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REPORT | JUNNY [null] TOUR IN TOKYO


初来日で見せた、韓国R&Bの現在地──JUNNY東京公演レポート

2026.10.05

Text by Tsuyachan
Photo by Koichiro Funatsu

K-POPの舞台裏と、R&Bの現在をつなぐ存在――。BAEKHYUNやNCT 127、NCT DREAM、IUらの楽曲に携わる一方、ソロアーティストとしても近年の韓国R&Bにおいて重要なポジションを担ってきたJUNNYが、9月27日(日)、東京・Otsuka FUTUREにて初の来日公演を行った。『2026 JUNNY [null] TOUR』の一環として開催された、昨年リリースのアルバム『null』を携えたライブだ。

他者の個性を想像しながら曲を書くことと、自らの感情を自らの声で表現すること。ソングライターとシンガー、その両方を行き来してきたJUNNYにとって、ステージとは2つのキャリアが重なる場所でもある。満員となったフロアを前に繰り広げられたパフォーマンスは、彼が培ってきたR&Bの技術を凝縮して見せるものだった。

バックDJがフロアの温度を徐々に引き上げていくと、大きな歓声に迎えられてJUNNYが登場。『null』収録の“Passion, Pain & Pleasure”、“SOUR”、“Energy”と、アルバム序盤の楽曲を立て続けに披露していく。恋愛の高揚から喪失、そして再生へと進んでいく『null』の物語は、録音作品では滑らかなサウンドの連なりとして設計されていたが、生身の声が乗ることで感情の起伏がより鮮明になる。息遣いも、声を伸ばしたあとのわずかな揺れも、音源以上に近い距離から伝わってくる。

一息つくと、JUNNYは柔らかな笑顔を浮かべながら観客に語りかけた。

「韓国や北米、ヨーロッパ、オーストラリアなど、いろんな国をまわって、その最後にプレゼントとして東京にやってきました。今日は来ていただいてありがとうございます」

ツアーの終着点として初めて東京を訪れた喜びを言葉にしたあと、「準備はいいですか?」と日本語で呼びかけ、“Heaven Can Wait”へ。早くも代表曲が投下されると、フロアの熱量は一気に上昇する。“MEDLEY MASHUP”、“By My Side”とライブが進むにつれて気づかされたのが、歌声だけでなくビートの強さだ。柔らかなボーカルに耳を奪われていると、その足元では低音が容赦なく鳴っている。キックは身体の芯まで届き、ベースは床からフロア全体を揺らす。R&Bの繊細なボーカル表現と、クラブミュージックとして身体を動かす強さ。その2つが想像以上に近い距離にあることが、この日のライブでははっきりと感じられた。

「すごい?」と日本語で尋ねるJUNNYに、大きな歓声が返ってくる。「東京公演が実現したのは皆さんのおかげ。それにふさわしい、感謝を伝える曲を歌います」というMCを経て届けられたのは、“Thank You”のアコースティックバージョン。直前まで身体を揺らしていたビートが引き算されることで、今度は声そのものが浮かび上がる。そこから最新アルバム『null』の“Next To Me”、“Sweet Release”へ。新旧の楽曲を行き来しながら改めて感じるのは、JUNNYの音楽に一貫して流れる親密さだ。R&Bが長い歴史のなかで磨いてきた、耳元へ近接し、肌を撫でるように響く声がしっかりと備わっている。

初来日への思いも強かったのだろう。JUNNYは曲間で何度も言葉を重ね、観客との距離を縮めていく。「アカペラで聴きたい曲はある?」と問いかけ、客席から飛んできたリクエストに応えて歌う場面も。トラックのない裸の声が会場へ放たれると、さきほどまで歓声を上げていたフロアが静かになる。音源では何層ものサウンドに包まれているメロディが、一本の声だけでも成立するところに、彼のシンガーとしての基礎体力が証明されていた。

中盤以降、ライブは再び身体の側へと重心を移していく。“EARLY”のアウトロリミックスでは、ビートが一段と強度を増し、フロアのあちこちから手が上がる。JUNNY自身も大きく身体を揺らし、観客とともにリズムの中へ。続く人気曲「AURA」では、細かく刻まれるハイハットの鋭さと、そこへ滑り込むスウィートな歌声の対比が鮮烈だった。ビートは硬く、声は柔らかい。その質感の差がぶつかるたびに、楽曲の官能性が増していく。

激しくパフォーマンスしすぎたのか、JUNNYは「かなり暑いです」と繰り返した。「自分はもっとシンプルなスタイリングがいいと思っていたんですが、スタイリストさんがこのコーディネートを提案してきて、喧嘩までしました」とユーモアを交えて明かし、会場の笑いを誘う。楽曲では洗練されたR&Bスターとして振る舞いながら、曲間では屈託なく笑顔を振りまき、客席と冗談を交わす。その切り替えも含めて、ステージ上の距離感の作り方が巧みだった。

その後も“limbo”と“Dangerous”を連結させ、“Here We Go Again”をリミックスで聴かせるなど、セット全体に細かな変化をつけていく。同時に見えてきたのは、JUNNYが「R&B」という言葉の内側に持っている振幅の大きさだ。声の柔らかさに耳を澄ませる時間と、リズムの反復へ身体を預ける時間。アコースティックに声を剥き出しにする瞬間と、低音の圧力でフロアを包み込む瞬間。その双方を一つの公演へ組み込み、曲順やアレンジによって少しずつ重心を移動させていく。単に「甘い声を持ったR&Bシンガー」というイメージには収まらない、クラブ/ダンスミュージックへの感覚が、この夜を支えるもうひとつの柱になっていた。

終盤には、DJ DAULへの愛情をユーモアとともに伝えるMCを挟み、“call my name”へ。ピッチ処理されたソウルフルなボーカル素材が響き、その隙間へJUNNY自身の声が重なっていく。加工された声と生身の声がぶつかる中で、彼の歌が持つ魅力が際立つ1曲だった。その後は、初めての東京公演へ足を運んだ人々に何度も感謝と愛を伝えながら、現在、次のアルバムを制作していることも報告。

そして本編の最後に残されたのが、約8分に及ぶ“Weight of Time”だった。『null』のなかでも、とりわけ構成と物語性を追求したこの曲を終着点に置いたことには、現在のJUNNYが何を聴かせたいのかがよく表れている。時間をかけて景色を変え、感情を育てていくようなスタイル。何より、この曲では「歌がうまい」という印象のさらに奥に、ソングライターとしてのJUNNYが見えてくる。どこで声を近づけ、どこでビートを強め、どこで余白を作り、どこまで時間を引き延ばすのか。歌い手としての魅力を入口にしながら、最後には「曲をどう構築するか」という作家としての力量へ視線を向けさせる名曲だ。K-POPの舞台裏で他者のために数多くの楽曲を書いてきた人が、自分自身のために曲を書くとき、その技術はどこへ向かうのか。“Weight of Time”は、その問いに対するひとつの回答のようにも響いていた。

アンコールでは“INVITATION”をリミックスで再び取り上げ、最後は“Heaven Can Wait”へ。本編に長尺曲の深い余韻を残したあと、すでにこの夜を彩った楽曲へと戻って幕を閉じる、2段階のエンディングだった。

振り返れば、この日のセットリストは、JUNNYのキャリアそのものを凝縮したようでもあった。耳元へ届く親密な歌、身体を突き動かすビート、ポップソングを成立させる構成力、そして8分という時間を使ってひとつの感情を描き切る作家性。裏方としてK-POPのR&B感覚を磨き、表舞台では自らの声で韓国R&Bの現在を更新してきた。その2つは決して別々の仕事ではなく、同じ音楽家のなかで循環している。新たな次のアルバムを携えて、きっとまた来日してくれるはず――そう願わずにはいられない、素晴らしい初来日公演だった。


【イベント情報】


『JUNNY [null] TOUR IN TOKYO』
日時:2026年9月27日(日)OPEN 18:00
会場:東京 Otsuka FUTUR
出演:
JUNNY

■JUNNY:Instagram / X


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