Interview

Special Favorite Music

「日々生きてる中でも、『魔法のような瞬間があるんだ』ってことを確かめたい」――男女混声8人組バンド、Special Favorite Music インタビュー

2枚のEPと昨年末にリリースした7インチ・シングルで、その認知を全国レベルへと拡大させてきた男女混声8人組の大所帯バンド、Special Favortie Music。
この度遂にリリースされた彼らの待望のデビュー・アルバム『World’s Magic』では、管弦楽器を巧みに取り入れたアーバンかつカラフルな音世界を展開。そして2010年代以降の音の質感、エディット・センスを擁しながらも、時には古のソウル〜ファンクからどこか懐かしい歌謡曲的メロディ・センスまでをも想起させる、その参照点を安易に絞らせない音楽性は他に類をみないものとなっている。

PC一台あれば、様々な音色を盛り込んだ楽曲を簡単に制作することもできるこのご時世において、インディペンデントな活動をしているにも関わらずわざわざ生音、生演奏で管弦楽器を取り入れる彼らの姿勢は、一見効率の悪い手段に映るかもしれない。しかし、彼らが若者を中心とした多くのリスナーから指示されている姿を見ると、やはりそこには確実に、人の手によってかき鳴らされる音楽のみに宿る輝きのようなモノの存在を、今一度信じてみたくなる。

今回、そのタイトル通り魔法のような魅力に溢れたデビュー・アルバムをリリースしたばかりのSpecial Favorite Musicの中心人物にしてブレインでもあるクメユウスケ(Vo./Gt.)とオクダナオヒロ(Gt./Syn.)、そしてボーカルとしてクメとともにフロントに立つラビンユー(Vo.)の3名に、このバンドの成り立ちから信念、目指すヴィジョンなどを訊いてみた。

Interview by Takazumi Hosaka

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—初歩的なところから、まずこのバンドの結成の流れについて教えてもらえますか?

クメユウスケ(以下:K):最初はぼくが色々な人に呼びかけて始まりました。オクダくんとかユーちゃん(ラビンユー)は元々知ってたので、「一緒にやろうよ」って。他のメンバーはそこから結構数珠つなぎ的に繋がっていった感じですね。

—このSpecial Favorite Musicというバンドをスタートさせるにあたって、どういったヴィジョンを頭に思い浮かべていたのでしょうか?

K:”肉体的なポップ・ミュージック”っていうか、そういう感じです。

—それは以前クメさんが組んでいたバンド、NOKIES!などでのサウンドよりも、さらに肉体的ということでしょうか?

K:大人数で、人間の存在感みたいなモノをしっかりと出すっていうのは最初から念頭に置いていました。ポップ・ミュージックだけど、決して弱々しいモノじゃないぞっていう。

オクダナオヒロ(以下:O):今だったらシンセとかサンプリング音源とかで弦楽器や管楽器の音を出すこともできるけど、そういうのとは違って、実際にマンパワーでやったら……生命力じゃないけど、そういうモノが出せるんじゃないかって思ったんですよ。で、意外とそういうことやってるバンドっていうのも周りにいなかったから、誰かがこういうことやっても良いんじゃないのかなっていう風にはずっと思ってて。

—そういったアイディアに辿り着く、何かキッカケのようなものはあったのでしょうか?

O:なんか……YouTubeで80年代のJ-Popというか、そういった言葉が出てくる前の歌謡曲のライブとかを観ていて。ぼくら”シティ・ポップ”って言われることも多くなってきているんですけど、それよりももっと「ポップ」というか、もっと王道の、売れてたモノが好きだったりもして。中山美穂とか。
音楽的に聴いて果たして本当に良いのかと言われるとちょっと微妙かと思うかも知れないんですが、そういう微妙な部分が愛嬌があって好きだなぁって。

K:FNS歌謡祭の映像とかめっちゃ観てたよね。

O:そうそう。あの時代のライブやコンサートって、アイドルっぽい人でも今みたいにカラオケ状態ではなくて、ちゃんとバックの演奏も生演奏なんですよね。当たり前なんですけど。何かそういうのを観てて……イイなぁって(笑)。
あとはその当時ぼくらの周りにはトラックメイカーとかDJの友人が多くて。そういう音楽も好きなんですけど、ちょっとそういうのに飽きてきてしまったというのもあって。
あとは……単純にストリングスとか管楽器の音を、生演奏でレコーディングしてみたかったっていうのもあるんですよ。今までやったことなかったから、自分たちでやったらどうなるんだろう? みたいな。単純にやったことないことを自分でやってみるっていうのが好きなんですよね。

―クメさんがやられていたNOKIES!は、よくその参照点として引き合いに出されるのはいわゆる00年代後半の海外インディ・バンドでしたよね。
そこからそういった日本の古き良き時代の歌謡曲に興味が移るのって、とても今っぽい人たちの感覚だなと思うのですが、そういう興味の移り変わりは、バンド・メンバーや周囲の人たちとも共有できていましたか?

O:バンド・メンバーが聴いてたり興味持っている音楽は全然別ですね。それぞれがちゃんとプレイヤーとして独立している人たちなので。
ここ(クメユウスケとオクダナオヒロ)の……楽器とかあまり得意じゃない、ノンアカデミックなチームは(笑)、ここにこういう音入れたいとか、ああいう曲にしたい、みたいなヴィジョンは結構共有できていて。
他のメンバーはそういうヴィジョンを実現させてくれる心強いパートナーというか、そういう感じですね。

K:そうですね。そこに移っていったのはすごい自然なことでしたね。海外でKindnessやBlood Orangeとかが出てきて、彼らが参照している音楽が実は佐藤博や筒美恭平、角松敏生など日本のポップスにも息づいていることに気付いて、自分たちの興味ややりたいこと、やれることともリンクするモノがあるなって思ったのを覚えていますね。

O:でも、そういう音をバンドでやっている人たちが周りにはいなかったっていうのもあって。

K:そういう音楽に興味を持っているのは周りではDJとかトラックメイカーの方々だったんですよ。日本語の歌があって、管弦楽器が入ったアレンジでポップ・ミュージックを作れるっていう条件がこのバンドにはそろっていたので、じゃあその音楽を今バンドとしてやってみよう、ライブハウスで鳴らしてみよう、って思って。

—では、このSpecial Favorite Musicという大胆なバンド名がどこからきたのかを教えてもらえますか?

K:これは……結構悩んだんですけど、最終的には結果オーライな名前になったんじゃないかと思っています(笑)。
色々バンド名のアイディアは出てたんですけど、どれもシックリこなくて。先に同名の曲は完成していたんですよ。

O:捉え方によってはめっちゃポップな名前として捉えられると思うんですけど、ぼくらとしては実は中身のない言葉として捉えていて(笑)。

K:そう。空っぽというか、空洞。そしてどこにも着地していない。

O:何かスーパーのセール品みたいな感じっていったらわかりますかね。代替可能っていうか(笑)。

K:名前に縛られたくなかったんですよ。バンド名に縛られて、遠くにいけなくなるのだけは避けたかった。

—バンドとして今後どのような変化していくことも可能な名前にしたかった、と。

K:そうですね。

—女性ボーカルを入れたいという思いは、かなり初期からあったのでしょうか?

ラビンユー(以下:L):最初私は完全にコーラスだったんです。クメくんがメインで歌ってて。

K:そうそう。でも……なんか、やるなら自粛したくなかったというか、管弦楽器入れて、賑やかにして、じゃあ次は声も男女混声にしちゃおうって。
なんかあまり天井というか、限界を設けたくないんですよね。自分たちで幅を狭めたくないというか。

—ラビンユーさんはこのバンドに誘われた時どう思いましたか?

L:誘われたというか……う〜ん(笑)。

K:めちゃくちゃ漠然とした誘い方やったからな。「レコーディングするから来て!」みたいな。

O:そこから全部騙し騙し……(笑)。

L:最初はレコーディングだけだと思ったんですよ。そしたら「おもしろくなってきたからライブも出ない?」って言われて(笑)。

O:ライブも最初はひっそりと端っこの方にいて、コーラス然としていたんですけど、そのうち……(笑)。

L:しばらくしたら私がメインで歌う曲が完成された状態で渡されて……「私、歌うんですか?」って(笑)。

O:「いや〜、まぁ。こういう曲もあっても良いんじゃないかな」って言って(笑)。

L:そこからずっと騙されて現在に至ります。その次は「写真撮影するから来て」って呼ばれて(笑)。

K:でも、ユーちゃんだけじゃなくて、結構他のメンバーに対しても最初はそうで。だからこそ、このアルバムの制作でバンドとしてすごく固まったなって感じがありました。

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—なるほど。では、このSpecial Favorite Musicにおける楽曲制作のプロセスを教えてもらえますか?

K:今回のアルバムに関しては、「GOLD」以外はぼくが作詞作曲をしました。で、「GOLD」は彼(オクダ)が。
基本的にぼくはメロディやコード、歌詞、おおまかなアレンジまでだいたい家で作ってきちゃいます。で、最後まで詰めるのがぼくは下手くそなので、程よい段階で他のメンバーに投げます。風呂敷広げるだけ広げてあとは投げる、みたいな。
ぼくだけでガッチガッチに作りこみたくはないなって思ってて。色々な個性が交差していくなかで生まれる偶発性みたいなものを大切にしたいっていうか。だから、ここは任せられるかなっていう部分は積極的に振るし、細かいアレンジも各パートにやってもらう。っていう感じですね。

—スタジオでセッションしていくなかで楽曲が生まれることはないのでしょうか?

K:セッションはほとんどしないというか、ほとんどできないですね。というのも、やっぱりメンバーが8人もいるので、0からのセッションとして成り立たせるのがとても難しい。もちろんセッションしてそこから作りたいっていう気持ちもあるんですけど、現状はほとんど家での制作がメインですね。ただ、そもそも曲を作る際にはメンバーみんなで演奏することを考えて作るし、細かいアレンジや弾き方、フレーズは一緒に考えるので、そういう意味でのセッション性は曲に含まれていると思います。

—オクダさんの作曲による「GOLD」に関しても、同じような流れでしょうか?

O:そうですね。「GOLD」はぼくが管弦楽器を入れた楽曲を作ってみたかったっていうのがあって。それでデモを持って行った感じですね。管楽器や弦楽器が入った曲を作ったのは初めてだったんですけど、そういうのをバンドでプレイしてみたかったんです。

—ちなみに、今作のプロデュースなどはどなたが手掛けたのでしょうか?

K:Turntable Filmsなどを手掛けておられるRufusの上田修平さんに録音とミックスをやってもらいました。一部、自分で宅録した音源とかも使っています。

O:今まではレコーディングとかミキシングもほぼ全部クメくんがやってたんですけど、今回は一回外に出してみようっていう話になって。

—外部の人間と作業することによって、何か気づきや発見などはありましたか?

K:そうですね。でも、まぁ1stアルバムなんで、今までとの変化云々というよりは、ここからがSpecial Favorite Musicのスタートなのかなっていう気持ちのほうが強いですね。

O:ぼくらはこれまでDIYな感じでレコーディングも部屋でやって、ミキシングとかも興味があったので自分たちでやっちゃうタイプだったんですけど、今回外部の人に頼んでみて、改めて違った視点というか、自分たちとは違うところを聴いているんだなっていうのを感じて、それはすごい勉強になりましたね。あとは自分たちのクセみたいのもわかってきたし。

—初のフル・アルバムとなる今作のタイトルとなった『World’s Magic』という言葉には強い想いが秘められているそうですが、少し詳しく教えてもらえますか?

K:『World’s Magic』っていうタイトルは……、証明っていうイメージや意味合いがあって。作っていた時に結構マイナスな方向に気持ちが持っていかれることが多くて、それをそのまま曲に書こうと思ったりもしたんですけど、1stアルバムにどういう曲を入れたいかと考え続けているうちに、それがグッと反転したんですよね。どん底だったり、逆境にいるからこそ、ポップ・ミュージックでもって世界のもつ輝きみたいなモノを証明してやろうって思ったんです。
だから、宣言というか、宣誓のような力強い言葉のつもりでこの『World’s Magic』っていう言葉をタイトルにしたんです。日々生きてる中でも、「魔法のような瞬間があるんだ」ってことを確かめたくて。

—「魔法」っていうのは、現実から逃げるための「魔法」ではなく、現実の生活において些細な瞬間に現れる「魔法」に焦点を当てる、と。
では、音楽に対して、現実からの逃避的な意味合いでの「魔法」は求めていないのでしょうか?

K:そうですね。歌詞もほとんどが現実的なストーリーになっています。「Future」と「Ghostopia」っていう曲はSFチックになってるんですけど。その2曲を中盤に持ってきたっていうところに、実はすごいこだわりがあって。生きている中で、日常的な「魔法」を探しつつも……なんていうんだろう……。

O:でも、あっさりとそこを通過していく感じというか。

K:そうそう。それを昇華させていく感じというか。

—アルバム・タイトルと同名の楽曲が最後に収録されていますが、これはタイトルが決まった後に作ったのでしょうか?

K:最初に「Baby Baby」という曲ができて、そこに元々発表していた「Dribble」、「Future」、「GOLD」と、さらに「Today Tonight」っていう前から温めていた曲を加えた時に、ふと”World’s Magic”っていう言葉が浮かんできたんです。それで、その同名の曲を最後に書いた……っていう感じですね。

—なるほど。では、少し話は変わりますが、先程もおっしゃっていたように、Special Favorite Musicはいわゆるシティ・ポップという括りで紹介されることが多いと思いますが、その点についてはどういう考えをもっていますか?

K:正直……そこに終始してしまうのは嫌ですね。

O:mascotboyさんっていうDJやデザインをされている知り合いの方がいるんですけど、その人はシティ・ポップとかいわゆる和モノや歌謡曲とかにめちゃくちゃ詳しくて、ぼくらにも色々と教えてくれるんです。でも、そういったモノとぼくらの音楽って……まぁ普通に違いますよね(笑)。

K:全然違うと思いますね。
管楽器や弦楽器が入っていることもあって、構成音も似ているところがあるし、ポップミュージックというところも同じです。でも、「シティ」がぼくらにはないと思うんです。どこでも聴けるし、だれでも聴けるようなものを目指して作っていますし。例えば自分がそうだったように、田舎の高校生が聴いてくれたりしたらとても嬉しいんです。

O:もちろんそういうのを聴くのはぼくらふたりとも好きですよ。

K:でも、今回のアルバムで影響受けたりっていう意味では、あまりそういった文脈のモノはなくて。もっと土臭いというかなんというか。

—では、例えばストリングスとか管楽器のアレンジを組み立てる上で、参考にしたのはどういった音楽なのでしょうか?

K:曲によって様々ですが、古いソウルとかファンクですかね。

O:ぼくはディズニーとかが好きなので、劇伴音楽とかですかね。アラジン、最高だなって(笑)。

—Special Favorite Musicの作曲におけるルールやタブーみたいなものはないのでしょうか?

K:「これをやっちゃダメ」っていうのはないですけど、誠実ではあり続けたいですね。音楽に対してもそうだし、今までの大きな音楽の歴史の延長線上と、新たな視点の交差するポイントを狙いたいんです。ピンポイントに。

—これまでの歴史を踏まえたものにしたい、と。

K:”今”っていう視点でみたら突然変異に見えるかもしれないけど、後から見ると歴史の流れの中に合致していたような、そういうものにしたいと思っています。あとは、もっともっと中心を狙っていきたいです。

—バンドとして今後こうなりたいというようなヴィジョンはありますか?

O:メンバーそれぞれのポテンシャルの底がまだあまりわかっていないし、まだこのバンドで何をできるかっていうのが未知数なので、そこを突き詰めたいですね。

K:メンバー間での化学反応をもっともっと起こしていきたいですね。もうちょっとみんなで相談しつつ、自由な作り方をしていけば、今よりもさらに肉体的かつ音楽的なモノになっていくんじゃないかって思ってますね。

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Special Favorite Music『World’s Magic』
Release Date:2016.05.04
Label:P-VINE RECORDS
​Cat.No.:PCD-20369​​
Price:¥2000+tax
Tracklist:
1. Baby Baby
2. Magic Hour
3. Dribble
4. Future
5. Ghostopia
6. GOLD
7. Today Tonight
8. World’s Magic

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