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Interview / TOKiMONSTA


「私は性別という要素とは関係なく音楽を作っているし、みんなにもそういう要素は気にせずに聴いてもらいたいわ」ーTOKiMONSTA インタヴュー

2014.11.28

2008年に〈Warp〉からFlying Lotusの『Los Angels』がリリースされてから、LAビートシーンは、ここ日本はもちろん世界中から急速に注目されるようになり、Flying LotusとLAの名物パーティー〈Low End Theory〉の界隈は海を越えて、Kode9の〈Hyperdub〉やUKのベース・ミュージックとも共振した。『Los Angels』のリリースと同年に〈Brainfeeder〉を設立して以降、Ras G、Samiyam、Daedelusといった朋友と才能ある若手を集め、兄弟的存在のThundercatや、彼の作品ではお馴染みのNiki Randa、Laura Darlington(Daedalusの妻)といったLAの仲間たちと共にビート・ミュージックを更新していきながら、彼はLAのシーンの中心に腰を据えながら、徐々に自身のテリトリーを世界へと広げていった。『Los Angels』のリリースから6年たった今では、Herbie Hancokも、Thom Yorkeも、Kendrick Lamarも彼のテリトリーへと引き込まれている。その6年の間に、Ras Gが「〈Low End Theory〉を湧かせてる凄い女性ビート・メイカーがいる」とFlying Lotusに紹介したことをきっかけに、2011年に〈Brainfeeder〉に仲間入りし、“LAビートシーンの紅一点”とこれまた世界から注目されたのがTOKiMONSTAだった。
注目されてからの彼女は、故郷のLAを拠点にしながらも、フットワーク軽く動き回ってライヴとコラボレーションを重ね、LAビート・シーンを外のシーンへと輸出しながら、自身の活動を押し進めてきた。2012年には坂本龍一とShing02と大飯原発再稼働反対トラックを作り、DiploやSkrillexのツアーに帯同していた。2013年にはDeadmau5やKaskadeが名を連ねるEDMレーベル〈Ultra Records〉(もともとはUltra Music Festivalと別だったが、2012年から提携を始めたらしい)から2ndアルバム『Half Shadow』をリリースしている。そして今年は〈Young Art Records〉というセルフ・レーベルをスタートさせ、現在は元Distinny ChildのKelly Rowlandとスタジオに入っているらしい(インタヴュー日より先に知っていたら制作の経過を聞きたかった)。
TOKiMONSTAのフットワークの軽さと、ネットワークの広さは、彼女が自身の作品に呼んだアーティストを見てもわかる。レジェンドMCのKool Keithも、Bonoboとの作品で知られるAndreya Trianaも、今年Machinedrumをプロデューサーに迎えたアルバムをリリースしたJesse Boykins Ⅲもいる。The RootsのQuestloveが絶賛しているという新鋭Anderson Paakも見逃せない。
それでも彼女は依然として〈Low End Theory〉らしい実験性を失っていない。最新作『Desiderium』では、Aaliyahのサンプルをアブストラクトなビートと共にぐるぐると回し、ピアノをバックにフットワークばりの高速ビート/カットアップを炸裂させている。シンセ・フレーズがゆらめくビート・トラックもある。先日のWWWでのプレイでも惜しみなく披露していた通り、彼女は色々な種類のパンチを持っている。LAビートをネクストステージへと引き上げるのはFlying Lotusだけではない。ますます目が離せなくなってゆく彼女のアーティストとしてのポリシーに迫ってみよう。

TOKiMONSTA Interview

(Interviewer & Header Photo : Hiromi Matsubara, Interpreter : Mike Sunda)

©Dan Wilton/Red Bull Content Pool
©Dan Wilton/Red Bull Content Pool

―以前から、あなたのTwitterの自己紹介欄にある「a maker of booms and blooms.」という一節が素敵だなと思ってました。あれは誰かに言われて? それともあなたの言葉ですか?

うーん……(日本語で)ムズカシイネ~(笑)。「a maker of booms and blooms.」って書いた時に考えていたのは、ブーム(boom)は勢いや迫力があるような少しパワフルなイメージで、ブルーム(bloom)は「花が咲く」っていう意味だから綺麗なイメージ。どちらも備えてたいという想いもあったし、”ブーム”と”ブルーム”って言葉の流れも良かったからそうしたの。

―あなたは2010年にロンドンで開催されたRed Bull Music Academy(以下RBMA)に生徒として参加して、4年後にこうしてレクチャーする側としてRBMAに戻ってきたわけですが、あなたが生徒として参加した時に学んだことはなんでしたか?

人との繋がりかな。卒業してからもRBMA201の時に同級生だった人たちとはずっと仲良いし、Red Bullの色々なイベントに出演する機会をもらえるし……、アルバムのリリースパーティー含め本当たくさんのライヴでRed Bullと一緒に仕事させてもらってるの。今回のように、私のRBMAでの経験を参加生に伝えることができる機会がもらえることも、また新たな繫がりが生まれるきっかけになるから嬉しいわ。

―RBMAの時はロンドンに、ツアーの時には世界各地に滞在すると思うのですが、今も出身地であるカリフォルニアのLAを拠点に活動している理由は何ですか?

やっぱりLAは音楽の面でも自分の生まれ育った土地だから、あらゆることに慣れてるし、天気も良いしね。(再び日本語で)オテンキハイイヨ~(笑)。ツアーや音楽活動の一環でいろいろな国に行けるチャンスがあるから、全然それで満足なの。結局、ツアーが終わった後は自分の慣れている場所に帰るのが良いと思う。

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©Yasuharu Sasaki / Red Bull Content Pool

―〈Low End Theory〉や〈Brainfeeder〉などの、LAのビート・シーンは男性アーティストの方が多いので、あなたは女性ビートメーカーとして注目されることもあると思うのですが、あなたは自分の音楽と女性らしさ(feminity)の関係についてどう考えていますか?

私は意図的に自分の音楽を女性らしくしようとしたことはないわ。自分から意識してやらなくても、私は明らかに男性ではないから、自然と女性っぽくなると思うの。でも、私と似た雰囲気の音楽の人もいるし、例えば“女性らしさ”を“センシティヴ”と捉えるとしたら、男性のトラックメーカーの中には私よりセンシティヴな音楽を作っている人もいるから、“女性だ”、“男性だ”って取り立てて言うことではないと思う。誰がそういう音楽を作っても良いと思うしね。私は性別という要素とは関係なく音楽を作っているし、みんなにもそういう要素は気にせずに聴いてもらいたいわ。

―では、音楽ではない部分、例えばファッションやライフスタイルなどの視覚的な部分ではいかがですか? あなたのようなオシャレなファッションの女性がシーンにいるということはアイコン性もありますし、LAビート・シーン全体が新たなリスナーを獲得するきっかけにもなると思うのですが。

ははは、どうなのかな(笑)。私自身はそういうものに興味あるわ。私の音楽がある程度の人に認知されるようになってから、みんなが私の外見にも注目するようになったから、今はそういう部分にプレッシャーを感じてるの。今より少し前は、私は音楽を作る人としてしか見られていなかったから、そこまでパーソナルなことは注目されなかったしね。でも音楽を作ったり、DJをするだけじゃなくて、自分のファッションやスタイルといった別の角度から、自分のクリエイティヴな気持ちを表現できるのは面白いことだと思うわ。

―LAには、民族的にも文化的にも様々なバックボーンを持っていて、かつそれを自己の音楽表現のいち要素としているアーティストがたくさんいると思います。あなたはコリアン・アメリカンですが、自身の音楽表現にそういった要素を反映させることはありますか?

ええ、あるわよ。私は伝統的な韓国音楽の要素を音楽制作に活かしてるの。リスナーが気付いているかどうかわからないけど、私の楽曲はアジアの楽器の音を際立たせたものが多いのよ。と同時に、私は東アジアにルーツを持つアメリカ人として、できる限り東アジアの文化の魅力を表現を通して伝えていきたいの。伝統的な文化は特に過小評価されていると思うから、私の持っている文化をしっかり提示しなきゃね。韓国には、韓国の伝統的な楽器を使っているK-POPの楽曲があって、それはクールなアプローチだと思うわ。
前に、伽倻琴(カヤグム)っていう韓国の伝統的な楽器を使って制作をしたことがあるの。使い方をどう説明したらいいかしら……。あれ、三味線ってギターみたいな楽器よね? 琴だっけな……?

―三味線はギターみたいな楽器で、琴は床に置いて弾く楽器ですね(琴を弾くようなジェスチャーをする)。

(僕を指差して)それだわ! 伽倻琴(カヤグム)は琴に似ている楽器なの。

―そうなんですね。では話題を変えます。9月に最新作『Desiderium』のリリースと同時に新しいレーベル〈Young Art Records〉を始動させましたが、あなたはこれまでに〈Brainfeeder〉や〈Ultra Records〉、〈Listen Up〉(Art Union Labelの系列)という日本のレーベルからもリリースをされてますよね。自身の作品をリリースするレーベルを決める際に、何かこだわっていることはありますか?

レーベルに1番求めているのはクリエイティヴ・コントロールかな。レーベルを変えていることに特別な理由はないけど、自分のレーベルを始めたのは、もっと自分のペースで仕事がしたかったから。私は自由にやらせてもらえる方が良いの。色々なレーベルからリリースをしてみて面白いと思ったのは、レーベルごとにフォロワーが異なってくるから、毎回私の作品が異なる形で世に出て、毎回異なるタイプのリスナーに聴いてもらえるっていうことかな。

―どれもレーベルからオファーをもらう方が先だったのですか? 興味があって自分からアプローチをした、ということはあったりしますか?

基本的にはレーベルから話がきて、少し考えてからリアクションをするっていう感じね。でも、前にBlue Daisyとどこから出すか決めずにコラボレーションをしたことがあって、その時は自分たちから〈Black Acre〉に連絡して、リリースをしてもらったわ。もともとBlue Daisyが〈Black Acre〉からEPをリリースをしたことがあったから、その繋がりもあったんだけどね。

LAのRed Bull Studioで行われた『Desiderium』リリースイベントの模様 ©Koury Angelo / Red Bull Content Pool
LAのRed Bull Studioで行われた『Desiderium』リリースイベントの模様
©Koury Angelo / Red Bull Content Pool

―『Desiderium』をデジタルでリリースされましたが、LAにはRas GやMatthewdavidのようにカセットテープのみやヴァイナルのみといった興味深い方法でリリースをするアーティストもいますよね。あなたはリリースのフォーマットに関して何かこだわりはありますか?

『Desiderium』はヴァイナルでもリリースする予定なんだけど、ヴァイナルは作るのに時間がかかるのよ(笑)。私が一番気に入っているのはデジタルとヴァイナルの2つなんだけど、ヴァイナルはもちろん聴いても良いんだけど、触った感じがベスト。デジタルは便利だから好きなの。ヴァイナルは出すまでに本当時間がかかるのよね。多分あと1ヶ月半ぐらいで出せるようになると思うわ。待ってて。


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