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Interview / LUCKY TAPES


「オシャレとかそういうイメージって結構危なくて、サラッと聴き流せちゃう心地よい音楽、BGMになりかねない」ーー2ndアルバムで攻めの姿勢をみせたLUCKY TAPES インタビュー

2016.07.12

結成当時からその動向を追い続けたLUCKY TAPESがついに2ndアルバムをリリースした。本作はこれまでの彼らのイメージを残しつつも、随所で新しい面を見せた意欲的な作品だ。より深く、より遠くに届く強度の強さをこの2ndアルバム『Cigarette & Alcohol』からは感じ取るができる。

“FUJI ROCK FESTIVAL ’16″や”TAICO CLUB ’16″、”RUSH BALL”など今夏は国内の主要なフェスへの出演も決まり、バンドとして着実にステップアップを重ねているようにも見えるが、いざ直接対峙してみると、そこには昔と変わらずあくまでもマイペースかつ気取らない彼らがいた。そんなLUCKY TAPESに、バンドを取り巻く環境や新作について、そして現在の心境などを訊いた。

Interview by Kohei Nojima
Photo by Takazumi Hosaka

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(L→R:田口恵人、高橋健介、高橋海)


ー今回はLUCKY TAPESのこれまでの2年間を軽く振り返りつつ、新しい作品についてもお話を伺えればと思います。まず、2014年の7月に最初の音源を公開してから、2015年夏に1stミニ・アルバム『The SHOW』をリリース。そして今年の1月に2ndシングル『MOON』をリリースし、映画の挿入歌提供なども挟みつつ、この度1stフル・アルバム『Cigarette & Alcohol』をリリースと、わずか2年ほどでかなり駆け足の活動をしてきたような印象を受けます。

海:ありがたいことにすごくいい状況で活動させてもらっています。

ー活動当初から、周囲の環境など大きく変わったことはありますか?

海:うーん、そこまで大きな変化はないです(笑)ただ最近は、ライブPAさんと照明さんに専属で入って貰えるようになりました。

ーなるほど、でないとあの編成でのライブは箱付きのPAさんや照明さんではなかなか難しい物がありますよね。

恵人:そうなんですよ。ツアー先とかになるとなおさら厳しい状況だったので。

ー新作について訊かせてもらいたいのですが、まずタイトルが『Cigarette & Alcohol』ときて、歌詞の中でも「くだらねえどいつもこいつも」、「記憶飛ばすまで飲んで」などと刺激的、攻撃的な歌詞も増えてきた印象があります。これまでの「オシャレさ」や「爽やかさ」であったりする自分たちのパブリック・イメージを壊そうという意図みたいなものはあったのでしょうか?

海:オシャレとかそういうイメージって捉え方によっては危険でもあって、聴き流せてしまう音楽、BGMになりかねないというのはずっと考えていて。1stはそういう生活に馴染むような音を意図して作った部分もあったんですけど、2作目を作るとなったときに同じことはやりたくなくて。心に残る音楽とはどんなものだろうって考えた時に、単純に心地いいだけではなく、そこに毒や”エグみ”みたいなものを入れたら良いんじゃないかって。

健介:うん、オシャレって本当に危険だよね。

海:危険だね。何も中身のないもの、薄っぺらいものとして捉えられかねない。

ーなるほど。新しいアーティスト写真やブックレットには新作の音楽性と同様に、洗練されたアダルトな雰囲気が醸しだされていますよね。その一方で、ジャケ写だけはとても可愛い、ポップな仕上がりになっていて驚きました。

海:山口さんの作風もあるんですけど。描いてもらったシーンが、今作の中の”攻撃的なシーン”ではなく、曲でいうと「パレード」だったり「夜想曲」「スローモーション」とかのファンタジー的な要素が強く出ているシーンで。

恵人:「レイディ・ブルース」とか「贅沢な罠」とか、これまでの雰囲気からガラッと変わった方に耳がいきがちかもしれないんですけど、「スローモーション」とか「夜想曲」とか、割りとこれまでの路線を踏襲している曲もすごくいい曲だから、そっちも忘れずに聴いてほしいよね。

海:え、そんな思いあったの!?(笑)むしろ「レイディ・ブルース」なんかは今までのグルーヴィな部分をより詰めた楽曲で、「スローモーション」とか「夜想曲」は歌を前面に出した新しい一面のある曲だと思うけど…。

健介:俺も初耳だわ(笑)

惠人:いや、忘れないでねっていうか、そっちだけが主役じゃないんだぞって(笑)。

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ーその「スローモーション」ですが、これはメロディーとかアレンジがJ-POP寄りというか、歌モノのポップスなこの曲は作品としてはどういった位置づけの曲なのでしょうか?

海:結果的にそういう位置付けになった、という方が正しいです。最初はLUCKY TAPESがもともと持っている多幸感、祝祭感みたいな部分をより大きい規模で鳴らして、よりポップにしたらというテーマで作り始めました。

ーアルバムの中で最もポップスとしての強度が強い曲のように思えました。

海:「TONIGHT!」よりもですか?

ーアレンジは壮大ですけど、メロディーやボーカルが立っているので、よりJ-POP的なのかなと。

健介:確かに今までのぼくららしくないというか、これまでのぼくらからはなかなか想像できないラインの曲だったかもしれないですね。

ー今作の楽曲は、前々からできていたものという感じではなく、今作のためにガッと作ったそうですね。セルフ・ライナーノーツも読んだんですが「ミルク」が一番初めにできた曲なんですよね。

海そうです。昨年末の時点では曲が全然足りてなくて(笑)。既発曲の「パレード」「MOON」を除いて、最初にできたのは「ミルク」でした。そこを基準に全体のバランスを取りながら作っていきました。

ー「ミルク」はその「パレード」や「MOON」に近いスローなナンバーですが、そこからどのような経緯を経て、「レイディ・ブルース」や「贅沢な罠」といった攻撃的なナンバーが生まれていったのでしょうか?

健介:ぼくは元々ストーンズとかそういうベタなロックも聴いてたので、そういうのも出そうかなって思ったッて感じですかね。「贅沢な罠」とか「レイディ・ブルース」とか重たい、ヘヴィなところとかは海くん発信だよね。

海:エモとかスクリーモとか、ちょっとヘヴィなのを好きで聴いてる時期もあって。遊び心で取り入れてみました。

ーエモやスクリーモを聴いていたっていうのは、最近の話ですか?

海:数年前です。「オシャレなイメージのLUCKY TAPESがヘッドバンギングしてたらおもしろいんじゃない?」って(笑)。実験的にそういうフレーズを入れてみたら、意外と自然で。その展開をInstagramに投稿してみたら、健ちゃんから「すごい展開だね」みたいな反応があって(笑)。

ーそもそも現在、曲作りはどういう感じで進めているのでしょうか?

海:初期の頃と本当に変わらず、自分がデモ段階で7〜8割作って、それをデータで2人に投げて、それぞれのパートを練ってもらい、最終的にスタジオで詰めていく流れです。
シングル『MOON』の制作の時に、一度夏合宿で山ごもりをしたんですよ。そこでひたすら音を鳴らし合って作るっていうのやったんですけど、すごい時間も手間もかかるし、元のやり方に戻したって感じです。その時もある程度は準備がありましたし。

ーサポートの人たちとはどうやって楽曲を共有しているのでしょうか?

恵人:週一ぐらいでスタジオに入っていて、そこで合わせていますね。

ーそこで曲のアレンジを組み立てたりすることはありますか?

海:スタジオで作る作業はあまりしないですね。デモ段階でほとんど作ってきてしまうので、さらにそれを詰める作業がメインです。

健介:それをさらに広げるぐらいな感じだよね。

ー先程も少しお話に出ましたが、先行でMVも公開された「TONIGHT!」は、LUCKY TAPESがBPMも早めで踊れる曲を作ったらここだろうなっていう曲がドンピシャで上がってきた感じでした。以前からフェスとか出て行くなら踊れる曲が必要だよね、っていう話もしていたと思うんですけど、手応えはどうですか?

海:まあこういう風に急にポップスに振れたので賛否両論はあります(笑)。

健介:そうだね、賛否両論感はあるね。「こっちにいったか〜」とかね(笑)。

ー個人的にはああいう曲は必要だと思いますけどね。純粋にいい曲だし。

健介:うん、ぼくらもいい曲だと思いますよ。

恵人:基本的にぼくらはやりたくないことを無理してやるっていうことは絶対にないので。今作にも色々な楽曲があるけど、全て自分たちがやりたいことしかやってないですし。

ーPVも素敵ですよね。

健介:最後まで観てもらいたいですね。あの最後のシーンが一番好きです。

ーあと、あの曲の終盤のフレーズはChicagoの「Staturday in the Park」ですよね。

海:コード進行は同じですね。YUKIの「メランコリニスタ」やNegiccoの「圧倒的スタイル」、サンボマスターの「そのぬくもりに用がある」など、色々な曲でオマージュ的な使われ方をしていますよね。

ーこの曲は最初からある程度「こういう曲を書こう」って思って書いたんでしょうか? それとも自然な成り行きで?

海:どちらかというと前者です。これまでBPM120以上の曲がなかったので、今回のアルバムに一曲は欲しいなと思って。今までも何度か挑戦してみたことはあったんです。最初BPM120以上のテンポでフレーズを作っても、同じフレーズをBPM落としてゆったりとしたグルーヴで歌わせたらしっくりくることが多くて。BPM90~110あたりがやはり心地いいテンポ感、ビート感だったんですけど、ようやくBPM120超えで納得のいく曲がかけました。

ーMVのイメージやアートワーク、アーティスト写真などは誰が舵をとっているのでしょうか? 全体的に今作のアートワークは洒脱で大人な感じですよね。先ほど「オシャレは危険」っていう言葉も出ましたがそれとどう折り合いをつけているのかな、と。

健介:基本的には海くんです。

海:さっき話していたのは音に関してで、アートワークなんかは逆にふざけてしまうと、純粋に物としての価値が下がってしまう気がして。家に飾りたいとか、物として持っていたいと思えるようなパッケージを目指しています。

ーなるほど。では、今作では前作以上に大比良瑞希さんの女声コーラスが重要な役割を持っていると思います。大比良さんのどういった辺りに魅力を感じますか?

恵人:単純に声がいいですよね。他には中々いないというか。

海:オクターブユニゾンで動くコーラスが好きでよく入れるんです。ソウル感がいい具合に出て色気が増す。それを今まではずっと健ちゃんにやってもらっていたんですけど、男性だと結構キツい声域もあって。男性が歌う裏声のオクターブフレーズも、逆にそっちの方がカッコいい時もあるんですけど。曲によって使い分けたいですね。

ー今作リリース前に前身バンド時代からの付き合いだったドラマーの、”つばたん”こと濱田翼さんが脱退してしまいましたが、今作のドラミングに関してはどのようにして固めていったのでしょうか?

海:デモの段階ではグルーヴを伝えるくらいの意図でざっくりと打っているので、細かいドラミングなんかはドラマー本人に任せています。東阪ワンマンで新作全曲お披露目という演出もあったので、ライドを使うのかハットなのか、みたいな細かいアレンジはつばたんに手伝って貰ったりもしました。

ーじゃあドラマーがいない状態で楽曲制作するのはこれからですね。

海:そうですね。うちはかなりのブラック企業なんですけど(笑)、サポートの方々は有難いことにとても協力的でいてくれて。今後は一緒にアレンジやらなんやらできたらいいなって思います。

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ーちなみに、以前目標を聞いた時に、「フジロックに出たい」と言っていましたが、早速今夏実現しましたね。

健介:そうですね。今年は”TAICO CLUB ’16″や岐阜の”揖斐川ワンダーピクニック”にも出演出来たし。

恵人:でも、もっともっと色々なフェスに出たいですね。

ー野外とライブハウスどっちが好きですか?

健介:あー、難しい質問ですけど……野外ですかね。

恵人:ぼくは野外ですね。

海:自分は屋内かな。

健介:やっぱり歌いづらい?

海:歌いづらいというよりかは、野外だとまだ日中での出番しか経験してなくて。明るい時間帯だと照明や世界観が作り込めないので、全部丸見えみたいな。
『The SHOW』じゃないですけど、ステージ照明や演出も作りこみたい派なので。「このタイミングでストロボほしい!」とか、そういうのも日中の野外だと表現しきれないじゃないですか。LUCKY TAPESの世界観を完全に表現するなら屋内かな。野外は開放感があって楽しいですけどね。

ー「ここでプレイしてみたい」っていう会場や、もしくは「こういうところでプレイしてみたい」というようなイメージはありますか?

海:具体的にはまだ探してる段階ですが、雰囲気でいうとライブ・ハウスっぽいところではなく、今回のアーティスト写真を撮影したキネマ倶楽部やトランプルームとか、ちょっとキャバレーや劇場感のあるような場所でやったら絶対合うと思います。

ーそれはやはり日常から逸脱したいというか。

海:それもあると思います。なんか漠然とした憧れみたいなものも。あとはそもそも、LUCKY TAPESは大編成なので、ライブハウスで3〜4人組バンドのライブと同じ感覚で観てもらうというよりかは、もっと華やかなショウをやりたい、作りたいという思いがずっとあるので。

—これまでの話を聞いていると、LUCKY TAPESはなんでもアリなバンドではなく、ある程度明確なコンセプトなり方向性に沿って音楽活動をしているように思えました。色々な方向へその時々で向かうのではなく、ある程度固まったひとつの道を極めるというか。

健介:そうですね。確かに軸みたいなものはあるような気がしていて。もちろん色々な音楽を聴いて様々な音楽的要素を吸収していってやっていきたいとは思っているんですけど、たぶん自分たちの中で、こう……自分たちの”気持ちいいポイント”みたいなものがあって。そこからは抜け出さないというか、抜け出せないんだと思います。だから、結果的にそういうコンセプチュアルな見え方になってしまっているのかなって。……(ふたりに向かって)どうですか?

海:……うん、そうなんじゃないでしょうか(笑)。

—その”気持ちいいポイント”っていうのは、ざっくり良い変えちゃうとそれが”LUCKY TAPESらしさ”みたいなことだと思うのですが、メンバー間で言語化して共有などはしていますか?

海:全くしていないですね。

健介:言語ではないよね。

—例えば、現在のライブやレコーディングでの管弦楽器込みの10人編成っていう部分は決して絶対的なこだわりではなく、もしかしたら今後はギター、ベース、ドラムだけみたいな曲もLUCKY TAPESとしてはありえるのでしょうか?

海:ありえると思います。現段階でそういうことを考えているわけではないですけど。今の編成に特別こだわりがあるわけではなく、可能性として色々な編成、アレンジの音楽があっていいと思うんです。バンドというよりかは音楽集団とか音楽プロジェクトに近い魅せ方をしていけたらいいなと思っています。

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【リリース情報】

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LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol』
Release Date:2016.07.06
Label:Rallye Label / Rallye Co.,Ltd
Cat.No.:RYECD260
Price:¥2,500+Tax
Tracklist:
01. LOVE LOVE
02. Mr. Robin
03. レイディ・ブルース.
04. 贅沢な罠
05. パレード
06. ミルク
07. 夜想曲
08. MOON
09. スローモーション
10. TONIGHT!


【イベント情報】

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“LUCKY TAPES『Cigarette & Alcohol』全国ツアー”

●9月23日(金) 東京キネマ倶楽部 (ワンマン公演)
OPEN 18:30 / START 19:30
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 302-059)、ローソン(L:73014)、e+ (プレ: 7/12-19) 
☎03-3444-6751(SMASH)
smash-jpn.com

●10月7日(金) 名古屋・池下CLUB UPSET
w/ 南波志帆
OPEN 18:30 / START 19:00 
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 301-386)、ローソン(L:41601)、e+ (プレ: 7/29-8/1) 
☎052-936-6041 (JAILHOUSE) 
jailhouse.jp

●10月28日(金) 広島 CAVE-BE
w/ 王舟
OPEN 18:30 / START 19:00  
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 301-465)、ローソン(L:62981)、e+ 
☎082-249-3571 (夢番地広島)
yumebanchi.jp/

●10月29日(土) 福岡・LIVE HOUSE Queblick
w/ ポルカドットスティングレイ
OPEN 18:00 / START 18:30
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 301-526)、ローソン(L:84069)、e+  
☎092-712-4221 (BEA) 
www.bea-net.com

●11月4日(金) 仙台 enn 2nd
w/ Awesome City Club
OPEN 18:30 / START 19:00 
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 301-841)、ローソン(L:22673)、e+ (プレ7/25-31) 
☎022-256-1000 (NORTH ROAD MUSIC) 
north-road.co.jp

●11月13日(日) 札幌 BESSIE HALL
w/ Awesome City Club
OPEN 18:00 / START 18:30
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 303-956)、ローソン(L:11890)、e+ (プレ: 7/27-31)、タワーレコード札幌PIVOT店 
☎011-261-5569(SMASH EAST) 
smash-east.com

●11月18日(金) 梅田 Shangri-La
w/ YeYe
OPEN 18:30 / START 19:00
前売 ¥3,000 税込み(ドリンク代別途必要)
ぴあ(P: 301-700)、ローソン(L:55137)、e+
☎06-6882-1224 (GREENS)
greens-corp.co.jp/


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