FEATURE

INTERVIEW / Klan Aileen


「『死』とかをテーマに扱ってしまった作品なんですけど……『死なないぞ』みたいな」 ――バンドとしてのドキュメント的作品を紐解く

2016.11.16

Klan Aileenが2ピース・バンドとなってからは初となる新作にして、セルフ・タイトルの2ndアルバム『Klan Aileen』を先月リリースした。
2012年、3ピース・バンドとしてリリースした1stアルバム『Astroride』よりおよそ4年。日光の届かない深い森の中へと彷徨い込んでしまったかのような不穏な空気感を擁した本作は、時に激しく、時にアンニュイな表情をみせるギター・ノイズ、そしてそこに生々しいドラムがダイナミズムを加える。その不定形かつ自由な楽曲構成や、独特の言語感覚を持つ日本語詩なども相まって、現在盛り上がりをみせる国内インディ・シーンにおいてもかなり異質な存在感を放っていると言えるだろう。

今回、そんなアンタッチャブルな雰囲気さえ持つ本作について、バンドのGt./Vo.であり、作詞作曲も手がけるRyo Matsuyamaにインタビューを敢行。口数少ないながらに、本作制作にまつわるエピソードを事細かに語ってもらった。

Interview by Takazumi Hosaka & oden
Photo by Michito Goto

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―アルバムがリリースされてから、すでに1ヶ月くらい経過したと思いますが、反響などはどうですか?

そうですね……全体的にいいですよ。まだほぼほぼネット上での反響しか感じられてないんですけど。ただ、僕が思ってるよりは売れてないと思います(笑)。

―おそらく店頭などでも前作より大きな展開をされていると思うのですが、よく言われる作品が自分の手を離れていく感覚などはありますか?

今までのカセットとか7インチとかは結構リリースしてすぐに愛着がなくなったりしたんです。リリースしてすぐに「もっとああすればよかった、こうすればよかった」って思ってしまいがちで、それこそ自分のものじゃなくなってしまうような気がするんですよね。でも、このアルバムはまだその感覚はないですね。

―それはやはりこのアルバム『Klan Aileen』が、それだけ上手く今のKlan Aileenを切り取ることができているということなのでしょうか?

おそらくそうだと思います。

―なるほど。では、少し時間を遡って、2人編成になった2014年末から現在までのこの2年近くの期間で、バンドに対する考え、姿勢がどのように変化してきたかを教えてもらえますか?

結構見切り発車的に2ピースになったんですよね。なので、最初の3〜4本くらいのライブは本当に酷かったと思います。それでライブ・ハウスの人にアドバイスもらったりして試行錯誤して、その後にちょっと大きなところでやる機会があったんですけど、そこでのライブが結構上手くできたんです。そのライブをやるまでは、すぐにベース入れるだろうって思ってたんですけど、そこから……半分意地もあったんですけど、2人組でいこうと思って。何ていうんでしょう。制約があるからこその楽しさというか、可能性というか。鍵盤とかを入れればいいところを、2人だけで成り立たせようとすることで生まれる歪さとか、そういうものを追求していこうって思えるようになっていきました。

―2人組でやっていこうとなった際に、お手本というか参考になったようなアクトはいましたか?

Tonstartbandhtですかね。僕自身があんまりコードで曲を書かないんですね。リフ主体で、単音ピッキングしながら歌う、みたいなのが多いんです。彼らも割とそれに近くて、親近感を覚えたっていうのと、あとは……あんまり頑張らないんですよね。自分たちの120%を出して、「4ピース・バンドにも勝ってやる!」みたいなのは全然なくて、自然体というか。そこがすごくいいんですよね。もちろんWhite Stripesとかも参考にしましたけど。

―先程のターニング・ポイントになったという一本のライブが、上手くいった要因というのは何だったと思いますか?

タイミング的に2人組でのやり方がわかってきた頃っていうのと、単純にかなり練習しました。一番大きかったのはベース・アンプを鳴らすっていうことで。最初はギター・アンプしか鳴らしてなかったんですけど、ライブ・ハウスの方に「最近はギターでベース・アンプを鳴らす2ピースも多いよ」って言われて、「ギターでベース・アンプ鳴らしていいんだ」って普通に驚いて(笑)。
そしたら太い音も出るし、そこでかなりベースの不在が気にならなくなりました。

―ルーパーの使用は検討しなかったのでしょうか?

もちろんルーパーも考えたんですけど、ルーパーって何ていうか、生の演奏ではなくなってしまうじゃないですか。やっぱり人間がその場で出している音がいいと思って、最初は除外したんです。でも、実は最近になってちょっと欲しくなってきていて(笑)。
僕らはドラムとギターだけなんで、当たり前なんですけど完全に手の動きと出てる音がシンクしてるんですよね。でも、見せ方的に僕らの手が止まってる時も何か音が鳴っててほしいなと最近思うようになり、ちょっとアンビエンス的に導入しようかなと今は思っています。

—2人組になったことで曲作りにおける変化はありましたか?

意外と変わっていなくて。曲の骨組みは一緒なんですよね。僕らは元々グルーヴィーなバンドではなかったんですよね。ベースもルート音担当みたいな感じだったので。

—でも、作品自体はよりセッション的な印象が強くなり、緩急をつけた自由な構成になりましたよね。

ベーシック・トラックに関しては基本的にクリックを使わずに一発録りでやろうっていうのがあって。あとは最初におっしゃったように、バンドのドキュメント的なものを録りたかったっていうのがあるので。

―セッション的な作風な故に、どの段階で完成とするか、その判断がとても難しいようにも感じました。

そうですね。やっぱりOKテイクだっていう確信がほしいので、ある意味奇跡待ちというか。「これはもう二度と再現できないな」みたいな演奏ができると、迷いなく判断を下せたりするんですよね。

—作曲面ではDeerhunter、Carpentersに影響されたと別のインタビューで答えていましたよね。Deerhuterはわかるのですが、Carpentersは具体的にどのように影響を受け、どのようにアウトプットされていると思いますか?

Deerhunterわかりました? 個人的には結構隠せてると思ったんですけどね(笑)。
Carpentersは後から気づいたっていう感じで。あの「Fascism」のAメロのところで、「このメロディ、なんか聴いたことあるんだよな」ってずっと思っていたんですけど、それが最近Carpentersだっていうことに気付いて(笑)。
僕、たぶん生まれて初めて覚えた英語の曲がCarpentersなんですよね。

―というと、結構幼少の頃から洋楽に親しんでいたのでしょうか?

そうですね。親の影響で、小学生くらいから何となく聴いてましたね。別に全然マニアックなものではなく、『ベスト・ヒット〇〇』みたいなやつですけど。

―そこから例えばDeerhunterのような、現行のインディ・ロックに辿り着くまでにはどのような変遷があったのでしょうか?

昔はそれこそミスチルとか聴いてたんですけど、現行のインディ・ロックとの出会いはたぶん高校生くらいの時にジャケ買いした『SNOOZER』で。それまでは何ていうか、音楽をそんなに真剣に聴いていなかったんですよね。なので、こんなに本気で音楽を聴いている人がいるのかっていうことに衝撃を受けて。あとは『rockin’on』とかもそうなんですけど、例えばRadioheadが来日するタイミングの号とか、彼らがすごい神格化されてて。そういう世界があるんだってことに驚きました。そこから海外の、特に現行のインディ・ロックを中心に聴くようになりましたね。

―では、今作制作時に聴いていたアーティストや作品などを教えてもらえますか?

結構いるんですよね。Last Exとか、Thee Oh Sees、もちろんDeerhunterもちょくちょく聴いてましたし。あとはミックスとかアレンジの面で参考にさせてもらったのはゆらゆら帝国やOGRE YOU ASSHOLE……というか、両バンドのアレンジなどを手掛けている石原洋さんの作品ですね。これは一体どういう考えの元にこのアレンジになっているんだろうっていうことを、勉強するために聴いてましたね。

―石原洋さんの手掛けた作品を聴いて学んだことというのは、言語化するのは難しいですか?

たぶん、おそらくなんですけど、これは石原洋さんの人生における体験としての引き出しなんだなっていうか。例えばデータのようにしてポンって出せるようなシンプルなものではないんだなっていうことがわかりました。たぶん(笑)。

—また、録音・ミックスではCan、Funkadelic、Thee Oh Sees、Bambara、幾何学模様などを参考にしたともおっしゃっていましたが、それぞれ具体的にどういった部分に反映されていると思いますか?

結構一個一個細かい部分なんですよね。例えばCanでいえば音の迫力とか質感。ドラムが埋もれないように、とか。あと、本当はなるべくディレイ、リヴァーヴを使わずに、ボーカルが遠い感じのミックスにしたかったんですけど、そこはどうも上手くできなくて、ディレイとリヴァーヴを結構使いつつ、ミックスで遠い感じにしてっていう仕上がりにして。本当はダモ鈴木さんみたいな感じにしたかったんですけど(笑)。
たぶん声質とかも関係していて、上手くできなくて。

―前作『Astroride』は8トラックMTRとマイク3本で作り上げたそうですが、今作では?

今回も普通の練習用のスタジオで録ったんですけど、それでも……マイクはトータルで4本ですね(笑)。
ドラムに関しては、初期のThe Beatlesとかも2本で録ってるし、ジャズとかは「これマイク1本だろ」っていう作品とかもあるしで、やっぱり空気感を出したいならそんなに数を多くしない方がいいだろって思って。そこは結構作為的にやりましたね。

―制作のプロセス的には、Matsuyamaさんが持ってきた曲の骨組みに、スタジオで肉付けしていくような感じでしょうか?

基本的にはそうですね。スタジオで出来た曲というのはあんまりないですね。リフとかの断片的なアイディアのようなものを僕が持ち込み、スタジオで組み立てていくっていう。そこに最初は仮歌を入れて、最後に作詞っていうスタンダードな方法だと思います。ただ、たまにどうしてもメロディが浮かばない時があるので、そういう時は歌詞を先に書きます。そこで浮かんできた言葉が導くメロディを待つっていうことも、たまにやりますね。

―結構歌がなくても成立する楽曲が多いと思いますが、ボーカルと、歌メロを入れることに対して、どのようなことを意識していますか?

前作が全部英詩だったんですけど、それもやっぱり歌でガッカリさせたくないっていう思いがあって。「歌がなければいいのに」みたいな曲とかってあるじゃないですか。特に邦楽で。せっかく演奏でいい感じの雰囲気が出来上がっているのに、ボーカルで余計なエモーショナルさとか、メッセージ性があったりとか、言葉ばっかり入ってくるとか、そういうのが嫌なんですよね。だから、一言で言えば調和というか。

―それでも全くインストにすることはせず。

そうなんですよね。それでもやっぱりボーカルがある曲のほうが基本的には好きなんですよね。そんなに前面には出さないですけど。

―作詞面ではBurghに影響されたとも語っていましたが、これは具体的にどのようなポイントに?

彼らの歌詞はやっぱりおもしろいんですよね。パッと聴きで、日本語に聴こえないんですよね。もちろんディストーションとかかかってるし、彼らもあんまりボーカルが前面に出てくる感じではないにしろ。で、それはどうしてなんだろうと聴き込んでみたら、曲の裏拍にボーカルのアクセントがあることが多いんですよね。やっぱり僕自身に染み付いていたのは頭拍というか、奇数拍にアクセントがくるメロディなんですよね。こういう風に工夫すれば、日本語っぽく聴こえないんだっていうことがわかり、だったら日本語で歌詞書いてもいいかもって思ったんですよね。

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―今のは作詞のスキル的な部分の話ですが、では詩の中身についてはどうでしょう? どのようなことを意識して書いていますか?

詩の中身については本当はどうでもいいんですよね。何か伝えたいことがあるとか、そういうのもないし、そもそもしっかりと聴かせようという意識もないんです。ただ、割ときっちりしいな性格なもので、そこでも曲の雰囲気を壊したりとか、興ざめするようなことは絶対に歌いたくないんです。なので、そこでシックリくるものができるまで練り上げます。

―例えば「Selfie」とかは結構世間に対する皮肉とかもあるのかなって思ったのですが。

「Selfie」は……あれはかなりふざけました(笑)。
今、曲の雰囲気を壊さないのが一番って言ったんですけども、本当に一番理想的なのは、作曲の段階でメロディと歌詞が同時に出てくるような曲になれば、どんなことを歌っていてもいいと思っていて。そういう人がいるじゃないですか。天才肌というか。雑味のない、ピュアな言葉というか。そういうものができれば本当はいいんですけど。

―逆に「Nightseeing」辺りにはかなり言葉遊び感がありますよね。

あの曲は初めて外に発表した日本語詩の曲だったので、多少のプレッシャーみたいなものがあって。本当はもっとナンセンスな、ただ韻を踏んでいるだけみたいな、そういう言葉遊びオンリーの歌詞にしたかったんですけど、やっぱりちょっと意味を持たせてしまったというか。僕の中では実は多少意味が通っているんですよね。

―なるほど。逆に「女の脳裏に」など、割と具体的なタイトルがあるのにもかかわらず、詩のないインスト曲もありますよね。

ハハハ(笑)。この曲はアルバムの一番最後にできた曲で。残りの9曲ができてきた頃に、これはどう考えても明るい曲じゃないぞと思って。何でしょう……言ってしまえば今作は「戦争」がテーマになっている部分もあって。そこでこの曲は戦争から帰ってくる男性を待っている女性のような気持ちとリンクすると思って。無事を祈っているけど、何だか悪い予感がするっていう。

―その「戦争」がテーマになっているということは、制作の終盤で気付いたのでしょうか?

……途中くらいですかね。あまり意識していなかったけど、やっぱり実際の世の中に影響を受けてたんだなっていう。戦争なんて思いもしなかった……っていう世の中ではなくなってきてしまっているじゃないですか。「ありえるんじゃないかな」っていう。そういうのが少しだけあったと思うんですよね。15年前、9.11が起こった時に「あ、戦争が起こっておれは死ぬかもしれない」って思ったあの感じと同じような。

―なるほど。そのように戦争というものを意識してしまうようなこの世の中において、この作品はどのような意味を持つと思いますか?

まず、絶対に反戦歌ではないですし。この作品がそういったメッセージ性を孕んでいるものでもないですし。そうですね……。

―では、この作品をリスナーにはどのように聴いてほしいですか?

Klan Aileenの音楽と相性の悪いタイプの人っていうのがいるってことがわかってきて。僕の中で個人的に共通点を見出したんですよ。あの、あんまり鬱っぽかったり、本当に落ちている人には響かないっぽいんですよね。そういった人々を引っ張るような音楽ではないんです。だから、わりと「死」とかをテーマに扱ってしまった作品なんですけど……「死なないぞ」みたいな(笑)。
なんかよくわからないんですけど、そういうテンションで聴いて欲しいっていうのはあります。

―今言われて思ったのですが、普段はしっかりと社会性、社交性を表に出して暮らしてる人が、ふとした時にひとりになって、本当の自分みたいなものに戻るために聴く、そういう感じがシックリくるのかもしれないなって。

うん……そうですね。そういう風に機能してくれたら嬉しいです。やっぱり、ひとりで聴くものですよね。

―Matsuyamaさんご自身にとって、Klan Aileenとして音楽を作る行為というのは、どのような作用があると思いますか?

それはやっぱり逃避ですよね。瞑想というかなんというか。割と目を瞑っている状態に近いんですよね。現実を見ずに、眠りだったり、夢を見ている感覚だったり。そういう感覚ですね。

―逆に、ライブはどのような意識の元に向かっているのでしょう?

結構ライブはいっぱいいっぱいで。まだライブをやる意味とか意義とか、そういうことを深く考える余裕はまだなくて。ただただ一生懸命演奏する(笑)。

―なるほど(笑)。では最後に、ありきたりではありますが、Klan Aileenとしての今後の目標や、目指していることがあれば教えてください。

すごい具体的な話になってガッカリされるかもしれないんですけど、やっぱり自分たちのスタジオが欲しいです(笑)。機材をスタジオまで運ぶのがもう嫌で(笑)。
あとは音楽的なことを言えば、2ピースとしての限界みたいなものを拡張して、他の人には真似できないサウンドが確立できればいいなって思います。

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【イベント情報】

Klan Aileen
“Klan Aileen” Headlining tour 2016

11月17日(木) 東京 WWW
開場19:00 / 開演19:30
前売り: 3,000円(+1D)/当日;3,500円(+1D)
問い合わせ:WWW 03-5458-7685
http://www-shibuya.jp/

*東京公演チケットインフォ
▼チケットぴあ 【Pコード:311-499】
http://t.pia.jp/
※電話予約あり:0570-02-9999
▼ローソンチケット 【Lコード:74173】
http://l-tike.com/
※電話予約なし
▼e+ 
http://eplus.jp/klanaileen-www/


【リリース情報】

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Klan Aileen 『Klan Aileen』
Release Date:2016.10.19 (Wed) ※世界同時発売
Label:MAGNIPH/Hostess
Cat.No.:HSE-8004
Price:¥2,500 + Tax
Tracklist:
1. 離れて
2. Fog
3. Nightseeing
4. Adrift
5. 死の集まり
6. Selfie
7. 静かに思われる
8. Happy Memories
9. 女の脳裏に
10. Fascism

※紙パッケージ、歌詞カード付
※新曲「Fog」iTunes配信&アルバム予約受付中!


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