SPIN.DISCOVERY -VOL.02-

SPIN.DISCOVERY -VOL.02- アーティスト対談LUCKY TAPES×藤澤 慎介(THISTIME RECRODS)

洋楽レーベルオーナーと洋楽をルーツに持つバンドの対談!アーティストは必見の内容かも!?

元Slow BeachのKai Takahashiを中心に2014年に結成した3人組バンド“LUCKY TAPES”『DaftpunkのGet Luckyへの日本からの回答!』と紹介させていただいたが、そのサウンドは一聴すると日本の若手のバンドとは思えないほど、ブラックであり、ファンキーであり、セクシーである。Kai TakahashiのRootscoasterをご覧いただければバンドの音楽性はすぐに理解できるだろう。そして今回の対談相手にはイベントで初来日が実現した、HEY ANNAを発掘した海外のインディーバンドを取り扱う音楽レーベル『THISTIME RECORDS』社長の藤澤慎介氏。洋楽レーベルオーナーから見るTucky Tapesの音楽性やHey Annaに纏わるエピソード、海外のインディーアーティストの現状、バンドとレーベルのあり方など、この両者だからできるテーマで大いに語り合っていただいた。対談は脱線に脱線を繰り返し、90分にも渡ったため今回の当初予定してたメインのテーマで1本。そして偶発的に生まれたもうひとつのテーマでもう1本記事を公開します!(Interviewer:Nojima)

–まずは、LUCKY TAPESの結成の経緯を教えて下さい。

濱田:3人は元々Slow Beachというバンドを組んでいたんですが、メンバーの進路的な理由で解散することになりました。その後、Michael Jacksonの「Love Never Felt So Good」みたいな、もっとブラックミュージック寄りで踊れて間口の広い音楽をやりたい!」と高橋と田口が言っていて。5月くらいにまた集まって活動がスタートしました。

–バンド名の由来は?
高橋:文字の字面とか雰因気先行ですね。オシャレな単語をたくさん挙げて決めました。後付ですが、聴いた人が幸運になれる音楽(テープ)を作っていきたいっていう意味もあります。

–高橋さんはRootscoasterでTahiti80やAlicia Keysを紹介してもらいましたが、みなさんのルーツは?
濱田:僕の場合はグランジ・ハードロック・スクリームを聴いてたんですけど、スティーブガッドというドラマーに出会って、そこからどんどんジャズとかモータウンとかフュージョンとかブラックよりの音楽をどんどん聴くようになりました。

田口:僕は親父がベーシストで、ちっちゃいころから車でスイング・アウト・シスターズとかインコグニートとかそいうアシッドジャズ系を聴かせれていて。でもベース始めるまでは全然気づかなったですけどね。小学校の時にラルクのTetsuに憧れて。中学入ってレッチリとかインコグニートとかをまた聴き始めたり…どんどんブラックミュージックの方によって行って。

藤澤:インコグニート…痺れるぅ(笑)

高橋:音楽面では一番彼が引っ張ってくれていますね。

藤澤:だよねぇ!今、挙げたやつ全部だよねぇ!って感じ(笑)あの時のメロウな時のエブリシング・バット・ザ・ガール的上品さやTahiti80+チルウェイヴみたいな要素を感じました。

–どこか、ヨーロッパ感もありますよね。

藤澤:あるねぇ。

メンバー一同;本当ですか!?初めて言われました。イギリスとかですか??

–いや、どっちかというとフランスとかですね。音楽に品がありますよね。

高橋:確かに、フランスっぽいとは言われたことがありますね。

藤澤:ダフト・パンクのテンション感というか。

–フレンチ・ポップのエッセンスを感じますね。

藤澤:Slow Beachの時よりも歌が見えていて、そこにちゃんとノリがあるから上品に聴こえるのかも。チル・ウェイヴの影響下にあるバンドは歌心が無さ過ぎるなと。Slow Beachを最初聴いた時もぶっちゃそう思ったんですけど、LUCKY TAPESの音源聴いた時に『歌った…!』ってけっこう感動しました。この感覚が伝わるのかわかりませんが(笑)そもそも歌が少ないバンドも多いけど、Washed OutしかりToro Y Moiしかり、いかに深くリヴァーブがかかっていようとそこが軸だったわけで。

高橋:どこかのメディアでもボーカルが洗練されたって書いてくれていました。Spincoasterでしたったけ?

ウチのHosakaが書いてましたね(笑)

藤澤:そう「キター!」って感じで。抜けようとしている奴らが現れたなと。

濱田:その、抜けようとしているって感覚は一番近いですね。僕はインディーっていう言葉が本当に嫌なんですよ。

田口:そうですね。音楽はブラックですけど、あくまでも歌はポップで聴きやすいものにしたいっていうのがあって。

藤澤:多分それ、普通はできないんですよ。ルーツがないと、あの音に歌を合わせられないなぁと。単純に「もやもや〜」とした音像のトラックは大体できるんですよ。真似すればいいから。+αのエッセンスが出てきた時に歌にならない。そういう(歌心のある)洋楽を扱っているから、日本の薄い感じがすごく辛くて。しかもそういうバンドって居場所ないじゃないですか?ウェブやアー写にしてもふわっとオシャレではあるけど、やっぱわかりにくいし、どこかツンとしてるし(笑)このままだとこのシーンほんとキツイかなと思っていた時に、LUCKY TAPESみたいなバンドが出てきて嬉しかったです。

–作詞作曲は高橋さんが手がけてるんですよね??

田口:最初はそうだったんですけど、最近はスタジオでセッションみたいな感じで曲をつくることが多くなりました。今日もさっきまでスタジオでやってきたんですけど、2、3曲生まれたよね?

藤澤:すごいな(笑)

高橋:スタジオで録音したやつを持ち帰って、メロディを練るっていうやり方を今はしています。

濱田:けっこうこの作り方はやりやすそうやんね。

藤澤:確かにLUCKY TAPESの音源って何からスタートさせたのかなと思いましたね。

田口:あれもスタジオだよね。

濱田:そうそう。今はサポートのメンバーもけっこうスタジオに入ってイメージしやすくしてくれるんですけど、最初、出音も3人でやろうとしていて。ギターもなしで。ベン・フォールズ的な。でもすぐに「これ無理やな!」って言って諦めました(笑)

高橋:ずっとセッションから曲を作るっていうのをやりたくて。宅録でもやれると言えばやれるんですけど、メンバーの感性を混ぜながら曲を作るのが面白くて。それが最近実現できるようになったって感じです。

藤澤:バックグラウンドとスキルが揃ってるからできることですよね。

–では、藤澤さんにお伺いします。THIS TIME RECORDS の立ち上げの経緯を教えて下さい。
僕は90年台のころが高校・大学生だったんですけど、その時イギリス・アメリカでインディーレーベルがいっきに台頭し始めていたんですよ。サブ・ポップ、クリエイションレコーズ(Oasis/Primal Scream/My Bloody Valentine等)とか、アメリカのマージ(Arcade Fire/Dinosaur Jr/Neutral Milk Hotel等)とか人気になったレーベルを見てたから、漠然とだけどいつか自分もレーベルやりたくて。で、大学卒業してからもバンドを続けならがどうしよーかなと考えていたところ今一緒に(レーベルを)やっている奴と出会い、回りのバンドがリリースしたいけど、どうすりゃいいんだと。自分たちも周りのバンドも英詞で洋楽っぽいギターポップやってたし、人気もなかったから「じゃあ自分たちでやろうか」ってぼろアパート借りて事務所を立ち上げたんです。その後、何本かやってたら、次第に外国のバンドからオファーがすごい来るようになって。

田口:日本のライセンスをってことですか?

藤澤:いや、ライセンスかどうかも分かんない。「すげぇ吹っかけられているけど、どうしょうか」みたいな感じで(笑)元ティーンエイジ・ファンクラブのドラムからいきなり連絡があって。何も知らず、英語も喋れず(笑)2人でやっていたんですけど、1人はスコットランドまで契約しに行きました。

田口:今だったらネットで契約もできちゃいますもんね。

–ちなみにそれっていつ頃の話ですか?
藤澤:2004年くらいから交渉初めて結局1年位話し合いしていたような(笑)なので洋楽リリースを初めてやったのは2005年です。そこから点と点が色々と繋がって次々と現実的なオファーが来て今では洋楽レーベルと言われるようになりました。

–国内盤を作ってるってことですか?
藤澤:いや、もう今ではてんでバラバラですね。昔だったらうちのようなスモール・レーベルでも契約書ガチガチの日本盤とか、輸入盤を日本で流通させるとかが普通でしたが、今はそんな感じではなく。むしろ海外アーティストと一緒に作ってお互い利益を分け合うみたいなテンションです。そもそも、もう海外の若手はCDを作らないですからね。SpotifyかBandcamp、Soundcloudでリリースして終わり。「何?盤作ってくれんの?ラッキー!」みたいな(笑)

–Hey Annaもそうですよね。
藤澤:そうそう、だからHey AnnaはアメリカではCD出してないんですよ。

–海外のアーティストもやっぱりCDは作りたいものなんですかね?
藤澤:ライブの物販ではCDが売れるみたいだから、やっぱりやりたいみたいです。

高橋:日本で作ったCDを向こうに送って、現地のレコードショップとかでも売ってるんですか?

藤澤:いや、もう向こうはレコードショップ自体がない(笑)ショップでは売れないし、基本はライブの会場ですね。

–なるほど。ではこの流れでHey Anna発掘の経緯とかリリースのエピソードも教えて下さい。

藤澤:僕、多分死ぬほど音楽を聴いているんですよ。そして無名なバンドの音源を聴くことがほとんどです。毎日すごい数のメールが送れられてくるのもありますが……

–そんなにメール来るんですか??

藤澤:みんなガッツが半端ないですからね。例えばブルックリンで「Hey Annaが契約しました」なんてニュースが流れるとほんとブルックリンの色んなバンドから一斉に連絡がくるんです。『おい、Hey Annaが日本から出すらしいぜ!』って、ですぐにメアドとか共有されて。「オレのプライバシーゼロかよ!」みたいな(笑)

一同:爆笑

藤澤:色々聞いていた中で、Hey Annaはジャケットとかあまりパッとしなかったんですけど、単純に「Dance Until Three」って曲が抜群に良くて。でもまだまだこれからのバンドかなーってちょっと話だけして「一緒にやれたらいいねー」くらいで終わろうと思ったんだけど、やっぱりボーカルのエリンちゃんが可愛くて(笑)

一同:笑

藤澤:タイミングが合わなかったんで、まだ会えていないんですけど、ネットでミーティングを重ねて。「出す?」って言ってみたら「喜んで!」って(笑)で、「どんくらいこだわっていいの?」って言って「好きにこだわっていいよ」って言ったらめちゃくちゃ喜んでた。

–ジャケットのデザインとかも一緒に?

藤澤:そうそう。けっこうみんなで作ってるっぽくて、すげぇこだわりがあるから「ちょっと待って!」って言って、何パターンも出てきて(笑)「どうしよっかなーコレ」みたいな。向こうもフィジカル作ったことないから手順とかも説明して。

HeyAnna001

–現地でフィジカルを作るって、発想はもうないんですか?

藤澤:まずCDを作るって考えはないみたいですね。結果CDを作ることはあっても。レーベルから声掛かるのを待ってるって人もいないみたい。

田口:データのみで満足してるって感じなんですかね?

藤澤:うん、あと今はLPで出したいってバンドは多い。デジタルとLPだけでやりたいって感じ。Hey Annaの話に戻るけど、その前にもたまたまニュージャージーのBoxed Wineというバンドのデジタルでリリースしていた曲をコンパイルした編集盤を出していたんです。そのバンドと彼女たちが知り合いだったのでCDを作るって話は比較的スムーズに進みました。その時、EPが2枚あってあと新曲も何曲か作ってるって言っていたから「じゃあアルバムのボリュームになってるからやろうか」って。そしたら、ちょうど発売時期がHAIMと被ったんですよ。で、三姉妹祭りになったんです(笑)被せ被せで(笑)

そういえば、あんまり3姉妹を推したせいかTwitterで三姉妹研究科みたいなアカウントにフォローされました。あれ、なんだったんだろう…(笑)

–レーベルの話になったのでLUCKY TAPESにお伺いしたいのですが、今、RALLYE LABELからリリースしているのはSlow Beachからの流れだと思うんですが、なぜ当時、ラリーに決まったのですか?

高橋:ラリーはKYTEとか扱ってるアーティストが元々3人共好きで。ライブも行ったよね?

田口:たまたまですけどね。当時はあんまり知り合いじゃなかったんですけど。

濱田:僕に関しては、まだ神戸にいましたからね。

高橋:あとはSiNとか宮内優里さんとかリスナー時代からラリー所属のアーティストをチェックしてて。

濱田:僕はYeYeさんが好きでした。

高橋:で、個人的にも気になっているレーベルだったのですが、たまたまラリーのTwitterアカウントにSlow Beachのアカウントをフォローして頂いて。フォローされるとDM送れるじゃないですか?(笑)これは!と思い、猛アタックしました。そしたらデモが聴きたいとのことだったので、新曲デモを送ったら「うちから出そうよ」という流れになりました。

濱田:社長の人柄がすごいいいですよね。仏のような(笑)

–藤澤さんがビジネスとしてバンドを選ぶ基準は何ですか?
音楽が好きっていうのはもちろんですが、バンドとして答えが出ているやつですね。バンドの人生が統一されてないバンドは、絶対に数年後にしっちゃかめっちゃかになるんですよ。「おれはこのバンドで好きな音楽が追求できればそれでいい」ってやつと「音楽性を変えてでもこのバンドで売れたい」ってやつが一緒にやってると、こっちとしてもどう付き合っていいか分かんないですよね。誰でも考えが変わって当たり前だと思うんです。でも意外と腹を割って話をしないんですよ。。「いつか売れたらいいねー」くらいしか話してない(笑)昔は何百万もかけて、スタジオ籠もって、盤作って、すぐ解散みたいな話はそこらじゅうにありました。なので、バンドとして答えが出ていることは大事ですね。個々の人生を「理想のバンド・サクセスストーリー」みたいな縛りで統一することのほうがそもそも無理だと思うんです。だから最近はそういう話をしない若いバンド見るとすぐ燃料投下したくなります(笑)「お前どう思ってんだよ?」とか「あれ?お前この前売れたいとか言ってなかった?」とか(笑) 自分がバンドやっている時に何も考えていのかったのでなおさら。めちゃくちゃ余計なおせっかいおじさんですね。

田口:監督みたいですね(笑)

藤澤:やっぱりいつまでたってもリスナー気質で音楽が好きだから、ずっと聴いていたいんですよ。そのバンドの曲を。だからそういうバンドと出逢うと導線を用意したくなる(笑)

−−ではLUCKY TAPESに聞きますが、日本のバンドも洋楽を全くルーツに持たないバンドが出てくるようになりました。そういうバンドに対して思うことや、LUCKY TAPESとしてどう戦っていくかみたいな考えはありますか?

藤澤:いきなり燃料投下するねぇ(笑)

濱田:聴いて明らかにルーツがない人っていますよね?あれ、どないして作ってるんかな?とは思いますけど。天から降ってきてんるか?みたいな(笑)でもそんなに意識はしないですね。

高橋:自分たちはそういうところに参入しようとか、戦うっていう感覚はないですね。自分たちが好きな音を鳴らすことの方が大事だと思います。

濱田:むしろ「こっちに引っ張り込むぞ!」って気持ちはあります。今の自分達のいるシーンを大きくして行きたいです。

–シーンを大きくしようと思ったら一組ではできないと思うんですけど、同世代でシンパシーを感じるバンドはありますか?

濱田:完全にYkiki Beatですね。あとYoggy New Wavesとか。

藤澤:Ykiki良いよねー。あのシングルで完全に化けた。こんなに歌えるんだ!って(笑)

−−今は音楽性がブラック・ミュージック主体ですが今後は?
濱田:あんまり、一つのジャンルを突き詰めると言うよりは、色んな音楽をやりたいと思っています。入り口を狭く設けず、幅広くやりたいと思っています。あと、人ができることはしなくていいと思いますね。

田口:そうでですね。その時自分たちが面白いと思った方向に行きたい。

高橋:流行りにのりたいとかはあまりないですね。

−−バンドとして直近の目標はありますか?

濱田:来年にワンマンしたいですね。

田口:うん、ワンマンしたい。

高橋:え、ワンマンしたいの!?初めて聞いた(笑)

濱田:さっき2人でその話してた。

高橋:僕はワンマンは別に…

藤澤:ブレブレっす。ブレブレ地獄っす(笑)

高橋:あ、でもやっぱりフジロックには出たいです!これはみんなそうだと思います!(笑)

–それでは最後に11月9日に向けて何かありますか?

高橋:Hey Annaがとにかく楽しみです。日本でリリースする前からチェックしていたバンドなんで!

(ここで話がまとまらず、日本と海外の音楽メディアの話になっていきます…!)
特別対談:LUCKY TAPES × 藤澤 慎介(THISTIME RECRODS)『海外と日本の音楽メディア』

Hey Annaの来日記念盤はタワーレコード各店で発売中です!

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