった作品というのは中々に攻めの姿勢だなとも思いました。例えばプレイリストなどで聴かれる場合、単曲でのインパクトがデカい方が絶対に有利ですし。

藤村:昨年リリースした『マイガール』と『君の町にも雨はふるのかい?』の2枚のEPは、自主になったからこそガツンと世の中に響くような曲を書きたいっていう強い意識の元に制作された作品で。でも、振り返ってみると、ちょっと抱え込みすぎてるなって思うところがあったんです。あと、音楽的技量も全体的にやりたいことについてきている状態というのもあって、夏目の鼻唄みたいなものをみんなで構築していくだけで、いい曲ができるんじゃないかなって。ざっくり言ってしまえば今作はそういう作品になっていると思います。同時に菅原のソングライティングの能力も上がってきてるし、そういった要素もおそらく反映されつつ。

―逆にその『マイガール』と『君の町にも雨はふるのかい?』制作時に意識していた部分について、もうちょっと具体的にお訊きしてもよいでしょうか?

夏目:自主レーベルになったけどノホホンとやってるわけじゃないぞ、と言うのを見せたかったので、わかりやすくドーンとした大味のモノを出したい気分だったんですよね、あの時は。ただ、その方向性だとアルバムを作れる感触がなかったんですよ。そこでもう一度このバンドのいいところって何だろうって考え直したんです。
あの、この話をすると長くなっちゃうんですけど、「マイガール」とか「すてねこ」っていう曲はちょっと背負って書いている部分もあって。「書かなきゃ」っていう感じで書いてたんですけど、もっと前の「GIRL AT THE BUS STOP」とか「MODELS」とかって、ほとんどバンドでアンサンブル決めてから自分の歌を乗せるっていう感じだったんですよね。だから4人の良さもそれぞれ出てる。なので、そういう制作方法にもう一度戻したかった。その方がよりバンドの味が出る気がした。でも、「GIRL AT THE BUS STOP」とか「MODELS」を作っていた時って、それはそれで自分の負担を結構感じていたんです。最終的に歌を乗せるのとかも大変だったし。だから、「マイガール」や「すてねこ」のやり方を敢えて放棄して、かつ最後に歌を載せるやり方からも脱却できれば、いい感じに曲が作れるんじゃないかなと思ってた。そういう感じ。これ、伝わるかな?

藤村:うん。そうだね。その結果、今作では夏目と菅原が簡素なデモを作ってきて、そこから歌を想像した上でみんなでセッションを重ねていくっていう制作方法になりました。

夏目:制作方法の変化というよりかは、何というかもうちょっと組織論的なところでの変化を感じたよね。

―そういった制作方法というのは、これまでのシャムキャッツの歴史の中では新しい方法論と言えるのでしょうか?

藤村:僕らの制作方法は大体3パターンあって。打ち込みの簡単なデモから作る、弾き語りから作る、セッションから作る、大きく分けるとこの3つで。今作は弾き語りから作るのと、打ち込みのデモから作るのと、中間から始まったような感じがするんです。

菅原:たぶん昨年の1年間を通して、4人組のロック・バンドとして、1番自分たちに適した方法っていうのはどういう形だろうって考え続けてきた結果なんだと思います。『マイガール』とか『君の町にも雨はふるのかい?』の時は、先に曲があって、そこから動き始めたっていう感じだったんですけど、今回は先にスタイルを決めて、それに沿って制作していくっていう感じだった気がするんです。

―なるほど。では、今作はストックがあったというわけではなく、作品のために一から作り上げていった、と。

夏目:そうですね。前からあった曲は1曲くらいだよね。みんなでテーマを決めてから一気にガッと作り上げました。

―今回のそのテーマみたいなものを言語化するとどういうものになるでしょうか?

夏目:それがそのままタイトルになってるんですよね。「Friends Again」っていう言葉は最初アルバム・タイトルにするつもりはなかったんですけど、このキワードを元に色々な曲を作っていこうっていうことと、あとは音をほとんど重ねないっていうことは曲を作リ始める前から決めていて。今回はそれが大きかったですね。あと、これは今思い出したんですけど、『マイガール』とか『君の町にも雨はふるのかい?』を作っていた時って、当時自分が聴いていた音楽と実際にやっている音楽と、本当にやりたいって思ってる音楽、あとは自分の特性とかも、全部がバラバラな状態だったというか。おれとしては正直、もう何をやったらいいのかわからない、誰も何も言ってくれないしっていう感じで。だからそこを一回整理し直した方がいいなと思って。このシャムキャッツっていうバンドで、今どんな音楽がやりたいかなっていうことを考えた時に、なるべく音を重ねない方向の方がいいかも、というのでストンとハマったんですよ。よりシンプルな方がおもしろそうだなって。それをメンバーに言ってみたら、結構ノリノリに賛同してくれたので、「お、イケそうじゃん」って。だから、スタイルを先に決めたっていうのは今作において重要なポイントになってるかな。そこは菅原と同意見。

菅原:たまたま僕も音を重ねることについて考えていて。この4人でやるなら、シンプルにやった方が今の時代に響くんじゃないかと思っていて。たぶん、その時に聴いてる音楽とかからそう思ったのかな。今主流になってるロック・バンドとかとは全然違うやり方じゃないですか。ギャンギャンにギター弾いてキラキラさせたりするんじゃない。そういうことはぼんやりとは思っていたかもしれない。

藤村:あと、全編アコースティック・ギターっていうのは最初から決めてたんだっけ?

夏目:それも最初から言ってたと思う。「もうおれ、アコギだけでいいんじゃないかなって思うんだよね」ってタイ料理屋で言った。

藤村:それは何で思ったの?

夏目:役割分担ハッキリさせ方がいいだろと思って。だっておれはエレキ弾いててもほとんどリズムで引っ張るだけだから、それならアコギの方がいいんじゃないかなって。自分のギターを弾いてる時の癖とかが、エレキよりアコギの方がもっと出る気がするし、それが菅原のギターと合わさった時に、よりおもしろいアンサンブルになるんじゃないかなと。

―その、本作のテーマでもあったという「Friends Again」という言葉は、昨年CINRA.NETに掲載された菅原さん単独インタビューのアンサーになっているのではないかという気がしました。あのインタビューではまだバシッとした答えが出ていなかった4人の在り方について、遂に決着がついたのかなと。

菅原:そうですね。そっくりそのままアンサーになってると思います。あの時感じていたことができたというか、望みが叶えられたアルバムというか(笑)。

夏目:あの時も正直、決まってたもんね。

菅原:そう、作り始めてはいなかったんですけど、あの時のインタビューでも、「次のアルバムはヤバいものになる」って言って匂わせているんです。なので、実は「これからやるぞ」っていうことで、ワクワクしてる部分もあったんですよね。でも、あのタイミングでインタビューをしてもらったってことは本当に自分の中では大きくて。もう言っちゃったからやるしかないっていう感じで自分たちを追い込むというか。発破をかけた、みたいな部分がありました。

―そのインタビューでは、幼い頃からの友達同士でスタートしたバンドが仕事になり、それに伴い4人の関係性も一筋縄ではいかなくなってくる、という話を軸に置いていました。そこから吹っ切れたかのように『Friends Again』というタイトルの新作を発表し、また友達に戻ったということですが、この言葉に辿り着くまでに、バンドでどのような話し合いややり取りが行われたのでしょうか?

菅原:さっき夏目の話しにも出てきたタイ料理屋にみんなで行った時なんですけど、とある練習終わりに4人で飲もうかってなって。その時に言葉として夏目が「Friends Again」っていう言葉をテーマにしたいんだよねって言ったのが最初かもしれないですね。まぁその時期は色々なことが重なっていたんですけど。それこそ僕がさっき言った簡素なスタイルがいいって考えていたのもこの時期だったし。

―夏目さんはどうしてその言葉が思い浮かんだのでしょうか?

夏目:本当に何となくなんですよね。人に聞かれたんですよ、「次、アルバムを作るとしたらどういうテーマでやるの? テーマ先に決めといた方がいいっていうよね」ってな感じで。その時に「一言で今パッと思いつくこと言ってみなよ」って言われて、「う〜ん、なんか『Friends Again』って感じかな〜っ」て言ってたんですよね。で、それが自分の胸の中にもずっと残っていて。だから、これをテーマにしたら結構おもしろいことになるのかもしれないなって思って。

―「友達に戻る」、「再び友達になる」と訳せるタイトルと、この4人のアンサンブルを何よりも大事にした曲作りがしたかったという話は、非常に直結しているように思えます。

夏目:そうそう。まぁ友達に戻るって言い方もちょっと変で、確かにそういう意味の言葉ではあるんだけど、おれたちが考えているのは「この4人でやる意味を、今まで以上に出すためにはどうすればいいのか」ってことなんですよね。

菅原:あと、去年のままのスタイルを続けていたら、みんな疲れちゃってたと思うんですよね。だから、頑張るけど無理しないスタイルで。でも、それが僕らの新たなカードにもなったと思うんですよ。無理はしないけど、決して逃げの姿勢というわけではない。どちらかというと攻めてます。

藤村:リターンじゃなくてアゲインだから。それは新しい所に行こうとしているっていう感じだよね。

―今までの音楽性に限界、もしくは天上が見えてきてしまった、というような部分はあったのでしょうか?

夏目:限界は感じてないけど変化は求めてたかも。昨年が結構躁状態で、やりたいこといっぱいあるし、やらないといけないこともいっぱいあるし、会社も作って考えないといけないことも多くて。その結果、バラエティ豊かな作品ができたけど、何かやってもやっても意外と突破口が見えないというか、スッキリしない、新しさを感じられないっていうところがあって。その悶々としていた状態を打破するための鍵っていうのは、むやみ新しい要素を取り入れたりすることじゃなくて、めちゃくちゃシンプルにやってみるっていうところにあったというか。

―それは何かの作品を聴いてそう思ったのではなく、自分たち自身の音楽と向き合った上で出てきた答えなのでしょうか?

藤村:参考にした作品とか、アーティストみたいなものはあまりないですね。

大塚:ただ、アルバムじゃなくてまたシングルとかEPを出そうっていう話だったら、全く違った曲ができてたと思う。もしかしたら前作、前々作みたいな勢いのある作品になってたかもしれないし。でも、いざアルバムを作ろうってなった時には、ちゃんと統一感のある、アルバム感のある曲で構成したかったっていう気持ちは全員に共通してあって。あとはどういうスタンスでやった方がいいのかなって考えた時に、それを言い表すのに最適だったのが「Friends Again」っていう言葉だったりしたのかな。だから『マイガール』とか『君の町にも雨はふるのかい?』もああいう形態だったからこそできた作品だったし、ああいう……負荷じゃないけど何かを背負って作ったような作品も、そういう時期だからこそできたことだと思うし。なので、この『Friends Again』っていうアルバムも、「今のおれらがアルバムを作るなら」っていうことを考えていった上で、その最適な形を模索した作品というか。やっぱりアルバムにシングルっぽい曲を1曲入れるのも違う気がするんだよねっていうことも最初に言ってたし。

夏目:なんていうか、今回は「作ろう!」って思って作るのが嫌だったんだよね。だから何かを作んなきゃっていう気持ちで作った曲はひとつもなくて、自然と出てきたもので全部作った。必要に迫られて作ったっていうものはない。ただ、そういう曲が別にダメっていうわけではなく、そういうのもあっていいんじゃないかとは思ってる。

大塚:一応締め切りはあったけどね(笑)。

夏目:まぁあったけどさ、できなかったら「できませんでした」って言ってたんじゃないかな。でも、できたからね。

―ハハハ(笑)。前の2作は作ろうと思って作った。それが今作との一番の違いだと。

夏目:うん、作んなきゃって感じで作ったかな

―ちなみに、最新のアー写ではメンバー全員がお揃いの青シャツを着ていて、最近ではライブでも着用していますよね。こういったバンドとしての見せ方と、これまで以上にバンド全体として作品を作り上げるムードになったという話には何か共通点が?

夏目:アー写のことを言うと、あれはただなんとなくシャツ着たいって思って(笑)。The Cowsills(カウシルズ)っていうバンドがいて、彼らは全員違う色のシャツを着てたりするんですけど、それがなんかいいなって。で、アー写で着てたらライブでも着た方がいいかなって思って着てるだけですね。

藤村:ずっとそういう思いはあったのかな。「スーツ着てライブしたいね」とか、昔からちょいちょい言ってたこともあって。

菅原:タイミング的にも、あれくらい視覚的に統一感を持たせた方が伝わるんじゃないかなって思ったんですよね。『Friends Again』って銘打ってみんな私服で肩組んで映っても僕らの場合はハマらないんですよ。だからそこでワンクッション挟んだというか。今回はアー写の衣装もディレクションしてくれる人がいたので、その人とも相談して。

夏目:メンバーを物みたいに撮りたかったんですよね。なんかレゴ・ブロックみたいな感じ。

―シャムキャッツの象徴として、みたいな?

夏目:う〜ん、そこも深読みしてくれる人がいればおもしろいなって思ったので、それもアリ。どれも正解ですよ。

菅原:でも確かに象徴化ですよね。わかりやすく。ただ、ライブ時はキツいですよ、暑いし。特にドラムは大変だと思います、腕がキュッとしてるから。

藤村:腕まくりしてもキツくて、ちょっと動きづらいですね(笑)。

夏目:ただライブの現場にはラフな格好でいけるっていうメリットがありますけどね。まぁ、いつもラフですけど。

菅原:パジャマみたいな格好で行って、セッティングまでその格好でやってたら「その格好でライブやるの……?」って感じでザワつかれましたね(笑)。

夏目:この前Eric Clapton(エリック・クラプトン)みたいだったもんね。Claptonは足怪我した時アディダスのジャージでステージ出てきたから。しかも武道館公演。

大塚:それのままライブやったの?

夏目:うん。

菅原:それやってみたいね。でも、シャツいいですよ、SNS映えするし。写真みんな撮りたがるっていう。

夏目:衣装は確かに欲しかったんだよね。

大塚:やっぱりひとり決めてくれる人が外部にいたのもよかったんですよね。この4人だけで衣装決めようかってなっても、最終的には決まらないと思う。やりたいこととか価値観も微妙に違うし。さすがに音楽はちゃんとするんですけど、衣装とかその他のことに関しては、「これがいいんじゃないですか」って後押ししてくれる外部の人がいた方がスムーズに決まるよね。今回はSTUDY編集長の長畑君がジャケットからなにまでアート・ディレクション全般を手掛けてくれて。

―ジャケットも今までのイメージとはかなり異なった作風になっていると思います。

菅原:今回はチームの中に外の人間を入れてやっていく中で、そのフィルターを通して出すというおもしろい作業をやっていて。このアートワークに関しては、写真家の伊丹豪さんがたまたまというか、「いい感じの家があったから撮ってみた」っていう写真を僕たちに見せてくれた時に、みんなで「いいですね〜」って言ってたらそれがジャケットになっちゃったんですよね。

―あの写真をジャケットに持ってきた狙いというか、意図みたいなものは?

菅原:強い意志があって「これ!」って決めたわけじゃないんですよね。『Friends Again』って難しくて、どういうカバーにするかでだいぶ世界観が変わってきちゃうなって思ってて。

藤村:とりあえず青春感、みたいなものは出したくないっていうのがたぶん共通認識であって。

菅原:でも。何かしらの象徴的なもの、若干匂わせるもの、みたいな。その塩梅にもこだわりました。何かを予感させるけど、匂わせすぎない、というか。

―あの写真って、日本か海外なのかもわからないというか、どちらでもありえそうな何とも言えない不思議な魅力を放っていますよね。

菅原:そうなんですよ。おもしろいですよね。そういうところも気に入ったんですよね。

―先程にも話に挙がった菅原さんの単独インタビューでもおっしゃっていましたが、最近はロック・バンドではなくヒップホップやR&Bばかりを聴いていたと話していましたよね。そういったトレンドみたいなものもメンバー共通のもだったのでしょうか?

菅原:基本的にみんな聴いている音楽はバラバラなんですけど、僕は夏目と趣味がわりと近くて、当時は追ってるものも結構近かったと思いますね。あとの2人はあまりわからないです(笑)。意外と「今、これがめっちゃいい」っていう音楽は、制作の時以外は共有してないかな。まぁ流行りものは自然と入ってくるんで。

藤村:まぁツアー回る時とかの車で流れてくるので、そういうの時に共有したりね。

―そういったヒップホップやR&B的なテイストをバンドに昇華しようというアイディアは出なかったのでしょうか?

菅原:それを僕なりにやったのが一応前作収録の「Tokyo Dragon」っていう曲なんですけど、なんかハマらないなっていう風にも思っていて。でも、所々には滲み出ているんじゃないかなって思いますけどね。そういう日常的に聴いてる音楽は。

夏目:そうそう、浸透してる。あと、たぶん全世界のロックやってる人口の6〜7割はロック・バンドがどうやってヒップホップを取り入れるかっていうようなことを考えてると思うから、もうそれをやっても意味ないよね。いや、意味なくはないけどそこまで意識してもしょうがないという気がする。一番簡単なアイディアですもんね。

菅原:決定的な理由としてはバンドって4人で核家族みたいな感じで活動するんですけど、ヒップホップの人たちって集団というかクルーというか、音楽仲間たちでやるじゃないですか。だからそもそもが違うなと思っていて。ビートというよりはスタイルに憧れて聴いていたんですけど、あんまりそれをシャムキャッツに還元してもなって。

藤村:あと、やるなら鍵盤とかも必要になってきますよね。僕らの場合、メンバーを増やすっていう選択肢は基本的になくて。

菅原:メンバーでやるのがバンドの醍醐味で、オリジナル・メンバーだけの音しか鳴ってないっていうのはロマンがあると思うんですよね。今回はそれが前面に出せたアルバムなんじゃないかなと思います。

―シャムキャッツはいわゆる世間の流行り、トレンド的なサウンドとの距離感の取り方も独特ですよね。単純にそういった流れに反発しているとか、そういう意識すらも感じさせない。まさしく孤高の存在と言うか。

藤村:みんなが狙っている方向には行きたくないっていうのは昔から常にあったかな。

夏目:これは出来上がってから感じたことですけど、今回の作品を作ってみて個人的におもしろかったのは、それぞれが設けた制約の中で、それぞれが自由に楽曲にアプローチするだけで、自然とオリジナルなものになる。そして意外と最初期の音源というか、何も知らずにバンドを始めた最初期の頃の雰囲気と似るなと。だから今作はすごく削ぎ落としてはいるけど、オリジナリティの強い作品になったなとは思っていて。音をやたらと重ねたりしなくても、全然個性的なものは作れると思うんですよね。
今、話の流れで「みんながやってることやっても意味ない」みたいなこと言ったけど、そういうのを目指したり考えたりしながら今回の作品を作ったわけではなくて。確かにそういう気持ちもあるんだけど、実際のところ目指したのは、ただただ曲に素直に向き合ってみるっていうことだったんですよね。

―今のお話を聞いて、自分たちの内面から湧き出てくるものと向き合って、それだけでクオリティの高い新作を作り上げることができるっていうのは、とてもバンドが成長した、成熟した証拠なのではないかと思いました。元々「シャムキャッツってこういうサウンド」とか、「こういうバンドに影響を受けてる」とか、そういったことが中々言いづらいバンドでしたが、今作ではそういう印象がさらに強まったような気がするのですが、そういったことが要因なのかなと。

大塚:それは、おれら的には嬉しいことだよね。

夏目:今作は特に音楽知識が豊富なライターさんでもそう言います。「掴み所がない」みたいな。

藤村:そうそう。そういうすごく不思議なアルバムだけど、いいアルバムができたなっていう感触とか、自負はあるんですよね。

菅原:あの、このバンドって個人個人の欲がすごく強いなと思っていて。欲望って人生においてものすごく大事なんですよね。おれ、欲望がない人はつまらないと思ってるんで。今、この4人の欲がいい感じに整理されてきて、それがバンドのひとつの方向性になってきているなって最近思うんですよね。満たされているかどうかはわからないんだけど、整理整頓された感じ。今までってみんなの欲がバラついていたような気がするんだけど……。

大塚:誰かの欲が満たされてる時、一方では誰かの欲が満たされていないとか?

菅原:そうそう。欲のベクトルというか、そういうものがとっ散らかっていた。めちゃくちゃ抽象的なことで申し訳ないんですけど。

―その整理というのは、みんなの欲望が同じ方向を向いてきたっていう感じなのでしょうか?

菅原:それもありますね。

夏目:たぶん、今まではそういう個人的な欲みたいなものを抑えてきてたんだよね。そう思うよ、おれは。優しさでできてるバンドだからね、シャムキャッツは(笑)。

菅原:そうは言いつつも、時にはイキナリ飛び出したりしてたようなやつらが、ようやくいい感じに整理されてきた。そういう意味ではバンドとして大人になった、成熟したっていうのもあると思う。

夏目:あとは単純にとっ散らかった欲望が淘汰されてきたっていうのもあるよね。できないことはできないっていう。そういう意味でも、大人になったっていうことなのかもね。まぁ、今後どうなるかはわからないけど(笑)。

大塚:本当だよね(笑)。

夏目:わからないけど、このアルバムを作るときは今までの集大成じゃないものにしようっていうこともすごく意識していて。なので、これまでのおれらを全部詰め込んだとか、そういう作品じゃなくて、新しい土台を作ったっていう感じなんですよね。だから、ここからどういうものが育っていくのかって、そういう楽しみ方もできる作品だと思う。

大塚:確かに。土台感あるよね。

―新しい土台を作ったとのことですが、今作は歌詞の面からも変化を感じます。

藤村:でも、歌詞は少し集大成感もあるよね。ない?

夏目:そうだね……。なんていうか、歌詞は個人的に色々と実験してるんだよね。今作はアンサンブル的にも楽器の重ねをほとんどしないっていうルールがあったって言ったけど、それに加えてそれぞれのプレイヤーの手数をなるべく減らすっていう目標もあったんですよ。なるべく余計なことをしないというか。その方が各々が何をしているのかわかりやすいんじゃないかっていう狙いがあって。なので、作詞というか言葉の面でも、曲によってはとにかく減らしていく方向性で作った曲もあって。そういうのは例えば「GIRL AT THE BUS STOP」とか「洗濯物をとりこまなくちゃ」(『君の町にも雨はふるのかい?』収録曲)とは真逆のアプローチではある。なるべく削ぎ落として作った。

夏目:でも、そもそもめちゃくちゃ伝えたいことが多くある時って、自然と言葉は減っていくと思っていて。すげぇ好きな人を目の前にして、ダラダラと口説いても絶対落ちないじゃないですか? 研ぎ澄ました一太刀のような言葉の方がきっといいじゃないですか(笑)。だから、作詞においても、そういうことを最近は考えるようになりましたね。

―言葉の少なさという点でもそうなんですけど、今おっしゃった「洗濯物をとりこまなくちゃ」が個人的には結構変わり目だったのかなと思っていて。より自分の半径に近い視点になったというか、よりリアルな日常に焦点を当てるようになった気がします。

夏目:サウンド的に重ねがなくなって、サイケ要素みたいなものが音色としてはないじゃないですか、だからそういう時に幻想的なものを書いてもハマらないなと思っていて。なので、ファンタジックな物語じゃなくて、本当に目に見えているような現実を突きつけるようなことができていれば実験成功かなって。そういうアプローチの仕方の違いが個人的にありますね。だいぶ重箱の隅みたいな話にはなりますけど。でも、確かに「洗濯物をとりこまなくちゃ」はかなり現実っぽくなっているから、あそこが分岐点だったのかもしれない。

―また、作詞とも繋がる部分かもしれませんが、今作から夏目さんの歌い方が変わったようにも感じます。曲調的な話もあると思うのですが。

夏目:それ、毎回言われるんですよね。確かに声は張らないっていうのは決めてたけど。

藤村:曲調もそうだったみたいに、歌に関してもニュートラルな感じになったんじゃない?

―前作のインタビュー時に、発声の本を読んでるっておっしゃっていたので、そういう技術的な面の影響もあるのかなと思ったのですが。

夏目:ワーってやると子供っぽくなっちゃうんですよね。今作では大人の男になりたいなって思って(笑)。
「気張ったりとか変な歌い方をしなくてもいいや」、「おれが歌えばもう100点なんだ」っていう気持ちでは歌ってる。もう、普通に歌うだけ。

大塚:そういうマインドの問題ね(笑)。逆に菅さんが前より高音域を歌うようになったから、その対比にもなってるかなって思ったけどね。

夏目:お互い今までやってこなかったことをやろうとしたから、今までと違ったパターンができたのかもね。

菅原:おれはもう必死だけどね。自信満々にとか、とてもじゃないけどできない(笑)。

―話は変わるのですが、去年のワンマン・ツアーでは開場から開演までに2時間取るという特殊な試みを行なっていましたが、その手応えはどうでしたか?

夏目:すごくよかったですね。

菅原:なんかこちらがクドクドと趣旨を説明しなくても、お客さんがわかってくれてるような感じがあったよね。

大塚:特に名古屋はいい雰囲気だったし、手応えがあったよね。東京では色々な人たちが集まってくれたし手伝ってもくれて。あれは”EASY”(シャムキャッツの自主企画イベント、ツアー)とかを続けてきた感覚の延長線上にあったかもしれないね。

―東京公演では、会場中に美味しそうなカレーの匂いが立ち込めていたり、待ち時間に散髪してる人がいたり、DJがおもしろい選曲をしていたりと、まるでひとつの街のような空間になっていました。そういった雰囲気、空間作りが自由なライブのムードにも繋がっていくのかなと。

夏目:シャムキャッツがライブをする、音楽を聴かせる時には、閉じた空間じゃなくて限りなくオープンなスペースにしたいんですよ。誰でも来ていいし、好きなことをやっていい。嫌いな曲は嫌いって言っていい。そういう空間になったらいいなっていうのはいつも思っています。

大塚:でも、おれらがそういう雰囲気作りをするのってすごく難しいことじゃないですか、押し付けがましくなってしまうし。「自由にしていいよ」って言われてもってところがあるし。

夏目:それが一番残酷だよね。おれたちは「自由にしていいよ」とは言わない。なんとなく楽しそうな雰囲気を作るのが仕事だなって思ってる。

大塚:ひとつのバンドを楽しみにして来て、最前でかぶりついて観るっていうのでもないし。確かにフェスみたいなゴッタ煮な感覚もあるんですけど、なんか「超ハッピー!」みたいなものともまた違った感覚だと思うんですよね。もうちょっとカルチャーっぽいというか。あの楽しさってどうやって伝えたらいいのかなっていつもライブの時思ってるんですけどね。

―お客さんの雰囲気は、そういった施策をやる前と比べるとどうでしょうか?

夏目:うん。いつもいい雰囲気なんだけど、よりよくなったと思いますね。たぶん僕の意図も伝わったんじゃないですかね。やってよかったなって思います。

藤村::単純に1時間分多く箱代はかかってるんですけど、それでもできれば続けていきたいなって思いますね。

―最後に、定番ではあるのですがバンドとして今後どうなっていきたいかという長期的な視点での話を伺いたいのですが、シャムキャッツは2013年にカーネーションのトリビュート・アルバム『なんできみはぼくよりぼくのことくわしいの?』に参加されていましたよね。なので、個人的にはそろそろシャムキャッツのトリビュート・アルバムが企画されてもおかしくないんじゃないかなって思っているのですが……。

夏目:ハハハ。そりゃ企画してくれたら嬉しいですけど、誰も参加してくれないんじゃないですか?(笑)

大塚:フォロワーみたいなのが出て来てくれたら嬉しいですけどね。ただ、このアルバムを出したせいでより掴みどころがなくなったというか、フォローしづらくなったでしょうけど(笑)。

夏目:おれたちを本当にフォローするってことは、誰とも違うことをやろうとするってことだから、近づいてこないよおれたちに(笑)。

大塚:そうだね。そうであってほしいね。もし、そんな人たちがいたら、ものすごいフォロワーだよね(笑)。

夏目:わかんないけどね(笑)。おれの場合、こういう質問された時は「好きな食べ物なんですか?」、「これです」みたいな風に、もう典型文にみたいなものがあって。あの、Yo La Tengo(ヨ・ラ・テンゴ)っていうバンドがすごい好きなんですよね。彼らは結成30年経っても日本でライブすると2000人とか集まるわけで、単純にそれがすごいなって思うんです。なので、結成30年経って海外で1000人、2000人集められるようなバンドになってたらいいなって思ってます。

大塚:確かにそれはずっと言ってるよね。

菅原:僕の場合……レーベル運営をするっていう点でもWoodsかなって思います。彼らも〈Woodsist〉っていうレーベルを自ら運営しつつ、作品もたくさんリリースし、色々な国にツアーしに行っていて。そういう活動スタイルをお手本にしたいですよね。

―シャムキャッツは決して海外の人に聴いてもらうことを念頭に置いた曲作り、活動スタンスはとっていないですよね。なので、そういった答えはちょっと意外でもありました。

夏目:そうですね。ただ、去年台湾とか韓国に行ったんですけど、そういう他国の方に受け入れられやすい音楽を意識して作っても、それは本当に意味がないことというか。オリジナリティ強い音楽を作らないと、外行った時に負けるなっていうのはすごい思ったんですよね。自分たちとしてはアメリカを中心とした欧米というよりかは、アジアの方により強い希望を感じているっていうのもありますし。

大塚:台湾とかは多様な音楽シーンがありつつも、そういったシーンの最も優れたやつらだけが残ってる、みたいな感じなんだよね。なんかそういうのを見て、こういうこと言っていいいかわからないけど、「いい音楽を作り続けることが正解なんだな」って思ったというか。いや、本当は生き残るために色々な工夫をしているのかもしれないんだけどさ。

夏目:ハリウッド映画を日本でどう作るかじゃなくて、何であんなに北野武が世界でウケてるのかを考えた方がいいんじゃないかなって。ローカリズムではないけど、自分たちなりにどう本質をついていくかってこと。

大塚:そしたらおれらも海外でやれるかもしれないよね。

―シャムキャッツの皆さんは、よく「続けていくことがバンドにとって大切なことだ」と語っていますよね。自分たちとしてはシャムキャッツがどうしてここまで続いているのだと思いますか?

大塚:続けていくことが大事だとは言ってるんですけど、「続けていかなくちゃね」とは思ってないし、言ってもいないんですよね。

菅原:う〜ん、売れてないからじゃないですかね(笑)。たぶん満足するくらい売れたら考え方変わると思うんで。貧乏な人が宝くじ当てたらその瞬間に人間変わるじゃないですか。それと近いものはあるのかなと思う。全員がテンションのピークを迎えたことがないから、続いるというか。常にまだまだいけるっていう余白みたいな部分がちょっと残されている。これはもちろんポジティヴなことですよ。

夏目:今日よりも明日のおれたちの方がいいかもしれないっていう思いが常にある。続けるっていうのはバンドが世の中に発信できる一番強いメッセージだと思う。だから続けられないとあまり意味がない。

―シャムキャッツは音楽性を常に変化し続けてきたバンドだと感じていて、それもバンドが続いていく秘訣のひとつなのかなって思ったのですが、いかがでしょうか?

菅原:単純に飽き性なんだと思います。

夏目:おれはここ最近のインタビューでこういうことを初めて言ってみてるんだけど、今までこのバンドをいかに飽きずにやれるかっていうことを、個人的には色々と考えてきてたんだよ。このバンドがいろんな意味で生きる形っていうのを、個人的に考えてきたの。でも、それでも続かないような気がする時もあるし、ちょっとずつ色々な方法を試してみたりもするわけ。でも、なんていうか、もうそういうことを過度に考えるのをやめたんだよね。全体のことは今はあんまり考えてない。今までは全体のこと、このバンドのことを考えていたから、よくも悪くもあんまりバンド・メンバー個人のことを考えてなかったような気がしていて。自分にもメンバーにもどこか冷たい部分があったのかなって。自分のやりたいことというよりも、バンドとしてやった方がいいことを考えていたというか。

―ということは、以前はシャムキャッツが自分の手を離れていたような感覚があったということなのでしょうか?

夏目:いや、どうなんだろうな……。

大塚:むしろ自分自身が離れていた、みたいな?

夏目:そうかも。やっとおれが自分の中にシュッと戻ってきて、シャムキャッツになってるなっていうか。ようやくシャムキャッツの一員になった(笑)。

大塚:なるほどね、ようやくメンバーになれたと。おもしろいね(笑)。ただ、舵取りをしなくなったことに対して、不安になることはないの?

夏目:不安はないよ。沈んでもおれのせいじゃないと思ってるもん(笑)。今までは沈んだら自分のせいって勝手に思ってたけど。だから、どういう風に続くのかはわかんないけど、バンドが続いていく上ではそういう色々なバランスが関係しているのかなとも思う。……でも、前より頑丈になったよね。去年1年間で4人それぞれが自然な感じで頑張れる環境を作らないと続かないなって考えていて。それは自分も含めてね。その環境、関係の整備もできたし、それは大きかったかも。今は頑張り方を間違えてない気がする。

大塚:まぁね、会社作って1周年みたいなもんだからね。

夏目:あと、まだまだやりたいことも欲望もあるしね。

菅原:あるね。

夏目:だから、レーベル立ち上げは改めて自分たちを見直すいい機会になったのかもしれないね。組織としては全員がなるべく100%に近い力を出せるようになってきた方がいいわけじゃん。だから、今後はもっともっとそういう風になっていきたいなって。


【リリース情報】

シャムキャッツ 『FRIENDS AGAIN』
Release Date:2017.06.21 (Wed.)
Label:TETRA RECORDS
Price:¥2,700 + Tax
Tracklist:
1. 花草
2. Funny Face
3. Four O’clock Flower
4. Travel Agency
5. Coyote
6. Hope
7. October Scarf
8. Riviera
9. Lemon
10. 台北
11. 31 Blues

■シャムキャッツ オフィシャル・サイト:http://siamesecats.jp

Spincoaster

Spincoaster

Spincoaster(スピンコースター)は、独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介する音楽情報メディアです。