INTERVIEW

City Your City

待望の1stアルバムをリリースしたCity Your City インタビュー――性格も特性も全く異なるふたりが提唱する「新しいポップス」の形とは

海外の先鋭的なインディ・アクト、特にビート・ミュージックやオルタネイティヴなR&Bシーンと共鳴し、肩を並べるかのようなサウンドだけでなく、そのヴィジュアル面でのブランディングも含めてて注目を集めているyahyel。一方、このk-overとTPSOUNDのふたりからなるCity Your Cityは、おそらく参照点こそは近いものの、敢えて日本人ならではのアイデンティティを保ちながら同様のアプローチを行うユニットだといえるだろう。

フューチャー・ベース・ライクな音センスやトラップ〜2stepなどといった様々な要素を巧みに吸収しながらも、それをあくまでも日本語詞のポップ・ソングとしてアウトプットするそのスタイルは、確かにあまり比較対象のない独創的なアイディアだと言うことが出来るだろう。

顔出しもなく、未だライブ活動も少ないということもあり、未だ匿名性の高い状態である彼らに様々な質問をぶつけるべく、インタビューを敢行。実際に直面するとその謎多きパブリック・イメージとは異なり、かなり気さくな一面を見せてくれた彼ら。ふたりの出会いからCity Your City結成の経緯、そしてこのユニットのコンセプトまで、包み隠さず話してくれた。

Interview by Yuma Yamada
Photo by Takazumi Hosaka


―まず、ユニット結成前から共作などを重ねていたおふたりが、いざCity Your Cityを結成したキッカケなどを教えて頂けますでしょうか?

TPSOUND:元々は音楽活動を通して出会った先輩後輩みたいな関係性で。一時ちょっと離れてもいたんですが、Fragment(City Your Cityが所属する〈術ノ穴〉の主宰のトラックメイカー・デュオ)のインストア・ライブを観に行った時に、k-overさんとたまたま会って、そこで「なんか一緒に作ってみようか」っていう話をしたのが始まりですね。そこからちょっと経った後に本格化して、〈術ノ穴〉の『Hello!!!』っていうコンピに、k-over × TPSOUNDの共作みたいな形で曲が収録されて。それが結構いい感じだったので、City Your CItyとしてきっちりスタートしようかってなりましたね。

―ちなみに、おふたりの最初の出会いは?

TPSOUND:10年くらい前、k-overさんはbugficsっていうバンドをやっていたんです。で、僕がバイトをしていた居酒屋に、そのバンドのドラムの方が来て、「今度ライブやるからきなよ」って言われてライブを観に行って。その時は僕もバンドをやってたっていうのもあって、そこから仲良くしてもらった感じですね(笑)。

―バンドマン同士の横の繋がりみたいな。

TPSOUND:そうですね。本当、偶然みたいな感じで。〈術ノ穴〉とも僕はそういう繋がりで所属できましたし。

―元々やっていたバンドというのはどういうジャンルだったんですか?

TPSOUND:僕は正直あんまり本腰入れてやってるものではなくて、最初はRADWIMPSみたいになりたいなと思ってましたね(笑)。k-overさんはもっとちゃんとやってましたけど。

k-over:僕はFUGAZIってバンドがすごく好きで。

―ゴリゴリのハードコアじゃないですか(笑)。

k-over:その時はワシントンDC辺りのバンドにものすごくハマっていたのと同時に、中高生の時にずっとハマっていたUKロックも根底にあったので、そういうUKロック的な要素とFUGAZIみたいなハードな演奏をかけ合わせて、さらにそこに日本語詞を乗っけるっていうのを目指していました。

―日本語詞へのこだわりは、その時からCity Your Cityまで地続きだったんですね。

k-over:日本語詞にこだわっていってるっていうのは昔から一貫してありますね。当時は男性目線で普通の自分の内面的な部分を表現していたんですけど、今はそれを女性目線で書いてるっていうのが違うぐらいで。

―k-overさんはUKロックなどがルーツにあるとのことですが、TPSOUNDさんのルーツは?

TPSOUND:最初はRADWIMPSが大好きで、高校生ぐらいの頃にボーカルをやろうと思って東京に出てきたんですが、「ボーカル、難しいな」って(笑)。
それで次はギタボだったらできるかもと思い、ギターを始めてみて、バンド組もうと思ったんですけど技術もあまりなかったんで、なかなか組めずにいました。
そこら辺からレッチリを聴き始めたんですけど、レッチリのJohn Frusciante(ジョン・フルシアンテ)のバックグランドの幅がすごい広いんですよね。そういう彼のバックグラウンドを追いかけていくうちにバァーっと広がっていって、King CrimsonとかPink Floydみたいなプログレも大好きになって。他にもAphex Twinみたいなテクノ、エレクトロニカとか、60年代〜70年代とかの音楽にも芋づる形式で手を出していって……その中でRedioheadに出会って、すごい感動する、みたいな感じで(笑)。
結構k-overさんともリンクしてる部分もあるんですけど、あとはNumber Girl大好きになり、そっから凛として時雨も好きになっていったりしたんですが、ちょうどその頃に汲んでたバンドのメンバーが、「ワンマン・バンドすぎる」って言って僕から離れていっちゃって。やることがなくなっちゃったんです(笑)。
そこで前から聴いていたエレクトロニカ方面をひとりで作ってみようかと思ったんです。James BrakeとかMount Kimbie辺りもすごい好きだったので。

―そこからDTMに入ったと。

TPSOUND:そうですね。あとはYMOもかなり大きな衝撃で。それ以来テクノとかにどっぷりハマっちゃって。好きになったアーティストが好きなアーティストを〜っていう感じでドンドン遡っていって、モータウンとかも聴いたりしてましたね。

―音楽をディグる際はレコード・ショップなどで? それともインターネットでしたか?

TPSOUND:インターネットですね。もしくは本とかです。好きなアーティストの自伝とか。それこそさっき話したJohn Fruscianteの特集だけでまるまる一冊、みたいな本もあって、そういうのはめちゃくちゃ参考にしてましたね。彼のおすすめのアルバムが100枚載ってたりしたんですけど、それがまた超センス良くて。CANとかも入ってたり、すごいアングラな作品からいい感じのポップスまで入ってて、そういうのは片っ端からチェックしていきましたね。まぁ、今尊敬してるのはやっぱり細野晴臣さんですね。YMO、ヤバいんで(笑)。

―では、k-overさんのルーツというか音楽遍歴のことをもうちょっと具体的にお訊きできますか?

k-over:先程話したUKロックから派生して、Pavementっていうバンドにものすごくハマってた時期があって、ポップスなんですけどひねくれていて、コード進行だったり展開だったりがむちゃくちゃだけど、それが一つの色になっている。そこからOf Montralとかにも派生して、UKインディからUSインディにどんどん夢中になっていったんです。Sonic Youthみたいなグランジ系を経由して、その流れでワシントンDCの方にいきましたね。
あとはTortoiseとかポスト・ロックみたいなものにもかなりハマって。それまではロック中心に聴いていたんですけど、Björkの「Vespertine」っていうアルバムがキッカケで、かなり方向転換するようになりました。

―エレクトロニックな方向に。

k-over:はい、それで〈術ノ穴〉主宰のFragmentとかと一緒に「どの音楽がヤバい」みたいな話をするようになりまして、Autechreとかから入っていって、John Cageみたいな実験系〜ノイズ音楽にもハマっていって。でも、そうしていく内に「これってポップじゃないよね」ってことに気づく瞬間があって。そういう実験的な要素を、ポップなところで昇華してるのがJim O’Rourke(ジム・オルーク)で、彼にはすごい影響を受けましたね。そういう経歴を経ているからか、自分では色々な要素が混ざり合ってる音楽がやりたいなっていう気持ちがずっとありました。

―今やられているサウンドは、ざっくり言ってしまえばオルタナティヴなR&Bだと言えると思います。それは今、海外で先鋭的なサウンドとして鳴っているから、そことリンクしたという感じなのでしょうか? それとも昔からR&Bに対する思い入れなどが?

k-over:父親が結構R&B好きで。90年代のMariah Careyとかを親父と一緒に聴いてたりして、そこから遡ってThe Supremes聴いたりとか、そういう音楽体験もあったんです。あとは、今のサウンドに落ち着いたのは、最近で言えばThe WeekndとかSOHNとかにハマったっていうのが大きいかもしれないですね。

―なるほど。特にThe Weekndは初期の頃、ちょっとエレクトロニカ、アンビエントっぽいところもりましたしね。

k-over:そうなんです。あとはinc.とかもすごい好きだったんですよね。

―その辺りの流れを汲んだサウンドだと、日本にはyahyelのような存在もいますがどうでしょうか?

TPSOUND:yahyelとかSuchmosとかD.A.N.もそうですけど、そういうちょっとクールな海外路線のアーティストが先に出てくれたから、道を作ってくれたなっていう風に感じていて。

k-over:それは間違いなくあるよね。The fin.とかもそうだよね。

TPSOUND:それは本当に素晴らしいことだなと思います。yahyelはコンセプトもシッカリしてるし。

―土壌が作られたみたいな感じですかね。

TPSOUND:そうですね、窓口を広げてくれたというか。僕たちは結構今ふわふわしていて。ネット・レーベルみたいな界隈と結びつくのか、それともyahyelみたいな海外のインディな音楽とリンクしているような界隈なのか。そこは自分たちにはまだちょっとわからないんですが、僕らの希望を言えば、そういう海外のサウンドと共鳴している方面にいきたいっていう気持ちがあるので、そういう土壌ができつつあるのはすごいチャンスなのかなって思っています。

k-over:ネット・レーベルみたいなのが流行って、成熟していった結果、今はフィジカルではないけど、フィジカルっぽい匂いのする人たちがいっぱいいますよね。僕らもそういったフィジカルよりの動きをしてるので、そこら辺の流れとは一緒にやっていけたらいいなっていうのはありますね。ジャンルは違いますけど、〈TREKKIE TRAX〉みたいな素晴らしいひとたちもたくさんいますし。

ーなるほど。では、話を本筋に戻しまして、結成の経緯まではお聞きしましたが、いざCity Your Cityとして本腰を入れて活動しようと思ったタイミングを教えてもらえますか?

TPSOUND:まぁ、流れみたいな感じですかね。一緒に曲を作っていく中で、コンセプトみたいなものが結構固まってきて。そっちのコンセプトに引っ張られてやっていくうちに、「これはいいね、イケるんじゃないか?」みたいな感じで。

―そのコンセプトとはどういったものですか?

TPSOUND:僕があんまり、日本の今のビート・シーンというかエレクトロニック・ミュージックのシーンにあまり納得がいかないところがあって(笑)。生意気ながらも「おれだったらもっとできるのに」っていうモヤモヤとした気持ちをずっと抱えていたんです。その中で、k-overさんと一緒にやるって話が出てきて、やるんなら試しにちょっとギャグみたいな感じで、今までお互いがやってきたことの真逆のことをやってみませんか、て。僕は結構アングラなビートを作ったりとかしてて、k-overさんも全然違うことやってたんですけど、ふたりでやる時はもう超ポップスで攻めて、シーンを崩してやろうぜ、みたいなノリでスタートして。

そのノリに引っ張られる形で、超オシャレで、ポップで、先鋭的なビート・ミュージックでっていうコンセプトが固まりました。で、いざ曲を発表してみたらやっぱり反応がよくて。「あぁ、やっぱり間違ってなかったじゃん」っていう手応えを感じたので、そのままコンセプトを研ぎ澄ましていったっていう感じですね。本当に、売れ線といっていいのかわかんないんですけど(笑)。

―それはアングラな視点からポップス、売れ線みたいなものを見極めてやっていこうというような狙いも?

TPSOUND:そうですね。

k-over:音はアングラなままで、でも「J-POPなんじゃないか?」っていうぐらいのポップさだったり、誰でも簡単にわかるような歌詞とかメロディを合わせたものが、今のシーンの中にはあまりないかもしれないって思ったのがキッカケで。
もちろんtofubeatsさんとかがメジャーの第一線でやってらっしゃるし、Seihoさんみたいにアングラなことをやられてる人のこともリスペクトしつつ、我々の中では少しそれとはまたちょっと違うもの、メジャーをある程度見据えて、メジャー・シーンの中に僕らの音で、何かアクションが起こせたらいいなっていうのは常に思っています。

ーtofubeatsさんとかSeihoさんとか、国内のネットを中心としたシーンから出てきたプロデューサーたちと、City Your Cityはどこが一番異なるポイントだと思いますか?

TPSOUND:Seihoさんは最近の曲もアングラというかコアな感じで、本当にセンスがあるなあと思っていて。上から目線で申し訳ないんですけど(笑)。
ただ、最近は「本当はもっとできるんだけど、敢えてポップスをやる」みたいなことをみんな考えている時期なのかなって思っていて。その中でも、ビートがしっかりコアな層にもウケて、でも歌メロはポップでっていうものをやることで、それを如実に、より明確に示すことが今だったらできるのかなと思っています。

―そういうバランス感覚みたいな。

TPSOUND:そうですね、そこが他のトラックメイカー/ビートメイカーとは大きく違うポイントなんじゃないかなって。

―曲作りの話に入らせてもらいます。おふたりともCity Your City以前から個人で曲作りされていましたが、City Your Cityの曲として作る時に意識してるポイントやイメージしている世界観などを教えてもらえますか?

TPSOUND:曲作りの面では、真似をすることですね。結局、今流行っている海外の音とかのレベルにもっていくには、真似しないと無理だと思っていて。僕は今流行りの音とかは全然疎いので、正直興味はないんですけど、その上で自分なりに解釈しながら真似してみて、「(自分でも)できるじゃん!」ってなったら、「じゃあ、ここからこういう風に変えていこう」っていう感じで作っていくことが多いです。
結局、僕が尊敬するようなアーティストとかも、色々な音楽を聴いて、それを真似しながらオリジナリティを構築していったんだと思うんです。だから、それを上手いこと今までの自分の経験とかと混ぜていって、それが結果的に「新しいモノ」に見えたらラッキーだなって感じです。

k-over:彼はすごい器用なので、パッと曲を聴いたら、「それっぽい感じの音」に仕上げるっていうことがすぐできちゃうんです。そこからどんどんミックスしていったり、僕の歌が乗っかったりするうちに、曲がどんどんリフレッシュされていくんですよね。言うなればリミックスみたいな形で。
で、彼は本当はそんなに最先端の音楽を毎日チェックしているっていうようなタイプではなくて、どちらかというと彼の持ち味や感性で曲を作るタイプなんだなっていうのをすごく感じるんです。さっきも言ってましたけど、今めちゃめちゃハマってるのはYMOとかなんで。彼のような本当に自分が好きなものを追求し続けるタイプの人が、最先端の音楽をフラっと聴いた時の化学反応みたいなものがおもしろくて。なので、今流行っているものそのまんまっていう感じではなく、ちょっと異物感のあるものができてるなっていう実感があって、僕はそこが楽しいんですよね。

―ちなみに。真似をするものはどのようにして選択を?

TPSOUND:k-overさんが持ってきてくれるやつです。彼は最先端なんで、ミスター最先端(笑)。

―ただ、今の時代、最先端という基準がかなり見えにくくなってきましたよね。ネットの発達によって、諸々可視化された結果、一体どこが先端なのかが非常にわかりづらくなった。

TPSOUND:でも、やっぱり僕らが指標としているものは海外のポップスとかクラブ・シーンのものですね。クラブっていってもDJ SnakeみたいなEDMとかトラップみたいものとは離れていますけど。そういうところを選んでると思います。

―では、k-overさんはどういう意識で選ばれていますか?

k-over:元々僕は〈Warp〉とか、その辺りの音楽が好きなので、そういう人たちが最近でやってる音とかを聴きつつ、それにプラスしてJustin Bieberのような今時のポップスに通じてる部分や、活かせる部分を見つけて選ぶようにしています。それを彼に聴かせて、作ってもらうんですけど、絶対にそのまんまじゃなくて、彼の個性みたいなものが滲み出てくるんですよね。

―なるほど、それがCity Your Cityっぽさになる。

k-over:かなと思ってます(笑)。もちろんJukeとかTwerkとかにもチャレンジしたこともあるんですけど、まだ形にはできず。今後どこかの機会でやるかもしれないですね。

―でも、今作『N/S』で言えば既にトラップっぽいビートも取り入れていますよね。例えば「shy」とか。

k-over:そうですね。あくまで「トラップっぽい」って感じ。まんまではないんですけど。それは多分僕がDrakeとか6lack(ブラック)を好きだからだと思いますね。

TPSOUND:あぁそうですね。Drakeは聴けって言われてました(笑)。

―実際に楽曲を作る時の制作プロセスはどのようなものですか?

TPSOUND:基本は僕がトラックをバーっと作って送って、k-overさんが歌を乗っけて送り返してくれて、そこからまた作り直して……っていう感じで、ほぼデータの交換でやっていますね。あと、最近ではk-overさんがほぼ主体で、僕が編曲のような形で参加している曲もあるんです。今回のアルバムの中でいうと「□△○」と「night」っていう曲とかがそうですね。他には弾き語りみたいなので作ってもらって、それを僕がリミックスするみたいな感じで完全に違う曲に仕上げるパターンもありますね。

k-over:作曲は彼がメインで、彼が作ってきたモノに対して、僕がメロディと歌詞を乗せていってという作り方が多いですね。それからふたりで直接会ってミックスだったり、音の抜き差しであったり、構成を変えたりっていうのをやっていますね。

―では、ほとんど曲先行?

TPSOUND:完全に曲が先ですね。正直、僕は全く歌詞に興味がなくて(笑)。歌詞はk-overさんに任せていて、僕はトラックをっていう感じですね。たまにちょっと音的に難しいとか、歌詞の長さ的にあわないなって思ったら歌の面を直してもらうぐらいな感じで。

k-over:基本的には曲が先で、歌詞は毎日書いたりしているのでストックがあるんです。なので、このトラックに合うなっていうのを持ってきて、そこから曲のイメージに合わせて膨らませていったりしますね。最初は1フレーズとか3行4行くらいのところからスタートして、そこから調整していくのが多いと思います。今TPが言ったように、「もう少し歌詞を短くしたほうがいい」とか、韻とか語呂を相談したりっていうのはありますけど。

―基本的には結構分業制だと。

k-over:そうですね。その方が案外予期せぬキャッチボールが起こることとかもあって。

TPSOUND:僕らの曲作りはめちゃめちゃ早くて、1日で終わったりとかもします。

k-over:ミックスとかのほうが時間がかかっていますね。

―City Your Cityのリリックは全て女性目線となっていますが、そのアイディアはどこから生まれたのでしょうか?

k-over:マッチョイズムというか、男性性を強く打ち出しているモノにそこまでコミットできないっていうのがまずひとつ。今でいうとジェンダーレスっていう言葉もあると思うんですけど、人間は男だろうが女だろうがどちらも様々な感情を持っているし、男らしい女性もいれば、女性らしい男性もいると思うんですね。そういった誰もが抱える様々な感情を、ちょっと女性寄りにしてみたらおもしろいんじゃないかなって思ったのがもうひとつのキッカケですね。

―なるほど。内容自体はかなり具体的な物語性を擁したものが多いですよね。歌詞を作る際はどのようなことから着想を得て作っていますか?

k-over:海外のアーティストのリリックの翻訳を読んだりとか、実際に言われたこと、映画やコミック、ドラマの一部から自分が感じたことを自分なりに解釈しています。それをひとつの物語にしたらおもしろいんじゃないかなって。

―頭の中にはひとつのストーリーが出来上がっているような感じですか?

k-over:そうですね、たいてい最初にひとつのフレーズがあって、そこから大きく広げていくんですけど、大きくなりすぎるとやっぱり3〜4分の曲には収まらないんですよね。僕は3分から4分ぐらいの曲がすごい好きなんですよ。だからそれぐらいに物語が収まるように歌詞を書いていますね。

―City Your Cityの楽曲においても、3〜4分という尺は意識されていますか?

k-over:そうですね、自分が耳にしてきた何回も聴けるポップスっていうのはやっぱりそれぐらいの長さなんですよね。楽曲として優れている曲であったり、5〜6分くらいの長尺でもテクノみたいにループが気持ちいい音楽っていうものもあると思うんですが、このユニットでやっているのはポップスなので、そこはこだわってやっています。

―先程、このユニットがスタートするキッカケのような部分に、現状のシーンに対するモヤモヤとした気持ちがあった、つまりはある種のカウンター的な思想があったとおっしゃっていましたが、コンセプトなどを作りこんでいく上で、リスナーや受け手を意識していましたか?

TPSOUND:それは作っていく上で、後からついてくるものなのかなと思っていて。結局そういうのを意識し過ぎちゃうと、ずっとフワフワしちゃうと思うんですよね。だからある程度こっちの方で固めたものを出していかないと、結局周りに流されてそのまま終わっていくような気がしていて。それは楽曲も同じだと思っています。だから、こっちからプレゼンテーションしていくような感じでやっていくのが一番いいのかと思っていますね。

―「こういう形のモノはどうか?」と、新たな視点を提示するというか。

TPSOUND:そうですね。まだ固まりきったとは言えないですけど、自分たちのコンセプトとしてギュッと詰めたものを提示する。大き過ぎると受け手が掴めないので、ある程度小出しにして、より伝わりやすいと思う形で。その中に自分たちらしい要素を入れ込んでいけたら一番いいかなって思いますね。まぁ、本当に周りは気にしないようにしてますね。海外を見据えて、それに負けないようにしようっていうことだけを考えつつ。

―ヴィジュアルに対する世界観とかコンセプトみたいなものってありますか?

TPSOUND:最初に顔を隠すっていうテーマで「choice」を作っちゃったんで、今も引き続きそこに準じてやってるような形です。正直に言ってしまえば、僕もk-overさんもあんまりアイコンとしては成立しないと思っていて。なので、そこを逆に活かして、打開するには顔出しを極力しないことで、オシャレ感を出していきたい。
最初に僕が「choice」のジャケット案を、「顔を半分隠してイカスミスパゲッティ食べたらおもしろいんじゃないすか?」みたいな感じで出して。試しにやってみたら思いの外よかったので、そのトンマナに準じてるうちに、それが「オシャレじゃん」っていう風に言ってもらえるようになったんです。本当はちょっと変えたいんですけど(笑)。

k-over:このユニットを組んだ理由も「やってみようか」から始まったので、全部自分たちが今までやったことないことをやってみようみたいな感じでやっていて。コンセプト的な面で言えば、女の子の顔が全部出るとイメージがそこで固定されてしまうので、ある程度顔は隠れていた方が色々なことを想像できるし楽しめるんじゃないかなっていうところからきています。
全部を曝け出すっていうのは、映画とかアニメとかもそうですけど、「100%全部理解できる」とか、「これはこうです」っていう全て説明がなされているような作品だったら、予告編だけで十分だと思うんですよね。たぶん、そういう映画とかを観ても全然おもしろくもなんともないし、「なんだったんだろあれは?」とか「なんか繋がってないぞ」っていうような感想が残る作品の方が何回も観たくなったりする。なので、自分たちの作品にもそういうところを残しておきたい。自分が単純に楽しいなっていうのもあるんで、そういうところは重要視してますね。

―City Your Cityって名前もそうですけど、都会とか洗練されたものみたいなものを打ち出してるのかなと思ったんですが、意外とそういう単語は出てこないですね。

TPSOUND:このCity Your Cityっていう名前は、もともと僕が大宮のヒソミネっていうライブハウスで店長をやっていたときに、TPSOUNDって名義で出たくないから作ったサブ垢みたいなものなんです(笑)。
k-over × TPSOUNDのコラボをやった時に「なんかやってみなよ」っていう話を〈術ノ穴〉のオーナーから言われて、その時に「City Your Cityって名前が余ってますよ」って(笑)。
もしかしたら、その名前に準じた曲を作ってみようっていう意識は頭の片隅にはあったかもしれないですね。それこそシティ・ポップみたいな。

k-over:都会感があるというかアーバンというか、そういったものが世の中に結構あったので、それを僕たちなりの解釈で作ってみたらどうなのかなっていう部分はありましたね。

TPSOUND:僕たちは本当に洗練されてないんで(笑)。

k-over:やっぱり僕らはさっきも言ったように、ある種カウンター的な気持ちで始めているので、「僕らが今流行りのことを敢えてやったらどうなるのか?」っていうところは確かにあるんです。でも、実際自分たちがそんなにシティポップみたいなものを聴いて育ってるわけじゃないので、自分らなりのシティ・ポップ感みたいなものを勝手に作り出しているんじゃないかなって。

―個人的には今作の中でも「neon」がすごく気に入っていて。曲もキャッチーだし、「充足感は確かにあるけど、どこか物足りない」というような歌詞も素晴らしかったです。それぞれの楽曲でアルバムの中の位置付けについてはどのように考えられていますか?

k-over:ありがとうございます。この曲はまず最初に、すごい狭い部屋に男女がいる情景が思い浮かんできて。その部屋で男女が何年も何年も過ごしていると、やっぱり色々なわだかまりっていうのが出てくるじゃないですか。
それこそ「充足はしてるけど、どこか物足りない」っていうのはまさにあの曲の主題で。「80点〜70点ぐらいの生活をずっと続けてるけど、あと20点〜30点の部分で私たちには何が足りないのかな?」っていうのを、「自分だけで考えるんじゃなくて、相手からも提案してくれたらもっといいな」っていう。そういうイメージであの曲は書きました。
他の曲に関しても同様のテーマがあって。例えば「night」っていう曲で言えば、これは寝てる間にひとりでフラフラ街に出て、タクシーに乗って全然知らない街に出て、別に浮気をするわけでもなくひとりで小旅行する、みたいな。別にそのままでも満ち足りてるんだけど、その小旅行によっていつもの空白を少しだけ埋めれるかもっていう願望みたいなものを描いていて。一緒にいすぎたら見えるものも見えなくなるから、相手も相手で考えて欲しいし、お互いに少しひとりになれる時間もあったらいいなぁ、みたいな歌詞だったりするんですけど……。

TPSOUND:……なるほど(笑)。

k-over:まぁ、そういう感じでひとつテーマを作って、あんまりスケールは大きくしないようにっていうのはこだわっていますね。

TPSOUND:k-overさんは歌詞を書くのも早いんですよ。

―曲作るのも早くて歌詞を書くのも早い(笑)。

TPSOUND:そう。いつも1時間ぐらいで終わるから、「早いなぁ〜」って思ってます。

―それぞれこのアルバムで特に気に入ってる曲は?

TPSOUND:う〜〜ん、なんだろう。2曲いいですか?

―もちろん。

TPSOUND:「impression」と「shy」かな……。もしくは「card」。あれ、3曲?(笑)

―具体的にどういうところが気に入ってるポイントですか?

TPSOUND:クオリティ的に海外路線に食いこめたんじゃないかなと思えるし、本当に自分で聴いてもこれはいいなぁって思えるようなところかな。全体的な話ではなく、トラックの細部に注目してもらえれば、UKのエレクトロ・シーンとかを好きだった人が聴いたら、気に入ってもらえるんじゃないかなって。自分の中ではとにかくクオリティ高いものが作れたっていう自負がありますね。

―では、k-overさんはどうでしょうか?

k-over:僕は「shy」と「neon」ですね。どちらもシングル曲なんですけど、「shy」は今回のアルバムでは最後から3番目ぐらいにできた曲で、もともとは全然違うトラックがあったものが、僕のボーカルだけは生かしつつ、リミックスをするような感じで再構築して出来上がった曲なんです。

TPSOUND:本当に最後の1週間ぐらいで出来た曲で。前のトラックが中途半端だなって思って、だったらトラック捨てて新しいものを作ればいいじゃんみたいな感じで作りました。

k-over:トラック面に関しても、確かに勢いで作った感じもあるんですけど、それが上手くハマった曲ではありますね。

TPSOUND:僕はあの曲の後半がすごい好きで……。

k-over:じゃあ「shy」を挙げとけばよかったじゃん(笑)。

TPSOUND:後半の旋律とかが日本っぽいんですよね。それが洋楽と邦楽の折衷感っぽくて。

k-over:「neon」に関しては歌詞が出来た瞬間に、「あぁいけるな」っていう手応えがあって。サビが「願うのは健康だけ」っていう歌詞で、よく考えればかなり変な歌詞なんですけど、出来た時は自分では全くそう思わなかったんです。何人かの人に「ちょっと変わった歌詞だね」って言われたりしても、自分的には「この曲にはこの歌詞しかない」っていう自信みたいなものがあって。なので、この曲に関しては思い入れがありますね。

―City Your Cityのようなシンガー + トラックメイカーのユニットのような形態をとるアーティストが今後増えてくると個人的には思っているのですが、今後活動していくなかで、City Your Cityとしてどのような立ち位置にいたいと思いますか?

TPSOUND:そこを今探っているところで、1stの反応も見ながらですが、今考えているのはライブとして魅せていくんだったら歌先行な感じではなく、ビート主体になっていかないとクラブとかでは負けちゃうのかなと思っていて。勝っていくためにはもっとビートを効かせた感じのトラックに、J-POP的な歌っていう組み合わせが強みになっていくんじゃないかと。なので、たぶん今後はもっとそっち寄りにシフトしていくと思います。そしたらクラブでの需要も増えるだろうし。

k-over:もともとはビート的な要素を全面的に好きで始めていったというのがあるので、それこそ最終的にはBonoboのライブ・セットみたいなものもやりたくて。

TPSOUND:ビート・ミュージックだけど、バンド編成で。

k-over:そう。bonoboとかRATATATとかDisclosureとか、彼らのようなエレクトロニック・ミュージックの魅せ方っていうものを模索しつつ、時には「neon」みたいな曲でシットリ聴かせる、っていうようなライブができたらなって思いますね。

―City Your Cityとしては、このままのコンセプトでどんどん歩を進めていくのか、それとも作品毎に新たなコンセプトを打ち出していくのか、そういった先々のことを話し合ったりはしていますか?

TPSOUND:実は今迷っているところで(笑)。多分作品毎で区切っていく形にはなっていくけど、一番の根幹である海外路線のトラックとJ-POPの融合っていう部分は崩さないようにして、その上でとことん遊べたらいいなって。本当に衣装から何から変えてもおもしろいかもしれないし。まぁ今回の作品は1枚目なので、シングルはいっぱい入っているみたいな感じなんですけど、次は何か一貫とした流れのあるコンセプチュアルなものなるかもしれないし。本当にどっちかにした方が聴き手としてはやっぱりおもしろいのかなって思うんですよね。

k-over:補足みたいになりますけど、今回の作品は「既存のポップスを僕らなりに解釈した新しいポップス」みたいなものを提示したかったっていう想いが強くあって。その想いの元、自分たちの今やりたかったことをとことん1曲ずつ追求していったら、シングル集みたいな今回のアルバムが出来上がりました。
ただ、これが出来上がった段階で、ふたりで次はちょっとコンセプチュアルな作品みたいなものを出してみてもおもしろいんじゃないかなっていう話になったんです。例えばYMOとかTalking Headsのように、1枚毎にガラッと作品が変わるのもアリなんじゃないかって。
でも、さっきも言ってましたけど、僕ら曲作るのは割と早めなので、いろんなパターンで曲をどんどん作っていった中で、その時その時のタイミングで、最適なものを出していきたいなって思いますね。

―なるほど。ちなみに、おふたりは普段から自分が今興味を持っている音楽、サウンドやトレンドなどは共有されていますか?
制作に際してとかではなく。

TPSOUND:いや、ほとんどしてないですよね。

k-over:お互いにはあまりしないよね。それぞれ別の音楽仲間とかと話したりしていますね。曲作りに臨むときくらいしか音楽の話はしないかもしれませんね。だから、「これが今海外では流行ってて〜」っていう話で盛り上がるみたいなことはほぼないですね。

TPSOUND:たまーに、話の中でちょっと出てくるぐらいかもしれないですね。「あの曲いいんすよ」みたいな感じで。

k-over:まぁ後付かもしれないけど、そこはある意味重要視してて。共有しないのが僕らのいいところかなっていうのもあるんですよね。

TPSOUND:え、そうなんですか?(笑)

k-over:僕は勝手にそう思ってる。僕は海外の流行とかを追っかけているけど、彼は今のトレンドが入ってるような音楽っていうのはあんまり気にしてない。それが逆の強みなのかなっていうのはありますね。

―違うタイプの人間同士が集まって作るからこそ、おもしろい。

k-over:そうですね、性格も全然違うので(笑)。

―意図せぬところからオリジナリティが滲み出てくるというか。

k-over:はい。まさにそれなんですよね。そういったオリジナリティを上手く活かせているのが、僕らの強みなのかなって。


【リリース情報】

City Your City 『N/S』
Release Date:2017.05.10 (Wed.)
Price:¥2,000 + Tax
Cat.No.:sube-054 / XQND-1001
Tracklist:
1. choice
2. insomnia
3. shy
4. night
5. share
6. □△○
7. card
8. neon
9. impression
10. nude

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