RBMA TOKYO Participant Special Interview

Mumdance

「音楽を作り始めるのは自然なことだったよ」ーMumdance インタヴュー

代官山UNITの地下SALOONのフロア奥に積み上げられた、高さ2メートルほどのサウンドシステムを味方に付けたMumdance(マムダンス)が鳴らすのは、鉄を打ち付けたような音や発砲音のような単音であったり、「ハーフステップのテクノ? え、これはグライムなの?」という音楽だ。MCが入ると、やっとグライムだと思えるが、彼がフロアに投下するトラックのグルーヴは特殊な様相をしている。Mumdanceが登場したイベントが、ダブ、ルーツ・レゲエ、サウンドシステムのパイオニアJah Shakaをヘッドライナー迎えた『TOKYO IN DUB』だからといって、その特殊なリズム感は“リディム”と呼べるものでもない。彼がプレイをすればするほど、その一連の硬質な音楽は、型という型からすり抜けていく。

そんな不規則な形をしたMumdanceことJack Adamのトラックは、彼の母国UKのクラブをはじめ、『Resident Adviser』(『Top 50 tracks of 2014』で5位)『FACT Magazine』(『The 50 best tracks of 2014』で2位)といった海外の音楽メディアを興奮の渦に巻き込んでおり、「Take Time feat. Novelist」は2014年のベストトラックに選出されている。さらに、来年の1月には、再びNovelistとEPをリリースすることを発表しており、彼の硬質なトラックはますますフロアからフロアを、そしてシーンを駆け抜けていくだろう。ぜひこのインタヴューでMumdanceを先取りしておいてほしいと思う。

それにしても、『TOKYO IN DUB』のためにSALOONに組み立てられたサウンドシステムは、Mumdanceの音楽を体感するには最高のセッティングだった。感知した音やリズムに合わせて自ら動くというより、低音が次々と身体にぶつかが故に動いてしまうというような感覚になったのは、彼のプレイを見ている時の僕が異様に興奮してたせいだと思っていたが、実際に彼に自身の音楽について聞いてみたら、興奮のせいではないことがわかった……鳥肌。

Mumdance Interview

(Interviewer:Hiromi Matsubara, Header Photo:Dan Wilton)

©So Hasegawa / Red Bull Content Pool

―出身はどちらなんですか? 生い立ちも少し教えてください。

出身はイギリスのブライトン。ブライトンは海沿いの街で、ビーチがすぐ側にたくさんクラブがあるんだけど、そこのドラムンベース・ナイトやジャングル・ナイト、ガレージ、ハードコアのイベントに入り浸ってたんだ。あと、僕はスケボーとかBMXとかもやっていたから、パンクやメタルも聴いていたし、ライヴも観に行ってたよ。で、24歳ぐらいの時にブライトンからロンドンに越して、今に至るって感じかな。

―音楽を作り始めたきっかけは何ですか?

音楽を作る前に自分のイベントのプロモーターをしていたから、音楽を作り始めるのは自然なことだったよ。13歳の時に友達たちと一緒に聴いたハードコア・レイヴのカセットテープが、初めて衝撃を受けたエレクトロニックミュージックだった。それから新聞配達の仕事とかをしてお金を貯めて、安いターンテーブルのセットを買って、毎週月曜日には友達と集まってDJの練習をしたり、いろんな音楽を聴いて過ごしたんだ。それで17歳の時に、友達たちがDJをして、自分がそれを仕切るみたいな感じでパーティーのプロモーターをやったんだ。だから、ある日突然思い立って作り始めたわけではなくて、段階を追って、自然と音楽を作るようになったんだよ。

―では、音楽を作る際にインスピレーションを得ている物事は何ですか?

音楽的に大きな影響を受けたのはハードコアとジャングルだね。もともとハードコアを聴いていたからよくハードコア・ナイトに行ってたんだけど、17歳ぐらいになってからジャングル・ナイト、ドラムンベース・ナイト、ガレージ・ナイトにも行くようになったんだ。よく行ったのはドラムンベースだね。そういうイベントに行った経験からインスパイアされてるよ。
そうだね……でも、いつも何かを作りたい、表現したいという想いが自然と湧いてくるんだ。何か目的があって、ああしようこうしようというよりも、自然と音楽を作り始めているんだよね。以前はずっとBMXに集中していて。ただある時にケガをして、背中と腰を痛めてからはBMXができなくなってしまったんだ。でも、その後にスケボーを始めて、BMXよりはハードじゃないし危なくなかったからスケボーをやってたんだけど、もとから音楽に囲まれた生活で、音楽が好きだったこともあって、ごく自然と音楽を作るようになっていったんだ。こういう言い方をするとカッコつけてるみたいになるんだけど、自分でもわからないぐらい本当に自然な変化だったんだよ。

―音楽を通して表現していきたいことは何ですか?

何か具体的なメッセージがあるわけではないんだけど、僕がいま作っている音楽では人々の身体を動かすような、より体感的な部分を意識しているよ。僕の音楽はメロディーやハーモニーといったものとはかけ離れていて、もっと花火のように不規則で瞬発力のある単音の連続になっているんだ。その音をクラブで鳴らした時に、人はどう身体で受けて、どのように動くのか、肉体的にどのように反応するのかっていう部分にアプローチをするのが、僕の表現したいことかな。

―確かにあなたのトラックはテンポが変則的ですが、これまでにあなたはLogosやPinchなどの音楽性が特徴的なアーティストとコラボレーションしたトラックを発表していますよね。コラボレーションをする際は、自分の音楽性と比較したり、相手の音楽を分析したりしますか?

もともと1人で部屋にこもって作業をするのがあまり好きじゃないから、いろいろな人とコラボレーションをするのは楽しいよ。これまでは、例えばメキシコやブラジルといった旅先で、現地の文化を知るために現地のアーティストたちとコラボレーションをすることが多かったね。最近コラボレーションをしているPinchやLogosと音楽の話をするのはとても楽しいし、自分にとってためになるんだ。いざ一緒に作業をしてみると、もちろん自分とは音楽的な考え方がかなり違うと思うんだけど、Pinch、Logos、Novelistとはお互い共通するものや感じ合えるものがあるから、一緒に作業をするのはいつも楽しいよ。予想外なものができるし、お互いに感化されるし、しかも作業がスムーズに進むからね。楽しいことはやめる必要がないと思うからこれからも続けていきたいし、自分はひとつの作業に集中するよりも、いろんな人との作業が絶えず同時進行で進んでいる方が常にテンションを保つことができて、常に自分をクリエイティヴな状態にしておけるから、そういう意味では自分に合ったスタイルだと思うよ。

―今回のRBMAの参加者とのコラボレーションはスタートしそうですか?

すでにFred(Fred Gibson)とWIFEとはダンス・トラックを作っていて、あとWatercoloursっていう女性のヴォーカリストのためのトラックが出来上がっているから、後で彼女の歌を録る予定。2週間でその2、3曲はできて、さらにまだ完成し切れていないものもあるんだけど、それはあまり問題ではないんだ。それよりも、ここに集まっているそれぞれバックグラウンドが異なっていて、作っている音楽も異なっているアーティストたちの、自分とは違った音楽制作へのアプローチを見て、学んで、スポンジのように吸収するという経験の方が大事だと思うんだ。他の参加者の姿を見て、異なる制作過程や思いつきもしないようなアイディアを理解することが自分にとっては最高の教育だと思うし、実際、面白くて、とても恵まれたポジティヴな体験だと思うね。

―RBMAに応募したのは、他のアーティストのアプローチやプロセスを見てみたかったからというのが大きな理由だったんですか?

いや、アカデミーに参加できるのが有意義なことだっていうことはわかっていたんだけど、実際に何が起こるか、何を求めたらいいのか、何を期待したら良いのかは全く想像がつかなかったんだ。それこそ『チャーリーとチョコレート工場』の金のチケットが手に入るみたいなことだから。特別な期待はせずに来てみたんだけど、実際にこのアカデミーでレクチャーを受けたら、サウンドの面からアイディアの面までいろいろな面白い音楽の話が聞けたり、それぞれがこれまでどのように過ごしてきて、どのような音楽的なバックグラウンドを持っているのかを話したり聞いたりできて、素晴らしい経験ができたと思うよ。

―RBMAを卒業した後のリリースや新たな制作の予定があったら教えてください。

Logosと一緒に8曲作ったのはもう完成してるから1月にリリースする予定で、Pinchとも4曲作り終えていて、Novelistと作った4曲はもうリリースが決まってるよ。来年はアルバムの制作にも取り掛かりたくて、それに合わせてサウンドと映像とリンクさせたヴィジュアル・インスタレーションも作りたいと思ってる。いままではクラブでパフォーマンスしていたんだけど、自分としてはもっとクラブから離れて、アート・スペースとかでパフォーマンスをしたいんだ。あとはLogosと一緒にやってる〈Different Circle〉から、自分たちの作品以外に他のアーティストの作品もリリースをして、レーベルの基盤をもっと強くしていきたいと思ってる。あ、あと〈Fabric〉のミックスコンピレーションをリリースするのも決まってるよ。

―アートに興味があるんですね。〈Warp〉がTate Modernとコラボレーションしてパフォーマンスイベントを開いてますよね。ああいうイベントは結構興味深いですか?

そうだね。そういうアートに関連したイベントに興味があって、以前から個人的には頭の中にアイディアはあるから、いまはどういう風に実現しようか、どういう風に見せようかということを特に考えてるよ。やるとしたら僕とLogosでさっき言った8曲をアートとリンクさせてパフォーマンスをしたいなと思っていて、いまはその段取りをしているんだ。いままでにはない新たなチャレンジだよ。

―先ほどインスピレーションの話をしましたが、特定のアートピースからインスピレーションを受けてトラックを作ることはあるんですか?

正直、僕は具体的なヴィジュアルにインスピレーションを受けるタイプではなくて、音そのものにインスパイアされるタイプなんだ。アートスクールで勉強していたわけではないから、誰が良いのかとかは全然わからなくて、いまは良いアーティストを見つけるのにチャレンジしているところだよ。自分ではヴィジュアルの要素も音楽作品には欠かせないものだとわかっているし、どういうタイプの作品が好きかはわかっているんだけど、ヴィジュアルをもとに音楽を作るのは自分にとっては難しいことなんだ。
Logosとやっている〈Different Circle〉のリリースに関しても、まだひとつもアートワークをつけたことがなくて、アートワークに的確な作品を見つけていないがために6ヶ月もリリースを先送りにしている状態のものもあるから、アートワークを付けたリリースを実現させるのがいまの課題だね。お互いに何が欲しいかはわかっているんだけど、なかなかベストなものが見つからないんだ。

―なるほど。でも、いずれにせよ今後はヴィジュアル・アーティストとのコラボレーションに積極的に取り組まれるんですね。楽しみです。

そうだね。早くコラボレーションの相手を見つけなくちゃいけないね。


Mumdance : Website / Twitter / Facebook / SoundCloud

Mumdance ライヴレコーディング@Tokyo In Dub


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