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Power Push Vinyl by 廣瀬 麻美 (BEAMS RECORDS)


現場のリアルな視点にスポットを当てる本企画。その第3弾となる今回は、独特のセンスと美学が光るBEAMS RECORDSのバイヤーが選ぶ9枚

2018.05.11

Spincoasterが“リアルな音楽コミュニケーションの生まれる場”として運営している、Spincoaster Music Barプレゼンツ企画、“Power Push Vinyl”。

本企画では、現場のリアルな声にフィーチャーし、気になる著名人やアーティストなどに最近のお気に入りレコードを9枚挙げてもらうというもの。その第3弾として登場してもらうのは、BEAMSの音楽部門であり、「音楽のある暮らし」をテーマに、CD、レコード、オーディオ・アクセサリー、書籍などを扱う〈BEAMS RECORDS〉から、ショップマネージャー/バイヤーの廣瀬 麻美氏。

今回挙げてもらった9枚は、シーンやジャンル、そして年代も国もバラバラながらも、独自のセンスと一貫した審美眼を感じさせるセレクトに。まるで店頭で手書きのポップを頼りに、ディグしている感覚で読んで頂ければ幸いだ。

Text by Takazumi Hosaka
Vinyl Select & Comment by 廣瀬 麻美 (BEAMS RECORDS)


 ① Kuzich 『Dawn Chorus』(EP)

Ivan Aveとの共演でも知られる、パース出身のプロデューサー/マルチ奏者・Kuzichの4曲入り新作EP。ブレイクビーツ~ダウンテンポをベースにした楽曲群の中でも、特に冒頭の「Innervisions」はMei Saraswatiのボーカルをメインに、鳥の音やコーラスが牧歌的ムードを醸し出した絶品R&B。〈Jakarta Records〉傘下に立ち上がったばかりのレーベル〈823〉からのリリースということで、今後の活躍にも期待が高まります!

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 ② Yoshinori Hayashi 『Uncountable Set』(LP)

海外からの評価も著しい東京拠点のプロデューサー・Yoshinori Hayashi。先頃ドイツの〈Disco Halal〉からリリースされた4曲入りEPは、終始リスナーを圧倒する特異な魅力を秘めたコンテンポラリー・ダンスミュージック。謎めいたボイス・サンプルやパーカッション、ウッドベースなどが壊れそうで壊れない絶妙なバランスでレイヤーされた「Stepping on Dewdrops」は際立ったキラーチューンと言えそう。音の細かなニュアンスや重量感あるビートもしっかり表現されるのでレコードで聴く価値ありです!

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 ③ Niños Indigo 『Vuduwave』(LP)

ロンドンの〈Phonica Records〉から先頃アナログ化された、チリの女性アーティストによる2014年作。南米のルーツ・ミュージックであるカンドンべや、インドの伝統楽器を加えたオリエンタル調、さらにはアフロ・パーカッションが際立つリズミカルなトラックなど、極彩色のサウンドを披露しています。様々な民族音楽の要素を見事にコラージュしながらも、土着的というより洗練されたアンビエント・ミュージックのようなテクスチャーで耳に届く、そんな不思議なバランス感覚を持った作品です。

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 ④ Sandy B 『Amajovi Jovi』(LP)

80~90年代にかけて南アフリカで独自の進化を遂げたダンス・ミュージック、“クワイト”のユルユルしたグルーヴ感、妙にクセになります。そのシーンで当時ひっそりとホワイト盤でリリースされていた隠れ名盤がこちら。チープなリズムマシンのビートを軸にしたスカスカのサウンドに、独特な響きのズールー・ラップが見事にレイヤードした1曲目「Amajobi Jovi」からシビれます!

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 ⑤ Thiago Nassif 『Três』(LP)

Arto Lindsayがプロデュースを手がけたリオデジャネイロの若手SSWによる1枚は、ノーウェーブやオルタナ的なアプローチが色濃く、非常に鋭利な味わい。Devendra Banhartあたりを想わせるアンニュイなロー・ボイスで聴かせる前半から一変、エッジの効いたギター、電子ノイズ、ホーン・セクションなどが怒涛の勢いで押し寄せる2曲目の後半は唸りたくなる格好よさ。

■商品ページ ※入荷次期未定

 ⑥ Salomo 『Reflecting Pools』(LP)

ドイツはライプチヒにあるレコードショップ兼カフェがスタートしたレーベル、〈Vary〉から先頃リリースされたカタログ2作目は、地元の新鋭プロデューサー・Salomoによるフル・アルバム。デトロイト寄りのハウスやトライバルなビートダウンまで、バリエーションは豊富ながら一貫して程よく肩の力が抜けたトラック群は、タイトル通りプールサイドのパーティーで聴こえてきたら最高に気持ちがよさそうです。

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 ⑦ Peter Zummo 『Frame Loop』(LP)

Peter ZummoとArthur Russell、盟友コンビによる84年録音の未発表音源集は、アブストラクトな室内楽といった趣で、その一筋縄ではいかないサウンドに惹きつけられます。トロンボーン(時にはユーフォニアム)、電子チェロ、コンガ、マリンバの4名で奏でるセッションは、同じ編成で弾いたバージョン違いの演奏を収録しているものの、同一曲でも違った抑揚と展開が楽しめる。NYで同時期に活動していた女性画家/彫刻家Nancy Gravesが手がけたアートワークは、静かに躍動するサウンドのイメージにぴったりで、レコードでの所有欲が増します。

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 ⑧ Solid Space 『Space Museum』(LP)

82年にカセットテープのみでリリースされていたというロンドンのカルト・ニューウェーブ。当時18歳だった男子2人がシンセサイザーやドラムマシンを駆使して作りだした音世界は、絶妙なメロディセンスとDIY感覚が炸裂! 70年代の特撮系のテレビ番組やSF小説などをインスピレーション・ソースにしたそうで、その背景が伺えるような冒険心溢れるサウンドに惹き込まれます。

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 ⑨ Nuria Graham 『Does It Ring A Bell?』(LP)

スペインのビック出身のSSW、Nuria Grahamによる新作は、フレッシュな歌声と弱冠22歳(!)とは思えないメロディ・センスに驚きます。アルバム前半の開放的でポジティブ・オーラが滲みでたポップ・ソングもいいですが、サイケデリック・ロック調に弾き語りを披露している「Peaceful Party People from Heaven」はアルバム後半のハイライトと言うべき1曲。レコードで聴くとノスタルジックな雰囲気が増して、より楽しめそうな作品です。

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【店舗情報】

BEAMS RECORDS
東京都渋谷区神宮前3-25-15 1F
03-3746-0789
営業時間:11:00 – 20:00 不定休

〈BEAMS RECORDS〉の単独店。CD、アナログともに全商品が試聴可能です。ジャンルレス、タイムレスにエヴァーグリーンな音楽を取り揃えながら、オーディオ製品や、書籍、アクセサリー、バッグなども展開。あらゆるシーンにおける「音楽のある豊かな暮らし」を提案しています。

■オフィシャル・サイト:http://www.beams.co.jp/beamsrecords/
■Twitter:@beamsrecords_


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