Text by Yuka Ishizumi
Photo by @jin.__choi
韓国の気鋭アーティストを紹介するショーケースイベント『Korea Spotlight Tokyo Showcase 2026』が、10月13日(火)に東京・下北沢BASEMENTBARで開催された。
韓国コンテンツ振興院(KOCCA)が主催し、これまでアメリカ、イギリス、ドイツなど世界各国で行われ、日本でも2022年に初開催された『Korea Spotlight Tokyo Showcase』。インディロック/ポップ、ヒップホップ、アイドルなどジャンルを問わず、新しい才能を紹介してきた同イベントが、今年は若手アーティスト支援プログラム「MUSE ON」とコラボ。SIMILE LAND、JUNGWOO、Meaningful Stone、そして日本からゲストバンドのThe Meal Grooveを加えた計4組が出演。なお、韓国から来日した3組は前週に大阪で行われた『MINAMI WHEEL』にも出演している。
事前応募制で無料の同イベントのひとつの特徴は、ライブ前や転換中にオーディエンスとアーティストやスタッフ、オーディエンス同士の交流がフラットに行われていたこと。出演者同士の横のつながりと、それをビビッドに体感したオーディエンスが素晴らしいシナジーを生み出していたのも印象的だった。
トッパーは2023年に結成されたインディバンド、SIMILE LAND。SIMILE(Vo. / Gt.)、Laffa(Key.)、Sewon Son(Gt.)、Kyunghoon Kim(Dr.)、Soowon Jang(Ba.)の5人が、MVで見覚えのあるお揃いのジャージ姿でステージに登場し、「シーンのトラブルメーカー」というキャッチコピーの謎が解ける痛快な30分を駆け抜けてくれた。

SIMILEがスマホのメモを見ながら日本語で「みなさん、もっと前へ!」と煽ると、浮遊感も携えたエレクトロクラッシュ“Universe Party”でスタート。続く“OhWah!”でドライヴするパーティロックにシフトして、ジャンルにこだわらず、音楽的筋力とファンキーなキャラで魅せるバンドであることをスピーディに飲み込ませる。
SIMILEもキーボードのLaffaも、エフェクト用のマイクを併用しているのもユニークだし、ギターのSewonが曲のジャンルを問わず、ギターヒーロー的なソロをぶちかますのも、いい意味で笑いを禁じ得ない。ファストかつリズムチェンジで目まぐるしく展開する“S.O.C”、おもしろさだけじゃなくメンバーのスキルを見せつけるソロも盛り込んだ“Hoo! ha..”。4曲ですでに全員汗だくながら、満面の笑顔で子どもたちの歓声のSEで始まる、USインディ風の“Find my kid”でチアフルに盛り上げ、SIMILEの「うちのギタリストは歓声が大好物です!」発言が伏線(?)かのように、ギターソロに応援が飛ぶと、ラストの“Do Re Mi Fa Sol”ではSewonとSoowonがフロアに降りて熱演。Soowonはマネージャーに抱えられてステージに帰還し、なんの説明もないまま終了。笑いとインパクトでオーディエンスの熱量をかっさらっていった。
SIMILE LANDのファンキーで人懐こいステージで温まったフロアにJUNGWOOがアコギ弾き語りのスタイルで登場。ここで驚いたのが、SIMILE LANDで盛り上がっていたオーディエンスも彼女の透徹した表現に真剣に見入っていたことだ。その空気がJUNGWOOをリラックスさせていたように映る。

今回の『Korea Spotlight』の一環で出演した『MINAMI WHEEL』はバンドスタイルだったが、ひとりでフロアと対峙する彼女には歌が生まれる瞬間の瑞々しさと緊張感が漂う。心象をスケッチするような未発表曲“Untitled, July”では落ち着いたローボイスで集中力を高め、続いても未発表曲の“Youth”を届け、最初のMCでこの日が東京での初ステージであることを告げるとフロアから大きな拍手が起こった。
オリジナルはバンドサウンドでパワフルなアレンジの“Cloud Cuckoo Land”をストロークと歌で成立させ、フロアからは合いの手のクラップも自然に起きる。そして弾き語りの真骨頂は代表曲と言える“The Lamb”、昨年リリースのEP『The Embers』のタイトルチューンをグッと聴かせるアレンジに転換した際の言葉の説得力にも満ちていた。
ちなみにライブ開始前にスタッフが歌詞の日本語訳を印刷した小さなパンフレットを配布してくれたのだが、そこで目にした“The Embers(철의 삶 / 鉄の生)”にある熱して叩くことで強くなる鉄に人生を準えたその内容が、生で聴くと迫力と透明感を共存させる歌で届き、思わず目を濡らすことになった。日本語で話す練習はしたものの聞き取ることは難しいと言いながら、音楽で伝わることがたくさんあったというMCにも納得。包み込むような安堵と、逆に聴く人の心の殻を剥がすような開放感を備えた声で、ラスト2曲の“Crack”、“Nonsense”まで、世界に通用するオルタナフォークの胆力を見せてくれた。
JUNGWOOさんのマネージャー?レーベルの方?が日本語訳パンフレットをお客さん1人ひとりに配っていて、それも自然で。それにしてももう文学というか詩なんよ…。 https://t.co/qXboESVVCQ
— 石角友香 (@ishizumi_yuka)
October 13, 2026
日本からのゲストバンドは東京藝術大学『藝祭2023』への出演を機に結成されたThe Meal Groove。フルートを擁する特徴的なバンド編成で、メンバー各々がクラシック、R&B、ソウル、ヒップホップ、ロックなど異なるバックボーンを持つ4人組だ(※この日は5人編成で演奏)。ボーカル・KIEのソウルフルな歌声と、もえのフルートの音色が際立つシティポップチューン“ラヴ・ジャック”でスタートし、初見の日韓オーディエンスをみるみる巻き込んでいく。Chris Dave直系なビート感の“Me & You”ではラフなハンズクラップがフロアから起こり、フルートのソロには大きな拍手が。ここでもこの日のオーディエンスのイベント全てを楽しもうとする気概と人懐こさが、グッドヴァイブスを作り出す。

この日のために韓国語を覚えてきたというKIEは、「(The Meal Grooveは)今日何食べる? って感じで、今日何聴こう? と思ってもらえる音楽にしたいです」と、日本語も交えて紹介。その想いはフロアに伝わったようで、ミディアムチューン“Film”ではグルーヴに任せて体を揺らしながらハンズクラップするオーディエンスが散見され、オリジナルにはないフルートのイントロが加わった“素敵”は風が吹き抜けるような体感が新鮮で、ラップパートには歓声が上がるリアクションの良さを見せた。終盤はアタックの強いファンクチューンにライブアレンジされた“ローリン・ローリン”が、曲中のアドリブセクションで一筋縄ではいかないバンドの個性をあらわにし、より強く演奏に引き寄せられたフロアもヒートアップ。ラストの王道アシッドジャズナンバー“Dance!”ではメンバーのプレイヤビリティを存分に発揮し、喝采を浴びていた。
トリを務めたのは石ひとつにも意味があるというネーミングを持つ、シンガーソングライター・Meaningful Stone。その名の通り人生の意味を模索するフォークシンガー的な表現を、シューゲイズやドリームポップ、オルタナなどのサウンドに乗せてアウトプットしてきたアーティストで、今回の面々の中ではすでにキャリアを確立した感もある。

その幅広さを示すように、スタートはアコギ弾き語りでエアリーなボーカルを聴かせる“Oak tree”。彼女も歌とギターでグルーヴを作り出せるアーティストだ。最初の挨拶では自身のステージだけでなく、韓国から3つのバンド、アーティストで参加できたことの意味を語り、言葉の壁を超えて音楽が届くと嬉しいと日本語で話してくれた。2曲目の“Supernova”でバンド編成となり、オルタナカントリーのナチュラルなアンサンブルで会場に風を吹かせ、サビでの《안녕(アンニョン)》のフレーズにオーディエンスが手を振って応える。ストイックな音楽性に思えて、実はファンには馴染みのライブのリアクションがあるようだ。そのことで初見のオーディエンスも参加しやすいムードが溢れる。
2曲続けてアルバム『Angel interview』から届けたあとは、最新EP『To: Hana』からのレパートリーが続く。本作には西海岸を代表するSSWで、boygeniusのツアーにも帯同したJay Somも参加しており、国を越えて音楽性の共振を感じることができる。グッとアンニュイさとコケットリーを兼ね備えた声色で届けられた“Summer, Summer, Summer”では端正なバンドアンサンブルの豊穣さがさらにビビッドに伝わった。
また、ベーシストがマンドリン、ギタリストがアコギに持ち替えての“Happiness is an angel with a serious face”の前には日本語で「『幸せは真剣な顔をした天使』という曲を歌います」と紹介。彼女の幸せの定義に頷きながら深呼吸のような演奏にさらに没入することができた。後半はエレキに持ち替えツインギターが作り上げるシューゲイズの音の壁に圧倒される“HANA”、オリジナルよりストレートにポップなライブアレンジで届けられた“Seoul Station”で、オルタナバンドとしての力量を発揮してくれた。
振り幅の大きい音楽性にトドメの一撃とばかりにラストは一転、ハードなミクスチャーロックにライブアレンジされた“비 오는 거리에서 춤을 추자(Dancing in the rain)”をドロップ。ファンにとってはアンセムのようで、フロアに飛び降りた彼女を囲んでヘッドバンギングが起きるほど。なんとフロアではライブを楽しむJUNGWOOの姿もあった。Meaningful Stoneへのリスペクトが伝わるのはもちろん、3組がチームで参加した印象をより深めた場面だった。
アーティストもフロアもジャンルも言葉の壁も飛び越えて一期一会の瞬間を存分に楽しむ。今後さらに世界で活躍しそうなアーティストの出演だけでなく、ライブの楽しみ方においても目から鱗の3時間だった。
【イベント情報】
『Korea Spotlight Tokyo Showcase 2026』
日時:2026年10月13日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京・下北沢 BASEMENTBAR
出演:
SIMILE LAND
JUNGWOO
The Meal Groove
Meaningful Stone
Supported by TOKYO PLAYGROUND
■KOCCA MUSIC:Instagram















