ヒットの崩壊&TYPICA特別対談

柴 那典 × 野島 光平(Spincoaster)”音楽メディアの未来”

これからの時代の音楽メディアに最も大切なモノとはなにか。音楽の未来を紐解く、『ヒットの崩壊』の続編的対談!

“2016年は「時代の大転換点」だった! 音楽の未来はもっと面白くなるはずだ”。講談社現代新書『ヒットの崩壊』の帯にはこう書かれている。SMAPの解散、Spotifyの日本上陸、宇多田ヒカルの復活と快挙、『君の名は』や「PPAP」の世界的ヒット……このように時代を象徴するような事件が相次いだ2016年。手前味噌ではあるが、後から振り返った時に、音楽アプリ「TYPICA」がSpincoasterからリリースされたことも、2016年の転換点のひとつになっているはずだと私は確信している。

『ヒットの崩壊』では2000年から今日に続く、日本の音楽シーンにおけるヒットの構造と理由を丁寧に解き明かし、”2016年が「時代の大転換点」”であることを証明した一冊だ。しかし、”音楽の未来”に関しては本書の中でも多くは語られていない。

そこで、実際にその”音楽と音楽メディアの未来”を語るべく、柴那典とSpincoaster野島による『ヒットの崩壊』の続編的対談が実現した。

DeNAのキュレーション・メディアの事件をきっかけに、ウェブメディアのあり方が強く問われる昨今。この先音楽メディアはどうあるべきか? Spotifyの日本上陸、ブロックチェーン、そしてTYPICAは音楽メディアの未来に何をもたらすのか?

対談は白熱し90分にも及んだ。おそらくこれが音楽とメディアにおいて最も時代の先を行く対談だろう。

Text by Kohei Nojima & Tomonori Shiba
Photo by Takazumi Hosaka

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野島:『ヒットの崩壊』発売後の反響は結構なものだと思うのですが、実際当事者としての感覚としてはいかがですか?

:予想以上に音楽関係の人以外に届いているという手応えがあります。テレビ業界とウェブメディアとか、出版ももちろんのこと。以前から感じていたことなのですが、メディアに関わる人は音楽を先行指標にしている。音楽でこうなっているからテレビはこうなる、雑誌はこうなるという風に考えている人がいるだろうなと思っていたんですけど、そういう人に実際に出会えた。

野島:それは、音楽が社会のカルチャーを牽引しているという風に考えているということですか?

:それもあるんだけど、まず音楽ってデータとして軽いじゃないですか。テレビや雑誌に比べると一曲のデータ量は比較的少ない。それでいて音楽は映像にも結びつくし、ファッションやキャラクター・ビジネスにも結びついたり、様々な所に付随していくものでもある。なので、カルチャーを牽引していくという意味じゃなくて、その軽さと接着力という意味で、音楽が先行指標になっていると考えられている。

野島:なるほど。『ヒットの崩壊』というのは音楽をテーマとした内容となっていますけど、ここで書かれていることはそれ以外のところでも当てはまるような内容ですよね。

:そうなんです。内幕的なところでいうと、この本の編集を担当した講談社現代新書の佐藤さんがとても優秀な人で、彼はまだ20代半ばなんだけど「現代ビジネス」にも関わっていて、一方で「メディアの輪郭」という自分のブログではウェブメディアのこの先への問題意識を語っている。音楽をイメージさせる言葉をタイトルに一切入れなかったのは彼の提案です。

野島:柴さんって社会学者みたいですよね。宮台真司さんの言葉を引用されていたり、そういった所にも造詣が深いんだなと感じていて。

:特段学んだ知識というものはないんですけど、興味はすごくあるんです。音楽と社会の交わる所に何があるのか、ということがすごく気になる。音楽そのものについて語る人は他にも沢山いるわけだけど、それだけじゃなくて社会との関わりが気になる。

野島:社会と音楽のつながりとして音楽メディアというものが存在していると思うのですが、柴さんは本の中で”音楽メディアは変わっていかなくてはならない””「多様性」をどう届け、どう伝えていくかにかかっているだろう”とおっしゃっていたんですけど、実際、今の音楽メディアはどういう状況にあると思いますか。特に今回はウェブメディアについて話をしたいのですが。

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:質問に質問で返してしまいますが、野島さんはどう思われますか?

野島:僕は今のウェブ音楽メディアはコンテンツや基本的な収益構造も含め、紙媒体とやっていることがあまり変わらないと思っていて。その一方でアーティストたちは個々がメディアとなっていて、くるりやサカナクションは自分たちのWEBサイトでインタビューを公開したり、自分たちの力だけでファンに想いを届けることができるようになっている。

【参考】くるり『琥珀色の街、上海蟹の朝』スペシャルインタビュー
http://www.quruli.net/kohakushanghai_interview/

【参考】サカナクション『多分、風。』リリース記念スペシャルサイト
http://www.jvcmusic.co.jp/sakanaction/12thsingle_sp/

野島:そしてSNSによってアーティストの方が発信力を持った結果、メディアがアーティストの力に頼り始めている現状があって。逆に才能や実力があっても人気や資本力がないアーティストは中々メディアでの露出を獲得できない。そういうこれからのアーティストほどメディアの力が必要なハズなのに、です。なので、音楽ウェブメディアはどこまでアーティストのために存在できているのかなと思ってしまいます。

:メディアって多義的な言葉だから一つの言葉で定義づけすることはできないんだけど、あえて言うなら、雑誌的なメディアが持っている本質的な価値は「読者を編集すること」だと思うんです。これは少し前にWIREDの若林恵編集長に取材させてもらったことがあって、彼が言っていたことの受け売りなんですけど。実際にWIREDは紙媒体の雑誌とウェブを連動させている。でも若林さんは「紙とかウェブとかそういう話じゃないんです」と言っていて。多くの人は「編集」と言うと、コンテンツを編集するということを思い浮かべがちですよね。つまり音楽雑誌で言うなら、Aというアーティストを表紙にしてB、Cというアーティストを選んで並べるということが編集だと思われている節がある。でも実は逆であるということを若林さんは言っていた。その雑誌のブランドの中に集まる人を選んでいる。それは紙媒体の雑誌でもウェブでもメディアが持つ本来的な価値だと思う。今の時代はアーティスト自身がメディア化しているから、自分のHPでインタビューを掲載するのも自然の流れだと感じます。それに、紙でもウェブでも根本的には読者を抱えることが価値であるというスタンスに立つと、やり方が違うだけで、本質的には同じだろうと僕は思います。

野島:雑誌とか紙媒体は「この雑誌を読みたい」とか「この特集を読みたい」と読者が意志を持ってお金を出して買っている。でもウェブって読んでいるときに「これが何のメディアか」ということを意識していないことの方が多いんじゃないかと思います。SNSとかに流れてくるリンクをただクリックして読んでいるだけと言うか。なので、僕はあるウェブメディアの「愛読者」としてトップページをブックマークして日常的に読んでいる人がどれだけいるのか? ということがすごく疑問なんです。

:そこが2016年のターニング・ポイントだったと思いませんか? 音楽の話からは少し離れてしまうんですけど、例えばトランプ大統領の当選を後押ししたのが、マケドニアの10代が作っていた嘘ニュース・メディアだったという話がある。その記事がFacebookで拡散されて、それをみんなが読んでいた。「Post-truth」というのが英語圏では2016年を象徴する言葉になっているという一つの事例がある。もう一つはDeNAの運営するキュレーション・メディアが引き起こした事件がある。

野島:ここ数年キュレーション・メディアと名乗るメディアに寄せ集めのようなサイトが増えていたので、今回の事件はやはりこうなったかという気がしていて。というか、炎上したようなキュレーション・メディアって、もはやキュレーションではなく引用メディアであって、そこが問題なんですよね。
本件に関する記事で、柴さんは「検索が信用を失った」とおっしゃっていましたよね。Googleが「本当に有益な情報をユーザーに届けたい」という理念を掲げてサービスを構築したにも関わらず、資本力で検索結果がハッキングされたという。これは本の中にあった「オリコンチャートがAKBにハッキングされた」という話に近いものを感じます。

【参考】mediologic / 高広伯彦:DeNA他キュレーションメディアが起こした”事件”は、検索エンジンが資本主義に負けたということ(http://www.mediologic.com/entry/2016/12/08/121204

:それに、言ってしまえばFacebookもハッキングされているわけですよね。我々が今目にしているのはディストピア小説的な未来だと思うんです。ウェブという便利なテクノロジーが生まれて、誰もが情報の発信側に立つことができて、しかし結局は大勢の人がノイズやゴミクズの洪水に埋もれてしまうという。音楽メディアだけじゃなくて、ここ数年はあらゆるウェブメディアがSEOに特化し、執拗にコンテンツの多いものを作った方が勝ちという方程式が出来上がっていた。これが変わらない限り明るい未来は訪れない。今はようやくそのことが広く認識されたタイミングだと思っています。

野島:ずっとウェブメディアの方の間では「脱PV主義の時代だ」とか言われてきているんですけど、一向にそう言っている人やメディアが大きく注目を浴びていない。SpincoasterもPVはほとんど意識してなくて、記事を分割するとか闇雲にPVを増やすことはしていないんですが、やはりPVがメディアの評価軸になってしまっていて、もどかしい思いをしているんですよね。でも、この事件をきかっけに本格的に質や想いが重視される時代になるのかなと思っています。

:そうなんですよ。でも、ここ5年くらい「質より量だ」とやってきた人は、これから質を高める努力をしなくてはいけない。一方でここ数年「量より質だ」と思ってやってきた人たちにはその蓄積がある。これは結構なアドバンテージなんじゃないかな、って僕は思います。

野島:そうですね。ただ、「量より質」に移行するためには広告主がそこに理解を示してくれないといけないと思います。あとは今後、質を高めること以外に音楽メディアがやれることってどういったことなんでしょうか。ストリーミングが入ってきて、プレイリストや人工知能などによるレコメンドで新しい音楽や、自分好みの音楽はすぐに見つかってしまいますし。

:そうなんですよ。でもレコメンド自体はアーティストにとってはプラスになっている話だと思うんです。具体例をあげていうとUQiYOはSpotifyで3万5千人くらいファンがいるんですよ(※)。確かSpotifyの方がおしゃっていた話だと、ドイツのキュレーターが反応して「Top of the morning」という朝向けのプレイリストに入ったのをキッカケにファンが急増したと。あとはWONKも3万3千人くらいいるんだよね(※)。あれは「Tokyo Rising」っていうプレイリストがキッカケだった。だからアーティストには有利なシステムに思えるんだけど、旧来の雑誌カルチャーの人たちがそこにどうアジャストして、どう自分たちの価値を出していくかというためにはやり方をアップデートしないといけないよねと思う。

野島:The HotpantzっていうTwitterのフォロワーも100人くらいしかいない(※)新人アーティストがいるんですが、Spotifyだけは何十万回と再生されて、”2016年の日本国内で最も再生された日本人アーティスト”で4位にランクインしています。清水翔太と赤西仁に挟まれているんですよ(笑)。Soptify的には彼らがブレイクすると目利きを証明できることになるので、すごく推しているみたいなんです。Spotify発のヒットアーティストを作りたいという目標にもはめているというわけです。Spotifyのような巨大なサービスにそこまでやられると、いちメディアとしては太刀打ちできないなと。

(※2016年12月現在)

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:僕はメディアの役割ということを考えると2極化していくと考えています。今のグローバルなエンターテイメント産業とメディア・コングロマリットは、音楽だけでなく全てのエンタテインメントをロングテールとモンスターヘッドの二極化に導いているとこの本で書いたんですけど、とりあえずはこれを現実として受け入れて対応しなくてはいけないと思っているところで。モンスターヘッド側、つまり音楽に日常的に触れていない人たちを相手にするアーティストのことを考えると、メディアの役割って、もう後追い解説だと思っているんです。わかりやすくそれが示されたのが「PPAP」ですよね。あれはどのメディアもプロモーションをしなかった。Justin Bieberによるツイートが大ヒットに繋がった。つまり、Justin Bieberがメディアとして機能したっていうことだよね。そのあとに世界中のメディアがあれを解説している。僕も3つくらいの番組で「PPAP」は音楽的にどうなのかみたいな分析をしたんですけど、そういう風に、メディアが火付け役ではなく後追い役になっているという認識が一つ。

あともう一つは、メディアが読者を編集するという先ほどの認識。たぶん読者を編集する以上は、マスは相手にできないんです。そうするとコミュニティを作って、その中での発火点を作る。ロングテールというのは火がついたらすぐ消えてしまうようなものだけど、細い火を束ねてその中で一番イケているものをちゃんと「今はこれが最も熱い」と外側に示す。ロングテールをミドルボディに持っていく、その役割を果たすメディアは必要だとは思っています。価値と役割においては、この二つの両極があると思う。

野島:そういった意味でいうと、Spincoasterは後者のロングテールを束ねて、それをミドルボディに持っていく役割を担うメディアだと思うんですけど、今他にそのような役割を担おうとしていると思われるメディアってありますか?

:僕は今あるメディアでSpincoasterの競合となるのはTuneCoreやSpotifyだと思っている。TuneCoreというのは元々アマチュア向けの、ロングテール向けのサービスとして存在していたんだけど、Chance The Rapperのような配信サービスからスターが生まれる事例が出てきたことで、TuneCoreの目利きによっては今後Chanceのようなモンスターを輩出する役割を担っていけると思う。あとはSpotifyもそうだよね。Spotifyはまさにロングテールの先っぽからスターを発掘する役割を担おうとしている。さっきのThe Hotpantzの事例はまさにそうだと思う。ある種Spincoasterは在野でそれをやっているイメージがあるんですよ。でも、在野であることは強みと弱み両方あると思っていて、弱みというのはシステムの中に存在しないこと。そして強みというのはどのシステムともフラットに付き合えるということ。「うちはCDしか出してないんで」という人も、「ストリーミングしかやってないんで」という人も両方取り上げることができる。

野島:確かにSpincoasterはSpotifyにも公式アカウントを持っているし、TuneCoreのイベントにも協力をさせてもらったりしています。

:だからまあ、競合というよりはパートナーという感じだよね。SpotifyもTuneCoreもパートナーだけど、メディアとしての役割は後追いと発火点の二つになってきていて、発火点を担うことができるのはより細いところになっている。かつてはメジャーデビューの時点で発火点だったのが、今はもっと早い時点に発火点がある。そしてブースターとなるのはより巨大な影響力を持った個人である。

野島:まさに「PPAP」を広めたJustin Bieberのことですね。では、既存のメディアは淘汰されていくと思いますか?

:変わっていかなくてはいけないのは間違いない。(Spincoaster代表の)林さんが僕の本を読んでピックアップしてくれた部分で嬉しかったのが、「音楽はコンテンツではなくコミュニケーションである」というところで。これは実は僕の持論だし大事なポイントなんです。

野島:それは林がSpincoaster立ち上げ時からずっと言っていることなんですよね。

:この大事なポイントって、音楽は”コミュニケーションのためのツール”ではなくて、”コミュニケーションそのもの”なんだというところで。実はメディアもそうだと思っているんです。特にキュレーションサイトを作っている人はメディアをコンテンツだと思っている。でも僕はメディアは本来的にコミュニケーションだと思っている。つまり最初にあるのは「これを伝えたい」という衝動だけで、マネタイズは後からついてくる。それはウェブでも雑誌でもリアルな場でもアプリでもそう。特に音楽はそれがわかりやすいですよね。「この曲、最高!」という一言が言いたいかどうか。

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野島:そういう意味でいうとDeNAが閉鎖したキュレーションメディアには音楽に特化したものはなかったんです。やっぱり音楽ってビジネスにするのは難しいのかなって。だからこそ、逆にそこに情熱を注げる人は信じられるんじゃないかとも思っています。TYPICAはそういう人たちを信じて応援したいという想いで作ったアプリなんです。音楽メディアを運営している人たちも、ビジネスだったらもっと美味しい領域があると思うし、音楽ブロガーの方々も基本は全く利益のことなんて考えていない。それでも、「誰かにこの音楽を伝えたい」といった想いがあるから記事を書いたり運営しているんだと思います。そういった「届けたい」という想いと、「知りたい・聴きたい」というリスナーや読者の想いの架け橋になりたいと思っています。あの、「TYPICA」を触ってみて実際いかがでしたか?

:「TYPICA」はシンプルに「これは人を編集しているアプリだな」と思いました。それが何よりの第一印象。つまりコンテンツを編集しているアプリではないと。「この人は信頼できる音楽好きだ」とか、「このチームが作っているメディアはおもしろいに違いない」とか、コンテンツ単位よりも人単位で選んでる感じがする。単なる音楽情報キュレーション・アプリとは違うなと。そこはすごくいいと思ったポイントです。実際、「TYPICA」をリリースしてみてどうですか。

野島:Appleのおすすめにピックアップして頂いたりして、リリースして1ヶ月で1万5千くらいダウンロードしていただけたのですが、ヘビーに使ってくれている人たちはやはり自分たちと同じ目線で音楽を聴いている人たちが多いのかなという気はしています。それはとても嬉しいことなんですが、一方でまとめ記事的なものがランキングの上にあがりやすいという実感もあります。「〇〇〇のオススメ曲10選」とか、「クリスマスに聴きたい曲まとめ」とか。そこは少しもどかしい気持ちもありますね。

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:なるほど。結局みんなが求めているものっていうのはそこなんだなというのはある。でも、それは正しいことなんだなと思いました。今思っていることは、結局またモンスターヘッド側の話になっちゃうんだけど、数字が見えるサービスは強いんですよ。それはYouTubeとSpotifyの共通項でもある。何回観られた、何回聴かれたという数字が出せて、それをちゃんとランキング化しているところは強い。ランキングに客観的な説得力があるし、実はそれによって多様性が担保される側面もある。ニコニコ動画がそうでした。あのサービスも動画再生ランキングがちゃんとあったんですよね。特に初期のランキングは、ボカロもMMDもゲーム実況も、色々なカルチャーがごった煮にされていた。ジャンルごとにカテゴライズされないで、ただ単に再生された回数ということだけで並べると、逆に色々なものがシャッフルされる。そうすることで多様性が担保される、カオスが生まれるっていうのがニコニコ動画の初期の成功だったと思うんですよね。だから、パーソナライズが進んでいく一方で、ランキングはある種の信頼性とメディア機能を持つとは思います。SpotifyとApple MusicやLINE MUSICなど他のサブスクリプションのサービスを比べて印象的なのは、Spotifyはバイラルチャートを作っていて、それがおもしろいということ。あれはめちゃめちゃカオス。バイラルチャートを見てるとよくわからない曲がいきなり上がってたりするじゃないですか。

野島:いわゆるフィルター・バブルを破壊する存在ですよね。

:あれを見ている人は自分のパーソナルな好みとは違う「今これが流行ってる」というアンテナを張れる。しかも再生回数の数字が出ているから説得力がある。僕がヒットチャートについてこれだけ書いているのは、「人は数字を見て判断する生き物である」というところを肯定しようという想いがあるから。加えて、ランキングが機能していないと思った時はその設計思想を課題として捉えるべきなんじゃないかと。

野島:なるほど。「TYPICA」の楽曲ランキングは一定期間の中で「いいね」を押された回数=人数で並べられています。1万ダウンロードとかなりの方に試して頂いた結果、現状はBillboardチャートに近いものになっています。やはり今で言うと星野源、RADWIMPS辺りが強い。そういう意味では、この酸欠少女さユりは、メディアの記事にみんなが反応して押し上げたアーティストだと思うんです。
あと、曲に対してメディアが紹介した記事の逆引きができるんです。例えば、「これだけのメディアがラブサマちゃんのこの曲を紹介しましたよ」っていうのが関連記事として一覧で表示されるようになっています。

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:記事から再生された楽曲のランキングがあると、可能性としてはこれとは違う人気曲になるかもしれない。

野島:そうですね。今でもカオスな感じにはなっていておもしろいなと思うんですけど。

:うん、このランキングはおもしろいよ。星野源、RADWIMPS、Taylor Swiftがトップ3になっている(※対談時)ことにとても強い納得感がある。これが仮に現状でラブサマちゃんが1位になっていたら、「ああ、そういうのが好きな人たちの集まりね」ってことになっちゃうと思うんだよね。だから、やっぱりポピュラリティーのあるものが1位になっているというのは納得感と説得力を感じる。

野島:さらにいうとAKB系とかLDH系とかが入ってきていないのが嬉しい。

:そう、3代目J Soul Brothersもジャニーズも入ってきていない。そういう意味では芸能じゃなくて音楽を聴いている人たちが集まっているんだと言える。だから「人を編集する」という作業によって選別がされている。僕はこのランキング、結構いいランキングだと思います。

野島:ありがとうございます。Billboardチャートも今のオリコンチャートと比べると複合的な結果が出てはいるんですけど、最終的に芸能が勝っている。AKBが2016年の1位になっている。それは芸能やビジネスを含めた、音楽だけではないランキングになっているから。僕たちはできる限り音楽に寄り添ったものを「TYPICA」ではやっていきたいんです。

:そういう中では星野源はわかりやすいアイコンだと思います。ドラマにも出演していてその辺のOLが「星野源いいよね」って言っていたり、片や音楽評論誌とかを読んでいる層の人たちからも音楽的にちゃんと認められている。
ただ……ちょっと違う話なんですけど、こういう本を出すと音楽メディアの外側の人間と話すんですよ。そういう人たちと話すと必ず「私は音楽のことよくわからないんですけど……」と言われるんです。こういうのってすごくよくないなと思っていて。つまり「音楽ファン」という言葉は、実はあまりいい言葉だと思っていないんです。「音楽ファンだけがわかる音楽」というイメージがどんどん膨らんでいったがゆえに、それ以外の人たちが「私最近の音楽わからないんです」と言ってしまう風潮がある。音楽って「わかる/わからない」というものじゃないのに。そしてこの溝はここ数年でさらに深くなっている。

野島:そうですね。確かに「音楽ファン」という言葉自体が距離を作っている感じもします。理想を言えば、音楽は近くにあって当たり前のものなのに。

:例えば他のモノに置き換えると、「ファッションファン」という言葉って変でしょ? ファッション界隈の「わかっている人たち」というコミュニティはあるけれど、それは「ファッションファン」ではない。結局「ファン」って排他性があって、その外側に「よくわからないです」っていうたくさんの人を生み出してしまう。僕は排他性自体が悪いとは思ってはいないんです。だって、発火点にはコミュニティが必要だから。その一方でメディアとかコミュニティを作っている側の人たちは、排他的になっていることに自覚を持って考えていく必要があるなと思うんです。

野島:気づきづらいですよね、本当に音楽に詳しい人に囲まれていると。

:本当に。「私は最近の音楽のことよくわからないんですけど……」って言われても、「え? だって星野源のことは知ってるでしょ?」 って思うんです。本当に年間で1曲も聴かないとかいう人は別ですけど。

野島:そういう逃げざるを得ない空気が生まれたのはなんでだと思いますか?

:それはスノビズムのせいだと思います。海外で言うなら少し前のPitchfork的な価値観というか。あれは当然必要だったし、功罪で言えば功の方が圧倒的に大きかったと思うんですが、ポップ・ソングの大衆性を否定することによって、音楽が大衆のものでなくなってしまったような雰囲気を作ったというのはあると思う。ただ、全ての状況は合わせ鏡だから、決してPitchforkを否定するつもりはないです。

野島:あと、ネットの発達もその原因の一つでしょうね。自分の所属しているコミュニティが明確に可視化されている。それは音楽が好きな人たちにとっては救いにもなっているんですけど。

:それは僕個人が本当に実感していて、だから否定するつもりはないんです。それこそSpincoasterのこのコミュニティだってそうだし、例えば音楽だいすきクラブの年間ベストもそうだし。ああいう人たちが発信しているものに片足突っ込んでいる人間であるから、コミュニティに属していられる感覚がある。「TYPICA」の話に戻すと、ここ5年くらい僕は知り合いの音楽ライターとかデザイナーとかによるSpotifyのバイラルトップ15みたいなものが欲しいなと思っていて。それがあれば僕はそのプレイリストを年中聴いて楽しく過ごせる。「TYPICA」はそういうものを設計思想に持っている気がしたんだよね。

野島:ブロガーとかがオススメしている音楽を聴けるという、海外のThe Hype Machineというサイトがまさにそうですよね。運営側でメディアを選別して、その中でランキングを作る。

:今年で言えば年間ベストに知り合いが何人か小林うてなを入れていて、それが聴いてみるキッカケになったっていうこともあって。だから、存在を知ってちゃんとチェックまでしようって思うキッカケは、知り合いの年間ランキングとかなんですよね。

野島:それは信頼できる人の年間ランキングだからってことですよね。

:そう、ピコ太郎がJustin Bieberでブレイクしたってことって、つまりJustin Bieberが圧倒的に信頼されているってことだと思うんです。「こいつがおもしろいと言っていることはきっとおもしろい」っていう。つまりは著名人も日々試されているわけです。「あいつがおもしろいと言っていたけど、実際チェックしてみたらイマイチ」っていうのが続くと少しずつ信頼を失っていく。そういう意味ではハイプマシーンの機能を日本でやっているのは、例えばONLY IN DREAMSの年間ベストとか。あと、重要なのはpittiさんの音楽だいすきクラブですよね。彼のやってることは文化史的に重要だと思うんだけど、「TYPICA」もそこを設計思想に持っている気がします。「TYPICA」で年間ベストはやる?

【参考】ONLY IN DREAMS 2016年ベストアルバム
http://www.onlyindreams.com/interview/2016/12/220000/

【参考】音楽だいすきクラブ:ネットの音楽オタクが選んだ2015年の日本のベスト
http://ongakudaisukiclub.hateblo.jp/entry/2016/01/15/183130

野島:僕は「TYPICA」ではいずれアワードをやりたいと思っているんです。毎年「TYPICA」内でよく聴かれた曲とか、よく読まれた記事とか、アーティスト単位、メディア単位、キャリア単位とか細かく部門を作って。できるだけ数字やデータに基づくものでアーティストやメディアを表彰したいと考えています。音楽シーンに対して影響力のあるものにしていけたらと思っています。

:うん、それは絶対やった方がいいと思う。

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野島:最後に、テクノロジーと音楽についてもっと未来の話をしましょうか。テクノロジー分野で今一番ホットなのがブロックチェーンの技術だと思うんです。あれってとても画期的なことだと思っていて。音楽を作る人たちの中で、正当的な対価が得られてないということは一つの大きな問題だと思っています。もちろん完全DIYでやっているインディーのアーティストは話が変わってくると思うんですけど。特に大人がついてくるようになったアーティストは本当に正当な対価が得られていない。それをブロックチェーンのシステムで曲を販売すれば、1曲が売れたらアーティストにいくら、マネジメントにいくら、というのが自動的に振り分けられる。それはリスナーにもわかるんです。これまでブラックボックスとなっていたものを透明化することで、それぞれが納得のいくものになると思うんです。

:ブロックチェーンはやばいビジネスだなと思う。

野島:既得権益の流れを変えるような技術ですから。

:僕も『ブロックチェーン・レボリューション』という本を読んで勉強してるところなんだけど、今まではブロックチェーンというものに対してFinTech(IT技術を使った新たな金融サービス)におけるサブ・カテゴリー的なイメージを持っていたんです。でも、どうやらブロックチェーンが最終的に行き着く先っていうのは国家の代替物かもしれない。この対談前に参考として送ってくれたリンクの先で書かれていることというのは、音楽という領域においてApple、Google、Spotifyはそれぞれ国家だということなのね。

【参考】ZUU Online:低迷の音楽産業に新風「ブロックチェーン」スタートアップ ピアートラックス、ビットチューンズなど (https://zuuonline.com/archives/89891

:つまり信用を発行している、ということ。ここに乗っている曲はサービスの審査を通ったもので、SoundCloudやBandcampとは違う。ブロックチェーンというのを究極的に中央銀行制度や国家を解体してしまうテクノロジーだと位置づけると、とてもアナーキーな感じがするな。ビットチューンズとかピアートラックスってBandcampでミュージシャンが自分の音源を売って儲けるのと何が違うのかって言ったら、通貨が違うってことでしょ。銀行制度に依拠するものではない分散型の信用と貨幣を稼ぐことで生きていけるっていう。だから国と銀行の否定だよね、ブロックチェーンが究極的にやろうとしていることって。超アナーキー。でも、当然こんなテクノロジーを今の世の中が許すわけはない。数年のタームでは定着しないと思うし、骨抜きになる可能性も大きいと思う。だけど、こんなフロンティアでワクワクする話はなかなかないよね。それにブロックチェーンは音楽テクノロジーのすごく先にあるものだと言うこともできる。『誰が音楽をタダにした?』という本が話題になったけれど、あそこに書かれているのは、つまりは「情報の流通」という権力がマスメディア的な中央集権モデルからP2P的なモデルに移行していく中で起こったドラマと言うことができる。そしてSNS以降は「影響力」という力が個人に分散していく流れを目の当たりにしている。その流れで、次は「信用の付与」という権力の源泉そのものがP2P的な分散型のモデルになろうとしている。

野島:P2P的な分散型モデル、つまり巨大なプラットフォームを活用せずともSNSとブロックチェーンによって個人同士がダイレクトに信用や情報をやり取りできるようなるということですよね。アーティスト各々がピアートラックスを使って自分の通貨を発行し、ファンがそれを買うという株みたいなものが定着したらすごいことになりそうですよね。

:つまりアーティストが中央銀行になれるってことですよね。まだ10年早いとは思っているけど、でも僕は正直、世の中は分散化されていくべきだと思っているので。

野島:このシステムってファンが最もアーティストにコミットできるシステムじゃないですか。それが僕は希望だなという風に思っていて。

:そうだね、Bandcampとかクラウドファンティングがやっていることの、さらに先のことだもんね。

野島:単純にクラウドファンディングでいくら支援して何かをもらうということではなくて、ファンによってアーティストそのものの価値を高めることができるというのがすごくおもしろい。

:クレジットスコア、つまり「この人はいくら借りられる」という物差しは今まで金融機関が一方的に決めていたわけだけど、それをアーティストとファンの関係性の元で付与することができるようになる可能性がある。さらにリバタリアニズム的に突き詰めていくと、行政サービスがブロックチェーン化することで国家の意味が変わってくる。「夜警国家2.0」と言うか、暴力絡みのことに関与するだけの国家像が想起されるようになる。相当ぶっ飛んだ話をしてる自覚はあるけど、こういう想像力を持って音楽やアートを作る人が出てきたら面白いんじゃないかと思うんですよ。例えば、ぼくのりりっくのぼうよみくんはこの辺の話に食いついてきそうな気がする。

野島:彼は先日クラウドファンディングで資金を集めて自分のメディアを立ち上げるというプロジェクトをスタートさせましたよね。ちょうど他のアーティストにそのような提案をしようとしていた中だったので、さすがだなと思いました。ただ、ブロックチェーン的な技術が浸透すると、よりマジョリティが力を持つ世界になっていきますよね。

:そう。僕がこの本で書いていることは、基本的に希望に満ちているけれど、気付く人だけは気付くようなディストピア的発想も入っているんです。残酷なことだけど、マジョリティーがより力を持つ世界になっていく可能性は高まっている。モンスターヘッドがより力を持つ、ロングテールがより細くなっていくっていう風にここ数年なってきている。ここが反転するキッカケというのは正直まだ見えていない。AdeleとJustin BieberはThe Beatlesが出てきた時よりもより強力なパワーを持っている。メディアとしてのパワーとしてはね。そして政治の世界ではトランプがモンスターヘッドである。

野島:同時にわりとマイノリティな人生を生きてきている身からすると、生きる場所がなくなるんじゃないかという恐怖もありますよね。

:そこに僕も問題意識を持っているんだけども、今起こっていることというのは伝搬力を持っている人がよりそれを強めている時代なので、この先は今のまま進むとマイノリティはより力を失っていく。ただし、多様性は担保されているんです。なので居場所はあるんだけども、居場所しかない。世の中には大してコミットできないという状況になるわけです。

野島:エコー・チェンバー化するというか。それぞれが自分の価値観の島の中で暮らす、ということですよね。理想はそれぞれの島に、外の島にも届く圧倒的なセレブリティが存在するということなのかなと思ったんですけど。でもそれって国のことですよね。

:国が代替するってことだよね。

野島:Justin Bieberの国、Adeleの国と言ったところでしょうか。

:そうだね。ここから先はSFの話だけど、仮に国が解体されて分散型の統治機構が生まれたとするならば、その時に信用を発行できるのは人であると思う。まさにJustin Bieberなんかがやっていることが通貨になるわけだよね。で、今はピコ太郎がJustin Bieberから発行された信用を受け取っている。今はそれが暴騰しているからみんなフィーバーしているけれど、今度はピコ太郎が誰に信用を発行するかということにかかってくる。プロデューサーの古坂大魔王さんはすでに実績のあるお笑い芸人で、彼がフックアップしたい才能ある若い人は沢山いるだろうし。僕はピコ太郎のことをそういったブロックチェーン的な話と絡めて考えているんだけど……この話はピコ太郎に関する話の中で一番最先端のものだと思うよ(笑)。

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:さらに言えばこの信用の話ってアジカンのゴッチがやっていることだよね。アジカンは「リライト」とか「ループ&ループ」のアニメ・タイアップがブレイクのキッカケだった。だけどアジカンと同時期に売れたバンドもたくさんいたわけです。その中でなぜアジカンがあれだけのリスナーに愛されてリスペクトされて、バンド結成20周年を迎えて『ソルファ』新録Ver.が歓迎されているのかというと、ゴッチがフックアップしてきた沢山の音楽に対する信用があるからなんだよね。単にアジカンの曲がいいからってだけじゃない、もっと複合的な価値がある。”NANO-MUGEN FES.”をやってきたこと、ONLY IN DREAMSをやってきたことが活きている。同じことをやってきたのが氣志團や10-FEET、くるりなんですよ。そう考えるとアーティスト・コインはテクノロジーの話だけど、フェスでいうとここ10年のプラットホーム内でゴッチと10-FEETとくるりと氣志團がやっている。ここに何故かピコ太郎が繋がるという謎のロジックがある(笑)。アーティストがメディアになっているというのはそういうことでもあるし、そう考えると、今メディアがやるべきことは信用を稼ぐことだと思うんですよ。

野島:サカナクションの山口さんはNFというプロジェクトを立ち上げて、音楽だけでなくファッションやアートと言った音楽以外のカルチャーからも信用を築き上げていますよね。「誰かに与えた信用はいつか返ってくる」と、キングコングの西野さんも言っていましたね。

:彼はそれと同じことをお笑いと絵本という分野でやったんですよね。
で、また話が飛ぶんだけど、The Sound You NeedというYouTubeチャンネルがあるんです。これは色々なアーティストの曲をThe Sound You Needのオリジナルのロゴや映像に乗せてアップロードしてるチャンネルで。The Sound You Needの登録者数は390万ユーザーいて、楽曲の再生回数もとても多いんだけど、YouTubeには「コンテンツID」の仕組みがあるから、広告の収益は全部アーティストにいくんですって。それ自体では全然儲からない。けれど、曲を紹介し続けている、それを楽しみにしている登録ユーザーが390万人いるという、そのこと自体に価値が生じてくる。だから事業としては成立するという。

野島:なるほど。まずはお金儲けより先に自分たちの目利きやセンスによって人がたくさん集まる場所を創ろうという発想ですよね。人が集まれば、自然と質の高いアーティストや楽曲が集まり、さらに人が集まる。良い循環が生まれますよね。

:おそらくTomadさんがマルチネでやろうとしていたことってこれと同じことだったと思う。デザイン込みで、ちゃんと曲をセレクトしているということで、価値や信頼を高めていく。Spincoasterも参考になる話だと思います。これに気づいている人は日本では少ないはず。

野島:しかも単純に金儲けをしようと思っているだけの人や企業はパッと参入できないですよね。だってこれは紹介している曲のクオリティ、価値があってこその再生数と登録者数だから。下手なものをタイアップで紹介したらガクッと信用が下がっちゃう。

:そう。だからこれはSpincoasterがやろうとしていることに相当近い。

野島:そうですね。Spincoaterもそこはお金では動かないというスタイルでやっていますし。

:そこが他の音楽メディアとは抜本的に違う点なんだよね。

野島:僕らは今タネを蒔いている時期だと思っているんですね。アーティストのインタビューとかもお金を一切頂かずにやっているんですけど。それが何年か先に返ってくることを信じてやっているという感じですね。色々時間もかかりそうですが、今の話を聞いて勇気付けられました。
メディアもアーティストも、何よりも「信用」が大切になってくる時代がやってきたということですね。

:まさにそうだと思います。

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柴那典×宇野維正のトークイベントを開催!
「”過渡期”を経た2017年の音楽とカルチャー、メディアの展望」 柴那典×宇野維正〜『ヒットの崩壊』刊行記念
日時:2017/01/10 (火) 19:30 – 21:00
場所: 講談社26Fレセプションルーム
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