Interview

yahyel

「ディストピアみたいなものを提示することでカルトじみた状況を浮き彫りにさせたい」――クレバーかつ野心的な3人組、yahyelの正体に迫る

昨年、どこからともなく彗星の如くシーンに現れたyahyel(ヤイエル)と名乗る3人組。SoundCloudとBandcampにて発表したその音源は、James Blake以降のバランス感覚を擁するポスト・ダブステップ〜ベース・ミュージックとも共鳴しながら、そこに独自のポップ・センスを加えた独創性の高い音楽性を誇り、瞬く間にネット上を中心に話題を集めた。

さらに今年に入ってからは年始にロンドンの老舗レコードショップ、ROUGH TRADEを含む全5箇所での欧州ツアーを敢行し、2月には7inchシングル『Fool / Midnight run』をリリース。さらには今年で20周年を迎えた”FUJI ROCK FESTIVAL’16″内にある若手国内バンドの登竜門的ステージ、”ROOKIE A GO-GO”への出演を果たすなど、飛躍的な活躍を遂げた。

そんな彼らが現在製作中だという待望の1stアルバムに先駆けて、500枚限定で初のCD作品となる『Once / The Flare』をタワーレコードでリリースするということで、Spincoasterでは彼らへのインタビューを敢行。現在のライブではVJも含めた5人編成となっているが、実際の中心メンバーとなっている池貝峻、篠田ミル、そしてUK Projectからのリリースでも知られるギター・ロック・バンド、DATSのVo.&Gt.としても活躍している杉本亘の3人に話を訊いた。

彼らは一体どこから現れ、どこを目指しているのか。ニューエイジ思想家のバシャールが造り出した地球外生命体を意味する造語に由来するそのバンド名通り、なかなか実態が掴めない謎多き彼らの正体に迫ることに。

Interview by Takazumi Hosaka


—最初に池貝さんと篠田さんで曲作りを始めたというところからyahyel自体がスタートしたんですよね?

篠田:そうですね。ただまぁ、yahyelという名前はその後から与えられたというか。最初はただ一緒に曲を作っていたっていう感じですね。

—その一番最初期の頃のモチベーションというのはどんな感じのものだったのでしょうか?

池貝:ここで(池貝と篠田)やっていたのは本当に遊びですね。持ち寄った素材をどう料理するか、どう美味しくするか、みたいなことを夜な夜なやってただけですね。

篠田:でもその一方で、僕と杉本は前々から別のバンドをやっていたんですけど、その時に「海外でもやれるプロジェクトがやりたいね」って話をよくしてたんですよ。それでちょうど池貝と曲作りを始めたのもあって、ここに杉本を入れたらおもしろいんじゃないかということになったんです。それで3人で初めて集まった時に「Midnight Run」を作ったんだよね。

池貝:そうか、確かに初めましての日に1曲作ったね。

篠田:一晩で「Midnight Run」を書き上げて、これでいこうってなって、yahyelがスタートしました。

—池貝さんと篠田さんはそもそもどういう関係だったんでしょうか?

池貝:大学の同級生なんですけど、僕は大学3年間特に何もやらず、最後の1年の時ぐらいになってから「何かやろうかな」みたいな感じで動き出しました。

—それまで一緒にバンドも組んだりすることもなく。

池貝:はい。全くないですね。

篠田:でも、一人でブースで弾き語りとかはしてたよね。

池貝:そうですね、僕は1人でずっとやっていました。なんでバンドとか今までやってなかったんだろうな……。

—一緒に曲作りを始める前からお互い近しい関係性ではあったんですか?

池貝:親しかったですね。元々よく色々な話しをしていたので。

—3人の音楽的なバックグラウンドをお聞きしたいのですが、それぞれ共有している部分はあったりしますか?

篠田:個人的な趣味は全然みんな違うんですけど、ただyahyelというプロジェクトをやるにあたっての、お互いが共有するバックグラウンドというのは確かにあります。

—”海外にも通用するプロジェクト”というものをヴィジョンに掲げてスタートしたということですが、そもそもそういった方向を目指したというのは、やはり現状の国内シーンを鑑みた故の結果なのでしょうか?

池貝:いや、そういうバンドがいないからとかではなく、単純に僕らがやりたいことがそれだったっていう方が全然大きいと思います。そもそも国外に通用する音楽というよりかは、僕らが普段オンタイムで聴いてるような音楽とリンクすることをやりたいというのがあって、それを今のこの日本でやること自体の皮肉性というかなんというか。「これが国内ではどう響くんだろうか?」、という感じです。
あと、これは人種的な問題にもなってくるんですけど、僕らには、どう生きようとも日本というアンデンティティーが付帯している。それは、海外では必要以上に大きな意味を持っていて、自分たちの肌感覚とはズレている気がするんです。今海外の人たちは日本のことをどう思っているのか、どう見ているのか、とか、なんかみんなあまり口に出しては言わないけど、「こういう感じ、気持ち悪くない?」というところを、僕たちが単純に好きなことをやることで浮き彫りにさせたいという狙いはあります。

杉本:世界でというか、普通に地球に住む人間の1人として、普通に世界の標準感覚で活動した結果、日本ではどう反応が返ってくるかとか、そうやって返ってきた反応を見て楽しんでるというか。どちらにせよ、国内を先に意識するということはしてないですね。

篠田:当たり前のように僕らは洋楽が好きで、それを聴いて育ってきたわけで。いざ自分が音楽をやろうってなったら、やっぱり普通に自分が聴いてきたものと同じようなフィルタを通して表現したいっていうだけですね。それはすごく自然なことだと思っています。

池貝:でも、そうやって自然なことをやっているだけで、そういう捉え方をされがちじゃないですか、今の日本では。「そういうバンドが国内にいないから?」とか、「国内のシーンに対するアンチ?」とか言われたり。でもそういうこと自体が、僕らにとってはシメシメという感じなんです。一体なんでそういう質問を僕らにするようになってしまうのかっていうところを、「もう一回改めて考えてみな?」っていう。そういうところを僕らは直接言わずして伝えたいって感じですね。

篠田:変な話だよね、洋インディ的な音楽を日本に輸入して、日本国内に向けてやるっていう。全くもって自然なことではない。

—ゆくゆくは向こうに拠点を移すとか、そういったことは視野に入れていますか?

篠田:おれはどっちでもいい。住むとこはどこでもいいんですけど、ただ音楽では同じ土俵で戦いたいですね。

杉本:僕はそんなこだわりはないですけど、個人的に海外が好きなんで行きたいっちゃ行きたいですね。まぁそれは生活レベルでの話ですけど。

篠田:音楽は物が揃っていれば別にどこでもできるので、単純にそこが心地いいかどうかという感じですね。

—音楽を取り巻く環境という点においては、今の日本って欧米を中心としたいわゆる”世界”と比べるとすごく特殊な状況だと思うのですが、yahyelを外から見ているとそういうところに対してちょっと居心地の悪さみたいなものを感じたりしているのかなって思います。

池貝:そこを意識しなくても大丈夫なように、僕らは自分のやりたいことをやっていきたいと思っていますね。

篠田:国内市場を気にするなら確かに息苦しいのかもしれないけど、自分が聴きたいモノを聴いて、好きに発信する分には特に不都合はないんですよね。

—なるほど。そういえばyahyelは既にヨーロッパツアーも敢行していますが、あのツアーはどういった経緯で実現したのでしょうか?

杉本:実は最初は池貝が旅行に行くことになって、「この期間空けることになるからごめんね」みたいな感じで話されて。そしたら「じゃあ俺らもついて行かね?」っていう感じで、半ばノリで海外行くことがまず決まったんです。レコード売るとかライブするとか最初は考えず、とりあえずみんなで行くことが決まったんですけど、でもせっかくみんなで行くならやっぱりyahyelで何か爪痕残したいよねって話になって。そこから必死でイギリス各地のレコードショップ、ライブ・ハウスにメールを鬼のようにしました(笑)。
そこで売り込んだ結果、5日間イギリスに滞在する中で4公演が決まり、フランス・パリでは1会場で演奏できたっていうだけですね。

篠田:何か改めて今その説明を聞くと、成功体験みたいに思えてくる(笑)。

杉本:本当に旅行する感覚というだけで、別に成功しましたとかでも全然なくて(笑)。

—ライブの編成はどのような感じで臨んだんですか?

篠田:VJも引き連れて、5人でのフル編成です。

杉本:「一緒に行かね?」って聞いて行けるのがすごいよね。本当に勢いで。

—ライブの手応えみたいなものは感じましたか?

池貝:そこは謙虚でいなくてはという意味でも、成功したというのは全くもってなくて。そもそも僕たちの”やりたい発信”でやったことっていうのもありますし、その面で僕らなりに努力とかももちろんしましたけど、やっぱりビジネスとしては全然成功していません。それが大前提にありながらも、その上で僕らの中ではやっぱり大きな出来事であったなと思っています。まず向こうの人に僕たちの音楽が直接届いて、なんならむしろ国内でやってる時よりも反応がすごく良かった。なんというか、音楽に対しての愛情があるというか、楽しみ方を知っているいうのを演者としてとても感じましたし、やはりそこを目指すのは間違っていないんだなと思いましたね。現地で繋がった人たちとはまだ連絡もとってますし、繋がりを作ることもできた。

杉本:単純に音楽業界とか関係ない人とかも後から連絡くれて、僕らの音楽を「いいね」って言ってくれたりして。なんかそういうこと自体が結構新鮮な体験でしたね。

—yahyelって宅録からスタートしたという経緯がありますが、当初からライブというものを意識はしてたんですか?

篠田:全くしてなかったですね。

杉本:実際演奏するってなったらどんな形態でもやりようはあるので、それは後で考えればいいやっていう感じですね。まずいいトラックを作るっていうのが最大の使命で。

池貝:ライブとトラックはまた別個なので、まずいい曲ありきという考えなんですよね。僕らは曲を書くという作業を表現の中で一番重きを置いてるので、そこをちゃんとやりたい。ライブをやるために音楽をやっているわけではないので。

—なるほど。では、作曲の作業自体はどういうところからスタートすることが多いですか?

池貝:基本的には僕がデモをDTMで作って、みんなに投げて色々と叩き込んでもらって、またこっちに戻して歌詞を書いて、また向こうに投げて……を繰り返して曲ができるって感じですね。

杉本:最初僕と池貝はそれぞれ違うソフトを使っていたんですけど、最近になってようやく同じソフトにしてもらったんで、より作業がスムーズになりましたね(笑)。
例えば1サビまでできているイメージを僕に預けてもらって、そこにまた色んなイメージを付け加えながら作り込んでいくというか。

池貝:僕らの音楽を作る過程で一番特殊なのは、コンテクストというのをものすごく重視するんですよ。曲作りに際した話し合いが半端じゃなくて、音楽的に「こういう要素を入れたい」とか、「これはこういう情景だ」みたいなところを、「ノリで良いでしょ」ていう感じでは絶対にやらないですね。本当に細かく細かく詰めていって、もうお互い「いい加減うるせえよ」ってなるぐらいのプロセスが毎回あるんです。

篠田:でも、そこが一番楽しいよね。

池貝:うん。あそこが一番楽しいし、一番大事ですね。

−コンテクストっていうのは、例えば海外のトレンドとか外的要因を重視した上でのモノになるのでしょうか?

池貝:それはもちろんですね。それに加えて音としてどうとか、表現としてどうとか、歌詞の世界観としてどうとか、細かく1個1個クリアにしていくというか。本当に「ビートのこの音がもっとこうだ」っていう話とかを、しっかりとした言語レベルでやるっていう。簡単に言うとお話の時間が長いんです。

篠田:お話の時間が長いっていうか、LINEがすごい長文なんですよ。

杉本:「808のキックの音は歴史的にこういう背景があって」とか、「だけど今の俺らはこういう感じだからもっとそこをこうしよう」、みたいな。そういう話し合いの時間がすごい長いんです(笑)。

池貝:LINEの箇条書きが長文すぎてもはや箇条書きじゃないっていう(笑)。

—音楽の歴史というかそういう文脈とかをとても重要視しているんですね。自分たちの表現はやはりきちんとそういった積み上げてきたモノの上にありたい、という思いはありますか?

池貝:文脈だけじゃしょうがないんですけど、でも確かに大事だと思っています。というか、今世界中でオンタイムで流れている音楽があるじゃないですか。じゃあそれが一体なぜオンタイムで流れているのか、ということを重視してるというか。それを考える上で、やっぱり文脈は重要だっていうことですね。もちろんこれまでに世界中では多種多様な音楽の歴史が積み上げられてきたわけですけど、「ここは今、いらなくない?」っていう作業も起きてるわけじゃないですか。それと同じような作業を僕らもやりますし、その分析の中でどっちを取るのか、みたいなのもあります。

篠田:そうそう。その上で僕らが曲を書く意味を明確にしたい。今オンタイムであるものと全く同じものを作っても意味はないから、そこに新しいモノを付け加えなきゃいけないわけじゃないですか。それをどうやるのかって言ったら、もちろんオンタイムのモノも聴くんですけど、昔のモノも振り返って、オンタイムのモノにない昔の音楽の要素を持ってくることで、ようやく新しい音になるというか。

杉本:そこらへんのその意味付けというか、コンテクストの整理という部分ではミルくんがかなり力になってくれていますね。池貝の世界観、僕のトラックメイカーとしてのサウンドの分析、それをミルくんが「ここにこういうコンテクストを持ってきたらおもしろいんじゃないか」って繋げてくれる。3人ともそこで生まれる化学反応を楽しむというか。

篠田:しかも曲ができたら終わりじゃなくて、その後にダッチ(Kento Yamada)が映像をつけてくれるんですけど、またそれもみんなで話し合いながら決めるんです。そこはダッチの表現というより、yahyelとしての表現っていう感じで全員でやってますね。

池田:本当そうですね。僕らのアウトプットの最終地点は曲に映像が付いて完パケっていう感じなんで。音作りもミキシングからマスタリングまでとことんちゃんとやりたいですし。

—そのダッチことKento Yamadaさんによる映像も含めた、yahyelのヴィジュアルに対してのこだわりっていうのはどこから発生しているのでしょうか?

篠田:それは匿名性ですね。例えばライブってやっぱり自分たちの生身の体を晒してるわけなので、どうしても個人の特定の身体性というのに目がいきがちだと思うんです。でも、僕らはやっぱり匿名性ということをコンセプトにして出発しているので、ライブにおいても個人の肉体が出すぎてはいけない。だからこそ、僕らはVJを大々的に取り入れてるんです。照明もほとんど付けずに映像をフロア側からステージに投射すると、僕たちの姿はシルエットくらいしかわからなくなるし、僕たちの肉体的な役割を、VJが果たしてくれてるというか。そういう意味で、ライブでも映像は重要なんです。

—これはVJやMVだけでなく、最新のアー写などを含めた印象なのですが、個人的には人間性を排したような無機質なイメージと、幻想的なイメージが同居してるような感じを抱いています。そう言ったヴィジュアル・イメージというのは曲の世界観とすり合わせた結果生まれたものなのでしょうか。

池貝:なんか身体性というものが意味を持ちすぎてる時代だなっていう気がしてるんです。みてくれみたいなものが意味を持ちすぎちゃって、それでフィルターがかかってしまうのがすごくもったいないなっていう考えから、ああいう形になってるってことですね。でも、ヴィジュアル面とは違って音楽の表現の方は本当に生々しいというか、個人の人間としてのエグさとか、個全体の中の個というか、そういう部分を描きたいと思っているんです。例えば日本は世界に比べてもよりコレクティブなカルチャーが多いじゃないですか。言い換えれば全体主義みたいなところがすごくあると思うんですけど、そういうのがそもそもおかしいんじゃないかって。僕らはそういった状況とは真逆のディストピアみたいなものを提示することで、そういうカルトじみた状況を浮き彫りにさせたい。やっぱりもっと個々で考えたほうがいいし、そうするためには自分の感覚をもっと尊重したり、時には相手のことを傷つけることも厭わないほどの正直さが必要というか。そういう生々しさや誠実さとか、自分も生身の人間で、一個人であるっていう示唆を出している表現が多いので、意外と僕らの楽曲における表現自体は人間くさいと思うんです。


【リリース情報】

yahyel-cd-single

yahyel 『Once / The Flare』
Release Date:2016.09.28 (WED)
Label:Beat Records
Cat.No.:BRE-55
Price:¥500 + Tax
Tracklist:
1. Once
2. The Flare

Spincoaster

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