Rina Sawayama

Cyber Stockholm Syndrome (Nite Jewel Remix)

Rina Sawayama / Cyber Stockholm Syndrome (Nite Jewel Remix)
あの衝撃作が表情を変える。動物化するサイバーパンクスたちよ、このリミックスで踊るか、踊らないか、選べ

ロンドン在住のモデル兼アーティスト、Rina Sawayamaが今年3月にリリースしていた新曲「Cyber Stockholm Syndrome」のリミックスが公開されました。こちらを手掛けたのはLAを拠点に活動するプロデューサー・Nite Jewel。ゆったりとした極上のエレクトロニックR&Bな原曲を、ハウス調のダンス・ナンバーへと見事に変貌させています。

オリジナル・バージョンでは歌詞もさることながら、その楽曲の調子にも、インターネットやデジタルというものに対する期待と不安が表れていました。サイバーパンク的世界観に基づき、葛藤し苦悩するその一方で、陶酔するような、絶頂を迎えるような気持ち良さがありました――言うなれば、思惟・思索の快楽に、人間的な欲望に。
それに対して、今回のリミックスでは動物的な欲動が感じられます。理性や心情の複雑美というよりもむしろ、突き動かされるような律動があります。ただ、個人的には一聴した時に、Nite Jewelがこのようなアレンジをしたことに多少の違和感がありました。

でも、なんとなくその意味が分かったような。個人の見解ながら、原曲とリミックスとで、インターネットにおけるパラダイムシフトが表現されているように思います。
現実世界というオフラインの脅威に対して、(「電脳の入り組んだ回路の中、迷子として途方に暮れる」のではなく)「迷路のような城塞を以って各々のコアを匿う」ことが出来る、その自由を得たのがオリジナル。しかし、オルタナティヴとして在ったオンラインの世界にさえ「支配者」が出現し、それが差し出す、極めてシンプルな仕組み(=4つ打ち)によって私たちの挙動はデザインされている――つまり偽りの自由。リミックスでは敢えて、そうしたことを示唆しているのかもしれません。

……なんて、深読みし過ぎですね。ただ、Rinaの言う「デジタルの力を借りて自由になれる」人々がいる傍ら、枠に囚われ動物化してゆく人々も存在する、という2極化進行の可能性は確かに指摘できます。またその一方で、動物的なものを一概に悪とするのもどうなのかという見方もあります。
これらを音楽の話に置き換え、「動物としての人間観」を考えてみると、「非・ダンスミュージックで如何に踊るか」ということがひとつの解になるのではないでしょうか。

UKの名門・ケンブリッジ大学にて政治学を学んだRina Sawayamaのインテリジェンスは、彼女を表現者たらしめ、その表現物を成立させる要素のひとつである気がします。文化単体で消費するのではなく社会の文脈と絡めて考察してみると、音楽だけでなく、映画や写真、ファッションなども同様に、さらにおもしろ味が増すのでしょうね。文化を商品として扱う、マス・カルチャーに対してのアンチテーゼを前提として。
そして、あの身体的なリズムを通してNite Jewelが上記のような回答をしているとすれば、物凄いなと思います。それと、なんとも投げやりな曲の終わらせ方にはグッと来ました。

最後に、原曲・リミックス共に収録された12inch EPが、この夏に〈The Vinyl Factory〉からリリースされるようです。これまでフィジカルでのリリースはありませんでしたので、リスナーには待望の! という作品となるのではないでしょうか。上のMVは、同EPから「Tunnel Vision」です。こちらも是非チェックしてみて下さい。


【リリース情報】

Rina Sawayama 『Cyber Stockholm Syndrome』
Release Date:Summer 2017
Label:The Vinyl Factory
Tracklist:
1. Cyber Stockholm Syndrome
2. Tunnel Vision
3. Alterlife
4. Cyber Stockholm Syndrome (Nite Jewel Remix)

ru_kawa

Curator

ru_kawa

内省的で知性美のある音楽を贔屓にしています。が、バイオレントなものも好きです。普段は暗く涼しいところに保管されたい