Bloc Party(ブロック・パーティ)に一体何が。今年の10月に公開されたアーティスト写真と「The Love Within」のMVは我々が知っていたBloc Partyとは大きく異なるものだった。Justin Harris(ジャスティン・ハリス)、Louise Bartle(ルイーズ・バートル)の2名をメンバーに迎え入れ、来年1月に発売する5作目のアルバム『HYMNS(ヒムズ)』も、従来のギターロックから、UKガレージ・シーンを髣髴とさせるエレクトロニック・ミュージックを主体とした作品となっている。
今回その辺りの変化を踏まえ、先月開催された第11回Hostess Club Weekenderで3年ぶりの来日を果たしたBloc PartyのオリジナルメンバーであるKele Okereke(ケリー・オケレケ)とRussell Lissack(ラッセル・リサック)に、出演直前インタビューを敢行した。
彼らにとっては特に大きな変化ではなく、これは自然な流れであったと語る―。
(Text by Kohei Nojima / Photo by Haruki Matsui)
—Bloc Partyとしては3年ぶり、新しい体制では初めての来日ですね。
Kele:昨日日本に着いたばかりで、正直少し時差ボケ中なんだけど、それ以外は最高だよ! 3年間も空いちゃったのは長すぎたね。
Russell:新メンバーは二人とも日本が初めてだし、みんな興奮しているよ。
—それでは、Justin(Ba.)、Louise(Dr.)の加入の経緯を教えて下さい。
Kele:Justinのことは何年も前から知っていて。彼の前のバンドとはアメリカで一緒にツアーをやったんだけど、その時にすごく良いなと思っていたんだよね。Louiseは、彼女がYouTubeでドラムを叩いている映像をUPしているのを見つけたのがキッカケで。実際に会ってみたらとても気が合ったから、参加してもらうことにしたんだ。Louiseが加入したのは、今度出るアルバムの一番最後の段階だったね。
—新しいドラマーを探す時に、女性を入れたいという思いは当初からありましたか?
Kele:実は2013年の終わりくらいに女性のドラマーと一緒にやっていて。その時の感触がすごく良かったんだよね。バンドの中の力関係や関係性がすごく上手くいく感じがしていて。最初からそういうつもりではなかったんだけど、もしかしたら女性のドラマーを探していたのかもね。
—来年の1月にリリースする『HYMNS(ヒムズ)』についてお伺いします。これまでとは違った、チャレンジングな作品だと思いました。「スピリチュアルな側面を持った音楽」、「僕や僕が大切とするもの全てにとって神秘的な音楽」を作ろうとしたとオフィシャルの資料には載っていましたが、実際にはどのようなアプローチで作られたのでしょうか?
Russell:今回は”空間”のある音楽にしたいという話をしていたよ。空間をちゃんとつくって、それぞれのサウンドが際立つようにしたかったんだ。
—詰め込み過ぎない音楽ということですよね。Jamie xxやJames Blakeとも通ずるモノを感じました。Keleのソロもディープ・ハウスのようなダンス・ミュージックでしたが、そういった音楽性にシフトした理由などはありますか?
Kele:自分たちがエレクトロニック・ミュージックの大ファンだということは昔から言っていることだし、もちろんその影響は大きいと思うよ。Jaime xxの音楽を聴いたことがないから、似ているかどうかは分からないけど(笑)。ただひとつ言えることは、みんなロンドンに住んでいて、似たようなレコードを聴いて影響を受けてきていると思うから、自然と共通するようなところが出てくるんだと思うよ。
特に僕はここ5年くらいDJもやっているから、サウンド的にそういうものに惹かれるし、自分がエキサイトできる音楽に自然と近づいていくんだろうね。だからアルバムにも、そういうところが現れているのは理解できる。ただ、重要なのはバンドのメンバーがそれぞれのやりたい音楽をここに持ち込んで、きちんとバンドとしてコラボレーションしている音楽が鳴っているということだと思うよ。
—新メンバーの2人はどれくらい制作に関わっていたのでしょうか?
Kele:Louiseはさっき言ったようにアルバム作りの終盤で参加したから殆ど関わっていないけど、Justinは全ての曲でベースを弾いているし、ボーカルやキーボードとしても参加しているよ。ソングライティングに関しては、僕ら2人が曲を書きだした時はまだアメリカにいたんだけど、Justinとは遠隔でお互いにアイデアを交換しながら曲作りを進めたんだ。その後のレコーディングの前のリハーサルからは実際に合流して、一緒に演奏しながらレコーディングしていったから、この作品にはすごく関わってくれているよ。
—改めて、JustinとLouiseをミュージシャンとしてどう捉えていますか?
Kele:2人ともミュージシャンとして自信に溢れているタイプだね。まず演奏がとても上手い。特にルイーズは自分が今まで会ったドラマーの中でもベストに近いと思っていて、とても技術的なドラマーと言えるよ。正確だし、彼女が僕らの昔の曲を演奏すると、解釈がとてもクリーンなんだよね。それがとても面白いと思っているよ。ジャスティンは前のベースとは違うタイプのベースを弾くんだよね。スムーズというか、グルーヴがある。自分たちの音楽にこんなにグルーヴが存在しているのは、これまでで初めてなんじゃないかな。彼はバンドにグルーヴを持ち込んでくれたね。
—この後、新体制で日本での初めてのライブとなりますが、ライブ面での変化はありますか?
Kele:もちろん! 日本のファンがどんな風に反応してくれるか僕も楽しみにしていて、特にこれまでの僕らのライブを観てくれていた人にとっては違いがハッキリ分かるんじゃないかなと思うよ。これまでのライブよりも演奏がタイトになったし、さっきも言ったけど、正確でクリーンなサウンドになったんじゃないかな。
−楽しみにしています。少し話が変わるのですが、今、日本ではロック・バンドよりもEDMが現場で人気を集めています。イギリスではどういった状況ですか?
Kele:そうだね。日本だけじゃなくてイギリス・ロンドンだって一番人気があるのはすごく商業的なダンス・ミュージックだよね。でも僕はあまり心配はしていなくて。ミュージシャンがステージでどんな風に楽器を弾いているかや、バンドが生み出すコラボレーションやグルーヴを楽しみにしている人たちは常にいるはずだよ。マーケット自体は小さくなっているかもしれないけど、そういう人たちは今後も絶対に存在し続けるからきっと大丈夫だと思うよ。
−何かそういうファンを増やすためのアプローチ方法やアイデアはありますか?
Kele:自分たちの好きな音楽をずっと作り続けて、ファンの人たちにシェアしていくしかプランはないかな。本当に好きな音楽を作ってそれが人に受け入れられたら、それはとてもクールなことだけど、そこにあまり戦略的なものはないね。
Russell:「こういうオーディエンスに対して、こういう曲を書こう」というのはシニカルすぎるというか、あまり良いことじゃないよね。
−音楽を人にシェアする手段としてサブスクリプション・サービスが世界の主流となりつつあります。今年、日本でもようやくスタートしました。Bloc Partyはセールス的に成功を収めたアーティストといえますが、こういった状況についてはどう捉えていますか?
Russell:音楽ファンにとってはとても良いものだと思うよ。好きなものに好きなだけアクセスして、以前より多くのお金を払わないで済むというのはとても嬉しいことだよね。でも、デメリットもある。ひとつひとつの音楽の価値が下がってしまっていると思うんだ。ほとんどタダみたいなコストで何でも聴けちゃうと、その音楽との関係性を作りにくくなっちゃうよね。一過性のものになってしまって、リスナーが音楽と向き合うスパンが短くなっていっていると思うんだ。そこは良くないかな。
−なるほど。それでは最後に、今後のBloc Partyのヴィジョンのようなものがあれば教えて下さい。
Kele:まずは、新しいアルバムのリリースにエキサイトしているし、早くみんなに届けたいと思っているよ。ツアーをして色々な所でライブもやりたい。もちろん、日本にもまた帰ってきてライブをやりたいね!
もう少し長期的なところで言うと、また新しい曲をどんどん作りたいと思っているよ。クリエイティブであり続けること、そしてフォーカスを失わないことが自分たちの大きな目標だね!
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Bloc Party『HYMNS』(国内盤)
Release Date:2016/1/29
Price:¥2490 + Tax
Label:INFECTIOUS MUSIC / BMG / HOSTESS
Cat No.:HSE-3500
Tracklist:
01. The Love Within
02. Only He Can Heal Me
03. So Real
04. The Good News
05. Fortress
06. Different Drugs
07. Into The Earth
08. My True Name
09. Virtue
10. Exes
11. Living Lux
12. Eden**
13. Paradiso**
14. New Blood**
15. Evening Song**
**=デラックス盤ボーナストラック
※日本盤にはさらに曲数追加予定