betcover!!が手がけたクリープハイプのニュー・シングル「愛す」のリミックスが本日1月17日(金)に配信リリースされた。
クリープハイプの4thアルバム『世界観』(2016年)収録楽曲「TRUE LOVE」でも競演を果たしている盟友・チプルソが手がけたリミックスを皮切りに、4週連続リリースされる今回のリミックス企画。その第2弾を担当したbetcover!!は、1999年生まれ、東京・多摩地区出身の新世代SSW。そんな彼が手がけたリミックスは、原曲のメロディ・ラインは活かしつつも、自身の作品と同様に様々な音楽的要素を感じさせる個性的な仕上がりに。さり気なく自身のコーラスも加え、第1弾同様に楽曲の新たな魅力を引き出すことに成功している。
今回はそんなbetcover!!ことヤナセジロウにインタビューを敢行。言葉少なげながらも誠実に、クリープハイプとの思い出や本リミックスの制作プロセスを語ってくれた。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by DAMO [Kana Fukuda]
「何か他のバンドと違うなって思った」――クリープハイプとの出会い
――ヤナセさんとクリープハイプの出会いについてお聞きしたいです。このリミックスのオファーの前に、彼らの作品などに触れる機会はありましたか?
ヤナセ:はい。たぶん最初に聴いたのは中学生くらいの頃だったと思います。『憂、燦々』(2013年)が出た頃なのかな。YouTubeでたまたま出会って好きになりました。パンクっぽさとフォークの要素が合わさったみたいな感じで、何か他のバンドと違うなって思ったのは覚えています。あと、MVとかの映像もすごく好きで。映画も大好きなので、松居大悟さんとのコラボ作などにもすごく惹かれましたね。
――なるほど。
ヤナセ:特にインディーズ時代の作品が好きで。今僕の作品をお願いしているエンジニアさんが(池田洋)手がけた作品もあるみたいで。結構フォーク色が強いんですよね。リアルタイムではないんですけど、後追いで色々と掘っていって。今聴くとまた歌詞も違った感じ方をしますし、当時はあまり気づかなかった歌謡曲っぽさにも気づくことができて。
――クリープハイプとの思い出について、特に印象深い作品、楽曲などはありますか?
ヤナセ:インディーズの2枚が特に好きですね。昭和歌謡っぽいテイストとガナってる感じがパンクっぽくて好きです。
――では、松居大悟さんとのクリープハイプのコラボで、特に印象深い作品を挙げるとしたら?
ヤナセ:「憂、燦々」ですね。
――昔から聴いていたクリープハイプから、リミックスのオファーがきた時はどう思いましたか?
ヤナセ:もちろん嬉しかったです。これで自分も売れるかな、とも思いました(笑)。
――では、今楽曲「愛す」についてはどのような印象を受けましたか?
ヤナセ:今回の楽曲って、外部のプロデューサーさんを起用しているんですかね?
担当:プロデュースはメンバー全員です。
ヤナセ:あのホーンの入れ方とかもバンドでやられたんですか?
担当:長谷川カオナシが譜面に起こしてホーン隊がラフを制作し、それを直していきました。
ヤナセ:生音なんですね。打ち込みっぽいホーンだなと思っていたので、ちょっと意外でした。楽曲全体としては80年代の歌謡曲っぽさも感じさせる、少しレトロなテイストを現代風に再解釈したような印象を受けました。
「リミックスでは逆にゴチャゴチャさせようと思ったんです」
――別のインタビューではPCは全然使えないとおっしゃっていたのですが、今回のリミックスはどのような制作プロセスで?
ヤナセ:中々アイディアが出てこなくて。少しPCも使ってみて、色々試してはいたんですけどしっくりこず。一旦寝かせることにしたんです。その間に自分の曲を作ったりしつつ、〆切り直前になってMTRをいじってたら完成しました(笑)。元データはボーカルのみを使って、あとは全て自分で打ち込んでいます。本当はドラムはレコーディングしたかったんですけど、予算とかの都合で実現せず。
――以前、サニーデイ・サービスの「熱帯低気圧」のリミックスも手がけていましたが、それも同様の手法で?
ヤナセ:そうですね。「熱帯低気圧」は原曲がクリックを使用していなかったので、ドラムもループではなく全部打ち込みで制作して。かなり大変だった記憶があります。
――リミックスは基本的にDJやトラックメイカー/プロデューサーが行うことが多いですが、SSWのヤナセさんがやるっていうのがおもしろいですよね。
ヤナセ:お話頂けるのは本当に光栄です。ただ、自分でもあまり得意とは思ってないですね(笑)。
――今回のリミックスは以前から影響を公言しているダブっぽい要素と、サビでは少しだけロカビリーっぽくもなります。
ヤナセ:原曲がカチッとまとまった作品なので、リミックスでは逆にゴチャゴチャさせようと思ったんです。自分が気持ちいいなって思えるように作りました。
――また、「作家の人間性を重要視してしまう」ともおっしゃっていました。尾崎さんについてはいかがですか?
ヤナセ:まだお会いしたことがないんですよね。昔から本当に好きでよく聴いていたので、直接お話してみたいなって思っています。近年の作風や意識の変化について色々お聞きしたいこともあります。
――「愛す」はその捻れた感情を表現した歌詞でも注目を集めています。あの歌詞に対してはどのような印象を受けましたか?
ヤナセ:個人的にあまり恋愛経験というものがないので、なるほどなぁっていう感じでした(笑)。
――ああいった恋愛感情を自身の楽曲にするというアイディアはあまりない?
ヤナセ:そうですね。僕が曲に込めるテーマっていうのは、ノスタルジックな感情だったり夢みたいなもので。基本的に子どもたちに向けて曲を書いているつもりなんです。だから、直接的な自分のパーソナリティとは切り離して考えているんです。
「わかりやすく変なことをやっている」――次回作の構想
――メジャー・デビュー作『中学生』をリリースしてからすでに半年ほど経ちますが、ご自身は今どのようなモードでしょうか。
ヤナセ:曲を作ったりレコーディングもしたりしたんですけど、今は基本的に何もしてないです(笑)。あと、年末にネパールに行ってきて。
――ネパールに?
ヤナセ:はい。何も目的なく、1週間くらい。「ネパール」っていう響きと、単に渡航費が安かったので、フラっと行きました。向こうでは散歩したりして、ダラっと過ごすだけの日々を過ごしていたんですけど、たぶん今もその気分が抜けてなくて。知に足がついていないというか、頭が上手く回ってないんです(笑)。
――制作中の楽曲について、ご自身では何かしらの変化を感じますか?
ヤナセ:ポップというか、大衆的になっているような気がします。わかりやすいメロディ入れてみたり。あと、今まではフォークっぽいリズム感、フロウを大事にしていたんですけど、最近は逆に英語っぽい、リズミカルなフロウに挑戦してみて。意外とイケるなと。そういうところがJ-POPっぽさに繋がるのかなって思います。その代わりに、他の部分で違和感を感じさせるような要素を入れたりして、バランスを取りつつ。
――前作ではBillie Eilishなどからの影響を語っていましたが、最近のインプットやリファレンス的なアーティスト、作品があれば教えて下さい。
ヤナセ:相変わらず雑多に色々と取り入れていて。それこそButthole SurfersとかThee Oh Seesみたいなオルタナ、パンク、ガレージから日本の祭ばやし、音頭っぽい曲も作っていたり。あとは尾崎豊さんみたいな曲もあるし、ダブっぽい曲もあったり。基本的に変な曲ばかり作ってるんですけど、作品としてまとめたらポップになるような気もしています。
前作はアルバム通して川の流れみたいなイメージで。そこに何か、違和感のあるものが浮いているっていう感じだったんです。でも、次作は異なる性質をもった物がいくつか並んでいる、みたいな。ずっと違和感が続くので、逆にわかりやすいものになるんじゃないかなと。わかりやすく変なことをやっている、コメディみたいな作品になると思います。
【リリース情報】
クリープハイプ 『愛す』
Release Date:2020.01.22 (Wed.)
Label:Universal Music
[初回限定盤] UMCK-7052 ¥2,300 + Tax
[通常盤] UMCK-5688 ¥1,000 + Tax
Tracklist:
[CD]
1. 愛す
2. キケンナアソビ
[初回限定盤DVD「2019年11月16日」]
⻤
けだものだもの
グレーマンのせいにする
ボーイズENDガールズ
クリープ
5%
イノチミジカシコイセヨオトメ
私を束ねて
身も蓋もない水槽
二十九、三十
※封入先行:
10周年全国ツアー『僕の喜びの8割以上は僕の悲しみの8割以上は僕の苦しみの8割以上はやっぱりクリープハイプで出来てた』スペシャル
日程:2020年3月15日(日)
会場:幕張メッセ国際展示場
オール・スタンディング/ブロック指定:¥6,300
日程:2020年3月22日(日)
会場:大阪城ホール
全席指定¥6,300