INTERVIEW

Irmin Schmidt (CAN)

初のシングル・コレクションをリリースした伝説的バンド、CAN。そのオリジナル・メンバーが語る、バンドの特殊性

パンク、ニューウェイヴ、ポストロック、エレクトロなど、様々なジャンルに影響を与えたドイツの伝説的ロック・バンド、CAN(カン)。最近ではKanye Westが彼らの曲をサンプリングしたり、日本では岡村靖幸と石野卓球のユニット、岡村と卓球が「Turtles Have Short Legs」をカバーするなど、バンド解散後も彼らは先鋭的なアーティストに刺激を与え続けてきた。

CANは1968年に結成されて1979年まで活動したが、メンバーの多くは現代音楽やジャズ出身で、彼らにとってロックは未知の音楽。自分たちなりのロックを追求した結果、唯一無二のサウンドを生み出したのだ。そんな彼らのシングル曲を集めたコンピ『The Singles』がリリースされた。CANを初めて知るためにはうってつけの本作について、オリジナル・メンバーでキーボード担当のIrmin Schmidt(イルミン・シュミット)に話を訊いた。

Interview & Text by 村尾泰郎


―初めてのシングル集ですね。CANがシングル集を出すとは意外でした。

Irmin Schmidt:CANは実験的で長い曲が多いからシングル向きのバンドだと思われていないけれど、テレビ・ドラマの主題歌として制作してヒットした曲もあるし(「Spoon」)、最近では、ソフィア・コッポラの映画『ブリングリング』のサントラに使われたりもしているんだ(「Halleluwah」)。そういうCANの様々な面を見てもらうには、シングル集は良い企画だと思うよ。

―「I Want More」は海を渡ってイギリスでヒットしましたが、CANのなかでもダンサブルなナンバーですね。

Irmin Schmidt:CANの曲には、結構ダンス・ミュージックの要素があるんだ。「Mother Skay」は何ヶ月にも渡ってビッグ・ヒットしたからね。「I Want More」はシングルということを意識して作った曲だから、よりダンサブルな仕上がりになったんだ」

―本作にはアルバム未収録曲が入っているのも話題です。岡村と卓球がカヴァーした「Turtles Have Short Legs」もそのひとつですが、なぜアルバムに収録されなかったのでしょう。

Irmin Schmidt:これはシングル用に作った曲で、その後、新しいアルバムを作り始めたら、この曲とは全然方向性が違う作品になってアルバムに合わなくなってしまったんだ。CANはアルバムごとにサウンドが大きく変わるからね。我々は同じことはしたくないんだ。

―「Shikaku Maru Ten」もアルバム未収録曲ですが、日本人シンガーのダモ鈴木が歌う日本語歌詞(「四角、丸、点」)が不思議なムードを醸し出していますね。

Irmin Schmidt:ダモはそんな風に日本語の歌詞を時々使うことがあったんだ。この曲は初めて7拍子のリズムで演奏した。エスニックなリズムなんだけど、当時、ポップやロックでこのリズムで演奏している曲はほとんどなかったと思う。この曲以降、このリズムを結構使うようになったんだ。

―初代のボーカルが彫刻家だったアフリカ系アメリカ人のMalcolm Mooney(マルコム・ムーニー)で、2代目が日本からやってきたヒッピーのダモ鈴木です。ふたりともドイツ人ではなく、ミュージシャンとしての経験もなかったのに、バンドのボーカルに起用するなんて大胆ですね。

Irmin Schmidt:ふたりとも経験はなかったけど才能に恵まれていたんだ。我々には経験なんてどうでも良かったのさ。Malcolmの歌を初めて聴いた時は驚いたよ。これまで、ずっと歌っていたんじゃないかと思ったくらい、彼はシンガーとして素晴らしかったんだ。

―CANの曲作りのプロセスについて教えてください。即興から作り上げていくそうですね。

Irmin Schmidt:即興というより、音楽を発明していくような感覚だったね。曲を作る時は計画を立てたりせず、誰かがアクションを起こしたら、それに対して他の誰かがアクションを起こす。そうやって自然な流れで作っていった。そこで重要なのは、まわりのメンバーが何をやっているか集中して耳を澄ませることだ。そして、グルーヴが生まれたら、それをもっと完璧なものにするため即興演奏をしたんだ。

―驚かされるのは、6枚目のアルバム『Soon Over Babaluma』まで、2トラック・レコーダーだったことです。普通だったらローファイな音に聞こえるのに、CANは独特のサウンドになっていますね。そこには何かこだわりがあったのでしょうか。

Irmin Schmidt:単純にお金がなかったんだ(笑)。さっき言った方法で曲を作ると、一曲作るのに何週間も、時には何ヶ月もかかったから、経済的な問題でスタジオを使うことはできなかった。そこで、自分たちのスタジオでセッションをして、それをすべてを2トラック・レコーダーで録音したんだ(彼らは城館を知り合いから無料で借りて、そこに自分たちのスタジオを作って共同生活を送った)。そして、録音した音源をエディットしたりダビングしたりしたから、独特の音になったんじゃないかな」

―曲の作りの方法も、録音の仕方も独特だったんですね。今年4月にイギリスで、あなたが主宰した”THE CAN PROJECT”というコンサートが開催されました。これはどのようなものだったのでしょう。

Irmin Schmidt:”The Can Project”は、第一部で私が作曲したオーケストラ曲を交響楽団が演奏し、第二部ではThurston Moore(サーストン・ムーア)がCANへのオマージュとなるライブをキュレーションしてくれた。オーケストラ曲はCANの曲を再現したのではなく、オーケストラ曲にCANを引用したんだ。もし、東京でも同じ内容でやれるなら、ぜひやってみたいと思うよ。


【リリース情報】

CAN 『The Singles』
Release Date:2017.06.16 (Fri.)
Price:¥2,300 + Tax
Label:Traffic
Cat.No.:TRCP-214
Tracklist:
1. Soul Desert
2. She Brings The Rain
3. Spoon
4. Shikako Maru Ten
5. Turtles Have Short Legs
6. Halleluwah (Edit)
7. Vitamin C
8. I’m So Green
9. Mushroom
10. Moonshake
11. Future Days (Edit)
12. Dizzy Dizzy (Edit)
13. Splash (Edit)
14. Hunters And Collectors (Edit)
15. Vernal Equinox (Edit)
16. I Want More
17. …And More
18. Silent Night
19. Cascade Waltz
20. Don’t Say No (Edit)
21. Return
22. Can Can
23. Hoolah Hoolah (Edit)

※解説 / 歌詞対訳付
※HQCD(高音質CD)仕様

Spincoaster

Spincoaster

Spincoaster(スピンコースター)は、独自に厳選した国内外の新鋭MUSICを紹介する音楽情報メディアです。