SPIN.DISCOVERY -VOL.02-

アーティスト対談 綿めぐみ × OBKR(N.O.R.K.) × 酒本信太(Tokyo Recordings)

綿めぐみと彼女を支える2人のクリエイター、N.O.R.K.のOBKRとその相方的存在である酒本信太氏の3者による対談。これで全ての謎が解ける……かも!?

今年産声を上げたばかりの新進気鋭のレーベル、Tokyo Recordingsの第一弾アーティストとして、どこからともなく現れた女性シンガー、綿めぐみ
今だ2曲+αしか公開されていない状況ながら、ネットを中心に徐々に、そして着実に支持と注目を集め続け、遂にフルアルバムのリリースまで決まった彼女は一体何者なのか……!?


(アルバムは11/9のSPIN.DISCOVERYの会場で、50枚限定先行販売となります)

その謎を解き明かすべく、今回は彼女とそのTokyo Recordingsを主宰するふたり、N.O.R.K.OBKRと、その良き相棒である酒本信太を招き対談形式のインタビューを行いました。
独特すぎる世界観を醸し出す彼女とふたりの絡みはどこかチグハグながらも、その奥底からは深い信頼関係と友情のようなモノも滲み出ており、対談中は常に笑いが絶えないアットホームな雰囲気に。
これが初のインタビューになる綿めぐみと、ふたりの若きクリエイターの素顔に迫ります……!

(Intervewer:Takazumi Hosaka)

綿めぐみ対談2

ーまずOBKRさんと酒本さん、そして綿さんの3人が出会ったキッカケとお互いの第一印象を教えてください。

O:僕がアルバイトをしていた居酒屋にお客さんとして来ていた株式会社フレオという会社の方を通じて知り合いました。その時の第一印象は……「あ、オレこいつとは友達になれないな」って感じで(笑)。

綿:そうですね。私も「こいつとは絶対友達になれないな」って思いました(笑)。
……っていうのは嘘ですけど、私初めて会った時、顔も見れなかったよね?

O:そうそう、マスクしてて顔も見てないしもちろん歌も聴いたことない状態だったんですけど、「とりあえず一緒に(音楽活動を)やろう!」ってなって。内心「マジか……キツいな……」って感じでした(笑)。

酒本:なんかしばらく経ってから聞いたらその日が「今まで生きてきた中で一番酷い日だった」って言ってたよね(笑)。

綿:当時はもう本当に閉鎖的すぎて。

ー綿さんはそれ以前から音楽的な活動をしていたんですか?

綿:いや、全然。なんかよくわからないまま流れでスタートして、今こうしてここにいるのも流れで……って感じですね(笑)。

O:でも楽器とかはやってたんじゃないの?

綿:あ、フルートは吹奏楽部だったんでやってました。

ーちょっと突っ込んだ質問かもしれませんが、綿さんは引き蘢っていたということがプロフィールにも載っていますが、それは一体いつ、どれくらいの期間のことだったのでしょうか?

綿:どこからが引き蘢りなのかっていうのがわからないのですが、とにかく学校が嫌で嫌で仕方なくて……。
その時は友達もネット上にしかいなかったからクラスでもひとりで……。なので次第に学校に行かなくなってしまって家でアニメとか観てるようになり……。

O:トーンが重いわ(笑)。

一同:(笑)

綿:その時は家以外では池袋か中野か秋葉原にしかいなかったですね。あとは声優関連のイベントとかコミケとかには行ってました。

ー綿さんのキャラクターや露出の仕方などは非常に計算されている印象を受けますが、実際何か想定しているイメージのようなものはあるのでしょうか?

O:うーん、直接会ってもらえればわかると思うんですけど、本当にこんな感じなので、ぶっちゃけあんまり世界観とか意識してないんですよ(笑)。
でも、ひとつだけ大切にしているのは、めぐちゃんとファンとの距離感。今会いにいけることを武器としてるアイドルとか、クラスに一人はいるような感じをコンセプトにしているのが流行っているような気がするんですけど、このめぐちゃんはそういうのとは違って本当に学年に一人いるかいないかって感じのわけわからん女の子なんですよ。彼(酒本氏)を通せば話せるんだけど、普段直接会話することはない、みたいな。
そういう距離感を一番大事にしてて。だから突き放しているワケでもないんですよ。話しかければ返してくれる。で、そういう距離感を今のところネットでしか繋がりのない状態でどう実現しているかっていうと、例えばめぐちゃんに僕がずっと言っているのは、「Twitterでリプライ貰ったらちゃんと返しなよ」っていうことなんですけど、そしたら本当にめぐちゃん返してるんですよね。だからそういうどこかで繋がれているけど、何かやっぱり手が届かない不思議な感じもある……っていうか。それだけですね。

ーなるほど。では、一番最初に発表された「災難だわ」の制作のプロセスはどのような感じだったのでしょうか?

酒本:最初はすごい探りを入れてみたりしてました。色々なタイプの曲を歌ってもらったりレコーディングしたりして、「これは何かちがうなぁ」とか、逆に「これは良いんじゃないか?」っていうのを繰り返して。それこそ彼女に出会う前に作ってた曲とかを引っ張りだしてきたりもして、とにかくめぐちゃんに色々なモノをぶつけていってOBKRくんと一緒にしっくりくるモノを探していった……って感じで、一番最初にできたのが「災難だわ」です。

ー綿さんは最初に出来上がったその曲を聴いてどう思いましたか?

綿:うーん…。「変なのー」って感じ。

O:あのー今10曲入りのアルバム録ってるんですけど、その中で「災難だわ」が一番嫌いって言われましたからね。

一同:(笑)

O:何かキーが低いとか歌いづらいとか、歌詞も理解しにくいし、みたいな。

酒本:歌うの難しいよね、早口だし(笑)。

O:そう、RHYMESTERよりも早口(笑)。

ーこの度リリースされるアルバム制作時も、基本的には同じようなプロセスで?

酒本:うーん、すごい微妙なところなんですよね。例えば「モンキージョージ」でいえば、「災難だわ」を作っている途中に嫌になって、その場で何となく打ち込んだラフな骨組みを聴かせたら、彼(OBKR)が「いいねぇ!」ってノってきて、その時点ではまだメロも歌詞もついてなかったんですけど、そこから彼がメロと歌詞を同時に作り出して……って感じで。基本的に彼はメロを歌いながら歌詞を作るんですよ。

O:作曲の種は僕は一切作らないっす。ぶっちゃけコードもよくわからんす(笑)。
彼が種を作って、僕がそれを聴いてメロと歌詞を同時に考えて、「あ、こんな感じか!」っていう化学反応があった時に初めて曲が見えてくるような気がして。だから僕はあんまり作曲してるイメージがないんですよね。どっちかっていうと曲の土台にふりかけかけてるくらいのイメージで。
実は彼(酒本氏)は“めぐちゃんより引き蘢りなんじゃないか?”って思うくらい、日の目を見ることなくずっと曲を作ってるような人なんですよ。割と芸術家タイプというか。だからそういう種を腐るほど持ってるんです。

ー綿さんが実際に歌入れをしてみて、曲がガラっと変わったりすることなどはないのでしょうか?

酒本:ほとんどないよね。最初はキーの確認が必須だったけど、最近はほとんどわかってきたので、その辺も含めて最初の段階で詰めちゃうので。

O:うん。何か本当は歌入れてから色々とイジるのが普通なんだと思うんですけど、僕らの作る曲と彼女の持ってる雰囲気っていうのが最近超マッチするようになってきてて、最初は「これ全然合わないね」っていうのもあったんですけど、今はほっとんどないんです。
彼女の声はすごい独特で、ちょっとざらつきがあるので、それが出ないようにメロの部分を意識して工夫したり……っていうのはありますけどね。
ホント、良いチームになってきたんだと思います。

ーそのチーム=Tokyo RecordingsTwitterアカウントでは、度々綿さんのことを“J-Pop”として語っていますよね。いわゆる最近の“J-Pop”に対して、何か思うことがあるのでしょうか?

O:(綿さんに向かって)何かないっすか、今のJ-Popに対して。

綿:何もないっすねー。

O:そ、そっすか(笑)。
……うーん、何かガラパゴスな感じはしますよね。今世界的には音数の少ないサウンドが流行る傾向にあるような気がするんです。でも日本だけは逆に音数ブワーって足して足してっていう感じの、割とオタク的なものが流行ってるように思います。バンドでもハイトーン・ボイスでBPM160くらいの速いやつとか、とにかく場面展開を早めたアイドル・ソングとか。別にそれはそれで良いんですけど、何か奇を衒っているというか、とりあえず目立ったもん勝ちみたいな雰囲気があるかなって。

ーだから、自分たちはポップの王道でいたい、と?

O:そうですね。僕らのやっていることって、今言ったようなアーティストとかとはちょっと違うなって思うんですよね。あんま音数多くないけど、それでちゃんと聴かせられるっていう。でも、それをあえて“J-Pop”って括ることによって、「J-Popにもこういうものがあるんだぜ」っていう風に提示したいっていうのはありますね。

ー「モンキージョージ」は古き良き昭和歌謡曲的な雰囲気を感じるのですが、そういった時代を意識したりはしますか?

酒本:実は昭和歌謡とか全然意識したことなくて、他人言われて気付いたくらいなんですよね。でも、確かにあの時代の歌謡曲ってジャズとかシャンソンの影響下にあったり、たぶんまだ日本独自の進化を遂げる前で、海外のサウンドに憧れていた時代だったと思うんですけど、そういう部分で意識していないけど似ちゃうのかなっていう気はします。

ーその「モンキージョージ」は歌詞もとても秀逸で、どこか強いメッセージ性を感じさせますよね。何か作詞においてイメージしていることはありますか?

O:まず、疑問投げかけ系の芸術的な歌詞はオレ、嫌いなんですよ。投げっぱであとは自分で考えてみい、みたいな。で、嫌なものを「嫌だ」ってストレートに言うのも嫌いなんですよ。ユーモアたっぷりに言いたい。それは常に考えてますね。だから「災難だわ」でも必ず結論が出てるんですよ。

ー確かに、言い切っていますよね。

O:そう。「〜〜〜でしょ」って。芸術で人を離すなっていうのはオレのポリシーみたいなモノなので。あとは英語で歌ってたので、語尾の母音を合わせるっていうのもなんとなく意識しています。英詩で考えながら、後で日本語にするとかっていうやり方もあります。あとはやっぱりユーモア。ユーモアが一番大事。

ー今回アルバム制作に際して、綿さん自身にヒアリングを行ったそうですが、それはどのような形で?

O:ふたりきりで会う機会が何回かあって。オレ、彼女のこと何にも知らないんすよ。ぶっちゃけ今でも謎なんですけど(笑)。
だから「高校のときどんな感じだったの? どんなこと考えてたの?」とか、「家族はどんな感じなの?」とか、「友達本当にいらないの?」とかガンガン質問してみて、そこで返ってきた言葉から「これ良いな」って思ったモノをピックアップする形で。あと、めぐちゃんの口癖は「ほんっとに意味わからない」っていうのなんですけど(笑)。

酒本:「おぶっち本当に意味わからない」っていつも言うよね(笑)。

O:そう。そこで「なんで意味わからないんだろうな」っていうのを考えたりして、実は今回「わからない」っていう結論の曲を書いたんですよ。「いろいろ考えたんだけど、わからなかった」っていう。
だから彼女自身が歌詞を書いたわけでは決してないですけど、僕がひとりで書いたっていう気もしないんですよね。彼女の言葉を借りたり想像したりして書いていったっていう。

ーそうして完成した歌詞を、綿さんは読んでみてどう感じますか?

綿:え……、昨日も言ったんですけど、「凄いね」って。

O:褒められちゃった(笑)。

ー共感とかは?

綿:あ、それはわからないんですけど(笑)。

O:結構カツカツな進行だったので、意味を説明したりとかっていう機会があまりなかったのは確かですね。まぁ本当はしっかり自分で噛み砕いてから歌うべきなのかもしれないんですけど、例えば「災難だわ」の詩で「柔らかい卵になるより壁壊しちゃえば仲良くなんでしょ」ってあるんですけど、あれって西ドイツのベルリンの壁の崩壊と、エルサレムで村上春樹が行った「壁と卵」っていう有名なスピーチのふたつを引き合いに出してるんですよ。壁をシステム、卵は人を表してて、卵は壁に投げつけられればペチャって割れちゃうけど、それでも私は卵側に立つっていう。でも、彼女が生まれたのってベルリンの壁の崩壊後だし、「そんなのどうでも良いでしょ」みたいな。「壁壊したら仲良くなるんでしょ」みたいな。実は深い意味があるんですけど、それをあえてシリアスには歌わない。

酒本:逆に100%その感じで歌われたらオレらが困るよね(笑)。

O:そうそう。やっぱりユーモアが大事。今回のアルバムは割とハッピーっちゃハッピーなんだけど、ちゃんと全体を通してストーリーがあるし、よく読み込まないとわからない情景描写とかもあるんですよ。そういうのは何か解読班に研究されたりとかしたいですね。サウンドはもちろんだけど歌詞もかなり凝ったので、是非とも注目してほしいです。まぁN.O.R.K.の曲も実はちゃんと考えて作ってるんですけどね。英詩だからみんなあんまり読んでないでしょ(笑)。

ー今回のアルバムは酒本さん作詞の曲も収録されているんですよね。

酒本:そうですね。彼の作るカッチリとした詩とは違ってちょっと抽象的かもしれません。そういうのがアルバムに少しあったらアクセントになるというか、深みが増すかなって。あともう一曲あるんですけど、それはOBKRくんの真似をして英語っぽい感じから日本語に変換するっていうのをやってみたら、「これでいこう」ってなって。何か意図したものがあったというよりかは、自然な流れで僕が作詞したっていう感じですね。

ーでは、話をイベントの方に持っていきたいのですが、11/9のSPIN.DISCOVERY -VOL.02-でのN.O.R.K.のライブは、フルバンド・セットという貴重な機会となりますよね。

O:そうですね。でもその前に11/9以降、色々なライブの予定が入ってたんですけど全部キャンセルしたんですよ。楽曲制作も進めてるので、たぶん年内は最後のライブになるだろうし、それ以降も当分ライブはやらなくなるかもです。なので、この機会に是非。

ー一方綿さんは、“○○○を持ち込んで○○○○でライブをする”という話をチラッとお聞きしましたが、実際どうでしょう?

O:どうなんですか? ちなみにオレは全く想像がつかん(笑)。

綿:う〜ん。人とかあまり好きじゃないんで……自分が普段一番落ち着くようなスペースで、落ち着く格好で歌ったら……まぁ、なんか変にカッコつけるより、良いかなって。ゆるーくできれば、と。

ーちなみに、今まで人前に立つ機会のようなものは?

綿:なくはないんですけど、それは好き好んでとかではなくて、義務感というか使命感みたいなモノでやっていたので……。

ー以前のその義務感でやっていたモノと違って、今この3人でやっている活動はやはり楽しいからやっているという感じでしょうか?

綿:……やっぱり……うん……、楽しいですよ。何かよくわからないまま今までやってきて、色々なところで取り上げられたりとかして、この前レコーディングした時も「すごいね」って言ってくれたりしたんですよ。このふたりもだし、制作に関わってくれた他の人とかも。でも私はあまりそういうのを意識したくなくて。このわけのわからないままやっていきたいっていうのがあるんで……まぁ、今後もゆるくやっていきたいですね。楽しんで、今のままで。

O:ですって(笑)。

ーおふたりに出会ってから綿さんは変わったと思いますか?

O:ご覧の通り彼女は人に対しての壁がすごく厚くて、何事に対しても引っ込みがちなんですよ。でも、例えばアニメとかに対する情報感度とかはすごく高くて、普通に中野とか池袋とかひとりで行くんです。モチベーション主導型というか、要はモチベーションが全てなんですよ。たぶん学校行ってなかったっていうのも、モチベーションが上がらなかったからっていうだけなんですよね。でも、この前レコーディングした時に、その日は2曲だけの予定だったんですけど、自分から「もう1曲録っちゃおうよ」みたいなことを言ってきて。まぁ早く終わらせたいとか、もう一回スタジオまで来たくないっていうのもあったかもしれないんですけど、今までだったら絶対あり得なかった発言なんです。だから、これは少し変わったのかな、と。打ち解けたからこそ自分から何かを変えていこうっていうのもあるのかなって。まぁ、実際はわからないですけど(笑)。

ーでは、今後の目標をそれぞれお聞かせください。

綿:うーん……逃げないこと。

O:ハッハッハ!
良いねー! 歌詞書きたいわ〜。

酒本:これは次のアルバムのテーマじゃないですか(笑)。

O:ちょっと感動しました(笑)。

ーイベントに来てくれる方たちへのメッセージも何か頂けたりしますか?

綿:う〜ん……。

O:何かないの? 「アルバム買ってね!」とか。

綿:……まぁ、買いたい人は買ってください。

酒本:酷いな(笑)。

O:物販やらせますんで。立たせます。

綿:嫌になったら逃げます。ライブは逃げないけど(笑)。

==

Spincoaster

Spincoaster

Spincoaster(スピンコースター)は、独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介する音楽情報メディアです。