ネットを中心にバズを拡大させながらも、近年ではリアルな現場でも強い支持を獲得してきたトラックメイカー/プロデューサーのYunomiとYUC’eが新レーベル〈未来茶レコード〉を共同で設立し、先月それぞれ1stアルバムをリリースした。
北海道出身、現在は東京を拠点とするYunomiはnicamoqとのデビューEP『ゆのみっくにお茶して EP』、TORIENAとのコラボ作『大江戸コントローラー EP』を経て、今回は再びnicamoqとの活動に焦点を絞った1stアルバム『ゆのもきゅ』をリリース。収録されているのは全て既発曲であるが、様々な形式/形態でのリリースとなっていた楽曲群をまとめた本作を聴くと、改めてそのサウンド・プロダクションの精巧さ、そしてウェルメイドなソングライティング・センスを存分に堪能することができるだろう。もちろん、nicamoqの個性的な声質を活かしたウィスパー・ボーカルの魅力についても言わずもがな。
一方、作詞作曲トラックメイク、そして歌唱までもひとりで手がける女性プロデューサーのYUC’eは、ドラムンベースやグリッチホップ、そしてフューチャー・ベースといった様々なジャンルを横断しながらも、Yunomiと同じくそれをポップでキャッチーな歌モノへと昇華することに秀でたアーティストだ。そんな彼女の1stアルバムは、彼女の名前を一躍広く知らしめるキッカケのひとつとなった「Future Cαndy」の続編的ナンバー「Future Cαke」をタイトル・トラックに配した作品。こちらも既発曲が多めではあるが、蓋を開けてみればフューチャー・ベースだけでなく様々なジャンルからの影響を感じさせる、実に新世代らしいハイブリッドなサウンドが詰まっている。
今回はそんな両者にインタビューを敢行。レーベル立ち上げの経緯から本作へ込められた想い、そして今後の展望について語ってもらった。
Interview & Text & Photo by Takazumi Hosaka
―――まず、今回おふたりが〈未来茶レコード〉というレーベルを立ち上げた経緯とキッカケを教えてもらえますか?
Yunomi:レーベルを立ち上げるっていう話の前に、アルバムを出したいっていう考えがあったんです。どこから出すかとか、どういうアルバムにするかとか、そういった構想よりも先に、「そろそろアルバムをリリースした方がいいんじゃないか」っていう感じで。曲もすごく溜まってましたし。ちょうどYUC’eさんも同じようなタイミングで同じようなことを考えていたんですよね?
YUC’e:そうですね。今までは同人活動とかインターネット上での配信とかしかやっていなかったので、ちゃんと流通する作品っていうものを作ったことがなかったんですよね。あと、これまでに結構色々なコンピレーション・アルバムに楽曲を提供させてもらってるんですけど、そういった曲をライブでプレイすると、「あの曲はどこで手に入るの?」とかって聞かれることが多くて。「そういった曲もまとめてアルバムを作っちゃおう」っていう考えがあったんです。
――そんなタイミングで、Yunomiさんの方からお声がけしたと。
Yunomi:正直そんなに詳しく覚えてはいないのですが、そういう感じだったと思います(笑)。
――ちなみに、おふたりの初対面っていつ頃なのでしょうか?
Yunomi:渋谷のWWWですね。マルチネのイベント(2016年10月に渋谷WWW、WWWXの2会場で開催された”大都会と砂丘”)だったと思います。その頃、yuigotくんがYUC’eさんをフィーチャーした「Crazy Sprinkle Friends feat. YUC’e」のリミックスを僕が制作していて。まだ直接会ったことはなかったので、ご挨拶したいなと。
YUC’e:それまでもYunomiさんの楽曲はもちろんずっと聴いていたんですけど、WWWが初対面だったこともあって、私の中でYunomiさんはその時に物販で展開されていたキキララとのコラボ作(『ゆのみっくにお茶して EP』初回盤とコラボTシャツ)の印象が未だに強いんです。すごくメルヘンな感じ(笑)。
――「Crazy Sprinkle Friends feat. YUC’e」が収録されたyuigot『MAGIC MAGIC MAGIC EP』が〈Maltine Records〉からリリースされたのが2017年2月なので、中々に制作期間が長かったんですね。
Yunomi:はい。作り始めてからリリースまで、結構かかったみたいですね。YUC’eさんはあの頃はまだ「Future Cαndy」はリリースしていなかったんでしたっけ?
YUC’e:「Future Cαndy」は10月の後半だったので、お会いした時はまだUPしてないと思いますね。
Yunomi:そうですよね。yuigotくんのリミックスを通じて初めて知ったんですけど、最初は「自分で曲も作ってるし、歌声もいいし、何やらすごい人がいるぞ」という印象で。その後「Future Cαndy」がリリースされると、「これはもしかすると、とんでもない人なんじゃないか」って思うようになりました(笑)。とにかくそれくらいあの曲のインパクトが大きかったですね。
――ちなみに、Yunomiさんに関してはこれまでにも2度インタビューを行っているのですが、YUC’eさんに関しては今回が初となります。なので、YUC’eさんのこれまでのキャリアについてもお訊きしたいのですが、そもそもYUC’eという名義で音楽活動をスタートさせたのはいつ頃、どのような経緯だったのでしょうか?
YUC’e:元々はボーカル・カバーの動画をUPして活動していたんです。そしたらご縁あってトラックメイカーさんにお声がけして頂き、自主制作でリリースする作品にボーカリストとして参加させて頂けるようになりました。でも、その後そういったトラックメイカーさんたちはメジャー・デビューされたり、アニメの曲を手がけるようになったり、すごい活躍されるようになって、同人で曲をリリースしなくなってしまったんですね。そういう風にして、どんどん自分の活動のフィールドが狭まっていく中、じゃあ私はこれからどうしようかって考えて……。
――もう、いっそのこと曲も自分で作っちゃおうと。
YUC’e:はい。昔お声がけして下さったプロデューサーさんたちに、自分が作ったトラックを聴いてもらって「どうですか?」とか聞いたり。失礼ながらも色々とアドバイスを頂いたりしました。あと、その時に一緒にサークルをやっていた方々にも「ここはもっとこうした方がいいんじゃない?」とか、「このプラグイン使ってみたら?」とか、色々と教えてもらったりしつつ。
――当時は違う名義での活動だったのでしょうか?
YUC’e:そうですね。違う名前で活動していました。それまでに使っていた名前は結構検索に引っかからない名前だったということもあり、新しく自分ひとりでやっていく機会なので、これを機会に全く異なる名前でやっていこうかなって。それが2014年頃ですね。ゆよゆっぺさんの別名義、DJ’TEKINA//SOMETHINGのアルバム(2014年4月リリースの『DJ’TEKINA//SOMETHING』)で2曲歌わせて頂いたんですけど、そこから名義をYUC’eに変えました。
Yunomi:トラックメイクがスタートじゃないんですね。
YUC’e:そうなんです。歌がスタートでした。
――いわゆる「歌ってみた」を始めたキッカケはどのようなものだったのでしょうか? 小さい頃から歌うのが好きだったり?
YUC’e:実は小さい頃からずっとミュージカルを勉強していました。それもあって、中学生くらいからどうしてもブロードウェイ・ミュージカルが観たいって思うようになって。ブロードウェイ・ミュージカルってもちろん英語じゃないですか。なので、まずは英語を勉強する必要があるなと。それで家族に相談しました。色々難はあったのですが、その後家族の協力でしばらくアメリカに単独留学させてもらえることになったんです。
アメリカでは寮生活だったんですけど、回りにスーパーもコンビニもない大自然に囲まれているような環境でした。そのせいか、自然とネットをよく見るようになって、動画サイトの歌をカバーするという文化にたくさん触れるようになりました。自分でもやってみたいと思い、その時ちょうど使っていたMacBookのマイクとGarageBandで録音してみてっていうのが一番最初ですね。そもそも東京に出てきたのも演劇活動がキッカケなんです。演劇をする傍ら、音楽も作ってっていう感じ。今は演劇活動の方は全くやっていなくて、音楽に専念しているんですが。
――アメリカに留学していたからこそ、逆に日本特有のカルチャーに惹かれたっていう部分もあったのかもしれないですね。ホームシックじゃないけど。
Yunomi:海外旅行に行ってラーメン食べたくなる、みたいなね。
YUC’e:あ、でも、私が向こうで通ってたのは女子校だったんですけど、結構日本のアニメとか好きな子も多かったんですよね。
Yunomi:そうか。その頃にはもうネットが普及していたから。
YUC’e:そうかもしれないです。結構オタクっぽい子も多かったですね。
――この度リリースされた1stアルバム『Future Cαke』のタイトルにも表れている通り、YUC’eさんのサウンドのひとつの核でもあるフューチャー・ベースを意識しだしたのはいつ頃からなのでしょうか?。
YUC’e:フューチャー・ベースを意識して作ったのは、私がリリースした2枚目のCD『CHERRY CUBE』(2016年4月リリース)に収録されている「バイバイ」っていう曲が最初ですね。その頃はすでにフューチャー・ベースも流行りきっているというか、飽和している感じもあったんですけど、同時に日本ではまだまだこれからだなっていう風にも思えたので、そういう曲を作ってみました。そもそもリスナーとして意識しだしたのはいつ頃なんだろう……。
Yunomi:2015年頭くらいにはもう、フューチャー・ベースっていう名前もサウンドのスタイルも固まってきていたような印象ですよね。
――今回〈未来茶レコード〉からリリースされるおふたりのアルバムについても伺いたいと思います。まず、Yunomiさんの『ゆのもきゅ』について、収録曲は一応全て既発曲となりますよね。
Yunomi:そうですね。ただ、全曲リマスターして、アルバム仕様になっています。
――「ロボティックガール」など、新たに手を加えられたり、アップデートされている楽曲もありますよね。
Yunomi:それはやったりやってなかったりっていう感じなんですが、実は元々それぞれの楽曲にはいくつかの別Ver.が存在しているんです。なので、昔の曲に関してはもはやどれが以前リリースしたVer.なのか、自分の中でも結構わからなくなってきていて(笑)。
最初はそれこそ全曲リアレンジしようかとも思ったんですけど、いろいろ考えた結果、それはやめました。それぞれの曲を作っていた当時のことを考えていたら、なんだか妙にエモくなってしまって。作ってた当時の自分は「これが完璧だ」と思ってやってたんだなってことを考えると、妙にエモくなってきてしまったんですよね(笑)。
なので、変に手を加えるよりも、その当時の空気感を大事にしたほうがいいんじゃないかなって思うようになりました。曲の雰囲気や構成はあまりイジってないですけど、さっきも話した通りリマスターして最適化はしてあります。あと、「ここはちょっと変えたらおもしろいんじゃないかな」っていう部分は少しイジった部分もありますね。たぶん昔からチェックしてくれている人が聴いて「あれ? ここ少し変わってない?」って気づくか気づかないかっていうレベルが多いと思うんですけど。
Yunomi:例えば、「神様の渦 (feat. nicamoq)」の間奏のメロディを、シンセからギターに差し替えたり。元々作っていた当時に、「これをギターで弾いたらカッコいいかもな」っていう思いが頭の片隅にあったりして。そういうマイナー・アップデートは所々で行っています。あとは大きくイジったところでいうと、「守護霊 (feat. nicamoq)」のアウトロですね。いきなり終わって全く違う曲のアウトロみたいなのが入ってくるっていう展開をやりたくて。
――最初にまず漠然と「アルバムを作ろう」という気持ちがあったとのことでしたが、そこから『ゆのもきゅ』というアルバム・タイトルで、nicamoqさんとの曲を改めてパッケージングしようという考えに至ったのはなぜなのでしょうか?
Yunomi:やっぱり、一番最初のCD作品(『ゆのみっくにお茶して EP』)もnicamoqさんとの作品でしたし、その次にTORIENAさんとCD(『大江戸コントローラー EP』)を出して、その後は桃箱さんとmikoさんとか、色々な方とお仕事するようにもなり。あと、その頃からソロでのDJの機会とかも多くなってきたりして、より活動の幅が広がってきたんですよね。だからこそ、ここで一旦区切りみたいな感じで、ベスト盤じゃないですけどパッケージングできればなって思いました。
今回のアルバムにはnicamoqさんと一緒にやった曲で世に出ているものはほぼ全部収録させてもらいました。例外はゲームに提供させてもらった曲と、前作のEPのボーナス・トラックとして収録したものくらいですね。
――なるほど。一方で、YUC’eさんの1stアルバム『Future Cαke』には「Future Cαke」、「わたあめパレード」、「Gemini Tale」と新曲が3曲収録されています。その他の既発曲に関してはここ最近のライブでよく披露している曲を集めたという感じなのでしょうか?
YUC’e:そうですね。いつもライブでやっている曲を収録しつつ、新曲に関してはリリースが決まってから、このアルバムへ向けて作りました。あと、私の中で「Future Cαke」という曲は、「Futureシリーズ」の区切りというか、最終章のような意味合いもあって。「Future Cαndy」をリリースした後、「『Future Cαndy』みたいな曲を作って欲しい」と言われる機会が結構あり、実際に色々と作ってみたんですけど、その「Futureシリーズ」を一旦締め括るイメージで作りました。
――奇しくもふたりとも1stアルバムがこれまでの自身の活動に対して、何かしらの区切りをつけた作品になっていると。
Yunomi:ちょっと珍しい形かもしれないですね。1stアルバムへ向けて制作するのではなく、1stアルバムはこれまでの活動の区切りというか、けじめみたいな形。でも、ここでわかりやすく節目を作ったことで、今後の活動はもっともっと自由にできるような気もします。
YUC’e:今回、その「Futureシリーズ」の最後にケーキ(「Future Cαke」)を持ってきたのは、おめでたいっていう意味合いもあるからなんです。お祝いというか祝福というか、そういう気持ちを込めてあの曲を作りました。
――「Futureシリーズ」は、YUC’eさんが多くの人から注目を集めるキッカケにもなりましたよね。その結果、ここ1年ほどの躍進ぶりは目まぐるしいものがあったと思います。
YUC’e:それこそ、「Futureシリーズ」を出す前は弾き語りのアーティストさんが出演されているようなイベントに出ることも多くて。確かに2枚目の『CHERRY CUBE』までは結構エモい曲を作るのが好きで、全然踊ったり盛り上がったりできないような歌モノが多かったんですね。それはそれで私の作りたいモノのひとつなんですけど、それが『Future Cαndy』とその前に出した『Toy Frappe』でフューチャー・ベースに焦点を当てたことで、クラブ系のイベントに出させて頂く機会がすごく増えて。もちろんそうやって環境が変化したことで、曲を作る時にもよりライブ時の盛り上がりを意識したりするようにもなりました。なので、今回の新曲も思いっきり盛り上がれる曲をいっぱい作ろうかなと思ったんですけど、改めてもう一回自分の原点ってものを振り返ってみた時に、やっぱり昔みたいなエモい曲もまた作りたいって思って。それで今回、「Gemini Tale」っていう落ち着いた曲を1曲だけ作りました。
――「Gemini Tale」は確かに昔っぽい曲であると同時に、とても新鮮に響く曲でもありますよね。
YUC’e:ありがとうございます。アルバムにはライブで盛り上がれる曲もあれば、移動中とか家でひとりでも聴けるような曲もあるっていう部分は自分でも意識していたことで。バランスのいい作品にしたかったんです。
――ふたりとも1stアルバムで、ある意味これまでの作品に対しての区切り、けじめをつけたとのことですが、今後の展望はそれぞれ見えてきているのでしょうか?
YUC’e:フューチャー・ベースって未だにジャンル的に定義みたいなものが定まっていないような気がしていて。「これ、フューチャー・ベースだよね……?」、「フューチャー・ベースかな……?」みたいな、まだまだ不明瞭な部分が多いんじゃないかなって思うんです。そのせいか、「Future Cαndy」をリリースして以降、自分的にはフューチャー・ベースのつもりで作っていない曲でもそう言われるようになったりして。その後『macaron moon』っていう作品を作ったんですけど、あれはそういったジャンル的なしがらみを一切考えずに作った一枚なんです。なので、今後はそういったまだ自分が挑戦していないようなサウンドをもっともっと見つけていきたいと思っていますね。
Yunomi:「macaron moon」はすごくロマンチックな曲ですよね。僕、この前シンガポールと中国に行った時に他のDJさんがかけているのを見ていたんですけど、現地の人がみんな歌っていて驚きました(笑)。
YUC’e:嬉しいです。「macaron moon」は夏目漱石を題材にして作った曲なので、結構ストーリー性みたいなものを大事にした曲なんです。今後もそういった曲は作っていきたいですね。
――「macaron moon」は確かに幻想的なリリックが印象的です。YUC’eさんはどのような物事からインスピレーションを受け、どのようなプロセスを経て作詞をしていますか?
YUC’e:音に当てはめながら書くことが多いですね。あとは……いつもお腹が減っているのかな。食べ物を題材にしがちなんですよね、私(笑)。
例えば「わたあめパレード」とかは、ある日「サワーズ」っていうグミのわたあめ味が出たんですけど、それがTwitterにも書いちゃうくらいツボって。これを商品化するのか、っていう驚きからあの曲が生まれました。
Yunomi:日常的な刺激からアイディアを得ることが多いんですかね。
YUC’e:そうですね。それこそ「味」とかを題材にしたがるんですよね。
――確かに。でも、そういった食べ物の味覚を人間の感情に置き換えるのが上手いですよね。
YUC’e:「甘い」とか「苦い」っていう言葉って、そのまま感情だったり人間の状況とかに対しても使えたりしますよね。そういう日本語のおもしろい部分は意識して歌詞に取り入れています。
Yunomi:共感覚っていうやつなんですかね。
――では、Yunomiさんの今後の展望はどうでしょう? 先程、より活動の自由度が高まるのではとおっしゃっていましたが。
Yunomi:今までは「nicamoqさんが歌うからこういう曲を作ろう」とか、ライブでもnicamoqさんありきで考えていたことが結構大きかったんです。もちろんそれはそれですごくいい環境なんですよ。向こうからもアイディアを投げてもらえるし、当然僕のアイディアを提案することもできる。でも、実は今回のアルバムに関してはnicamoqさんは関わっていなくて。「今回は全部僕の方に任せて下さい。その代わり責任をもってやるんで」とお伝えしたんですね。ツアーの方もnicamoqさんが出るイベントと出ないイベントがありますし、これはあくまでYunomiの作品、ライブであって、そこにnicamoqさんをゲストでお招きしているっていう形。まぁ、本来のフィーチャリングの形にしようかなと。
nicamoqさんだけに限らず、これまではボーカルの方ありきで、その方のイメージに沿って曲を作ることが多かったんですけど、今後はもっと自分の曲そのものに向き合って、それに対して最適な方を探して、お声がけするっていうスタンスに変えていこうかなって思っています。それはもしかしたら初音ミクなのかもしれないし、あるいはボーカルはいないかもしれない。そういった自由な創作環境に置かれることによって、制作自体は難しくなるかもしれないですけど、でも、だからこそ楽しいんじゃないかなって思うんです。
――ちなみに、Yunomiさんは以前のインタビューで、自身がYunomiとしての活動を本格的に始動させた当初、「音楽のシーンの移り変わりをすごく肌で感じることができて、それがとても刺激になった」と語っていました。しかし、そういったシーンも現在では多様化、複雑化の一途を辿っているように思えます。外から眺めていると、どんどん捉えどころがなくなってきているというか。そういったシーンの変化、変遷についてはいかがですか?
Yunomi:確かにサウンド的には一体感というか、まとまりみたいなものが見えなくなってきているなと感じています。「このサンプルを使っとけばいいでしょ」とか、そういうフォーマットが崩れたというか。昔は808ベースのキックとか、ジャージー・クラブのキコキコ音とか、あとは特徴的な声ネタとか上音とか、そういう音を使ってBPM150近辺とかで作っておけばフューチャー・ベースになるでしょ、みたいな。そういうのがあったんですけど、それがあまりにも多くの人に広まっていったので、今は逆に誰もやらなくなっちゃったような気がしますね。もちろん。当時はたまたまそうなったっていうのも大いにあると思いますし、それぞれの手癖とか、バックグラウンドに起因していた部分も多かったと思うんですけど。今はそういった形骸化してしまったサウンドに対して、敢えて背を向けているような人も多いような気がしますね。その代わりに、今はバラバラではあるけどそれぞれの個性が強く出ているんじゃないかなって思いますね。それこそYUC’eさんが今回「Gemini Tale」で改めて自分のルーツに立ち返ったのと同じように。
とはいえ、もちろんフューチャー・ベースっぽさっていうのはみんなの中に残っていると思うので、これからはそれぞれのバックグラウンドや個性を、そこに上手く融合させたサウンドが増えてくるんじゃないでしょうか。
――では、それぞれ個人としての展望はお聞きしましたが、レーベル〈未来茶レコード〉としてはいかがでしょうか?
Yunomi:そうですね……やはり、ビルを(笑)。
YUC’e:ふふふ。そうですね、自社ビルを建てたいですね(笑)。あとは海外に支社を……(笑)。
Yunomi:このレーベルは、本当にただ自分たちの作品を好きにリリースするためのプラットフォームとして作ったっていうのが正直なところなんです。ただ、いざ作ってみたら、自分たちの音楽のスタイルに対して自分たちでラベルを貼るっていう行為は……何ていうんでしょうか、効率がいいというか。わかりやすいんじゃないかなって思うようになったんですよね。それは聴いてくれる人にとっても、もちろん我々にとっても。
一言で「フューチャー系」とか、「kawaii系」と大きく括られてしまうことに対して、やっぱり何か違うというか、違和感があるじゃないですか。そういう時に〈未来茶レコード〉というラベルがあると、もしかしたら今後は「あ、〈未来茶〉系ね」っていう風になるかもしれない。そしたら僕らも聴いてくれる人も納得しやすいんじゃないでしょうか。
なので、最初は完全に自分たちのことしか考えていなかったですけど、ゆくゆくは他のアーティストさんのリリースとかをお手伝いできたりしたらいいですね。
YUC’e:うんうん。あと、今って海外でもコンベンションが開かれたり、日本独自のカルチャーに対して世界中から注目が集まっていると思うんです。なので、このレーベルがそういった海外の方々に対して、ネット上で個人で活動されている日本のアーティストさんとかを紹介、提示できるような存在になってくれたらなっていう想いもあります。〈未来茶〉っていう軸が、どこか日本じゃない海外の国でも共通言語として通用するような価値を生み出せたらいいなって。例えば、コンベンションとかに企業ブースみたいな形で出展できたらおもしろいですよね。せっかくTシャツとかも出してるわけだし。
Yunomi:それ、いいですね。ぜひともやりたい。ところで、YUC’eさんは今後、ご自分の同人活動と〈未来茶〉としての活動は区別を付けていく予定なんですか?
YUC’e:一応区別を付けてやっていこうかなと思っています。〈未来茶〉では私が思い描く〈未来茶〉感を出しつつ、同人活動では引き続きより自由に、自分の好きなことをやっていこうかなって。自分の作りたいものを、売れる売れないとかそういうことを一切考えず、何にも囚われずに作っていきたいです。
Yunomi:同人活動ではよりディープなYUC’eワールドを出していくわけですね。
YUC’e:そうですね。やっぱり自分で手売りできることのよさみたいなものもあるので、年に2作くらい出せればいいなと。
――Norくんとのユニット/サークル、beignet(ベニエ)としての制作も続ける予定で?
YUC’e:あれも同人活動の一環ですね。あのユニットは、まず根本的に私がオタクということもあって、そういう部分と、あとはふたりともkzさんが大好きっていう共通点があって意気投合してスタートしたんです。実際にデータをやりとして作っているんですけど、私が苦手な部分をNorくんが補ってくれるんですよね。なので、よりアニメチックというか、ファンシーなものをアウトプットすることを意識して制作しています。
――おふたりとも、まだまだやりたいことがいっぱいあるようですね。
Yunomi:ビルは冗談ですけどね(笑)。
YUC’e:え、冗談なんですか? 建てましょうよ、ビル(笑)。
Yunomi:ハハハ。じゃあ、建てましょう(笑)。あと、僕は個人的には茶葉を作ってみたいんですよね(笑)。
――それは楽しみです。それでは最後に、現在開催中のリリース・ツアーについての意気込みを教えてもらえますか。
Yunomi:ツアーの各公演もそうなんですけど、特にファイナルの渋谷WWWには気合が入っていて。この日のラインナップはkzさん、kors kさん、TORIENAさん、Tomgggさんとアンテナガールさん、そしてNorくんとすごく豪華で。これはクリエイターとして尊敬している人たちであり、ただ単純に今僕らが会いたい人たちを集めただけって言われれば確かにそうなんですけど、ただ、そこに来てくれた方々がこの並びに何か特別なストーリーを感じてくれたら、ここまでやってきてよかったなって思えるんじゃないでしょうか。
YUC’e:本当に1年前には予想もしていなかったくらい状況が変わって、渋谷WWWっていう大きい会場で、こんなすご過ぎる出演者さんと共演できるなんて私にとっては夢のようなことなんです。ただ、この渋谷WWWっていうのは先程もお話した通り、Yunomiさんと初めてお会いした場所なので、ここがツアー・ファイナルの会場になったことは、私の中ではちょっとした奇跡のように感じていますし、心の底から楽しみにしています。きっと私の人生においてもすごく大きいイベントになるんじゃないかなって。
Yunomi:あと、ツアー・ファイナルのフライヤー画像をよく見て頂くと、「Vol.1」って書いてあるんですよね。これがファイナルでもあり、ここからがスタートでもあるぞと。なので、これからも引き続き温かい目で見守ってくださると嬉しいですね。
11/29の未来茶会、これで全出演者発表です!!最高のメンツが集まりました!!
そして今週土曜日からいよいよ全国ツアーが始まりますよ!!
皆さん予約はお早めに!!
皆様どうぞ宜しくお願い致します!!!!!
詳細→https://t.co/9qKFSKTp7I#未来茶ツアー pic.twitter.com/TUDLccrkoC— 未来茶レコード (@miraicha2017) 2017年10月17日
【リリース情報】
Yunomi 『ゆのもきゅ』
Release Date:2017.10.18 (Wed.)
Label:未来茶レコード
Cat.No.:MRCD-001
Price:¥2,778 + Tax
Tracklist:
01. めんたいコズミック (feat. nicamoq)
02. 枕元にゴースト (feat. nicamoq)
03. ロボティックガール (feat. nicamoq)
04. インドア系ならトラックメイカー
05. ゆのみっくにお茶して (feat. nicamoq)
06. サンデーモーニングコーヒー (feat. nicamoq)
07. 星降る夜のアデニウム (feat. nicamoq)
08. 東京シュノーケル (feat. nicamoq)
09. 守護霊 (feat. nicamoq)
10. ココロフロート (feat. nicamoq)
11. ダンスフロアの果実 (feat. nicamoq)
12. 明けない夜、醒めない夢 (feat. nicamoq)
13. 神様の渦 (feat. nicamoq)
14. 銀河鉄道のペンギン (feat. nicamoq)
15. サ・ク・ラ・サ・ク (feat. nicamoq)
16. 夢でまたあえたらなあ (feat. nicamoq)
17. ハッピーライフ (feat. nicamoq)
■リリース詳細:http://miraicharecords.com/yunomoq.html
==
YUC’e 『Future Cαke』
Release Date:2017.10.18 (Wed.)
Label:未来茶レコード
Cat.No.:MRCD-002
Price:¥2,130 + Tax
Tracklist:
01. Future Cαke
02. わたあめパレード
03. Night Club Junkie
04. POISON
05. Tick Tock
06. intro-duck-tion!!
07. MUDPIE
08. 戦国HOP
09. Gemini Tale
10. PUMP
11. Future Cαndy
■リリース詳細:
通常盤 http://miraicharecords.com/futurec%CE%B1ke.html
限定版 http://miraicharecords.com/futurec%CE%B1ke-limited.html
【イベント情報】
▼2017/10/19(木) ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
開場 19:45 開演 20:00
▼2017/10/21(土) HMV札幌ステラプレイス店
開場 19:15 開演 19:30
▼2017/10/21(土) 札幌Sound Lab mole
開場開演 23:00
▼2017/11/18(土) ヴィレッジヴァンガードアメリカ村店
開場 13:15 開演 13:30
▼2017/11/18(土) 大阪Circus Osaka
開場開演 16:00
▼2017/11/19(日) 名古屋sound bar MiRAi
開場開演 16:00
▼2017/11/25(土) 福岡Club Selecta
開場開演 16:00
▼2017/11/29(水) 渋谷WWW
■未来茶レコード オフィシャル・サイト:http://miraicharecords.com/