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Interview / MARQUEE BEACH CLUB


「MARQUEE BEACH CLUBというバンド名には様々な人が集まる場所という意味も持たせられる」ーー待望の1stアルバムをリリースした茨城発の6人組、MBC インタビュー

2016.08.13

00年代終盤、エレクトロ・ムーヴメントを通過した後の、チルウェイブともクロス・オーバーするような形で盛り上がりをみせたUK〜USインディ・アクトたちに影響を受けたバンドは、その当時からほぼタイムラグなくここ日本にも存在していた。しかし、ここ最近出てきたWONDERVERやLucky Kilimanjaroなどといったバンドたちは、主な参照点は同じながらも、そこにJ-POPや歌謡曲など、日本らしいエッセンスを自然に落とし込み、ウェルメイドなエレポップ〜シンセ・ポップへと昇華している。茨城は水戸を拠点としながらも、現在東京を中心に急速的に注目を集めるこの6人組バンド、MARQUEE BEACH CLUBもそのひとつだ。

2015年4月から活動を開始し、同年には早くも正式な音源リリース前に”下北沢インディーファンクラブ”や”GFB’15(つくばロックフェス)”などのフェスへ出演を果たす。そして今年4月には『wonder ep』を自主リリースし、6月7インチ・シングル『eye』をリリース。それだけでなく、Apple Musicが今最も注目すべきアーティストをピックアップする「今週のNEW ARTIST」や、タワーレコーズの「タワレコメン」にも選出されるなど、その認知とバズの拡大させる速度には目を見張るばかり。

そして、このようなタイミングで満を持してリリースされたのがMARQUEE BEACH CLUB待望の1stフル・アルバム『Flavor』だ。
初期衝動……とまではいかないが、若干荒削りとも言える勢いのあるダイナミックなバンド・サウンドながらも、ビートはあくまでもダンサブルに、そして日本語詞で歌われるのはキャッチーなメロディ・ラインと、変に捻くれることなく間口を広く開けた作風こそが彼らが急速的に支持を獲得してきた理由なのかもしれない。

今回、Spincoasterでは1stアルバムをリリースしたばかりのこのMARQUEE BEACH CLUBにインタビューを敢行。バンドの核であり中心人物のコイブチマサヒロの話を中心に、このバンドは一体どのようにして現れ、そしてこの先どこへ向かうのかを訊いた。

Interview & Photo by Takazumi Hosaka

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L→R:
ミヤケマサノリ(Gt.Syn.Per.Cho.)
シマダアスカ(Vo.Per.)
コイブチマサヒロ(Vo.Gt.Syn.)
カワマタカズヤ(Gt.Cho.)
マコトニシザワ(Ba.Syn.)
イシカワヒロヒサ(Dr.Cho.)


ー結成の経緯からお伺いしたいんですけど、最初はコイブチさんのソロ・プロジェクトとしてスタートしたんですよね。

コイブチ:そうですね、その当時からこのメンバーでライブなどは行ってるんですけど、最初は完全にぼくのソロ・プロジェクトとして始まってて。去年の夏ぐらいから正式メンバーとしてこの6人でやってます。

ーそもそもコイブチさんのソロ・プロジェクトを始めたキッカケというのは何だったのでしょうか?

コイブチ:元々ぼくはバンドをやっていて、ドラムのイシカワ君とは前のバンドから一緒だったんです。でも、前のバンドが社会人になる過程で活動休止になってしまって。ぼく自身としては音楽を続けていきたかったので、「今後も長く音楽を続けていくためには一人でも活動できないと」っていう風に思ったのと、元々前のバンドではギタリストだったので、これを機にボーカリストとして一人でトラックを作ることができるようになろうっていうのがソロ・プロジェクトを始めたキッカケですね。

ー前のバンドの時から作曲自体はしていたのでしょうか?

コイブチ:そうですね。当時はぼくが作曲をやって、ドラムのイシカワ君が主に歌詞を書いてたりとか。

イシカワ:ほぼぼくが書いてましたね。

ーMARQUEE BEACH CLUB自体は前のバンドの音楽性を引き継いでるのでしょうか?

コイブチ:音楽性は引き継いでいて、でも前のバンドよりぼくの色は強くなっているんです。まぁソロ・プロジェクトから始まったんで当たり前なんですけど。やっぱり海外の音を日本人の歌とメロディで共有していくというか、日本の人たちに聴いてもらいたいなというところですね。

ーちなみにその海外の音というのは、具体的にはどの辺になるのでしょうか。

コイブチ:わりと好きなのは、2008〜2010年くらいの海外の音楽というか、いわゆるインディー・ロックと言われる辺りですね。メジャーなところだとPhoenixとかFoalsとか。あとはBombay Bicycle Clubとかも大好きですね。

ーMGMTとか。

コイブチ:そうですね、あとはTwo Door Cinema Clubとか。あの当時ババって出てきたバンドって、やっぱりロックとエレクトロの境界線がかなり曖昧になっていた頃じゃないですか。その頃のバンドの、様々な要素が共存しているところが素晴らしいなって思って、MARQUEEとしてはかなり影響は受けてますね。

ーそういう方向性を共有できてたからこそのこのメンバーなのでしょうか?

コイブチ:それもあるのと、メンバーを選ぶときに音楽の話が一番自然にできるメンバーというところで選びたくて。このメンバーは大学の先輩後輩みたいな感じでいつも音楽の話をしてたメンバーなんです。あとアスカちゃんに関しては、ぼくがシンガーソングライターをどうしてもメンバーの中に入れたくて声をかけました。「シンガーソングライターが自分の書いた曲を見たときに、どういう風に解釈してくれるのかな」とか、そういう実験的なところで欲しかったんですよ(笑)。なので、地元のライブ・ハウスでシンガーソングライターとしてすごい活躍していた彼女を誘ったって感じですね。

https://www.youtube.com/watch?v=ljSTTgDSv3Q

ーメンバーはみなさん元から近いところにいた人たちって感じなんですか

コイブチ:そうです。水戸のライブ・ハウス界隈というか音楽界隈というか。バンドやってなかったメンバーもいるんですけど、ウチで飲んだりして集まってたようなところスタートしてますね。

ー現在のMARQUEE BEACH CLUBは完全にコイブチさんが作詞も作曲もやられてるのでしょうか。

コイブチ:最近はそうですね。最初の頃の数曲はイシカワ君が書いたものもあって。でも、今はやっぱり自分もボーカルとして中心に立つようになったんで「そこはやっぱり自分の言葉で作らないとな」と感じるところもあったので。あとはボーカルになってから書きたいこともたくさんでてきたので、そういうのを歌詞に残してという感じですね。

ー当初はサポート・メンバーとして入ったこの5人を、バンドとして迎えようと思ったのはキッカケなどはありますか?

コイブチ:MARQUEE BEACH CLUBっていうのはバンドのステップみたいなのを大事にしようと思ってて。前のバンドは10代の時からスタートしているので、なんかよくわからないままあっちいったりこっちいったりって、とっ散らかってたところがあるんです。
MARQUEEではちゃんとバンドのステップを基盤にしていきたくて、そもそもソロ・プロジェクトから始まったのも音楽を続けていくためっていうのがあったりするんですけど、まずは一人の音楽やりたい人が曲を作って、徐々にその輪が広まっていく、みたいな。ステップ的な意味でソロからバンドに自然になっていけばいいんじゃないかなって思ってたんです。こういった友達とか先輩後輩を集めているのも、バンドにしようって元々考えてたって言ったらアレなんですけど、このメンバーでやるっていうのは考えてた上で誘ってました(笑)。
だから去年の夏はちょうどバンドとしてぼくのソロ・プロジェクトから6人のバンドになったなって思ったところがあったので。なんというか、ぼくのソロプロジェクトにみんなが集まってるだけじゃなくて各々がMARQUEE BEACH CLUBとして音を鳴らし始めたちょうどいい時期だったので「じゃあバンドとしてリリースしよう」と。

ーなるほど。けっこう結成されてすぐに茨城のフェスとかも出てるじゃないですか、けっこう加速度的に注目を浴びていったような印象があるんですが実際はどうですか?

ミヤケ:そうですね。やっぱり、早いかなとも思います。ここ2人(コイブチ、イシカワ)は前のSTEREOGRAMというバンドでいろいろ活動してた経験があるからこそ、この速度についていけてるところがあると思うんですけど、ぼくら他のメンバーはそこらへんは初めてなやつが多いので、頑張ってしがみついてる感じです、この速度に(笑)。

コイブチ:加速度っていう点でいうと、ぼくのイメージの中では茨城でしっかりバンドの形を作ってから東京に進出していければいいかなって思ってたんですけど、4月に東京の〈Thistime Records〉主宰の”スプートニク”というイベントに呼んで頂いて、そこからすごい……。

ミヤケ:飛躍したじゃないですけど(笑)

コイブチ:そこが結構ぼくたちにとってはターニング・ポイントだと思ってます。

ーWONDERVERとかも出ているイベントですよね。

コイブチ:そうですそうです。主宰の藤澤さんからぼくらが出演した次の回に「MARQUEE、絶対好きなバンドいるから」って言われて観に行ったんです。そしたらそこでWONDERVERの相澤さんと初対面なのにすごい仲良くなれて(笑)。あと、ぼくらが出た時の回にはLucky Kilimanjaroのメンバーとかも観に来てくれてて。

ミヤケ:あとTendoujiもね。

コイブチ:そうそう。それもたぶん藤澤さんが色々な人に声を掛けて繋げてくれてたみたいなんですよね。

ーWONDERVERとかLucky Kilimanjaroとは共通する感覚というか方向性がありますよね。それこそ00年代後半の、エレクトロ通過後のダンサブルな海外インディっぽい音を、日本語のポップスに上手く落としこむというか。何か昨年頃からそういうバンドたちが一気に出てきたなという印象を受けました。

コイブチ:そうなんですよね。特にWONDERVERの相澤さんとはすごいフィーリングも近いところがあって。あとこれは偶然なんですけど、最初に世の中に自分たちの曲を発表したのが同じ日で(笑)。本当に数時間差くらいで、しかも同じ花のアートワークで発表していて。何か不思議な縁みたいなものがあったのかな、と(笑)。

ーMARQUEE BEACH CLUBはこれまでに発表された作品、曲に付随するアートワークが「花」で統一されていますよね。これには何か狙いはあるのでしょうか?

コイブチ:元々ソロ・プロジェクトとして始めたので、音楽だけじゃなくてその他の部分でも自分の色を強く出していこうって思ったんですよ。ぼくはわりと写真が好きで、特に自然を撮るのが好きだったので、これを使おうって。あとは、海外のぼくの好きなアーティスト、Vampire WeekendとかWashed Outとかが花のアートワークを使っているので、そうしたバンドたちへの憧れもあります。

ーちなみに、アー写では最初はほとんど顔が見えないようにされていましたよね。これも戦略的に?

コイブチ:はい。今回のアルバムに向けて撮ったアー写で初めて全員顔を出したんですけど、それもやっぱり段階というかステップみたいなところで。どっちかっていうとぼくらは人間性が先行するよりかは、まず音楽に注目して聴いてもらいたいと考えていたのでああなりました。

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ーでは、今年4月にリリースしたEPについてお聞きしたいんですけれども、制作のプロセスはどういう形で進められたんですか?

コイブチ:今回のアルバムもそうなんですけど、ぼくが曲のおおまかな形を作って、そこからみんなで要所要所直していって、それが上手くまとまったタイミングがあのEPだったというか。基本的にはライブで練り上げましたね。まぁミックスとマスタリングもほぼ自分でやりました。

ーそこから一転して今回のアルバムにはエンジニアとして葛西さんが起用さていますが、外部の人が入ることによる変化などはありましたか?

コイブチ:今までほんとに自分の枠の中だけでやってて、その枠の中でやってると曲がどんどん内向きになっちゃうというか、全然オープンなモノじゃなくなるんですよね。個人的な音を作りたいというのが最終的な目標ではあるんですけど、個人的な音を作りすぎると広くまで飛ばせないなって思って。今まではラップトップの中だけで完成させてたんですけど、外部のエンジニアさんと一緒にやると、「こういう方法もあるんだ」とか、「こういうのもやってみようよ」っていう話になって生の音も入れてみたりとか、自分たちにとって実験的なことができたかなって感じはあります。
あとは、今回はメンバー一人一人の音を反映していこうっていう思いも強くて。それこそ今回ベースとかは色々と試行錯誤してくれて。

ニシザワ:ベースを4本くらい持ってきて、「どれがいいかな」って試しながらやりました。コイブチさんからPhoenixとかのマルチトラックをもらって、そういうのを参考にしながら自分の出したい音にも近づけつつ。

コイブチ:で、それをエンジニアさんにまとめてもらうって感じで。外部の人がいるとすごいオープンな雰囲気になってよかったですね。

ー各パートの録りはご自身の家でやられるんですか?

コイブチ:そうですね。ドラムに関してはスタジオで録って、他のものに関しては家でゆっくり。茨城のバンドなんで周りに何もなくて音もたくさん出せるので(笑)。
ぼくの家に祖父の空き家があるので、そこにいっぱい機材を集めてプライベート・スタジオみたいにしているんです。ギターとかボーカルとかもそこで録って、それをエンジニアさんにブラッシュアップしてもらう形で進行していきました。

ー今回のアルバムに入ってる曲も前の段階からあった曲なのでしょうか? アルバムに向けて作ったわけではない?

コイブチ:アルバムに向けて作った曲は2曲くらいですね。基本的にはライブでこれまでに作り上げてきたものを入れていて。新しいものを作りたいというか、アルバムに向けて曲を作りたい気持ちもあったし、実際もう既に5〜6曲くらい溜めてる曲もあったりするんですよ。結構常に曲を作り続けてるみたいなところがあるので。でも、今回はそれよりも、「今のMARQUEE BEACH CLUBは6人でここまで来たんだぞ」ってところをアルバムとしてパッケージしたかったっていう思いがあって。

ーまさしく名刺的な1枚になったと。では、このアルバムが出来上がっての感想を改めてお聞きしてもいいですか?

コイブチ:みなさん喋っていきましょう(笑)。

カワマタ:じゃあぼくからいきますね(笑)。全曲シングルカットできるっていうのをコンセプトに作ってきて、本当にその通りになったなって感じで。曲順とかみんなで結構話し合って決めたんですけど、何かどの曲もどこに出しても恥ずかしくない出来になったので、曲順とかもあんま関係ないねって(笑)。

コイブチ:それは確かに。

ミヤケ:ぼく的にはライブと音源での齟齬を埋められたんじゃないかなって思ってます。今まで音源を聴いてくれてた人たちから、「Macとかキーボードをたくさん並べてライブやってるのかな」っていうような感想を抱きがちだったと思うんです。でも、ぼくら実際はけっこう熱量のある、バンドっぽいライブをやってたんですね。今回はそれを上手くアルバムの中に落とし込めたんじゃないかなと思っているので、自分たちらしさを出せたという面では大満足ですかね。

シマダ:私はシンガーソングライターなので、自分の曲を作ったりもしてるんですけど、コイブチさんが作った曲は本当に最高だなって思えるもので。レコーディング中も歌ってて気持ちいいなってずっと思ってました。あと、さっきミヤケさんが言ってたように、熱量があるというか、聴いてるとライブに来たいって思ってもらえるような作品になったんじゃないかなと思います。

コイブチ:後悔は本当にないよね。今まではぼくの作ってきたものをライブで微調整してって感じだったんですけど、今回はみんなが一人一人考えてくれたので、6人の力がまとまった一枚になったかなっていう手応えはあります。それこそコーラスワークに関してはアスカちゃんに全部丸投げしたら、ぼくからは出てこないようなコーラスになったなって感じていて。あの、ぼくはわりとキレイにハモリたいって思っちゃうタイプなんですけど、わりとアスカちゃんはシンガーソングライター目線というか。彼女は車の中でいろいろな曲にハモるみたいな遊びが好きで(笑)。

シマダ:そう、ずっと歌ってた(笑)。

ーシマダさんのコーラスワークは確かにハモるというよりかは、独立しているというか、ユニゾンって言ったほうがシックリくるものですよね。

コイブチ:そうなんですよね。あとは6人が個人的に録ってきた音を混ぜるところから始まってるので、それぞれの音に関する驚きや、今まではぼくが「こうしてくれ、ああしてくれ」っていう流れだったのが、「こうしたい、ああしたい」っていう意見がメンバーから自発的に出てきて、「あ、そういう風に思ってたんだな」っていう驚きもありました。

ーちなみに、作曲のプロセスはどのような形でスタートすることが多いのでしょう?

コイブチ:ぼくはリズムをすごく大事にしていて、リズムが踊れるものじゃないというか、リズムに説得力がまずあって、その上にいいものが乗るっていうのがいい曲だと思ってるので、曲作りに関してはリズムから作ってます。ノれるビートの上にノれるベースがあって、その上に上物があって最後にメロがある、って感じで。メロを考えてるときも音の情報量をすごく少なくしたいと思ってて、鍵盤とかをみてても音符の使う量を減らそうとかそういうことを考えてます。

ービートに関してはこだわってるけど、複雑にするのとはまた違う方向性ですよね。

コイブチ:複雑にはしたくないですね。パーカッションとかも入れて、ぐちゃぐちゃになった状態から削ぎ落としていくっていう作業もしています。あと、2008〜20010年くらいのインディ・バンドって、アフロビートみたいな第三世界のリズムを簡単にポップ・ミュージックのなかに取り入れていたじゃないですか。ああいう感じにすごい憧れているんですよね。

ービートのことに関してなので、ドラマーのイシカワさんのお話も聞ければと思うのですが。

コイブチ:結構自分が作ったやつ崩すよね(笑)。

イシカワ:そうですね、やっぱりその通りにやるのもそんなおもしろないかなって思って。なるべく崩して自分なりの解釈で提出してみて、「これはちょっとノレないから」とか、そういう意見をもらっていくなかで磨かれていくというか。そういうリズムこそがやっぱりMARQUEE BEACH CLUBっぽくなってくるのかなって思うんですよね。ぼくら最初結構詰めちゃいがちで。音符とか。

コイブチ:彼は本当に最初ぼくの作ったリズムを崩して来るんですよ(笑)。なので、そこからすごいバトルが繰り広げられながら曲を組み立てていきますね。MARQUEEはやっぱりパーカッションもいるから、リズムで音数を詰めがちなんですけど、ライブで無理が生じる瞬間もあるので、そういう時は削ったりしますね。おおまかな流れとしては、曲の大方の枠を作って、リズムのキャッチボールがあって、最後にメロが決まるっていう感じです。

ーそのメロディに乗っかるリリックは、どういうイメージで書かれていますか?

コイブチ:全体を通してリリックもほとんどぼくが書いてるんですけど、その時に思ったこととか心境だったりとかを書くことが多いですね。例えば友達が悩んでてそれについて書いたりとか、あとは本当にぼくの生活の中で感じたことや、一瞬を切り取ったり。
言葉選びに関しては、ある程度誰でもわかるようなものにしたいんですよね。やっぱ歌い継がれる曲っていうのはわかりやすくないといけないのかなって。年月が経っても残ってる音楽というのは、歌詞がシンプルなんですよね。なので、ぼくも「これ何言ってるんだろう?」っていうような感じにはならないよう意識しています。あとはちょっとずつ韻を踏んだり、語呂のいい言葉を並べたり。

https://www.youtube.com/watch?v=KfN_Wlr2gFk

ー日本語で歌うっていうのは最初から決めていたのでしょうか?

コイブチ:そうですね。やっぱり日本人なので、日本語で物を考えるし、日本語で夢を見るわけで。英単語も交えてるんですけど、それは曲の中でも一番聴かせたいところというか、情報量が詰まる辺りに入れるようにしてます。それは曲に変化を与えたいというか、そういう狙いもありつつ。

ー日本語をメロディーに乗せるにあたって、また英単語と日本語を混ぜるにあたって参考にしてるバンドとかアーティストっていますか?

コイブチ:宇多田ヒカルですね。MARQUEE始めたばっかの頃、ミヤケと2人で最初宇多田ヒカルの「traveling」とかめちゃめちゃ聴きまくったもんね(笑)。こういう日本語と英語を融合させたのをやりたいって踊りながら話していて。
あとは結構前のバンドになっちゃいますけどゴダイゴとか。まぁ彼らは外国人もメンバーに入ってますけど、上手く滑らかに日本語を入れてるなって。結構昔のバンドとかアーティストって日本語と英語の使い方が上手いなって思います。

ー歌詞に関してメンバーさんは出来上がったものを見てどう思いますか? メッセージというかイメージを共有できてはいますか?

シマダ:歌詞が上がってくると、まず読んで「これはどういう意味だろ?」とか、「コイブチさん何考えてるんだろう?」っていうところから入るんですけど、結果すごく上手くメロディに乗っていて歌いやすいんですよ。なので、あまり意味とかを考えずに歌っちゃってる部分もありますね。

ニシザワ:でもよく新しい曲が上がってきたらアスカと二人で、「これどういうこと考えてコイブチさん書いてきてるんだろうね」って話すよね(笑)。

シマダ:「あ、ラブソングだ!」とか(笑)。

ニシザワ:「たぶんこれは応援歌だな」とか、勝手に推理して盛り上がります(笑)。

ーそこは本人に聞いたりとかしないんですか?

シマダ:聞かないです。こっちで解釈してやってます(笑)。

ニシザワ:あえて想像力で(笑)。

コイブチ:でも、実はぼくの中でもそういうのは聞かれない方がいいかなって思ってて。みんなの中でそれぞれイメージを落とし込んでもらいたいなって。ポップ・ソングって結構そういうものだと思うんですよ。誰にでも響くというか。

ー受け手が勝手に解釈できる余白を残すというか。

コイブチ:そうなんです。だから、ぼくも歌詞書くときはあまり具体的に書かないようにしてて。

イシカワ:ぼくは歌詞を読んだり歌を聞いていて、「あぁ、こういうことをコイブチくんは考えてるんだな」とか、「こういうことが彼の周りで起きてることなんだな」って思うこともありながらも、結局自分にもすごく当てはまる部分とか考え方っていうのがあって。これはぼくだけじゃなくてMARQUEEのメンバーでもあるし、リスナーの方にも同じような印象を与えてるのかなって思うんですよね。すごく引き込まれる詩だなって。あとは読みやすさっていうのが絶対大事な部分としてあって。確かにこれは歌詞なんですけど、同時に純粋な「詩」としても捉えられるし、でもそれがちゃんとメロディーにも乗っていて。すごく読みやすいっていったらアレなんですけど、すごく見てて楽しいというか。

カワマタ:絶妙なバランスでぼかしてるというか、抽象的なんですよね。だからわかりやすいけど、やっぱり聴く人によって解釈が変わる。あと、ぼくはふとした瞬間に前向きな言葉が出てくるところが好きで。意識してるのかどうかはわからないんですけど、聴いて欲しいところでポッと希望を持ったワードが出てくるのがいいなって思いながら聴いてます。そういうふとした瞬間の、ハッとするタイミングがMARQUEEっぽさなのかなとも思いますし。

ー全面的にポジティブポジティブしてるわけでもないですけど、たまにパッと明るくなる瞬間があるというか。

コイブチ:わりと歌詞に関してはぼくの周りで起こっていることも然りなんですけど、実はなんか「このままいけば、いつか良いことあるよ」みたいな感じをトータル的なコンセプトとして捉えていて。どの曲も「最終的にはなんとかなるよ」っていう世界観っていうか。日常にやっぱ寄り添いたいというのがあるので、「こうしよう」とか「ああしよう」じゃなくて、「程よく頑張れよ」みたいな(笑)。……なんか良い言葉ない?(笑)

シマダ:励ますみたいな?

ー「Let It Be」というか、「なるようになる」みたいな?

コイブチ:そういう感じです。難しい言葉であまり言わないようにしてるので、悲しいことがあっても、「今は悲しいかもしれないけど、そのうちなんとかなるから」みたいな感じの寄り添うような歌詞にしてるので。

シマダ:ライブ前に悲しいこととかがあったりすると、「wonder」とかを歌ってて泣きそうになることもありますね(笑)。感情が入っちゃって。

イシカワ:それはアスカちゃんなりの歌詞の解釈の仕方がしっかりあるからだよね。

シマダ:そうですね。私と重なる部分を見つけてしまったというか。

ーでは、最後になるのですが、MARQUEE BEACH CLUBの今後のVISIONのようなものはあれば教えて下さい。

コイブチ:ソロ・プロジェクトからバンドになり、一歩一歩進んできて、色々なお客さんとかリスナーさんだったりとか、あとは映像とか写真とかのクリエイターだったりとか、なんかそういう人たちに出会える場がどんどん広がってるなっていう感覚が今あるんです。なので、その輪をどんどん広げていきたいなって思っていますね。それこそ最近は写真とか映像を瀬能啓太くんっていう子が専属みたいな感じでやってくれていて。これは完全に後付けなんですけど、MARQUEE BEACH CLUBっていうバンド名も色々な人が集まる場所っていう意味を持たせられるなって。MARQUEE BEACH CLUBっていうのはそういう場所とかスペース、空間みたいになれればいいなって思ってます。やっぱりおもしろいことをやろうっていうことを根本に考えながらやっているので、MARQUEEを通して繋がった人たちで、何かムーブメントじゃないですけど、そういうのを広げられるように仕掛けていけたらなって。

ー色々な人たちにとってのハブになるみたいな。

コイブチ:そうですね。そういう繋ぎ役ではないですけど、その中心みたいな感じで動いていければ良いかなって。展望としてはそういうバンドになっていきたいです。ぼくらは音楽を発信して、写真家は写真を、映像作家は映像を。そうすることでMARQUEEを通しておもしろいことを広げていけるのかなって。
あとは、具体的な目標で言えば本当に全国各地を回わりたいっていうのがあって。今は東京と大阪くらいでしかほとんどライブをできていないので、もっと隅々まで回って色々な人に会いに行きたいなって思います。

曲作りの面で言えば、ぼくの個人的な音を目指しつつ、後世にも残る曲を作りたい。とにかくそこですかね。なんか……やっぱり曲を残したいんです。後輩とかじゃないですけど、今後のバンドに影響を与えたいなっていうのがすごくあるんですよね。やっぱり優れたポップ・ソングを作ったバンドっていうのは曲も残るし、その後に脈々とその流れが続いていくというか。なんか今WONDERVERとかLucky Kilimanjaroもそうですけど、そういうのをコンセプトにしてやってるバンドも多いと思うんですけど、そういうバンドが増えてきてるからこそ、よりそこを大事に捉えて、曲を作っていけるバンドになっていきたいですね。なんかまとめちゃったけど、他の皆さんはどうですか(笑)。

シマダ:上手くまとまりましたね(笑)。

コイブチ:あとは海外だよね。日本のバンドとして、日本の中で収まっちゃうのもあれなので。内向的じゃなくて、もっとオープンな感じで、いい音楽っていうのはやっぱり国境や言語は関係ないと思うので、海外にもどんどん発信していきたいですね。それこそぼくらは海外のアーティストに大きな影響を与えてもらったので、同じように海外のアーティストにも影響を与えられるようなバンドになれればいいですよね。

ーじゃあ来年SXSWですね(笑)。

コイブチ:出たいですね。それとノルウェー。(来日公演で共演した)Kid Astrayと一緒にツアー回りたいよね(笑)。みなさん他はなんかありますか? 個人的なことでもいいし。

イシカワ:あ、じゃあ……。ぼくがプロデュースしたというか、個人的に作ってるグッズをMARQUEE BEACH CLUBの物販で勝手に販売してるんです。やや非公認キャラ・グッズとして。そいつで堕落し始めた最近のゆるキャラ界に一矢報いるというか(笑)。ちょうど今日も持ってきてるんですよ。

(■NRRHN SHOP:http://nrrhnshop.thebase.in/)

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ーはぁ……(笑)。

イシカワ:だいたい皆さんこの反応です(笑)。デザインも印刷も全て自分でやってるんですよ。

ーこの「NRRHN」というのは?

イシカワ:「ネラレヘン」の頭文字をとってます。頭文字を並べるとすごい綺麗だったので。

ーその「ネラレヘン」っていうのがこのキャラの名前なんですか?

イシカワ:あ、ブランド名ですね。これはボールマンって名前なんですけど。たいぶ危ない、ギリギリなキャラクターで(笑)。

コイブチ:めっちゃ喋るな(笑)。東京で結構売れるんだよね。

イシカワ:そうなんですよ。やっぱりシュールイズムを許容してくれるというか。

シマダ:東京で流行るといいですね(笑)。

https://youtu.be/WA2t5nqQLP0


【リリース情報】

s_MBC-album

MARQUEE BEACH CLUB 『Flavor』
Release Date:2016.08.10
Price:¥2,300 + Tax
Label:P−VINE
Cat.No.:PCD-93991
Tracklist:
01. eye
02. pattern
03. cups
04. wonder
05. understand
06. escape
07. city
08. utopia
09. white
10. dive
11. always

■オフィシャルサイト:http://marqueebeachclub.tumblr.com/


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