最初に筆者がCBSの存在を知ったのは、SoundCloudにアップロードされていた「2014.12.22」という曲だった。ローファイなサンプリングを主体としたビートに、ラッパーがそれぞれ立ち替りバースをキックしていく。それは楽曲というよりもセッションのよう即興性を擁した、その時々の気分や出来事を綴った日記のようなものに感じられた。
少し調べると、彼らがCBSというラッパーのユニットだということ、〈Pistachio Studio〉というレーベル機能も付帯したクルーに所属しているということ、そして、既にBandcampにてリリースされていたアルバム『TOWN』で話題を集めていたということがわかった。その簡素な名前故に、InstagramやTwitterアカウントを見つけるのにすら苦労した覚えがあるが、マイペースにUPされる日常の風景、そしてそれをそのまま音に落とし込んだかのような彼らの楽曲は、決して華やかさなどはないものの、日常のありとあらゆる風景とマッチし、日々の生活を少しだけ明るく彩ってくれるかのような、そんな魅力に溢れている。
その後もCBSを含んだ〈Pistachio Studio〉クルーはマイペースな活動を続けながらも、ESME MORI、%CことTOSHIKI HAYASHI、ryo takahashiがiriの楽曲「Never End」へ参加、さらにryo takahashiはパブリック娘。やchelmicoにも楽曲を提供するなど、ジワジワと知名度を拡大させてきた。そんな絶好のタイミングで、クルーの中核を担うCBSが遂に自主制作盤『Classic Brown Sounds』をパッケージ化し、初のフィジカル・リリースを果たすことに。
そこで今回は、CBSの楽曲の端々から滲み出る生活感、そして〈Pistachio Studio〉の成り立ちを探るべく、CBSとそのバック・バンドを務めるChicken Is Niceの面々に話を訊いた。
Interview by Yuma Yamada
Photo by Takazumi Hosaka
[L→R:basho、takaya、kyon]
―まず、CBSのことやアルバムのお話を伺う前に、みなさんが所属している〈Pistachio Studio〉について教えてください。そもそも、〈Pistachio Studio〉とはどのような集団なのでしょうか?
takaya:ラッパーとトラックメイカー、あとはバンドやってるやつらとかの集まりですね。
—Instagramには頻繁にセッション映像もUPされていますよね。あのお家はどなたの家なのでしょうか?
takaya:あれはryo(CBSやchelmico、パブリック娘。などにもトラックを提供しているryo takahashi)の家ですね。元々みんな一緒に遊んでる仲間で、その延長線上として〈Pistachio Studio〉っていう名前をつけました。
—どのようにして〈Pistachio Studio〉を始動させることになったのでしょうか?
kyon:元々は自分とtakayaと、今日はいないstsの3人が同じ地元でよく遊んでて、その3人でCBSを発足させたんです。bashoは後から入る形で。
basho:僕は最初、CBSとはまた別でラップをやったりしていました。
kyon:おれとtakayaとstsは中学校ぐらいの頃から共通してヒップホップを好きになって、学校とか地元の仲間と遊んでいる時もヒップホップの話をしたりするようになったり、その後も定期的にずっと遊んでたんです。
ただ、高校卒業するまで3人ともずっと部活をやってたんです。その部活を引退した時点でいつもやってたことがなくなっちゃって、「どうしよう? これから何しようか?」みたいな感じになったんですよね。そこで昔から3人ともヒップホップが好きだったし、カラオケとかでもよくラップしたりしてたから、とりあえず音楽を、ヒップホップをやってみようかってなったのが最初のキッカケですね。
最初はラップとトラックの仕組みとかもよく分からなかったんだけど、「とりあえず機材が必要じゃね?」ってことに気づき、ネットでいろいろ調べて、MTRとレコード・プレイヤーを買いました。あとはディスクユニオンの100円コーナーから適当にジャケ買いして、そこから引っ張ってきたインストにラップを乗せたりしてましたね。そういう曲を5曲ぐらい作って、まずはtakayaとstsに聴かせたんだよね。地元の仲間とかにも聴かせたら「なんかいいね、楽しそうだね」って言われて、じゃぁ3人でやってみようかってなった。
takaya:それがCBSの始まりですね。
kyon:〈Pistachio Studio〉っていうのも結局同じで、Bandcampで作品を出す時に、おれらの自主レーベルみたいなのが欲しいねって話になって、その時みんなでピスタチオを食べてたので「じゃあ〈Pistachio Studio〉でよくない?」っていうことで決まりました。なので、本当に何も由来とか意味はないんですよ。
basho:それ、今初めて聞いた(笑)。
takaya:その後、レーベルとしてだけじゃなくて、いつも遊んでるメンツも引っ括めちゃおうよっていうことで、今の〈Pistachio Studio〉ができました。
—ちなみに、〈Pistachio Studio〉に所属しているメンバーを具体的に教えてもらえますか?
takaya:おれら(CBS & Chicken is Nice)に加えて、トラックメイカーのtajima halと%C(TOSHIKI HAYASHI)、それに加えて映像でShibusawa Masanoriって人がいますね。
ryo takahashi:僕らはレーベルってわけでもないから、正直所属してるからどうこうっていうこともなくて、例えばtajima halだったら自分で主宰する〈Hermit City Recordings〉から作品をリリースしたりしてるけど、別にそれも良しで。ただ、〈Pistachio Studio〉の方にも名前入れとくね、ぐらいのゆるい感じで繋がってますね。
takaya:よく女の子で◯◯会とかあるじゃないですか。仲の良いメンバーで集まって飲みに行ったり遊びに行ったりするやつ。それと一緒ですね(笑)。
ryo takahashi:大学の仲のいい友達同士が、みんなの頭文字とってグループ作ったりとかね(笑)。
—では、CBSというグループ名の由来なども教えてください。
takaya:おれらは元々一番最初に始めた時、クローバーっていう名前でやってたんですよ。ヤバくないですか?(笑)
kyon:18歳の時ね(笑)。
takaya:そのクローバーの時に、stsの友達でBBCっていうやつらがいたんですね。そこから三文字で略せるのが超かっこいいなって思ってCBSになりました。これもピスタチオと一緒で別になんの意味もないですね。
—今回リリースされたアルバム・タイトル『Classic Brown Sounds』というのが、CBSの語源というわけでもなく?
takaya:それも後付けですね。
kyon:あんまり覚えてないんですけど、CBSっていう名前がポンと出た時に、「Cは……Classicじゃん?」みたいな、そんな感じで当てていきましたね。「Brown」はブラック・ミュージックを日本人がやるっていうことで、「色が薄まってBrownくらい?」って。「SはもちろんSoundでしょ!」みたいな。その時18歳だったんで(笑)。
takaya:クローバーっていうのはkyonがつけたんですけど、クローバーって4枚葉っぱがあるじゃないですか。3枚はおれとkyonとstsの3人で、あとのひとつはみんなっていう(笑)。
kyon:しつこく言うけど、その時18歳だからね?(笑)
—CBSを始める前にお互い共通して聴いていた音楽というのは、どのような作品/アーティストだったのでしょうか?
kyon:おれとstsは中2ぐらいからヒップホップを聴き始めて。テレビ東京の『流派R』もそうだし、RIP SLYMEとかケツメイシもCMで使われていたり、あの頃は日本語ラップに触れる機会がたくさんあって、単純に耳にする機会が多かったんですよね。だから洋楽とかはその時はまだ全然わからなくて、日本語ラップが入り口になってますね。
takaya:共通していたのでいうと、餓鬼レンジャーとかOZROSAURUSは共通していたのかな。今も変わらずそこはチェックしてるし。
—bashoさんはどんなものを聴いていましたか?
basho:僕は地元が相模原なので、ふたりとはちょっと離れていて。中学校でスケートボードを始めて、地元の公園によく行ってたんですけど、そこに年上の人たちがいっぱいいて、「こういうの聴いてみろよ」って色々オススメしてくれて。まだ若かったから可愛がってもらってたんでしょうけど、そこから日本語ラップとかも聴き始めるようになりましたね。友達とかはケツメイシで盛り上がったりしてたけど、自分が本当に好きで聴いていたのはSOUL SCREAMだったりして。テレビとかで流れるモノからアンダーグラウンドなものまで、両方の側面から聴き始めてました。
takaya:大雑把な流れとしては、日本語ラップからUSのメイン・ストリームを聴いて、その後煙たいのを聴くようになるっていう感じですね。
—なるほど。では、最近Twitterでよくツイートされている「low volume funk」という言葉もCBSのサウンドを表すのにとても大事な要素のような気がするのですが、この言葉について教えてもらえますか?
basho:あれはもう、Chicken is Nice(CBSのバックを務める)の話ですね。
ryo takahashi:日本家屋事情のファンクです(笑)。小音量ってのもあるんですけど、ファンクの派手な部分に焦点を当てるんじゃなくて、もっとミニマルな感じというか、タイトに締まった、誇張しない感じのファンクのことです。
basho:今回MVを出した「WAVEY」は、トラックをhachijihappunって方が一緒に作ってくれたんですけど、最初は全然我々と接点のなかった方で。我々のDJ兼ドラムのryoくんがInstagram上で知り合って、「ビートを一緒に作りましょう」って言ってできたものが「WAVEY」のトラックなんですけど、おれがおもしろがってそれにラップを乗せたりして遊んでて。そんなことをしてたらhachijihappunさんが「東京に今度遊びにいくんですよ」ってことで一緒に飲むことになって、そこで「やっぱりlow volume funkですよね〜」みたいな感じで意気投合したんですよ。なので、「WAVEY」っていう曲に関しては確かに「low volume funk」っていう言葉がキーになっていると思います。
WAVEY!作曲はryo takahashiとこの方hachijihappun。髙橋によるインターネットナンパにより実現したトラックです。引き続きジャパニーズ住宅事情FUNK、推し進めていきます。#low_volume_funk https://t.co/s0uPYUE5Uc
— Pistachio Studio (@pstchstd) 2017年6月9日
—〈Pistachio Studio〉を名乗り始めて、実際にryo takahashiさんの家がスタジオとして機能し始めたのはいつ頃からなのでしょうか?
ryo takahashi:僕がバックDJで入ったのが前作『TOWN』リリースのちょっと前なので、2014年ぐらいからです。元々バンドをやろうかって言ったりして、ちょこちょこ一緒に遊んでいたりしてたんですけど、前のバックDJをしてたSuppleっていう方が帰郷しちゃうってなった時に、「じゃあおれがバックDJやるわ」って言ったのがキッカケですね。それと同時にトラックメイクもやってたんで、「一応うちでレコーディングもできるよ」みたいな感じで、うちで録り始めて。それで『TOWN』を作ったっていう感じですね。
—家にドラムセットがあるんですよね?
ryo takahashi:一個前の〈Pistachio Studio〉ではドラムは叩けなかったんですけど、その後引っ越して、運良く一軒家を借りられたんです。しかも他の家が隣接していないところなので、ある程度なら叩いて音を出せますね。
—では、Bandcampでリリースされていた『2010-2011』のジャケットに使われているのは、その一個前の家というか、一個前の〈Pistachio Studio〉ということでしょうか?
takaya:いや、あれはryoが入る前、Suppleの家で。あの作品もそこでMTRで録った音源です。
kyon:そもそも〈Pistachio Studio〉はどこか固有の場所を指しているわけではなくて。おれらがいるところが常に〈Pistachio Studio〉っていう感じですね。基本的にはトラックが作れる人の家で、そこにおれらが通えるっていうのが最低条件。当時はSuppleが自分たちを最初にフックアップしてくれたっていうのもあって、『2010-2011』まではそこにずっと通いながら活動していました。そのあとSuppleが実家に帰るっていう話があって、そっからちょっと作れなくなっちゃったんだよね。
basho:『ピスタチオEP』の時はkyonちゃんの家が〈Pistachio Studio〉だったもんね。
kyon:『ピスタチオEP』の時は各自でそれぞれ録ってるからね。みんなでデータだけ送ってまとめてるだけ。だから音が荒い。その時はryoが少しずつ参加してくれていた時期でもあったから、今思えば『ピスタチオEP』は現体制のCBSにシフトするタイミングだったのかな。『2010-2011』でもう最初期のCBSは完成というか、そこで一回終わってる感じはあるかもしれない。
basho:うん、あるね。
kyon:そっからbashoも入ってきてっていうのもあって、ryoもそこから一緒にやってくれるようになって、次のフェーズに入っていったっていう感じですかね。
—なるほど。そこからついにフィジカル・リリースということですが、本作のリリースに至るまでの経緯を教えて頂けますか?
takaya:ずーっとグダグダやってたから、「そろそろまとめたいね」っていう。それ以上は特にないよな?
kyon:そうだね。
ryo takahashi:こだわりがあってフィジカルで出さなかったわけではないよね。
kyon:今までCDを作ることに対して抵抗も別になかったんだけど、ただ作った音楽をBandcampだったりとかで簡単にリリースできる手段があったから、それで満足していたんだよね。ただ、そういう活動をずっと続けていくうちに、自分たちも少しマンネリじゃないけど、似たようなものを感じていた。そんな状況の中で新宿でみんなで飲んだ時があって、その時にこやま(CBSにもトラックを提供しているビート・メイク・デュオ、Terrapin Audioの片割れ)が「CD作ってみようよ」って言ってくれて、「そうだよなぁ〜」って。ライブとかで色々なイベントに行くと、CD出している子も最近めっちゃ多くなってるなって感じるし、「意外とすぐ出せるのかもな」っていうようなことを考えた時に、おれら10年もやってきてるのに「CD1枚もねぇな」みたいな(笑)。
basho:BandcampとかSoundCloudでリリースしていた時は、CDで出す必要性みたいなのもいまいちわかんなかったし、別にこれで聴いてくれる人がいるんだったらそれでいいかなっていう風に思っちゃってたよね。おれはこやまから言われなかったら作ってなかったと思う。
kyon:でも、CDっていう形に残す行為は、確かに言われてみたらハッとさせられた。「そうだね、出したいね」って。CBSを10年もやってきて、未だに出来てないことだし、おれらはネット上をメインに活動してるつもりもないし。そういう風に切り分けられるのは何か違うなって思っていたから。それを言われたのが2年くらい前かな?
basho:あと漠然とだけど、フィジカル・リリースをすることによってなんか一線変わるっていうのはわかってたよね。
takaya:それはあるね。でも、それは作り始めてから思ったことだよね。
kyon:CDがどうとか意識して話したことはないけど、今までとやっぱ違うなみたいなのは感じてたね。
Takaya:まぁ、つまるところこれも明確な理由があったわけじゃないですね(笑)。キッカケはこやまの一言だったかもしれないですけど。
―形に残すことによって、節目というかひとつのターニング・ポイントになるという意識は?
Basho:まぁ節目っていう感じでもないですね。今までと違うことをやりたいっていう考えの中の、ひとつのアイディアというか。
takaya:おれは自分の盤が持てるっていうのはすごくいいなぁって思うけどね。
kyon:そうだよね。takayaはそれをずっと言ってたよね。
basho:おれはまだフィジカルも出してない状態でギャラもらうのが申し訳ないなっていうのはあった(笑)。
kyon:そういう諸々なことは何となくみんな感じてたよね。活動していく上で、「盤がねぇとな」とか、「物販ねぇな」みたいな。
basho:最終的にそこになるよね。
kyon:そういうことに対して、この3人以上に周りが気付いてくれるし、提案をすぐ出してくれるんですよ。たぶんこやまとかはそういう3人のマンネリみたいな状態も見えてたんだと思う。
basho:そういう意味でも、〈Pistachio Studio〉っていう括りがあって、CBSはやっぱりそこのいち所属アーティストってことだよね。CBS自体には特にブレインがいないっていう(笑)。
kyon:元はCBSからスタートしてるんだけどね。最初はCBSしかなかったんだけど、いつの間にかこうなったね。
—先程CDを作ろうという話しが上がってきたのが2年ぐらい前とおっしゃっていましたが、CDアルバムを作っていく中でテーマなりコンセプトなり、そういう意識していたことってありますか?
takaya:おれはないですね。
—あくまでも今まで通りで。
takaya:うん、そうっすね。
basho:kyonちゃんなんかある?
takaya:曲の大枠を作るというか、決めるのはKyonなんですよ。
kyon:テーマみたいなものは全然なかったんですけど、CDにするんだって考えると、なんとなくこう……。
—クオリティが求められる?
Kyon:うーん、クオリティとかでもないんですけど。まず、CBSの曲を作る流れっていうのが、みんなで集まってryoとかが作ってくれたトラックを聴いて、そこで気に入ったら作り始めるっていう感じなんですよ。だから、リリック先行の曲ってあんまりない。大体その場の雰囲気でトラックを聴いて、色々な話をしながら作るんですけど、できる時は速攻でできる。リリックはtakayaがすぐ書き終わってその次におれ。たいてい最後に決めてくれるのがbashoって感じ。今まで出してきたフリーのやつとかは全部そういう感じだったので、できたやつから録って、それをひとつずつ集めて曲にしていたっていう感じで。なので、最初にいざアルバムを作るぞってなった時、おれは結構身構えましたね。今までのスタンスとは違うぞって。
Takaya:kyonはちょっと聴く側を意識しちゃうんじゃない?
basho:あー、それはあるかもね。
kyon:そうだね。だからそういう意味ではクオリティとかもあったかもしれない。今までよりも制作期間が長くなったこともあって、波に乗るまでは相手を意識しちゃって「違うな」とか、「これじゃない」みたいな葛藤は色々ありましたね。制作の最初の方の段階でそれが続いた時は、「もう一生完成しないんじゃね?」とも思った。
basho:実際ボツになった曲もめちゃくちゃいっぱいあるよね。
kyon:めちゃくちゃいっぱいあるし、逆に言えばそんなの今までなかったので。
basho:その日出来たものを、そのまま全部出しちゃってたからね。
takaya:テーマ的な面で言えば、曲を録っていく中で「あれ、こういう曲足りないよね?」っていう感じで足した曲とかはありますけど、全体的なコンセプトみたいなものは特に考えなかったですね。
basho:そうやってアルバム全体を通して聴いた時に、いちリスナーとして「こういうアルバムだったら、こういう曲が欲しいよね」っていうのは考えて作りましたね。
kyon:CBSには曲のパターンがすでにいくつかあって、自分たちの感覚的なものなんですけど、「こういう曲」っていう色みたいなものをいくつか持っているんですよ。その持っている色の中で、それぞれ一番いいやつを吸い上げる、みたいな感じで作っていきましたね。
だから、前作と違って今回はすごく意気込んでやりましたっていうわけでもなくて、ただただいつも通りの音楽を作っていく中で、「こうしたら今までとちょっと変わるんじゃないかな」とか、「もうちょっとここは練ってみよう」みたいな、立ち止まったりブラッシュアップを繰り返して作ったっていう感じですね。テーマとかは全くないです。
—今回もトラックをもらってから楽曲を作り始めたと。
basho:そうですね。ryoだけじゃなくて他のトラックメイカー、例えば%Cとかに何曲かもらっても、それを使わない時もある。向こうからしたらすごくワガママだよね(笑)。
kyon:結構もらったね。今回もかなり泣かせたと思う(笑)。
basho:やっぱりグッときたトラックじゃないと絶対手をつけないし、他のメンバーがラップを入れたとしても、自分が乗らなかったら手をつけない(笑)。
Kyon:「本当、すいません」って感じだよね(笑)。
basho:だから、みんな基本的に何か具体的なテーマとか持ってやってるわけじゃないんですよ。みんなの昨日とか今日に起きたこと、身の回りから出てきた話しが全部曲になるし、曲の質感とかアイディアとかにも、そういう日々の中で生まれたモノが落とし込まれている。さっきkyonちゃんも言ってたけど、具体的に「前作がこうだったから、今作はこうしよう」みたいな狙いとかも全くないし、本当に遊んでるような感覚が全てですね。
kyon:このアルバムの仮録りが終わって聴いてみた時に、bashoが「なんか腑に落ちないんだよね」って言っていて。実はおれもそういう感覚があったし、たぶんtakayaも感じてたと思うんだけど、でも、それは逆に腑に落ちすぎて腑に落ちてないんだよね。何も変わってないから。だから、むしろレコーディングの面とかではryoたちの方が大変だったんじゃないかな。
basho:確かに。最後に「よし、じゃあこのアルバムはこれで完成。締め切ろう」ってなった時に、初めてこれを聴く人がいるっていう意識がやっと追いついてきた感じはありますね。
takaya:まぁ、ryoが区切りをつけてくれてたっていうのはすごいあるけどね。
ryo takahashi:さっきの撮影の時のポーズじゃないですけど、誰かが決めないと一生固まらないっていう(笑)。
—完全にプロデューサーですね(笑)。
kyon:おれらはいつもそうだよね。誰かが引っ張ってくれてる。
takaya:そういうところにもすごい普段の生活みたいな面が表れるっていうか。
—CBSの魅力って、そういう生活とか日常の延長線上で音楽が鳴らされているっていう部分が大きいと思っていて。そういった生活のひとつとしての音楽を大事にする理由ってどこからきていると思いますか?
takaya:すげぇカッコイイ言い方をしちゃうと、音楽はおれらの体の一部なんですよね。ずーっと一緒にいるんですよ。なくてはならないものっていうか、あって当たり前のものっていう感覚があるんです。それが生活感みたいなものとリンクしてるんじゃないかなとは思います。でも、明確な理由とかは特にないですよ。なんで生活感が出てるんだって言われても、自分たちではよくわかんないですし。
basho:カッコイイね〜(笑)。でも、確かに実際自分が感じたこと、体験したことじゃないと歌詞にならないし、基本的に誰かを想像して書くっていうことはできない。
kyon:それがリアルっすね。
basho:無理したくないけど、みんなで遊ぶための楽しい手段のひとつとして音楽があるから、じゃあおれはラッパーやりますっていう。そんな感じです。
―あくまで日常の中で得たものを、自分たちなりに楽しくアウトプットする。
kyon:ある意味、それもストリートだしね。
basho&takaya:ハハハ(笑)。
kyon:本当にそういうことはすごい考えていて。ずっと昔からヒップホップが好きで聴いてきてるけど、ストリートっていわゆる悪いことだけじゃなくて、おれらの目の前にある道だってストリートだし、ストリートっていうのは何通りもあるんじゃないかなって思うんですよ。
ただ、「等身大」とか「ナード」みたいな評され方をするのもなんか違和感があって。ナードとかハードとかそういうことじゃなくて、そこにあること、自分たちの周りのことや感じたことを書いているだけ。ヒップホップっていう括りでみると、そこで薄いとか浅いとかの違いが生まれてくるのかもしれないですけど、それ以上におれらは音楽が好きで、音楽を通して遊んでいる。俗に言うストリートとかハードコアな感じでやっていたら、Chickien is Niceとか〈Pistachio Studio〉のみんなが仲間になることなんて普通ないと思うんですよ。今回のアルバムに向けて色々考えていたことがあるんですけど、ヒップホップではよく豪華なゲストを招いて作品作ったりすることもあるじゃないですか。それもひとつの手としてすごくいい方法だと思うんですけど、それとは逆に友達とか仲間だけでバッチリやれるっていうのは、おれらくらいしかいないんじゃないか? っていうくらい胸を張れることなんですよ。
takaya:音楽がスタートか、友達がスタートかって言われたら、おれら友達がスタートなんだよね。
Kyon:そうだね。おれらみたいにヒップホップと全然違う畑のバンドの人ともガッチリやれるのは、おれらが俗に言うストリートじゃなくて、身の回りにあるストリートを大事にしてきたからだと思うんだよね。もしそうじゃなかったらこんな仲にはなってないと思うし、それは音楽のジャンルとかじゃなくて、芯の部分で共鳴してるからなんじゃないかな。
「等身大」とか「ナード」とか、そうやって言ってくれるのももちろん嬉しいんですけど、別にそういう話しじゃないというか。真剣におれらなりのリアルやストリートを追求してやっているし、これしか出ないんですよね。
—リリースに先行してMVが公開された「WAVEY」では、Lilith Abi Studioの方がレコーディングを担当していますね。
ryo takahashi:そうですね、録音だけお願いしました。普段だったら僕らで全部やっちゃうんですけど、あの時は僕も演奏側だったので、知り合いのエンジニアさんに頼んで録音だけしてもらって。後でそのまま音源もらって、ミックスとかは自分たちで仕上げましたね。
―そこまでDIYというか、自分たちで完結させることにこだわる理由というのは?
ryo takahashi:責任を全部自分らで負いたいんですよ。例えばめちゃくちゃ変なことになってもちゃんと怒れるし、普通にネタになったりして終わるから楽なんですよね。やっぱり外部の人に頼むと、クオリティを求めちゃうし、何かあったときにも「あぁ……いいっすね……」みたいな風に気を遣ってしまったりして、なぁなぁになってしまうので。
kyon:それに、いい評価を下された時は嬉しさも倍増だよね。「全部自分たちでやってます!」みたいな(笑)。
ryo takahashi:ガンガン言ってます。「レコーディングからマスタリングまで全部自分たちでやりました!」って(笑)。
こやま:ビートもそうじゃないの? 他の人からもらっても気に入らないとやらないからあんまりもらえないんですよね。だから全部自前というか、身内のビートしか使わない。
ryo takahashi:そうですね。トラックメイカーが僕とESME MORI、こやま、%C、Tajima Hal、Suppleの6人いるんですけど、デモ曲というかラップも乗らなかった曲が40〜50曲ぐらいあるんですよ。
basho:もっとあるよ、こやまとか最初50曲ぐらい送ってきたもん。
ryo takahashi:そうなるのが本人たちもわかってるんですよね。外部に頼むと、流石に使わないわけにはいかないので。
—先述の「WAVEY」や「Undercurrent」のMVの撮影、ディレクションなどを手掛けているmaxillaとは、どういったキッカケで繋がったのでしょうか?
ESME MORI:僕がmaxillaのメンバーと高校の同級生で、ある時偶然CBSのバンド・セットでのライブを観に来てくれて、「カッコイイね!」って言ってくれたんです。その半年後ぐらいに、メンバーがもう1回直接来てくれて、そこから仲良くなって飲みにいったりするようになり、「何か一緒にやろうよ」ってことで今回お願いしました。
basho:ここ最近出会った人間たちの中では相当グッと来たよね。「こいつは!」みたいな、ピンとくるものがあった。「一緒に遊びてぇ!」ってなるような(笑)。
kyon:maxillaと飲むと朝まで帰れないけどね(笑)。
—なるほど(笑)。あと、今作のジャケットについてもお伺いしたいのですが、まず写真の方はどなたなのでしょうか?
takaya:あれは僕です……(笑)。中2の頃だから、たぶん14くらいの時ですね。
-今回、なぜこの写真を引っ張ってきたのでしょうか?
takaya:おれが実家に帰ってたまたまアルバムを見ていたら、この写真が出てきたんですよ。これ、すごいおもしろくないですか?
kyon:個人的な昔の写真をアップするっていうね。
takaya:それをこやまが「おもしろいね」って、「アルバムのジャケにしようか」って言い始めて。
kyon:本当に、こんなに全身から滲み出るイキリ方ってないからね。
takaya:いやいや、大分恥ずかしいからね(笑)。
kyon:でも、後から考えるとすごく合ってるんだよね。「これこれ! こういうことだよ!」っていう(笑)。
basho:ここ最近のヒップホップのジャケットって、お洒落でカッコイイのがいっぱいあるけど、おれは自分がもし出す時はこれぐらいの方がいいなって、昔からずっと思ってたよ。
kyon:こやまとかは、レコードをディグってると得てしてこういうダサいジャケの方が良盤の確率が高いとか、そういう経験則があるんじゃないの?
こやま:ryoとよく話してるのは、ダサいんだけど「うわぁ〜やられた!」ってなるやつがいいねっていうこと。
basho:わかる、やっぱりそういうのだよね。あと、CDに関しては盤面を見て欲しいってところはありますね。本当にこだわって我々らしいデザインの落とし込み方をしてるので。
—「mgmg rmx」には女性のラッパーも参加されていますが、この方は?
kyon:あれは……アヤカちゃんです(笑)。
ryo takahashi:『TOWN』を出した時に、フックで裏声で歌う部分が多かったんですけど、ライブのテンションで裏声を出すとなるとちょっと辛いよねって。だったら女の子入れちゃおうってことで、『TOWN』の時限定でCBSに参加してもらってたんです。「mgmg」はそのタイミングで作った曲なので、彼女の声が入っています。
basho:今作に収録されているのは、昔のオリジナル曲を%Cがリミックスしたものですね。
―SoundCloudにUPされている日付をタイトルにしている曲は、日々のセッションの記録なのでしょうか?
ryo takahashi:あれは、なんとなくみんなが集まった時に「今日サンクラあげるか」て言って作る、即興のラップみたいなものなんです。だから、曲名すらない。
kyon:月一がルールだったよね?
ryo takahashi:一応月一ルールでやってたね。基本的にあれはその日に録って、その夜とかその次の日とかにはUPするっていう。
kyon:あれまたやりたいね。あのぐらいラフなのがいいよね、最高だよ。
basho:うん。遊ぶ理由になるしね、「あぁそろそろやんなきゃ〜」って。つまりはそろそろみんなで遊ばなきゃ、みたいなね(笑)。
―では、これから活動もより活発になっていくかと思いますが、CBSとして、そして〈Pistachio Studio〉として活動していく上で、今後も掲げていく指針みたいなものがあれば教えてください。
takaya:ryoなんかある?
ryo takahashi:そうですね。「CDを出すとどうなるのかな?」っていう好奇心みたいなものが先行してのリリースなので、これから色々な話をもらっていくなかで、ひとつひとつCBSらしく対応していけたらいいなと思いますね。変に浮ついたりせずに。
kyon:そうだね、単純に長くやりたいよね。
basho:生活が基準というか、ベースになってるチームだから、これからも遊びの中に音楽があればいいなって思います。これからアルバムをリリースするぞっていう時でも、別で並行して作ってる曲があるぐらいなんで。それぐらい自然に日々の遊びの手段として音楽があるので、それは変えずにこれからも続けていけたらいいなって思います。
【リリース情報】
CBS 『Classic Brown Sounds』
Release Date:2017.07.12 (Wed.)
Label:Pistachio Studio
Cat.No.:PIS001
Tracklist:
1. C.O.C.
2. Navigate
3. House
4. Undercurrent
5. Good Times
6. Route
7. なんで
8. Sputum
9. WAVEY
10. June
■Pistachio Studio:http://pistachiostudio.net/
【イベント情報】
“CORONA SUNSETS HOUR”
「CITY HIP POP MIX -SPECIAL CHAPTER -MIXED BY DJ HASEBE」
RELEASE SPECIAL INSTORE EVENT in Manhattan Records
Supported by Corona & DOOR Shibuya
日時:2017.08.06 (Sun.) 15:00-
料金:入場無料
出演:
[DJ]
DJ HASEBE
TOSHIKI HAYASHI(%C)
[LIVE]
JABBA DA HUTT FOOTBALL CLUB
CBS & Chicken Is Nice(BAND SET)
■イベント詳細:https://goo.gl/4Y5hsp
※注意事項
・ビールの販売は20歳以上の方のみとさせていただきます。
・都合によりイベント内容変更、もしくは中止とする場合があります。
・会場内外で発生した事故・盗難など主催者・会場・出演者は一切責任を負いません。