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WONKがAWAでプレイリストを公開 ストリーミング時代における活動スタイルにも言及


2018.06.19

5月末にリミックス・アルバム『GEMINI:Flip Couture #1』をリリースしたばかりのWONKが、メンバー全員で選曲したプレイリスト『週末、仕事終わりの夜に聴きたい by WONK』をAWAで公開した。

WONKは東京を拠点に活動している長塚健斗(Vo.)、江﨑文武(Key.)、井上幹(Ba.)、荒田洸(Dr.)からなる4人組。ジャズやソウル、ヒップホップの要素をクロスオーバーした彼らのスタイルは、エクスペリメンタル・ソウルとも呼称されている。

昨年、同時に2枚リリースし大きな話題を呼んだ2ndダブル・アルバム『Castor』『Pollux』の楽曲を、彼らと親交の深いビートメイカーや彼ら自身、そしてNYの重鎮・DJ Spinnaらがリミックス。さらに新曲も1曲収録した『GEMINI:Flip Couture #1』について、そしてプレイリスト『週末、仕事終わりの夜に聴きたい by WONK』や、音楽ストリーミング・サービスなどについて、長塚、江﨑、井上の3人に話を聞いた。ちなみに、ドラムの荒田は寝坊のため不在だ(笑)。

[L→R:井上幹、 長塚健斗 江﨑文武]

――リミックス作品をリリースする経緯はなんだったのか。

江﨑:僕らのレーベル〈epistroph〉にヒップホップのビートメイカー、dhrmaさんやBallheadさんがいるんですよ。レーベルとして、日本にビートメイカーのカルチャーを根付かせていきたいっていう思いがあって。そうなったとき、WONKの作品をレーベル所属のビートメイカーにリミックスしてもらえば、世の中の目に触れてもらえるきっかけになるんじゃないかってことで作りました。

井上:今回、参加してもらったビートメイカーの方に、WONKの曲でどれをリミックスしたいか聞いて、全部お任せしましたね。僕らがリミックスしてもらいたい楽曲を選んだわけじゃないんですよ。だから、曲の被りもあったりしました。

長塚:LidlyさんとSpinnaさんのリミックスした楽曲が被ったよね。けど、アウトプットが全然違うから、それもおもしろいなって。あと、10曲目の『SMALL THINGS』だけは、このアルバムのために作った楽曲です。

江﨑:WONKのコンセプトは、J Dillaのビートを生バンドで表現することなんです。これはWONK結成のときに、今寝坊して来てないドラムの荒田が言い出したことで(笑)。だから、根底にはヒップホップ・マナーみたいなのがあるから、相性がいいのかもしれないです。けど、僕と長塚はWONK結成前、ヒップホップをあまり聴いてなくて。僕なんてジャズとクラシックしか聴いてなくて。大きい音の音楽怖いなって思ってたんです(笑)。

長塚:ヒップホップはEminemくらいしか聴いたことなかったですね。メタルやロックばかり聴いてました。

――参加しているビートメイカーの選定はどうやって決めたのか。

井上:dhrmaさんとBallheadさんは同じレーベルで、他のビートメイカーは今寝てる荒田のチョイスです。

江﨑:CramさんとLidlyさんは、去年の10月末にジャズ・レーベル〈Blue Note〉と〈epistroph〉が出した、ジャズ・ピアニストのThelonious Monk生誕100周年記念のトリビュート・アルバムにビートメイカーとして参加してくれてたんです。だから、僕らの周辺と関わるのは、今回で2作品目になりますね。

長塚:DJ Spinnaさんはメールしたら、すぐに「いいよ」って言ってくれたよね。

江﨑:Mixcloudの Spinnaさんのチャンネルで、今年1月に僕らの楽曲「Loyal Man’s Logic」が入ってたんです。日本のタワレコに行ったとき、かっこいい音楽があったからみんなに紹介するよって感じで入れてくれたみたいで。フューチャー・ソウル・バンドのハイエイタス・カイヨーテのオフィシャルリミックスもSpinnaさんが担当されているのを知ってたから、連絡したらやってくれるかなって(笑)。普通にWEBサイトからメールしましたね。

長塚:レスも早いし、仕事が早かった。

※DJ Spinnaは現在虫垂破裂により緊急入院中。入院、リハビリの為に今後予定されているDJをこなすことが難しく、医療費や家族をサポートするための基金を彼の友人が代表して募っています。一刻も早い復帰を願っています。詳細→gofundme.com/dj-spinna-fund

――リミックス作品『GEMINI:Flip Couture #1』はビートメイカーだけでなく、WONKのメンバー全員がリミックスに参加している。1曲目の「Gather Round」では、長塚がヒューマン・ビートボックスだけでリミックスを行ったらしい。

長塚:ヒューマン・ビートボックスの日本チャンピオンのKAIRIって友達がいて。プライベートでよく遊ぶんですけど、彼に教えてもらいました。ヒューマン・ビートボックスってどこでもできるじゃないですか。だからレコーディングの時に遊びでやってたら、メンバーにそれでリミックス作ればいいじゃんって(笑)。

井上:その教わった話は今初めて聞きました(笑)。メンバーそれぞれリミックスを作ろうってなった時、楽器できないから声だけでやっちゃえばいいじゃんって言ったら、しっかり仕上げてきたから驚きましたね。

長塚:スネアの音はどう出すかとかも教えてもらって、めっちゃ練習したからね(笑)。

江﨑:褒め合うのもどうかと思うんだけど、本当に短期間でよくやったなって。長塚は無茶振りに答えてくれるし、吉本向きの才能があるんです。

長塚:僕はそんな気ないんですけど、そういうキャラクターに仕立て上げようとしてくるんですよ(笑)。

井上:けど無茶振りに答える精神はあるよね。さすが元パリピ(笑)。

江﨑:僕らって全員が割と音楽を作れるというか。多くのバンドはボーカルが曲作って、歌詞書いて演奏することが多いと思うんですけど、僕らは皆で案出ししながらやっています。ソロ活動でトラック提供をしたりしてるのもあって、今回のリミックスではそれぞれの色を出していこうってなったんです。僕の場合だと、9曲目の「Dance On The Water」はグランドピアノだけでやりました。

井上:「Dance On The Water」も基本的には「Gather Round」とコンセプトは同じで。江﨑はピアノ弾きだから、ピアノだけでやってみるのはどうだろうって。

江﨑:現代音楽でいうプリペアド・ピアノ(ピアノの弦に物を挟んだり弦を加工するなどして音色を変えたピアノ)っぽいことやりましょうかってなりました。途中でパーカッションとか入ったりしてるんですけど、それは長塚がね。

長塚:ピアノの下に入ってコンコン叩いたり、家の鍵をピアノの弦に当てたりしましたね(笑)。

井上:バスドラムの感じを出したくて、ピアノのどこを叩いたらそういう音が出るのだろうってなったときにピアノの下なんじゃないかって。それをマイクで録って、重ねて作りました。

江﨑:ピアノの下に長塚が入ってる動画があるんですけど、配管工事みたいなんですよ(笑)。

――配管工事(笑)。この話を聞いたあとに『GEMINI:Flip Couture #1』を聴いたら、また違って聴くことができておもしろいかも。今回、WONKにプレイリスト『週末、仕事終わりの夜に聴きたい by WONK』を作ってもらったが、どのように選曲したのか。

長塚:ひとり10曲ずつ、週末仕事終わりに聴きたくなるテーマで選びました。

江﨑:僕は帰宅したい気持ちと遊びたい気持ちが同居してる感じの選曲をしましたね(笑)。

井上:僕は、仕事終わりに遊びたい気持ちが高まるからノリノリなチョイスで(笑)。

――WONKのメンバーはプライベートでも音楽ストリーミングサービスを使っているらしいが、AWAを使ってみた感想を聞いてみた。

江﨑:AWAを使ってみて、考えられたUIだなって思いました。Shazam(音楽発見/認識アプリ)的な機能も含まれたりしてて。

井上:検索で引っかかるアーティストの数は多い気がしますよね。ただ、情報がまとまりきってない気もする。例えばKaytranadaで調べると、featまで出るじゃないですか。それを一個にまとめてほしいとかはありますね。

江﨑:その問題はAWAだけじゃなくても、いろいろあるよね。ジャズ・ピアニストのBill EvansとBill Evans Trioが別アーティストになっちゃうとかさ。

長塚:英語と日本語で分かれる場合もあるよね。Ariana Grandeとアリアナ・グランデがいる、みたいな。

江﨑:登録されている情報だけで引っ張るとそうなっちゃうんだろうね。ウィキペディアのように、リスナーが編集できるようなCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)にしちゃってもいいのかなって思ったりもしたんだけど、そうすると荒れるんですかね。

井上:人それぞれ考え方があるからね。別の方がいいっていう人がいるかもしれないし。そもそもAWAのユーザーさんってやっぱり日本の音楽目当てで登録する人が多いんですかね。日本の音楽って市場が違いすぎるというか。Knowerっていうレッチリの前座を務めるくらい有名なバンドと名古屋でライブしたんですけど、日本では知名度ないんですよ。

江﨑:1年くらい前、Bruno Marsの新譜がCDショップに置いてあって、「あのドコモのCMでおなじみの!」ってPOPで紹介されてたのは、さすがに驚いたね(笑)。世界級のアーティストなのに。

井上:みんな知る手段を知らないだけだと思うんですよね。日本の曲は日本にいれば知るじゃないですか。例えば、清水翔太さんが好きな人は、きっとR&B好きだと思うんですよ。海外のそういったアーティストを関連づけるとか。J-POPしか聴かない人が、海外のアーティストに触れるのはプラットフォームにそれが混在するからこそ起きることじゃないですか。そういう使い方をされたらいいですよね。

江﨑:AWAはユーザーさんによるプレイリストの豊富さは圧倒的だと思ってて。友達に勧めるとか共有するカルチャーが盛んだと思います。他のサブスクにはないですよね。

長塚:AWAはカジュアルにプレイリスト作ってるよね。

江﨑:ストリーミング・サービスって難しいけど、今後はもっと盛り上がりますよね。僕らも今後のリリース方法とか、アルバムを出す以外に、他の方法を試せないかって考えてます。他のアーティストさんが月に1回シングルを出している方法もおもしろそうだなって。アルバムだとピークが発売月辺りだけに来ちゃって、あとはライブで頑張る、みたいな。ストリーミング・サービスが出てきて、話題を持続させることが重要になってくるのかなって思ってます。話題性があって、それを持続させることを考えて実験していきたいですね」

――なるほど。今後の音楽ストリーミングサービスのヒントになる貴重な話ばかり…。最後にWONKの今後について聞いた。

長塚:新曲はいっぱい出しますね。海外展開も考えてます。

井上:同世代のミュージシャンは世界にたくさんいるんで、そういう人たちと何かやりたいんですよね。

江﨑:インディペンデントなアーティストが多くて、すぐに配信ができるので、今後はフットワークの軽さが鍵になってくるかなって。権利関係で配信が遅れましたって言ってる時代じゃないと思うんですよね。

Text & Photo by Toru Miyamoto


【リリース情報】

WONK 『GEMINI:Flip Couture #1』
Release Date:2018.05.23 (Wed.)
Label:epistroph
Cat.No.:EPST-009
Price:¥1,800 + Tax
Tracklist:
01. GATHER ROUND – KENTO NAGATSUKA“HUMANBEATBOX” REMIX
02. MIDNIGHT CRUISE – BALLHEAD REMIX
03. MVP – HIKARU ARATA REMIX
04. MIRROR – DHRMA REMIX
05. SMALL BLUE FOOL – CRAM REMIX
06. FAKE_PRMS – LIDLY REMIX
07. GIVE ME BACK MY FIRE – KAN INOUE REMIX
08. FAKE_PRMS – DJ SPINNA REMIX
09. DANCE ON THE WATER – AYATAKE EZAKI“PIANO”REMIX
10. SMALL THINGS

■WONK オフィシャル・サイト:http://www.wonk.tokyo/
Twitter:https://twitter.com/WONK_TOKYO
Instagram:https://www.instagram.com/wonk_tokyo/


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