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Fazerdaze / Lucky Girl


NZ出身、プリズムのように光溢れるSSW! こんなにキュートなMVを観てしまえば、あなたの白昼夢にも彼女はきっと

2017.05.03

『Morningside』は、Amelia Murray(アメリア・マレー)によるベッドルーム・プロジェクト、Fazerdaze(フェイザーデイズ)のデビュー・アルバム。2014年に自主で配信リリースした『Fazerdaze EP』より早3年、今作は地元・ニュージーランドの名門〈Flying Nun〉からのリリースが5月5日(金)に決定しました(日本盤は6月2日に〈Tugboat〉からリリース)。

プロフィールにあるのは”Girl in bedroom on guitar.”というシンプルな一文でありながら、彼女のサウンドが描くのはドリーミーで眩しい世界。そこには、不意に寝室からお日さまの下へ連れ出されるような、白昼にピーター・パンと手を繋いだかのような生き生きとした色彩が待っています。まずは、先行シングル「Lucky Girl」のMVをご覧になって、それを実感して頂ければと思います。

いかがでしょうか。胸をときめかすミニマルなビデオ・クリップたちがループの中で次々と弾け合い、まるで、その1つ1つに魔法がかけられているかのようですね。その中でも特にユーモアに溢れ、心をくすぐる2:09〜の青リンゴとルービック・キューブには、思わずキュンとしてしまいました。本MVの映像編集を手掛けたというAmelia本人の佇まいも美しく、時に可愛らしいので、こちらもまた観ていて吸い込まれそうなほど(そのDIY精神も素晴らしいですよね)。

ニュージーランドの自然美がこの映像のファンタジー性を大いに高めているのにもかかわらず、そこへ多幸感ある音像を重ねても現実離れし過ぎないのは、実のところ、VHS画質やアスペクト比4:3というレトロ・シンボルがあるからでしょう。そしてさらに、この草原、海辺、山肌というものが彼女のバックグラウンドに存在するからかもしれません。その美しさを扱う術を心得ていると言いますか。

エコーやリバーブを深くかけたボーカルが、先に述べたようなふわふわした光景だとすれば、クリーンな音を鳴らすギターは、そこと現実との間に生じる”揺らぎ”です。それはまさに郷愁の世界だと思います。夢と言うほどに隔たりはなく、現実ほどに霞むこともない純粋な記憶、そんな音色ではないでしょうか。
それから、ボーカルとギターから潔く”離脱した”現実をリリックが掬い上げているというところに、私はまた1つ、オルタナティブ・ポップの良さを感じました。

以下にあります、ジャケット写真もまた『Morningside』というタイトルに似合っていて素敵ですよね。同じくこちらのアルバムに収録予定の楽曲「Take it slow」のMVも制作されていますので、ぜひご覧下さい。


先週6月2日(金)、ついに今作『Morningside』が日本でもリリースされ、既にチェックされた方も多いことでしょう。清らかな朝の光を感じさせ、その触感はやわらかで。そのやわらかさがあるからこそ、#5「Jennifer」、#7「Shoulders」、#10「Bedroom Talks」などの平熱な音調は、夜に聴いても似合いますね。

美しい朝もあれば、目覚めたくない日もあります。涙で滲む月もあれば、穏やかな夜もあります。”朝/Morning”という言葉が肯定的に捉えられている限り、それは夜の闇の美しさを、むしろ強調したって、もはや体現したっていいのではないでしょうか。私たちの経験するポジティブな出来事と、私たちの抱えるネガティブな感情の間にも、きっと同じことが言えるはずです。そんなアルバム。

さて、日本盤をリリースした〈Tugboat〉が、とあるカップリング・ツアーを企図しているようです。その2組とは、本記事で紹介しているFazerdazeと、そのレーベル・メイトであるHazel English。実現したら、きっと”朝”のような夜になりますね。共に耽りましょう。

(※2017.06.06 1:52 UPDATE)


【リリース情報】

Fazerdaze 『Morningside』
Release Date:2017.05.05 (Fri.)
Label:Flying Nun Records
Tracklist:
1. Last To Sleep
2. Lucky Girl
3. Misread
4. Little Uneasy
5. Jennifer
6. Take It Slow
7. Shoulders
8. Friends
9. Half-Figured
10. Bedroom Talks


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