INTERVIEW

Nulbarich

想定外の成長を続けるNulbarich。中心人物JQが語る、バンドとしての大きな変化と、見たことのない景色を求め続けるその理由

国内バンド・シーンの盛り上がりが著しい個々数年において、特に昨年飛躍的な活動ぶりをみせたバンドとして、シーンは違えどyahyelやWONKなどと同じく大きな脚光を浴びることとなったNulbarich(ナルバリッチ)。

なにせ1stシングル『Hometown』のリリースが昨年6月ということで、実質この1年ほどの活動の中で”ARABAKI ROCK FEST.17″や”GREENROOM FESTIVAL’17″といった大型フェス〜イベントへの出演を果たし、現場での認知を広げるだけでなく、ラジオやネットでのバズも拡大し続ける一方だ。そして、今年に入ってからは待望の1st EP『Who We Are』をリリースし、11月からはワンマン・ツアー、そして来年には新木場STUDIO COASTでのワンマン公演を発表するなど、明らかにその勢いは衰えるどころかうなぎ登りに上昇し続けている。

そんな規格外、想定外の飛躍を遂げる脅威の新人、Nulbarichの中心人物であるJQにインタビューを敢行。おっとりとした喋り口ながらも、その視線はどこか一点を見据えているような彼の口からは、自身のバンドに対する冷静な分析と、そして静かに燃える野心的なヴィジョンを訊くことができた。

Interview by Takazumi Hosaka


―Nulbarichは昨年6月に1stシングルを、そして10月には1stアルバム『Guess Who?』をリリースし、そしてこの度1st EPとなる『Who We Are』をリリースしました。さらにはその間に各種イベントへも多数出演を果たしてきていますが、この怒涛の1年を改めて振り返ってみると、どのような一年だったと言えるでしょうか?

JQ:僕は元々ずっと家の中で制作しているようなタイプの人間だったので、こんなに外に出たこともなく……。そうですね、体力的にもクリエイティブな面でも、タフになったんじゃないかって思います。あと、ちょっとずつ自分の表現できる場所が増えているのが嬉しいですね。

―多くの人前に立つということ自体も、Nulbarich以前はあまりなかった?

JQ:そうですね、趣味程度でしかやったことがなかったので。それこそNulbarichで初めてライブした時も15人くらいしかいなかったので。それなのに今年頭にはワンマン・ライブに400~500人ぐらいの方が集まってくれたので、やっぱりあれは感動しましたね。
新しいEPも出して、今年も既にフェスとかに出演させてもらってるんですけど、そういう場でも僕らのサウンドに耳を傾けてくれる人の数も増えているので、今後はますます身を引き締めなきゃなって思ってますね。

―この怒涛の1年の中で、Nulbarichとして大きく変わってきたポイントを教えてください。

JQ:元々メンバーとは全員個々に仲が良くて、旧知の仲なんですけど、やっぱりバンド・メンバーとしてここまで密に関わる機会もなかったので、この1年でいうとNulbarichというバンドの密度や強度、もしくはバンド感というものが一番変わったポイントなんじゃないかなって思いますね。

―1stシングルをリリースした頃は、メンバーは流動的という風な説明がされていましたよね。それも現在では徐々に固まってきているのでしょうか?

JQ:元々ベーシックなメンバーはほぼ固定だったんです。今だったら大体8人ぐらいいて、ライブ毎に誰が行くか決めたり、楽曲によってはもっと少なくなったり、逆に多くなったりすることもあって。要は常に全員でステージ上がるわけではないぞっていうことだったんです。

—では、あくまでもバンドの形態には変化はないのですね。楽曲制作に関して、バンド・メンバーは関わっている領域、そして割合というのはどのくらいなのでしょうか?

JQ:作曲っていう部分は大体僕がひとりでやっていて。それを元にメンバーがアレンジをしていくっていうことが多いですね。たたき台を僕が作ってきて、何となくのイメージをみんなに伝えてそこから作り上げていくこともあれば、たたき台をメンバーが壊してくることもあるし。

―メンバーが流動的ということにも繋がるんですけど、ライブに行けば普通に、覆面もなくそのままの姿で演奏されてますが、メディア露出はあくまでもナルバリくんというアイコンが使用されていますよね。それは今後も変える予定もなく?

JQ:元々メンバーを固定しないとか、そういう自由度の高いバンド活動をしていくに当たって、普通のアー写は撮れないよねってところから始まって。何か全員で撮っても大所帯みたいに見えてよくわかんないし、何かそれだったらキャラクター作ろうかってなったのが始まりで、やってみたら何か謎めいた覆面バンドみたいな感じになったんで、そこは「お、ラッキー」みたいな感じもありつつ(笑)。

—例えばJQさんひとりで写るとかっていうのは?

JQ:あんまり考えなかったですね。とりあえず僕らの場合は音楽を聴いてくれればいいかなって思ってるんですよね。何か要望があれば僕は出ますし。

―なるほど。では、今回のEP『Who We Are』についてお訊きしたいのですが、そもそも今回のEPに関してはリリースする話ありきで曲を作っていったのか、溜まっていた曲を出したという感じだったのか、どちらなのでしょうか?

JQ:一応暫定的な目標みたいなのは結構前からあって。ちょうど去年の10月に1st アルバムをリリースして、可能であれば半年に一回くらいのペースでは何かを出したいなって思っていたんです。ちょうど2月にはワンマンもあったので、そこに向けて12月くらいからリハーサルをやっていて。メンバーの結束力も高まっていたので、このタイミングで新曲も作っといた方がいいのかなっていう感じで作り始めました。4曲目の「Ordinary」っていう曲だけ古くからあった曲なんですけど、それ以外はほぼ同時期に出来た曲で、それが軸となって今作のリリースに繋がったので、どちらかというと自然にできたような感じですかね。

―昨年の1stアルバムが『Guess Who?』(=「(自分たちは)誰だ」)で、今回のEPが『Who We Are』(=「これがおれたちだ」)なので、本作はこの1年で固まってきたであろうNulbarichのアイデンティティみたいなものを、改めて提示しているような印象を受けたのですが、そういった意図も特になく?

JQ:実は全然それも考えてなくて。最初のアルバムはもちろん挨拶代わりみたいなものだったので、ちょっと裏をかいてああいうタイトルをつけたんですけど、今回は曲の世界の中に出てくる主人公が言っているようなイメージでタイトルを付けたんですよね。だから、Nulbarichが言っているっていう感じではなかったんです。でも、逆にそういう深読みしてくれる方も多いので、それはそれでよかったなとも思いますね。

―そういったことは意識せずに、ただリリックを書く中で単純にその曲の世界観というか、物語の中で生まれてきた言葉だったんですね。

JQ:そうですね。タイトル・トラックの「Who We Are」っていうのは、自分らしくあるためにどういう風に日常をコントロールしていくかっていうのを歌ってる曲なんです。で、その世界感というか感覚は、今作の全体にも通じているもので、だったらこのタイトルしかないなっていう感じで付けたんですよね。そしたらまさかの「Who繋がり」だったっていう。だから全然意図したことではなかったんですよね。意識して繋げちゃうと、このまた次が大変になっちゃいますし(笑)。

―確かに(笑)。JQさんのリリックは音の響きがすごい滑らかで、発音や音節をとても意識して書かれているような印象を受けるのですが、それと同時に今おっしゃたみたいなストーリー性や独自の世界観もしっかりある。こういったリリックはどういう物事からインスパイアされていると思いますか?

JQ:やっぱりメロディ先行で書くことが多くて。その中に最初は暫定的な詩を書いておいて、それをハメ込みながらどんどん分かりやすくしていくというか。そこに英語だけじゃなくて、日本語のパンチ・ラインを上手く落とし込んでいって、最終的には説得力のある歌詞にしなきゃなっていうのはいつも思っているので。今後はもう少し日本語を増やしていけたらなっていう風にも思っています。
物語や世界観みたいなものは、たぶん僕が日常で触れてきたものが自然と滲み出ているんじゃないかなって思うんですけど、それをそのまま出すのではなく、少し捻ったり、比喩っぽく表現してみたりすることの方が多いのかなって思いますね。結構チープな設定が多いというか、意外と言ってること自体は普通のことなんですよ。日常の中の小さな幸せとかに言及したりすることも多いし。

―幻想的な世界観だとか非日常感ではなく、誰もが共感できるような日常や、生活感から距離を置かないのは、一体なぜだと思いますか?

JQ:歌詞の世界観をこうしよう、ああしようっていうことを考えているわけではなく、基本的に嘘というか、自分が感じたことがない感情は自分で歌っていてもシックリこないんですよね。何か、そういった空想的なものでは次に進めないというか。経験すればそういう歌詞も書けるんでしょうけど、基本的にはノンフィクションというか、自分の半径に近い世界観しか書きたくないんですよね。

—JQさんのルーツにもあるであろうヒップホップとかは、ボースティング文化というか、実現性がなくても上をみる、野心的なことを言っていくっていう美学もありますが、そういうところには影響を受けていないと。

JQ:ヒップホップは聴く分には大好きなんですけど、自分が表現する時には、そういう方法論は向いてないなって思うので。

―本作の「On And On」などは、個人的にはいわゆるRobert Glasperみたいな新世代ジャズ・ミュージシャンとのリンクも感じましたが、個々最近で影響を受けたアーティストなどを挙げるとしたら?

JQ:最近、って言っても一昨年くらいなんですけど、アンダーグランドなシーンからMura MasaとかFKJとかNAOみたいな新世代が出てきて。それに引っ張られるように流行りの音も変わってきているなっていうのは意識していますね。でも、そういうのはあくまでもインプットするもののひとつで。「誰々はこういう曲を作ったから、僕たちはこういう曲を作ろう」みたいな意識はないですね。それよりも、もっと世界のオーバーグラウンドなところに、自分たちの作品が並べられた時に違和感のないようなものを作るというか、そういうことの方が意識していますね。結構曲が出来上がった時、色んなアーティストの作品と聴き比べるんですよね。色んな曲と並べて、自分たちの曲だけ違和感あったりしたら嫌なので。今の時代は自分でプレイリストを作るっていう文化も浸透してきているので、その辺は意外と意識しているかもしれないですね。でも、実際に曲を作っている最中はもちろんそういうことは考えてないですけどね。

―では、今作の楽曲が出来上がった時、一緒に並べたアーティストや作品を教えてもらえますか?

JQ:かなりメインストリームなんですけど、The WeekendとかBruno Marsとかですかね。やっぱり2016年に影響を受けたアーティストが多いかもしれないですね。

―Nulbarichとして活動していく中で、国内のバンドと共演することも多数あると思いますが、そういった現場でのフィードバックみたいなものはありますか?

JQ:「こういう感じがカッコいいから、自分たちもやってみよう」とか、そういうことは全然思ったことはないんですけど、やっぱり人気のあるアーティストさんやバンドほど、自分たちのアイデンティティをシッカリと確立している人が多いなって思いましたね。だから、僕らももっと自分たちらしさを追求しなきゃなって。

―今作にはマスタリング・エンジニアにTom Coyneを起用していますが、彼にお願いしようと思った経緯やキッカケを教えてもらえますか?

JQ:作曲をしていると、自然とミックスとかマスタリングにも興味が湧くというか、勉強したくなってくるんですよね。音質とか定位とか。そんな中で、彼は世界的にも超有名なマスタリング・エンジニアなので、いつかは彼に自分の作品をお願いしたいなっていうのが夢のひとつとしてあって。今回はそれが叶ったっていう感じですね。彼は今年4月に亡くなってしまったので、僕らとしてはこれが最後にはなっちゃったんですけど。


※Tom Coyneがマスタリングを手掛けたBruno Marsの2016年作『24K Magic』収録曲「That’s What I Like」

―彼が手がけた作品に共通する魅力、惹かれた理由というのは?

JQ:「ここがいい!」というよりかは、それが世界のプロフェッショナルな音楽産業におけるスタンダードだと思っていたんですよね。だから、昔から「この曲カッコいいな」って思ってる曲が、彼が手掛けているっていうことも多くて。マスタリング・エンジニア界最大のポップ・スターというか。しかも、メインストリームだけじゃなくて、アンダーグラウンドな作品も多く手がけているっていうその器用さもすごくて。今回、彼にお願いした時、パって返ってきた時の一発目からしてグルーヴ感がすごくて。今回ミックスアップと彼が手掛けたマスタリングの差を聴き比べることができたっていうのは、すごい貴重な機会だったなって思いますね。

―ミックスが終わった段階と、Tom Coyneから返ってきた音源を比べた時に、具体的にどこら辺がどう違うかっていうのは言語化できたりしますか?

JQ:言葉にできたらいいんですけどね。なんて言ったらいいんだろうな……。今回ミックスはD.O.I.さんにお願いしていて、もちろんD.O.I.さんもすごいエンジニアさんなので、僕たちが求めてる音の方向性に持っていってくれて。キレイな音像にしつつ、必要な部分を持ち上げてくれたりもして。だからそのミックスと聴き比べたんですけど……。何ていうか、自分の声がより好きになれたというか。元々僕は自分の声が本当に嫌いで、学生時代もボーカルじゃなくてドラマーだったりんです。なので、曲に自分の声が馴染まないのがコンプレックスだったんですよ。たぶんみんなそうだと思うんですけど、自分の声が録音されたものを聴き返すのとかって嫌じゃないですか。だから僕も本当に嫌いだったんですけど、トムのマスタリングを聴いた時に違和感がなくなってるというか、プロっぽくなっていて。自分が聴いてきた音楽の中の一部になれた気がしたんですよね。これはすごい感覚的なものだと思うんですけど。

―自分の声がもっと好きになれたというか。

JQ:そうですね。嫌いからスタートして、ようやくちょい嫌いくらいにはなれたのかなって(笑)。でも、彼がマスタリングを手掛けたことで、確実に違うんですよね。上手く言葉にはできないんですけど。説得力があるというか。ただ、それが何故なのか。どこがどう変わったからこうなったのか、っていう部分はわからない。

―確かに、音のことなので言語化するのは難しいですよね。むしろそれが全てわかったら、自分でもできちゃうというか。

JQ:それがその人のスキルなんですよね。全てわかったら誰でもできちゃう。本当に答えがないところなので。でも、やっぱり多くの人が聴いている作品を手掛けている人の音ってことは、結局それがスタンダードに近づくっていうことなんですよね。広く色々な人に聴いてもらえるかどうかっていう部分は、自分自身を存在させていく上で僕にとってはすごく大切なことだとは思っているんです。

―Tom Coyneのような欧米を中心とした世界のメインストリームでやられているサウンドと、国内のいわゆるメインストリームと言われているようなサウンドには割りと明確な違いがあると思うのですが、あくまでもNulbarichは世界のメインストリームを見ているんですね。

JQ:たぶん、単純に僕が好きだからっていうだけだと思うんですけど。楽曲制作においても、「よし、これで次の段階にいこう」っていう判断を下すタイミングがあるわけじゃないですか。基本的には曲が形になってくるまで、スタッフが介入してくる段階までの良し悪しっていう判断は、僕とメンバーだけで判断していくので、そこはどうしても好みが優先されますよね。自分たちが好きじゃないことをやろうとしても、中々前に勧めないと思うので。USのメインストリームは僕はずっと大好きですし、だからこそ自分たちの作品もそこに通用するものにしたいですね。

―Nulbarichとしての曲の方向性については、メンバーだけじゃなくてスタッフさんとも話し合っているんですね。そこはやはりこの1年で信頼や結束力も高まってきましたか?

JQ:今までいわゆる大人をあまり信じていなかったんですけど、Nulbarichを支えてくれているスタッフはやっぱりみんないい人たちで。チームとしても今すごくハッピーな雰囲気になってきているんですよね。みんな家族っていうか友達みたいになってますし、他のことはあまりわからないのですが、たぶんどのバンドのチームよりも仲がいいんじゃないかなとすら思います。なので、単純にスタッフを含めて作戦会議をするという感じではなく、スタッフ全員が喜ぶ曲を作ることがNulbarichとしても大事だなと思っていて。信頼できるスタッフが、「うちのNulbarich、ヤバくね?」って熱量持って言えるようにしたいというか。バンドが始まって、ここまで勢いに乗せてもらっているのも大きいですし。

―もちろん意識してやっているわけではないと思うんですけど、NulbarichはDuft Punkの「Get Lucky」以降のファンクやディスコ回帰の流れとすごく合致していたというのも、これだけブレイクする要因のひとつとしてあったと思います。世界的には今その流れが大分飽和してきている気もしますが、その辺りも踏まえた上で、今後の展開って何か考えていたりしますか?

JQ:今までの『Hometown』とか『Guess Who?』の時とかは、まだ自分たちらしさを探している段階だったり、本当に漫画みたいだなって思うくらい個性が強いメンバーの、唯一の共通点とも言えるものがブラック・ミュージックだった。聴いてきた音楽も全然違って、基本的には音楽以外のところでユナイトしていたメンバーが、一緒に音を鳴らし合うようになって、今すごいケミストリーが起きているんですよね。なので、その化学反応がどのように起きてるのかを探りつつ、たぶん今後はもっと色々なサウンドに挑戦していくのかなって思ってますね。ただ、外のことはあまりわからないかもしれないですね。逆に「こういうのいいんじゃない?」っていうのがあれば教えてほしいくらいで(笑)。

ー先程も名前を挙げていたMura Masaとかはやっぱり新世代的というか、新しいなとは思いますよね。今までなかった組み合わせというか。

JQ:本当にそうですよね。「あれをやれ」って言われても無理ですけど。やっぱりドンドン色々なものに挑戦して、最終的には唯一無二というか、それこそJamiroquaiみたいに何をやっても「やっぱりジャミロだよね」ってなるようになれたらなって思いますね。例えば友達の家に行って色々なレコードをかけていく中でも、ジャミロが流れると一発でジャミロってわかるというか。アレンジの仕方とかは今っぽいアレンジの仕方なんですけど、その中にもジャミロの癖みたいなものがやっぱり残っていて、一発でわかってしまう。そういうのってすごい偉大なことだなって思うんです。

―Jamiropuaiは、おそらくこの1年の中でもNulbarichのサウンドを語る上でよく引き合いに出されていたであろうアーティストですよね。

JQ:確かに引き合いに出してもらえることもあるんですけど、もう、なんて言うんですかね。僕らからしたら本当に雲の上の存在なので、実感は湧かないですよね。新作では結構攻めた楽曲もあって、時代への目配せも感じさせるんですけど、確実に一瞬で「Jamiroquaiだ」ってわかる独特のカラーもある。やっぱりあれぐらい長く音楽を続けていると、自分たちの色みたいなのが確立されてくるんでしょうね。そういう意味ではDaft Punkもそうですし、Beastie BoysやFatboy Slimとか、僕が好きなアーティストやバンドは大体そうなんです。なので、Nulbarichにもそういったカレーというか癖みたいなものが欲しいですね。一発で「Nulbarichだ!」って分かってもらえるような何かを、僕たちも見つけにいかないとなと思ってます。

―すでに十分確立されているような気もしますけどね。今回のEPは4曲っていうコンパクトさのせいもあると思うんですけど、前のアルバムよりギュッと固まっている印象を強く受けます。

JQ:今回はBPMも早くて、4つ打ちも多かったり、ハッピーな雰囲気が出ているんじゃないかなって思います。これは単純にリハーサル中とかに作ったものが多いので、そういうみんなと一緒にいる時のハッピーなオーラが音に出ちゃってるというか。あと、意外と僕自身が最初に描いていたヴィジョンになっていない曲の方が多いくらいで。メンバーそれぞれの意見がしっかりとあって、その一番すり合うところ、最大公約数的な落とし所を探っていったイメージが今作にはあります。

―それは1stアルバムではなかったことだったのでしょうか?

JQ:そうですね、1stアルバムはみんながお互いを理解し合うっていうところで終わっていたような気がするんですよ。

ー今回はその先にいけたと。

JQ:そうですね、これは本当にいい発見になったなと思うので、次どうなるのかが今から楽しみですね。

―ちなみに、先程1〜3曲目までの曲とは違い、4曲目の「Ordinary」は初期からあった曲だったとおっしゃっていましたが、その初期からあった曲を今ここで収録した理由というのは?

JQ:やっぱり常に曲を作っていると、自分が今表現するにあたって時間軸的に旬を過ぎてしまうことがあって。そうすると曲が歌わなくなっちゃったりするんですよね。そういった理由で1stシングルや1stアルバムの時にはちょっと違うなって思っていて、一旦寝かしていたんです。でもすごい好きな曲ではあったので、今出さないと一生世に出ないかもなと思って、今作の曲と並べてみたらナチュラルに入ってくれたような気がして。アレンジ以外は基本的に何も変わってないんですけどね。

―では、結構曲は書き溜めていたりするのでしょうか?

JQ:なるべくラフ・スケッチは日頃から作り置きしていますね。ラフなビートだったりラフな歌詞だったり、そういうのはそれぞれの引き出しに収まっているんで、いざ何かを作ろうってなった時には、その引き出しから色々引っ張り出してきて、さらにそれをアレンジをしていくっていう感じで。

―ライブの話もお伺いしたいんですけど、この1年でシングル、1stアルバム、そして今回EPをリリースしました。さらにそれと並行する形で様々なイベントへの出演も果たしてきましたよね。ライブの現場数を重ねてきたことによる変化などは感じていたりしますか?

JQ:たぶん……それが一番デカいんじゃないかな。意外と当事者である僕ら自身はあまり分かってないんですけど、初期から観てくれているお客さんとかは、大きな変化を感じてくれているんじゃないかなって。それこそスタッフによく言われるんですよ。「最近出来上がってきてるね」とか。メンバーもお互いの性格をより深く理解してきたので、最初の頃と比べてライブでは表現力の幅も広がったと思います。

―特に何かキッカケがあったわけでもなく、徐々によくなってきたという。

JQ:砕けた言い方をすると、ただみんなが仲良くなってきたっていう、ただそれだけな気もするんですけど。そういう面でも、やっぱり今が一番楽しいですね(笑)。

―そのようなお互いを理解し合う段階において、バンマスというかメンバーを集めた立場にあるJQさんとして、気を遣うこととか心掛けたことなどはありますか?

JQ:う〜ん、やっぱり自由にしてもらうことが一番なのかなと思って。本当にキャラクターがバラバラなやつらを集めたので、そこでみんなが譲り合って丸くなっちゃうと、つまらないバンドになっちゃうので。基本的には各々自由にやってもらって、「ここはマズい」っていう一線だけは僕が仕切ったりもしますけど。あの、本当にみんな純粋な音楽好きで、子供みたいなんですよ。何も考えずガムシャラに楽器に触れてるのが一番幸せ、みたいな。

―それはアーティストとしては大きな強みでもありますよね。

JQ:なので、そこは余計なことは考えさせないようにしたいなって思っています。本当に、新しい楽器買った日とかは休憩中も肌身離さずに触ってたり、それくらい好きなんだな〜って微笑ましくなりますけどね(笑)。

―ワンマンからライブ・ハウスでのイベント、野外フェスなど多種多様なイベントへ出演してきた中で、特に印象に残っているライブやイベントはありますか?

JQ:どのイベントがってわけではないんですが、昨年フェスっていうものに初めて出させてもらって、ああいう色々なステージを自由に行き来できる環境だと、同時刻にやっているすごいアーティストの中から僕らを選んでもらわないといけないわけじゃないですか。それは本当に自信がなくて。もちろん今年も出させてもらえるだけですごいことなんですけど、割りと小さめのステージだったりするので、半分くらい埋まっていてくれればいいな〜みたいな感じだったんですけど、蓋を開けてみれば毎回溢れるほどのお客さんがいてくれて……。シンプルにヤバいですよね(笑)。
いうなればフェスって最上級のストリートみたいな感じじゃないですか。ひとつのステージを観なければいけないっていう拘束力もない状況ですし。

―フェスにはお客さんとしてご自身で行かれたりも?

JQ:行きますね。自分でタイム・テーブルを見てスケジュール組んだりして。そうやってお客さんとして楽しみに行っていたようなフェスに、その出演者の中のひとつとして出してもらえるっていうのは自分たちにとってもすごい自信になりますし。そういったものを通過した後の、今年のワンマンとかも楽しみなってきますよね。

―直近だと”GREENROOM FESTIVAL ’17″への出演がありましたよね。海のすぐ側に隣接する赤レンガ倉庫で開催されましたが、そういった環境はいかがでしたか?

JQ:今回僕らは無料エリアでの出演で、出店とかもいっぱいある中で、すごかったんですよ。ふたつの通路の奥の方までお客さんが集まってくれて、超気持ちよかったですね。ただ、これを自分たちの実力だと勘違いしないように気をつけないとなとも思いましたけど。あのステージは海をバックにしたステージだったので、今度は自分たちが海を観ながらライブができるような環境でもやってみたいですね。

―MVにも海が出てくることが多かったりと、Nulbarichにはどこか海やビーチを想起させる世界観がありますよね。

JQ:日本は島国なので、海って結構身近な存在ですよね。僕は最近行けてないですけど、沖縄の離島に知り合いがいて、毎年よく遊びに行くんですよ。体質的に日焼けがダメなので、サーフィンとか釣りとかはしないんですけど、それでも自然と海には行くんですよね。ただチルしに行くっていうか。それも真昼間のビーチではなくて、朝方とかサンセットとか、そういう時間帯の海がすごく好きで。それが自然と音楽に反映されているのかどうかはわからないですけど、個人的には海は大好きです。

―では、7月の沖縄での”CORONA SUNSETS FESTIVAL 2017″はまさに絶好のロケーションと言えるのではないでしょうか?

JQ:ヤバいですよね。ライブ前はお酒を控えているんですけど、ライブ後には飲みまくりたいって思ってますね(笑)。
あと、”CORONA SUNSETS FESTIVAL 2017″に出演する平井大くんは、原宿でやった”CORONA SUNSETS SESSION TOKYO”の時にも共演させてもらって、この前の”GREENROOM FESTIVAL ’17″も同じステージに出演していて。このフェスって”平井大くん感”がすごくあるじゃないですか(笑)。だからそこはどうなるんだろう? っていう風に期待していて。あと、スペアザ(SPECIAL OTHERS)も観たい。いや、全部観たいですね(笑)。まぁでも、ライブ前は自分たちのことに集中するので、僕らのライブ後のアクトが楽しみですね。

―”CORONA SUNSETS FESTIVAL 2017″も、海をバックにする形だそうですが、時間帯によってはサンセットを背にしてのステージとなるそうですね。

JQ:はい。なので、カッコいい海男になれるように頑張ります(笑)。基本的に僕らは、出演させてもらうイベントの環境に合ったアクトになりたいというか、その場に適したパフォーマンスをしたいっていう想いが強くて。場所や時間帯によってお客さんの雰囲気も毎回違うので、「これがおれたちだぜ」っていうようなパフォーマンスをするよりも。最初から探り合いをして、自分たちの持ち時間の中で最終的にみんながピースになれるようなライブにしたいというか。そういうお客さんや環境との対話みたいなことを意識しているんですよね。

―我を強くを出すわけではなく。適材適所に染まっていくようなパフォーマンスにしたいと。

JQ:まぁ、そんなに我がないですからね、僕ら。

―それはNulbarichというバンド名でも表されていますよね。「Null」という何もないことを意味する単語と、「But」(しかし)、「Rich」(豊かな)という相反する単語が組み合わされている。

JQ:特にライブとかはその通りだなって思うんです。ライブで受ける迫力や感動って、形ではないじゃないですか。演奏、サウンドのクオリティっていう面ではやっぱり作品には敵わないと思うので、ライブではお客さんからもらったバイブスを吸収して、それを僕らが吐き出して、お客さんがまたそれに反応してっていう形で、ひとつのものを作り上げていく。それって物理的なものでは無理だと思っていて。

―なるほど。ではNulbaridhの今後の展望と、11月以降に控えるワンマン・ツアーに向けての意気込みというか、ワンマン・ツアーまでに「こうなっていたい」というようなヴィジョンはありますか?

JQ:Nulbarichって、今は自分の想像を超える成長を遂げている最中で。初体験だらけのバンドなのに、こんなにたくさんのフェスとかにも出させて頂いているし、想定外だらけのことがあったので、今後も引き続き想定外の成長をしないとダメだなとは思ってますね。それがワンマンの時に少しでも表れていればいいなって。駆け上がっていくためには新たな可能性をそこにいる人たちに見せないといけないと思っているので。ずっと「留まることを知らないバンド」と言われたいし、自分たちでもそう思っていたいというか。「おれたちまだまだ伸び代があるね」って思いながらバンドをやっていたいので。今年は目の前の課題に一生懸命ぶつかっていって、自然と皮が1枚2枚剥がれていけば、その後には自分たちにとっても見たことのない景色に辿り着けると思うので。11月にどうなっていたいかというよりは、11月に自分たちがどこまで成長しているのか、そこにいる自分を楽しみにしているっていう思いもあります。

―今のNulbarichも1年前からしたら全く想像できなかったような活動をしている。それと同じように、11月には、そしてさらにその先でも今からは想像もできないような景色を見れるようになりたいと。

JQ:そうなれるようにしたいです。そのためには一歩一歩ちゃんと踏みしめていかないといけないなって。


【リリース情報】

Nulbarich『Who We Are』初回盤


Nulbarich『Who We Are』通常盤


Nulbarich 『Who We Are』
Release Date:2017.05.24 (Wed.)
初回限定盤 NZS-738 ¥2,000 + Tax
通常盤 NCS-10168 ¥1,200 + Tax
Tracklist:
[CD]
1. Follow Me
2. It’s Who We Are
3. On and On
4. Ordinary

[DVD]
1. Hometown
2. Fallin’
3. NEW ERA
4. Lipstick
5. Spread Butter On My Bread


【イベント情報】

“CORONA SUNSETS FESTIVAL 2017”
日程:2017年7月8日(土)、9日(日)
時間:13:00~
会場:美らSUNビーチ野外音楽特設ステージ
チケット:4,000円(1日券)/6,000円(2日通し券)
出演者:

[7月8日]
Autograf
RAC
SOUL CLAP
平井 大
NAOKI SERIZAWA
SPECIAL OTHERS
D.A.N.
七尾 旅人
DUBSENSEMANIA
Rickie-G
SLOW HANDS

[7月9日]
サカナクション
Classixx(DJ SET)
Holy Ghost!(DJ SET)
Mndsgn
starRo
クラムボン
Nulbarich
iri
RITTO×OLIVE OIL
SAIRU
DJ HIKARU

※来場予定人数:15,000人 (各日 7,500人)
※年齢制限:20歳未満入場禁止
※ご入場時に顔写真付きの身分証明書(免許/パスポート/外国人登録証明書)のご提示が必要です。

主催:Anheuser-Busch InBev Japan

■オフィシャル・サイト:http://corona-sunsets.jp/

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“Nulbarich 1st ONE MAN TOUR”
2017年11月2日(木)仙台 MACANA  OPEN 18:30 /START 19:30
2017年11月11日(土)大阪 心斎橋JANUS OPEN 17:00 /START 18:00
2017年12月1日(金)福岡 DRUM BE-1 OPEN 18:30 /START 19:30
2017年12月13日(水)東京 LIQUIDROOM OPEN 18:30 /START 19:30

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“Nulbarich ワンマンライブ 2018”
日時:2018年3月17日(土)
OPEN 17:00/START 18:00
会場:東京 新木場STUDIO COAST

※CD封入先行:2017/5/24(水)18:00~2017/6/11(日)23:59

■Nulbarich オフィシャル・サイト:http://nulbarich.com/

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