Interview

Wildbeasts

「まるで失うものなんて何もなくて、これがぼくたちの大人に対する抵抗」――キャリア史上最も攻めた新作『Boy King』に込められた想いを語る

マーキュリー・プライズにノミネートされた2ndアルバム『Two Dancers』を始め、これまでメディアなどからの評価は高いが、それが上手くチャートに反映されていないように感じられたWild Beasts。しかし、2014年にリリースした前作『Present Tense』では遂に全英10位入りを果たし、名実ともにUKを代表するバンドの仲間入りを果たしたといえる。

そんなWildbeatsが、早くも5作目となる新作『Boy King』を引っ提げ帰還した。彼らはこれまでも作品ごとに実に多彩な表情をみせ、常に変化し続けてきたバンドではある。しかし、この変化ぶりはどうだ。先行でMVが公開された『Get My Bang』では、レザージャケット(!)を身にまとったHayden Thorpeが、まるでこれまでの繊細かつ耽美なイメージを自ら破壊するかのように金髪の女性と激しいダンスを踊る。もちろんサウンドの方も、そのワイルドさとタフネスに見合う粘っこくもファンキーなグルーヴを湛えた、Wild Beastsとしての新たな一面をみせるモノに。

今回、この大胆な変化について、そして『Boy King』という興味深いタイトルが何を意味するのかを訊き出すべをメール・インタビューを敢行。バンドのフロントマンであるHaydenと共にバンドの核を担うTom Flemingが応じてくれたこのインタビューには、バンド史上最も野心的な本作を紐解くためのヒントがたくさん詰まっているはず……!

Interview & Text by Takazumi Hosaka

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(L→R:Hayden Thorpe、Chris Talbot、Ben Little、Tom Fleming)


ー今作『Boy King』は前作のリリースからおよそ2年半ぶりの新作となりますが、楽曲はいつ頃から書き始めていたのでしょうか?

2015年の12月に前作『Present Tense』のツアーが終わって、クリスマス休暇を取った後、明けて2016年から『Boy King』の曲を書き始めたんだ。それも簡単に作れたわけじゃなくて、才能溢れる人がまだ寝てる時間から取り掛かって作った5枚目のアルバムだと自負しているよ。

ー今作はこれまでのあなたたちの作品の中で最もアグレッシブかつパワフルな作品になっていると思います。この変化には何か明確なキッカケなどはあるのでしょうか?

自分たちが10代の時に好きだったヘヴィーでアグレッシヴな音楽を掘り起こしてみたんだ。アーティストで言えばNine Inch Nailsとかだね。彼らのようなエモーショナルでパンチの効いたサウンドが、このアルバムのダークな部分にフィットすると思ったんだ。また、こういったサウンドを再発見したことで、自分たちが10代の頃に味わった希望や楽しさが詰まったアルバムを作ることができたと思う。まるで失うものなんて何もなくて、これがぼくたちの大人に対する抵抗なんだ、というような感覚がいっぱい詰まっていると思う。

ーまた、MVが先行公開された「Get My Bang」にはこれまで以上にR&Bやソウル、ファンクといったブラック・ミュージックからの影響がストレートに現れているような気がします。これは意識的な変化なのでしょうか?

そう、この曲は何か離れ業的な強烈なモノがまず必要だと思って作ったんだ。ぼくにとっては、このビデオで自分がこのバンドのアートというものにアプローチする上で、すごく大きく成長することができたと思う。ダンサーたちと踊ったり体を揺らしたりしながら歌うことはこんなにも違った経験になるのか、とね。曲に寄り添いながら生き生きと、抑圧から解放されて自由になりながら、尚且つ自分の体にエネルギーを漲らせなきゃいけなかったんだ。

ー作曲段階からそのような変化を意識して曲を書いていたのでしょうか?

いや、実際はそんな訳でもないんだ。しかし、ぼくらが作ろうとしていた音楽は血が通っていて、現実に起こっていることよりももっと広い視野で物事を捉えていかなきゃいけなくて、それでぼくは自分自身のアルター・エゴ(分身)としてJusitin TimberlakeとTrent Reznorを合わせたようなキャラクターを作ったんだ。自虐的で自己嫌悪気味なんだけど、それでいてスマートでセクシーなキャラを生み出そうとしてね。

ーJohn Congletonを今作のプロデューサーとして起用した理由を教えて下さい。また、彼は今作の制作過程において、あなたたちにどのような影響を与えましたか?

John自身が自分を(プロデューサーに)選んだと言ったほうが正しいのかもしれない。ぼくらはもう彼の作品に関してはそれがいかに優れたモノなのかということを知っていたけど、彼は最初から、ぼくらがいかにアルバム制作を進めていくべきかという点において、とても素晴らしいアイデアを持っていたからね。彼の仕事方法はすごい早くて、常にぼくらを演奏の最中、リラックスというかゆるい空気感で包んでくれた。あまり頭でっかちにならずに、ぼくらが思い描いている音楽を現実に表現できるようにね。

ー今作の「怒れる若者」というテーマはどこから湧いたものなのでしょうか?

ぼくらが思うに、前作の『Present Tense』は全体的にエレクトロニックなサウンドで構成された、全てがラブ・ソングのアルバムといえる。でも、今回のアルバムでやりたかったのはもっとハードで、さらにもっと攻撃的で奔放な作品だったんだ。『Boy King』はぼくらのファースト・アルバムの『Limbo, Panto』と似ているように感じている。サウンド的にはそこらにあるものを取って演奏していた頃の自分たち、また一緒にいて演奏するだけで再び活力を見出しているような、世界に対峙する自分たち、といったようなサウンドだね。

ーまだリリックを読めていないのですが、リリックにもそのテーマは反映されていますか?

そう思うよ。これはとても悩ましいアルバムだね。全てがセクシャリティに通ずるものだけど、決して全てが愛に関してのものではない。例えば「2BU」なんかは復讐の物語だし、「Tough Guy」はどうしようもない怒りと秘められた悲しさ、そして「Get My Bang」は強欲と消費主義について歌っている。ぼくらはいわゆる”マッチョ”なキャラクターの色々な惨めな部分を形にしていて、自分らが思っているより不愉快な思考や性格について突っ込んで書いてるんだ。

ーHaydenが今作のリリースに際したプレス・リリース上で、「When you think about sex , you ’ve got to think about death , they ’re one and the same .」と語っていましたが、「死」や「性」はこの作品における大きなテーマのひとつなのでしょうか?

その通り。ぼくらの音楽は常に性について書いてるけど、今回は今までよりももっと突っ込んだ姿勢でそれらを語っていると思う。男性的な弱さだったり、お互いの性をひけらかす行動がいかに全ての人々を傷つけているか、とかね。そんなことを言いながらも、このアルバムは同時にパーティ・アルバムでもありロック・アルバムでもあるから、このアルバムが必要以上にコンセプトに凝り固まった作品だっていう風に捉えられることは望ましくないかな。ぼくらは自分の嗅覚と好奇心に忠実なだけさ。

—今作のタイトル『Boy King』という言葉の由来、そしてこの言葉が意味するものを教えてもらえますでしょうか?

これは『Boy King』というタイトルに伴って、ぼくらが対峙しようとしている非常に大切な考えなんだ。このアルバムはぼくらにとって5枚目の作品で、たぶん最近のぼくらは”よりエスタブリッシュされたバンド”という捉えられ方をされていると思うんだけど、それってひとりの”若き少年の王様”が抱える問題と同じように考えることができると思うんだ。ぼくらはバンドとしてやりたいことや10代の頃に思い描いていた夢をあらかた達成してきたけど、まだまだ満足した気持ちは持ってないし、もっと得たいものがある。自身の快適な環境の”外側”でもちゃんと行動できるような自分を証明したいという気持ち、それに自身の居心地の良くない環境や地位に身を置いた時に、それに立ち向かってなんとか上手くやるという、そういったことと同じような感覚だと思う。

—また、アートワークにも顕著な通り、今作はどこか80’sのカルチャーからの影響を感じさせます。今作の影響源として何か音楽作品や映画を挙げるとしたら何が挙がるでしょうか?

ぼくら4人は嗜好する音楽に関しては本当多岐に渡っているんだけど、それでもみんな80年代のアーティストやバンド、ほんの数例をあげればTalk TalkやThe Blue Nile、もしくはKate Bushなどでは意見がピッタリと一致するんだ。そういったアーティストたちはぼくらが曲を書いたりレコーティングしたりする時に、時を越えてぼくらのお手本になってくれているような気がしていて。だからぼくらがその時代にすごく影響されてるというのは、至って正解だね。

—今、イギリスではEU離脱が可決されてしまうなど、非常に大きな政治的な転換点に差し掛かっていると思います。こういった環境はあなたたちの創作活動に対して影響を及ぼしていますか?

ツアーをやるバンドとしては影響が出るだろうね。今回の決定は既に、そしてこれからもぼくらの身にはネガティヴな影響があると思う。今の所すごく奇妙でナーバスな空気がかなりの人の間で流れているよ。残念ながら今のイギリスは、ポジティヴな感じが全くしないね。


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Wild Beats 『Boy King』
Release Date:2016.08.05
Label:Traffic
Cat.No.:TRCP-206
Price:¥2,100 + Tax
Tracklist:
1. Big Cat
2. Tough Guy
3. Alpha Female
4. Get My Bang
5. Celestial Creatures
6. 2BU
7. He The Colossus
8. Ponytail
9. Eat Your Heart Out Adonis
10. Dreamliner
11. Last Night All My Dreams Came True *
12. Maze *

*日本盤ボーナス・トラック

世界同日発売
日本盤CDボーナストラック2曲収録
解説歌詞対訳付

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