お待たせいたしました! 昨年11月にリリースされた新作『Pure Mood 』を引っさげ、2015年12月にジャパン・ツアーを行ったことも記憶に新しいRingo Deathstarr(リンゴ・デススター)!
今回のツアーは東京はもちろん北海道から大阪、山梨までも回るという大規模なもの。各地で様々な日本のアーティストと共演しながら、事故に合いそうになったり(?!)、食いだおれ状態になったり(笑)、日本を存分に満喫しながら忙しいツアーの日々を送っていたようです。
そんな盛りだくさんな来日公演の合間を縫って、Spincoasterのインタビューに答えていただきました!
新作に収録されているそれぞれの思い入れのある楽曲やそれにまつわるエピソード、そして彼らが最近聴いている音楽についてなど、Ringo Deathstarrの作品及び彼らが影響を受けた曲をチェックせずにはいられなくなるような話をお訊きすることができました。
絶妙な仲の良さがうかがえる3人のインタビューを、写真と音楽と共に是非お楽しみください。
Interview by cos.
Photo by Takazumi Hosaka
―まず、北海道でのツアーを終えたばかりということで、そのことに関してうかがいたいと思います。2度目の北海道はいかがでしたか?
Alex:札幌はよかったよ~!
Elliott:雪が降っててよかったね。
Daniel:出演したライブハウスの控え室(dressing room)の入り口が低くてまるで潜水艦の底みたいだったな。かがまないと入れなかったくらいだよ。
Elliott:もはや洞穴みたいだったね、dressing holeだ(笑)。そのライブハウス、Spiritual Loungeのオーナーである河合秀樹さんはすごく良い人だったし、最高だったよ。それから北海道ではジンギスカンを食べに行ったんだ。みんな食べすぎで倒れそうになったね(笑)。
大好きすぎてジンギスカンのためだけにでもツアーに出たいくらいだよ(笑)。
―みなさんの出身地であるテキサスは暖かい地域だと思いますが、北海道のような寒いところはどうでしたか?
Alex:テキサスはすごく暑いから、寒い地域に行くのは良い気分転換になるね。
Elliott:北海道は、ぼくたちがツアーした地域の中でも最も寒い気候だったね。ノルウェーやスウェーデンといった国々もツアーで回ったけど、北海道ほど寒くはなかったな。たくさんの雪、飛行機の遅延、空港まで通常1時間のところ3時間もかかったりしたんだ。それに乗っていた車が事故に遭いそうにもなったよ…。ものすごくゆっくり車がすべっただけなんだけどね(笑)。
―みなさん無事でなによりです…! なんと東京は今回で9回目ということで、大分慣れていることと思います。今回はそれ以外の、京都など訪れたことのない街にも滞在するということですが、何か楽しみにしていることはありますか?
Elliott:新しい街に行くのが待ちきれないよ。京都については少し調べたんだけど、昔は日本の首都だったんだよね? そして、歴史的な建造物がたくさんある。ツアーの合間にそういったところを観光できたらいいなと思ってるよ。
―なるほど。それでは新作についてお訊きしていきたいと思います。難しい質問かとは思いますが、今回のアルバム『Pure Mood』の中でそれぞれお気に入りの1曲というのははありますか?
Elliott:難しい質問だなあ……。(3人揃って困ったなあと仲良く笑い合う)
Alex:私は「Guilt」がすごく好きかな。「Guilt」は私がアイディアを出した曲で、はじめは今のような聴こえ方のする曲では全くなかったの。元々、普段ベースを弾いている私がギターに挑戦しながら作ったもので、とても静かでぼんやりとしたボーカルの曲だった。それをElliottに渡して、彼が編集したのを聴いてみると、クレイジーなドラム・ビートが追加されて最終的にすごくラウドな曲になっていったの。それを聴いたときにすごく驚いた。そして、静かでぼんやりとしたアイディアが全く新しい曲に生まれ変わって行くのにすごく興奮したな。曲自体は同じなんだけれど、何て表現したらいいんだろう……もっと良くなったというか(笑)。
そういった行程に思い入れがあってすごく好きよ。あと、この曲のベース・ラインは弾いていてすごく楽しいの!(笑)
Elliott:間奏部分を考えているとき、ちょうどみんなでFilterの「Amen Nice Shot」を聴いていたものだから「ぼくたちの曲間でこの曲を演奏してみようよ」ってなって加えられたベース・ラインなんだ(笑)
Alex:Elliottがベース・ラインのパートを書いたから、最初は私にはとても難しくて弾けなかったの。だけど、たくさん練習するにつれて弾けるようになっていって、今では大分簡単に弾けるようになった。新しいことを学んで習得することができたのが、この曲を好きなもう一つの理由でもあるかな……。(DanielとElliottが真剣に質問に答えるAlexをからかう)笑ってないであなたたちが答える番よ!
Daniel:うーん……、えーっと……俺は「Heavy Metal Suicide」。 ただ単にハード・ロックなこの曲を演奏するのが好きなんだ。Metallicaのドラマー、Lars Ulrichになったつもりでドラムを叩けるんだよ。半ズボンを履いてひたすらにドラムを叩くおじさんになりきるんだ(笑)。それが、この曲が好きな理由さ。Elliottのお気に入りは何なんだい?
Elliott:ぼくも「Heavy Metal Suicide」かな、たぶん(笑)。
ぼくがこの曲を好きなのは…。えっと、元々この曲はぼくが作った2つの全く異なったデモだったんだ。まず、はじめに作った一つは主にメインリフを録ったもので、どうしたらいいのかわからなくなって長い間ほおっていたんだ。それから、もう片方のデモを作りはじめ、最初はDinosaur Jr.を暗くてつまらない感じにしたみたいな曲になっていて、それに合わせたサビのメロディを思いついたとき、「もしかしたら、あの時のデモと合わせるといいかも」となって、その2つのアイディアが組み合わさり全く別のこの曲が出来上がったんだ。忘れていた昔の変なアイディアが、新しくなって再び蘇るのはいいものだね。それからもう一曲、アルバムの中で1番最後に出来上がった「Stare And The Sun」もお気に入りだよ。ただ単にアイディアが浮かぶままに作れて、力を入れずに自然に出来上がっていったのが良かった。
Alex:あと、この曲は最後の最後まで「シメサバ・ソング」って名前だったの!(笑)
私が名付けたんだ!ギターのフレーズがなぜか「シメェ~サバァ~」って聞こえてね(笑)。
Elliott:前回の札幌ツアーでライブ前にみんなで回転寿司屋に行ったんだ。そこでシメサバにハマって食べすぎてしまった思い出があるんだよね。その後のライブ中もゲップが止まらなかったな~(笑)。
Danielは前回食べすぎてトラウマになってるけど、ぼくは今回2貫だけ食べたよ。それだけでもゲップが止まらなくなったよ(笑)。
で、実はこの”シメサバ体験”は「Stare At The Sun」のアイディア、そして歌詞自体と通じるものがあるんだ。はじめはすごく好きだと思うんだけど、後々うんざりして嫌いになるっていうね(笑)。
―なるほど(笑)。
では「Stare At The Sun」はまさに「Shime-Saba Song」なのかもしれませんね(笑)
Elliott:そうだね(笑)。
この曲は完成したと思って編集作業に取りかかっていたら、全く違うアイディアが思い浮かんできたんだ。結果、いい意味で全然違うものになったし、変更して良かったと思ってる。それから、Sephora(海外の化粧品チェーン店)で買い物してるときとかに聞こえてきそうな曲ってとこも好き(笑)。
―それぞれお気に入りの曲を挙げていただきありがとうございます。では、今回のアルバム『Pure Mood』で何か新しい試みなどに挑戦してみたことはありますか?
Elliott:うん。ギターをドロップDチューニング(ヘヴィーな曲でよく使われる楽器のチューニング方法)で弾いたことかな。
Alex:そうね、たくさんのことを試みたわ。ドロップDチューニングを採用したこと。今回初めて自分たちだけでレコーディングを行ったこと。Elliottがエンジニアとプロデューサーを担ったことよ。
Elliott:うん。「こうしたらいい」とか「こうするべき」などと指示する人がいない状態でレコーディングが出来て良かった。それにスタジオでの作業を自分自身でやってみたいとずっと思っていたからね。今作では、自分たち自身のペースで作業を行うことができ、色々なことを試すこともできて良かったよ。
―前作となるEP『Gods Dream』にて、Smashing PunpkinsのJeff Schroederが「Chainsaw Morning」、SwervedriverのAdam Franklinが「Flower Power」でゲスト・ギターとして参加していましたが、その経験から何か影響は受けましたか?
Alex:うん、もちろん。Smashing Pumpkinsと一緒にツアーを周っていて、何て言ったらいいのかな、自分たちがライブ、そして音源で出したいと思う音はどういうものなのかとか、ただ単に彼らそして彼らのクルーたちと一緒にいたことで色々な視点を持てるようになったわ。Swervedriverは、ほんと最高よね。私たち彼らの大ファンなの(笑)。
Elliott:Jeff SchorederがSmashing Pumpkinsに加入する前、彼はThe Lassie Foundationっていうバンドをやっていたんだ。ぼくは高校生の時からそのThe Lassie FoundationのファンだったからJeffのことは元々知っていて、Smashing Pumpkinsへの加入が決まったとき「わーお!JeffがSmashing Pumpkinsに!?」ってなったよ(笑)。
だから、ぼくの人生でこんなことが起こるなんてって変な感じもするけど、Jeffとこうして知り合って共作することができてすごく嬉しいよ。それに、今では彼とくだらないメールをよくするくらい仲良くなったんだ。お互い別々にツアーしていても、近くの街にいるときは「バーベキュー食いに行こうぜ!」ってな感じで遊ぶこともあるよ。面白いよね、子供の頃は夢にまでも見ていなかったような出来事がこうして起こるなんて、とても変な感じ(笑)。
―そうなんですね、ありがとうございます。彼ら以外に今後一緒に音楽を作ったり共演してみたいアーティストというのはいますか?
Alex:1曲だけコラボレーションするっていうことなら、面白そうだなって思う人たちはたくさんいる。例えばCrystal Castlesが「Not In Love」でThe CureのRobert Smithとコラボレーションしたみたいにね。あれはすごくクールだと思ったな。……う〜ん、いっぱいいすぎてなかなか思いつかないや!
Daniel:ぼくはこの2人と一緒に曲を作るのが好きだね。それで十分さ。他の誰でもなく。
―わかりました。それでは話は変わりますが、今まで作ってきたアルバムの中で一番好きなのはどの作品ですか?
Alex & Daniel & Elliott:(3人揃って)『Pure Mood』!!!
Daniel:いつも最新作がベストだね。
Elliott:なぜかって、もし自分たち自身が気に入らなかったらリリースしていないしね。それに、嗜好は変わっていくものだから、それが反映されたアルバムをぼくたちは毎回作っているよ。中でも『Pure Mood』は、自分たちの音が最も自然な形で現れていると思うし、今まで作ってきたアルバムの中でダントツ1位だね。
今振り返ると、1stアルバムの『Colour Trip』はちょっと人工的過ぎだったと思うんだよ。スタジオの中だけで作られたようなものだったし。
Alex:それに、音源をライブで再現するのがすごく難しいの。そのアルバムでは、ベースの音を二重にしていたり、凝りすぎだったのよね。私たちはその頃、そこまで腕のあるいいミュージシャンじゃなかったから、アルバムの曲をライブで演奏するのがすごく大変だったの(笑)。
でも今は、アルバムの楽曲をライブで演奏するのが以前と比べて大分容易にできるようになったし、それをより忠実かつうまく表現できるようになったと思う。
―もう少々新アルバム『Pure Mood』についてお訊かせいただきたいです。今までのアルバムと比べてグランジっぽくヘヴィーな音になっている印象を強く受けるのですが、これは何かに影響を受けてのことだったりするのでしょうか?
Elliott:まあ、ぼくは太り続けてるからね(笑)。
Daniel:俺たちはみんな落ち込んでいて怒りを抱えているんだ。ヘロインもやってるんだぜ、それもたくさんね(笑)。(※グランジ・ジョーク)
Alex & Elliott:(笑)
Alex:私たちの普段聴く音楽ってもっとヘヴィーで、それこそグランジっぽいものが多いのよね。あまりソフトなシューゲイザーは聴かないし、たぶん自分たちの嗜好が演奏スタイルにも反映されるようになってきたのかもしれない。
―例えば最近ではどのようなバンドを聴いているのですか?
Alex:Smashing Pumpkins(笑)。Elliottは制作中たくさんのインスピレーションを受けてたよね?
Elliott:その時何かに影響を受けていたというより、お決まりのスタイルに飽きてしまったんだ、わかるだろ。聴いても記憶に残らないような曲に嫌気がさしてしまったんだ。ぼくはコーラスとメロディーに激しい暴力的なサウンドを混ぜ合わせるのが好きなんだよね。強いて言うとするならば、ラジオで流れていたAlice In Chainsの「Stone」っていう曲には結構影響受けたかな。ぼくたちはツアー中よくラジオを聴いているんだけど、ラジオって「悪趣味すぎてもはや逆に面白い」っていう曲もあれば、「これ、普通にかっこいいじゃん」って思う曲に出会うこともある。そういったものからたくさん影響を受けていたのかもしれないな。自分たちの今までのサウンドに飽きてしまった部分もあって、今回のようなヘヴィー・サウンドに変化していったよ。でも、新作も聴きすぎてまた飽きてきちゃってるんだ。だから、帰ったら早速新しいアルバムを作らなくっちゃ(笑)。
―では、今回でヘヴィーになったので逆に次作は一周してソフトになる可能性もありそうですか?
Alex & Elliott:ないね!(即答)
Alex:たぶんもっと激しくなると思う。そっちの方が演奏していて楽しいし。
Elliott:ソフトな曲は演奏できないし、ぼく自身ソフトな人間じゃないと思うんだ(笑)。
「Heavy Metal Suicide」のようなヘヴィーな曲は、Alice In ChainsやHelmetに影響されて作ったんだけど、そもそもぼくはそういった音楽を聴いて育ってきたんだ。大人になるまでシューゲイザーのような音楽は全然聴いてこなかったぼくが、なぜシューゲイザーが好きになったかっていうと、通常の歌い方ではフロントマンのようないい歌い手にはなれないけど、シューゲイザーならエフェクトをたくさんかけていい感じに出来るなって気がついたからなんだ。元々ぼくはドラムを叩いていたんだけど、ある日実際にシューゲイザー・サウンドで歌ってみたら「これなら簡単に歌えるし、かっこよく聞こえる!」と思ってボーカルをとるようになったんだよ。ただ、ぼくはNirvanaやHelmet、Pearl Jam、Stone Temple Pilotsのようなバンドばかりを聴いていたから、今はそんな自分自身を受け入れて「くたばれ!インディー・ロック気取り野郎め。俺はロックするぜ!」って気持ちだよ(笑)!
―楽しみです(笑)。
好きなバンドといえば、少々話は変わりますが最近気になっている日本でお気に入りのバンドはいますか?
Alex:cruyff in the bedroom。そこまでまだ詳しくはないけど、Bertoia、Lemon’s Chair、PLASTIC GIRL IN CLOSETとか……これまでに共演したバンドはみんなお気に入りよ!
Elliott:PLASTICZOOMSかな。彼らは今ベルリンに住んでるね。他に誰かな……ねごと、BABYMETAL、Coaltar of The Deepers……。あと、もちろんSugizo! BUMP OF CHICKENの音楽はまだ聴いたことがないけど、名前だけは見たことがあって気になってる(笑)。
Alex: 鳥肌(bump of chicken)?(笑)
Elliott:BABYMETALはミュージック・ビデオを見たんだけど、正気じゃないところが面白くて好きだよ。どこからやってきたのか理解できないし、全く共感はできないけど、まるで宇宙人が創ったみたいだよね(笑)。
―最後に、年末ということですし、可能ならば2015年のベスト曲を教えてください。
Daniel:無理~(笑)
Alex:Speedy Ortizのあの曲が好きだな!曲名わからないんだけど……(サビを歌いだす)~♪ って曲!
Elliot:ああ「Raising The Skate」のことだね。
Alex: そう、それ! この曲大好き(笑)。あと、私たちCARREERRSってバンドが好きなの!
Daniel:彼らはまだまだ小さいバンドだからきっとみんな知らないんじゃないかな。
Elliot:CARREERRSはテキサス州バーモント出身のバンドだよ。それにしても今年何がリリースされたかなんてわからないものだな。う~ん、Drakeの「Hotline Bling」とか?……わからないけど、あの曲は好きじゃないな(笑)。
Daniel:すぐに気に入るよ(笑)
Elliot:それはないね……。おっ、ちょっと待った。Brad Paisleyの「Crushin’ It」とLuke Bryanの「Kick The Dust Up」はラジオで流れてたから最近の曲かな。
Alex:そうね。バンでツアーしてるときはラジオが唯一の音楽再生プレイヤーだから、永遠とそれを聴いてるしかないの。ダサいものばかり流れているんだけど、聴き続けているうちに最終的に楽しめるようにまでなっちゃったんだよね(笑)。
特にカントリー番組が可笑しいくらい悪趣味すぎてむしろ大好き!
Elliot:カントリーの悪趣味な曲がかかったときは寝ていても起きなきゃいけないくらいだよ。あんなサビを書いてみたいな(笑)。
ぼく、実は最近の音楽はあまり聴かないようにしているんだ。トレンドに影響されたりしたくなくてね。ただライブを見に行くのは好きだよ。もし新しいバンドが出てきたら、好きか嫌いかはライブを見てから決める。だから2015年のベスト・ソングを挙げるのはぼくには難しいな〜。
―楽しいお話、そして難しい質問にも真剣に答えてくださりありがとうございました!
Alex & Daniel & Elliot:Thank you!