FLATPLAY、1stアルバム『the Attitude for Prayers』より先行シングル配信

約6年の時を経て、篠崎奏平のソロプロジェクト、FLATPLAYが、ついに作品『the Attitude for Prayers』をリリースする。

本作は、1st EP『First Extendet Play』以来、単曲~数枚のシングルのリリースを経て、まとまった曲数の作品、しかもアルバムサイズの作品としては初となる。ノイズユニットにはじまり、この名前が定着した頃にはテクノユニットとなっていたという、FLATPLAY。D.A.N.の自主制作音源集『DAN ZINE』及び『EP』にリミックスを提供、また2019年からD.A.N.のサポートメンバーとしてライブに参加するなど、こうした活動のなかで徐々に知名度を上げ、2018年に1st EP『First Extendet Play』をリリースした。

自身が感銘を受けたというJuan AtkinsとMoritz von Oswaldのコラボ作、もしくはテクノの名門、ドイツはケルンの〈KOMPAKT〉などのサウンドを彷彿とさせるような、クリアなサウンドがダビーに折り重なるミニマルテクノを展開。その後は、2020年5月の“Scarp”を皮切りに、同年9月にAltoneとのコラボも含む3曲入り『Slightedge』、2021年に2曲入り『Echidna』とEPのリリースを続け、東京のアンダーグラウンドなクラブシーンでライブやDJで活動を続けていた。そしてここにひさびさ、ヴォリューム的に初のアルバムサイズの作品と言えるだろう。本作のサウンドはひとことで言えば、『First Extendet Play』よりも、そのクリアかつ繊細なサウンドの解像度を失わず、さらなるミニマル・ダブへの接近を見せた作品と言えるだろう。2020年の『Slightedge』など、これまでの作品でもその片鱗を見せていたが、さらなるサウンドの深化を行った結果だ。

作品のイントロとも言える“Beginning Dub”で、アルバムのサウンドがどんなところを目指しているのかを浮かび上がらせる。レゲエ的なワンドロップリズムが地を這い、彼らしいクリアなシンセサウンドがエコーの細やかな残響を伴って、その上を浮遊する。その方向性はアルバム中盤、メロディカ（鍵盤ハーモニカ）をフィーチャーした“the Attitude for Prayers”とそのダブヴァージョニングとも言える“the Attitude for Prayers II”、さらに続く“Skaavii”に示されている。1990年代後半、Moritz von OswaldとMark ErnestusのBasic Channelによる、レゲエとテクノを融合した、エレクトロニックミュージックのひとつの発明とも言えるエレクトロニックダブのスタイル=リズム＆サウンドのスタイルを踏襲しつつ、そのサウンドは、彼のトレードマークとも言えるクリアな音の質感の存在感も含めて、篠崎のFLATPLAYのフィルターを通して紡ぎ出された新たな表現といえるだろう。

とはいえ、こうしたミニマルダブ的なサウンド以外にも、『First Extendet Play』よりもさらなるクオリティを突き詰めたエネルギッシュでダンサブルなミニマルテクノトラックは“Spirytus”や“You Got an Invisible Body”、アルバム後半の“How to Play Well (the Case of lzabella)”から、ラストの“Massive Chimpang”などでも展開されている。

ただし、こうしたダンサブルなテクノトラックにおける、ダブ処理も以前よりさらなる繊細な制御によって構築されていて、こうした音響的なアプローチの歩みを大きく深めた本作のサウンド作りが一貫して示されている作品だ。

Text by 河村祐介