REPORT

RBMF 2019 - 花紅柳緑

Red Bullによる都市型フェスの新形態が提示するものとは。浜離宮恩賜庭園に広がる、風光明媚なアンビエントの世界へ

Header Photo by Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool
Text by hikrrr

新たな“都市型音楽フェス”として注目を集めるRed Bull Music Festival Tokyoが4月8日(月)から20日(土)に渡って開催。総勢52組のアーティストが出演を果たした。昨秋、山手線をジャックするなど前代未聞のライブ体験を創り出したRed Bullは、今年も意外性たっぷりの現場にオーディエンスを導き、音楽の領域ならびに文化的な可能性を拡張してゆく。

その中から、フェスのフィナーレを飾った“花紅柳緑”の模様をお届けしよう。江戸幕府時代の遊興の場としても知られる浜離宮恩賜庭園にて催された当イベントは、「アンビエント・ミュージックと光の演出で、自然とテクノロジーの共存を体感」することをコンセプトとしている(第22回文化庁メディア芸術祭協賛事業)。出演はINOYAMALAND、YOSI HORIKAWA、HAIOKA、Kate NV、Nami Sato + Loradeniz。

晴天に恵まれ、風もやわらか。文句ないコンディションのもと、庭園入口の大手門に到着すると、そこには開演を待つ人だかりが。どんな光景がこの先に広がっているのか、皆、期待に胸を膨らませている様子。そして時は満ち、いざ門が開かれる。手渡された地図を見るに、ステージまでは少し歩く――この焦らしが静かに興奮を煽る。(安直だが現代風に言うと)その“テーマパーク的”構造のおかげで、我々は“花紅柳緑”の世界観を十分に堪能することとなった。

Photo by Suguru Saito / Red Bull Content Pool

歩みを進めると、ライトアップされた庭木とともにまずはバー・カウンターが見えてきた。そこではオリジナル・カクテル「KAKO-RYU-RYOKU」(レッドブル + クランベリージュース + 桜リキュール)も販売され、そのやさしい甘みに春の夜の夢へと誘われる。360°の非日常にワクワクしないわけがない。

園内の3つのステージ間を移動……というより散策していて、ここにアンビエントの真髄があると感じた。それはきっと、目の前で起きていることばかりに注意していては見つけられないものだと思う。確かにライブハウスなどで現象としての音楽(=パフォーマンス)に酔いしれる快感はあるし、私自身もそれを深く理解している。その一方で、あくまで環境というフレームワークに基づき、音楽が生む世界そのものを体感することで極上の旨みを味わうというのもまた一興じゃないだろうか。

また、あちこちで鳴る音がさりげなく融け合う、その枯淡な様子を楽しめるのはアンビエントだからこそなのかもしれない。他のジャンルでは少し趣が違ってくるだろう。時折聴こえてくる外(現実世界)のノイズが合わさってミュージック・コンクレートのようにもなるのが、この場所で開催する意味のひとつを教えてくれた。今回に限らず、夏・秋・冬のそれぞれの季節で、ぜひとも浜離宮恩賜庭園と環境音楽のハーモニーを感じてみたい。それほど贅沢で、素晴らしい一夜だった。音楽の未来が示されていたように思う。

Photo by Suguru Saito / Red Bull Content Pool

INOYAMALAND / Photo by Yusuke Kashiwazaki / Red Bull Content Pool

国産アンビエントの黎明期を代表するINOYAMALANDの二人はさすが、観客を魅了する。コンテンポラリーなピアノが跳ねたかと思えば、オルガン特有のふわっとした感触に包まれ、さらにはハーモニカへと、さまざまに移り変わる楽しいサウンドを展開。シンセサイザーから、まるで花びらが夜空に舞うかのようだった。

YOSI HORIKAWA / Photo by Yusuke Kashiwazaki / Red Bull Content Pool

YOSI HORIKAWAは豊潤なインストゥルメンタルの層に、フィールド・レコーディングを取り入れる。ステージだけでなく周りの景色に自然と目を向けることができたのは、そのおかげかもしれない。だんだんと抒情的になってゆく曲調は、色とりどりの光に照らされたフゲンゾウの花木やスモークとも相まってとても幻想的。

HAIOKA / Photo by Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool

遠くに聴こえる箏の響きに引き寄せられる。それはハープのせせらぎと融合を果たし、HAIOKAは和洋の伝統が織り成す革新性を見せてくれた。かなりミニマルなビートの残響や霞みがかったフェイザーのうねりも、背後に見える高層ビルと日本庭園のコントラストを際立たせる。エレクトロニカの音の泡沫に心は踊る。

Kate NV / Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool

Kate NVの木琴はやはり印象的で、おもちゃ箱を思わせる。メタモルフォーゼする楽器と言ってもいい。音と音の間隙から次々に生まれる新たな音は、ランダムに聴こえて実は秩序立っている。例えば、螺旋階段のようなリフレインは3段ごとに抜け落ちる。そしてそこがどんな場所であれ、違う次元を開いて見せるのは彼女の才能だろう。

Nami Sato + Loradeniz / Photo by Suguru Saito / Red Bull Content Pool

パチパチと弾ける電子音がダンサブルなビートを作り出し、Nami SatoとLoradenizは庭園にクラブを出現させていた。かと思えば、不協和音の怪しげな空気が満ちてゆく。波打ち際の録音にずっしりとしたキックが重なり、その音像はどこか呪術的。二人の声も壮麗な雰囲気を醸し出す。気づけば、恍惚の波の中に私はいた。


【イベント情報】

RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO 2019 “花紅柳緑”
日時:2019年4月20日(土) Open / Start 19:00
会場:浜離宮恩賜庭園(KAKO-RYURYOKU AT HAMA-RIKYU GARDENS)
料金:¥2000
出演:
INOYAMALAND
YOSI HORIKAWA
HAIOKA
Kate NV
Nami Sato
Loradeniz

RED BULL MUSIC FESTIVAL TOKYO オフィシャル・サイト #redbullfestivalTYO

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